事件番号:JP2012-0012

                  裁 定

  申立人:
  (名称)チャン・ルー・インコーポレーテッド
  (住所)アメリカ合衆国、カリフォルニア州 90014、ロサンゼルス、 818
      サウスブロードウエイ、 シックスス フロア
  代理人:弁護士 宮川 美津子
       同  加藤 恭子
       同  尼口 寛美
  登録者:
  (氏名)森本 茂樹
  (住所)大阪府枚方市上島町6-1-106

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JP ドメイン名紛争処理方針、JP ドメイン
名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJP ドメイン名紛争処理
方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・答弁書・提出された証拠に基づ
いて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定主文
 ドメイン名「CHANLUUSHOP.JP」の登録を申立人に移転せよ
2 ドメイン名
 紛争に係るドメイン名は「CHANLUUSHOP.JP」である。
3 手続の経緯
 別記のとおりである。

4 当事者の主張
 a 申立人
 申立人は、申立人の登録商標「CHAN LUU」などの表示と混同を引き起こすほどに類
似し、表示における申立人の好評を利用する意図をもって登録者によって採択されたドメ
イン名を登録していることを主張する。申立人によれば、ドメイン名は、申立人の商標と混
同を引き起こすほどに類似し、登録者はドメイン名について正当な利益を有していない、そ
してドメイン名は不正の目的で登録され且つ使用されている。
 従って、申立人は、ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。
 b 登録者
 登録者によって答弁書は提出されなかった。

5 争点および事実認定
 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則につい
てパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・文書および審問の結果に基づ
き、処理方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理に従って、裁
定を下さなければならない。」
 方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図している。
 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同
一または混同を引き起こすほど類似していること
 (2)登録者が、ドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有していないこと
 (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること

 (1)同一又混同を引き起こすほどの類似性
  ア 申立人の表示
 申立人は、日本において登録商標「CHAN LUU」(商標登録第4884138号、指定
商品第14類、第18類、第25類)を保有しているものと認められる(甲第2号証(枝番を
含む。以下同じ。))。申立人は商標「CHAN LUU」(商願2012-28860号、指定役
務第35類)及び商標「チャンルー」(商願2012-50088号、指定商品(役務)第14類、
第18類、第25類、第35類)について、それぞれ商標登録出願をしているものと認められ
る(甲第3号証)。
 また、申立人はJPドメイン「CHANLUU.JP」を取得して、当該ドメイン名のイン
ターネットサイトにおいて、申立人の商品に関する情報の紹介や商品の販売を行っている
ものと認められる(甲第4号証)。

 イ 申立人表示の周知性
 申立人は、創業以来約17年に亘りファッション・アクセサリーなどに関してビジネスを
展開してきたこと、その商品は世界中の高級百貨店において販売されていること、日本にお
いても伊勢丹その他の有名百貨店や有名小売店において販売されていると主張する。
 しかしながら、係る事実を裏付ける証拠は提出されていない。
 また、申立人は、申立人のウエブサイトにおいて、申立人の商品が取りあげられた数多く
の雑誌を紹介していると主張して甲第9号証を提出する。しかしながら、甲第9号証は数多
くの雑誌の表紙が掲載されているものであって、申立人の商品が取りあげられている事実
を確認することはできない。
 よって、上記各主張は周知性認定のために斟酌することはできない。
 他方、甲第10号証によれば、申立人の表示の周知性を一定程度認めることができる。そ
の理由は以下のとおりである。
 甲第10号証として提出されている雑誌はいずれも日本国内で販売されているファショ
ン雑誌であり、その発行部数は不明であるものの、一定程度の発行部数を持つものであると
推認できる。そして、これらの雑誌において「CHAN LUU」「チャンルー」などの表示と
共に、申立人のアクセサリーを主とした商品が紹介されていることを認めることができる。
 紹介記事の中には、「ヒットを連発するチャンルー」(甲第10号証の2、5枚目)、「やっぱ
り気になるこのブランド」(甲第10号証の3、3枚目)、「ブレスレッド人気の裏で・・・」(甲
第10号証の8,6枚目)、「人気の火付け役ブランド」(甲第10号証の9,4枚目)、「大人気
のチャンルー」(甲第10号証の11,3枚目)、「人気者同士のコラボ」(甲第10号証の13、
3枚目)などの記述を認めることができる。
そうすると、申立人の表示は、ファッションに関心のある者の間で周知になっているもの
と認めることができる。

