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DNSO検討部会C(新規 gTLD)暫定報告書に対するコメント

0. 序

 以下はJPNICの有志によって議論され、 まとめられたgTLD追加に関する見解である。 我々の議論は、 勿論インターネットがより良く発展していくためにはどうすべきか、 という観点で行なわれたが、 ここで何が「より良い」ことなのかについて、 我々の考えを明確にしておくことは、無駄なことでは無いだろう。 我々が考える「より良い」とは、

  1. インターネットの安定性を損なう事無く
  2. 市場のニーズにできるだけ答える

ことである。

 我々のdiscussionの結果をまとめると次のようになる。

  1. 全体としては提案A(Position Paper A)が種々の観点からバランス良い提案であると考えるが、さらに(2)から(5)の修正が必要と考える。
  2. [II. What should be the nature of the gTLDs?]
    我々は特定目的TLD (specific-purpose TLD)に対しては、不賛成の立場を取るものではないが、charter 通りに運用されているかどうかのチェック、並びに、私有化されないための方策作り、という点を考えるとその存立は非常に困難ではないかと考える。
  3. [IV. What should the transition to an expanded namespace look like?]
    少数のgTLDを導入し評価期間をおくことに賛成する。ただし、提案Bにあるように、今後追加する新gTLDの数をあらかじめ公表するとともに、追加のシナリオを具体的な数字とともに示すことによりこの少数のgTLDでの無用の混乱を防ぐことが望ましい。
  4. [VII. What should ICANN's process be for selectiong new domains and registries?]
    gTLDの文字列自体に価値があることを考えると、追加するgTLDはICANNが前もって決めるのではなく、レジストリ候補により申請されるべきである。
  5. 次のissueも重要であり、十分な議論を尽くすべきである。すなわち、「あるgTLDのレジストリ業務は、レジストリ間で業務移転可能とすべきか?」本issueに関しては「移転可」を基本に「時限的強制移転」を併用すべきと考える。

 本文書はJPNICの有志によってまとめたものであって、 決してJPNIC全体の、或は組織としての方針表明ではない。

1. 新gTLDは必要か。

 必要と考える。gTLDのうち、特に.comについては、ほぼ飽和状態にあり、また、 商用ドメイン名としての.comの経済的価値が不当と思われる程度までに強大化しており、 過去に先着順というルールで遅れをとった企業に対し、 余りにも不平等な犠牲を強いているものと思われる。 多くの企業が、世界的にみれば、広範囲にわたる商品・サービスの分野で、 同一商標を共有し、特に問題もなく併存している。 このような企業・団体・個人に対しても、新しいチャンスが与えられ、 インターネット上でより公正な競争が確保されるよう整備されるべきである。

 商標権の尊重については、 簡易・安価・迅速なUDRPが実質的に2000年1月から導入され、 今後の推移を慎重に見極める必要があるものの、 新gTLD導入の大きな障害が一応取り除かれたものと判断する。 なお、著名・周知商標ほど、cyberpirateの対象になっており、 これらの権利者には、cyberpiracy排除にあたり、 他者に比べ相当の負担を強いてはいるが、 事前排除制度の導入まで新gTLDの採択を待つというアプローチには、賛成しかねる。 並行して進めることで合意を形成すべきである。 この間は、UDRPの活用で対処すべきと考える。 ただし、登録ドメイン名のより速やかな情報公開、 より簡易・安価な一元的検索システムの開発が急務と考える。

2. 新gTLDの性質はどうあるべきか

 WG-Cレポートでは汎用目的のgTLDと特定目的のgTLDが議論されている。 このうち汎用目的のgTLDの創設に関しては、我々に異論は無い。 汎用目的gTLDは、shared registryで運用されることが望ましく、 またUDRPが適用されることが望ましいという点で我々の意見は一致した。

 特定目的gTLDの創設については、 これに賛成する意見が出ていることは理解できるが、 Charter通り適切に運用されていことを検証する仕組みを作ることが困難であるという点で我々の意見が一致した。 そもそも、 それぞれのCharterがインターネットの発展にとって望ましいCharterであるのかないのかを、誰がどのようにして判定したら良いのだろう? これは面倒な問題があるが、 仮にCharterが適切であっても、 Charter通りに運用されていなかった場合には面倒な問題が起き得る。 我々が最も恐れる事態は、 あるTLDがRegistry業務を引き受けた組織(または個人)によって実質的に私有されること(Proprietary TLD)である。 悪意を持っていれば、 Charterをわざと守らないことによりそのTLDを実質私有し、 本来の意味でのgTLDとしてではなく、 一私企業(または一個人)のドメイン名として使う可能性すらあり得る。 これが起こってしまった場合のおぞましい悪影響については3.で述べるが、 いずれにしても、私有TLD (Proprietary TLD)の存在は容認できないという点で、 我々の意見は一致した。 従って、Charterの適切性を判断する仕組みと、 Charterが守られていることを検証する適切な仕組みができない限り、 特定目的gTLDの創設には我々は賛成できない。

 なお、汎用、特定目的、いずれであっても、 登録データの第三者保管(Data Escrow)は不可欠である。 これは当該TLDの私有を防ぐ意味でも災害やレジストリの倒産に備える意味でも重要である(ただし私有を防ぐのに十分であるとは断言できない)。 また、gTLD登録データ及びgTLDそのものはICANNに帰属することも明確にする必要がある。

3. 新TLDの数はどのくらいが適切か

 IAHC(International AdHoc Committee)がFinal Reportを出した頃に比べて、 技術的には状況がかなり変わった。 そのため、 当時考えられていたよりもかなり多くのTLDを追加しても問題は起こらないと言って良いであろう。 WG-C Reportでも指摘されているように、 新TLDの数に人為的な制限を設けることは望ましくないが、 しかしTLDの数が増えれば増えるほどroot serverの負荷が序々に高まり、 インターネットの安定性という意味では困難さは少しずつ増すことも事実である。 TLDが500ならどうか、1000ならどうか、5000なら、、、と考えていくと、 どこにも明確な境界を引く事はできないが、 しかし数十万ものTLDはさすがに悪夢であろう。 人為的な数の制限は作らずに、 市場原理が働いて自然にほどほどの数に落ち着くような仕組みが作れれば良いが、 そのような仕組みができるための条件は何か?、と言う点を我々は議論した。 例えばaaaaaという社名を持つ企業が.aaaaaというTLDを(実質)私有したとしよう。 すると、bbbbbという社名を持つ他の企業も同じように、 .bbbbbというTLDを私有したいと望むであろう。 一旦これが発生すると、最悪の場合.comの多