 ウ 類似性
 本件ドメイン名は「CHANLUUSHOP.JP」である。
 本件ドメイン名中「JP」はトップレベルドメインであって国別コードの日本を意味する
ものであって、類否判断における対象からは除外されるべきものである。
 そこで、本件ドメイン名中「CHANLUUSHOP」の文字部分を検討すると、「SHO
P」の文字部分は「(商品の)販売店」を意味するよく知られた英単語であるから、この文字部
分に接した需要者は「商品の販売目的のサイト」であると認識するにすぎず、識別力を有す
るものとは認められない。
 そうすると、本件ドメイン中識別力を有する文字部分は「CHANLUU」であるから、こ
の文字部分と申立人の表示「CHAN LUU」とを対比すると、両者はスペースの有無とい
う差異はあるものの文字列は共通している。また、上記のとおり申立人の商標「CHAN L
UU」はファッションに関心のある者の間で周知であり、登録者は本件ドメイン名を使用し
てアクセサリーなどの販売を行っている(甲第8号証)。
 以上から、本件ドメイン名に接した需要者は、本件ドメイン名を申立人がその商品の販売
のために使用するドメイン名であると誤認するおそれがあると認められる。よって、本件ド
メイン名は申立人の表示と混同を引き起こすほど類似しているというべきである。

 (2)権利又は正当な利益
 登録者は、本件ドメイン名と関連する登録商標を日本において保有していない(甲第7号
証)。また、登録者の氏名の欧文字表記である「CHUN LIU」は本件ドメイン名「 CHA
NLUUSHOP.JP」やその要部と認められる「CHANLUU」と一致しない。
 よって、登録者は本件ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有しているものと
は認められない。

 (3)不正の目的での登録及び使用
 上記(1)イで認定したとおり、申立人の表示は主として商品「アクセサリー」との関係で使
用され、ファッションに関心のある需要者の間で周知になっていたものである。
 他方登録者は、本件ドメイン名を使用したサイトにおいてアクセサリーを販売しており、
そこでは標章「CHAN LUU」と大きく表示し、ヘッダーには「【Chan luu
通販専門店】」と表示するなど、あたかも申立人が開設する商品販売サイトであるかのご
とき体裁となっている。
 係る事実から、登録者が本件ドメイン名を、需要者に申立人のサイトと誤認混同させて
顧客を誘引する目的、すなわち不正の目的で使用しているというべきである。

6 結論
 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン名「CHAN
LUUSHOP.JP」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者が、ドメ
イン名について権利又は正当な利益を有しておらず、登録者のドメイン名が不正の目的で
使用されているものと判断する。
 よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「CHANLUUSHOP.JP」の登録
を申立人に移転するものとし、主文のとおり裁定する。

   2012年11月20日

   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
              峯  唯 夫
              単独パネリスト


別記 手続の経緯
(1)申立書受領日
   2012年9月20日(電子メール)及び9月20日(書面)
(2)手数料受領日
   2012年9月20日 申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
   2012年9月20日 JPRSへ照会
   2012年9月20日 JPRSから登録情報の回答
   回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、JPRSに登
録されている登録者の電子メールアドレス(以下「登録アドレス」)及び住所(以下「登
録住所」)等
(4)適式性
   日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2012年9月24
日に、申立書が処理方針と規則に照らし申立書が適合していることを確認した。
(5)登録者への通知日及び内容
      1) 申立書送付日(手続開始日) 2012年9月25日(電子メール及び郵
送)
   2) 申立書及び証拠等一式
   3) 答弁書提出期限 2012年10月24日
(6)手続開始日 2012年9月25日
   センターは、2012年9月25日に申立人及び登録者には電子メール及び郵送で、
JPRS及びJPNICには電子メールで、手続開始日を通知した。
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
   センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2012年10月2
4日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不出通知書を、電子メールと
郵送にて申立人及び登録者に送付した。
但し登録者宛郵送分については「あて所に尋ねあたりません」として返送された。
(8)パネリストの選任 2012年10月31日
   申立人は1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
   中立宣言書の受領日:2012年11月7日
   パネリスト:弁理士 峯 唯夫
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
   2012年10月31日 JPNIC及びJPRSへ電子メールで通知
             申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知
但し登録者宛郵送分については「あて所に尋ねあたりません」として返送された。
   裁定予定日:2012年11月20日
(10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し
   2012年10月31日(電子メール及び郵送)
(11)パネルによる審理・裁定
   2012年11月20日 審理終了、裁定。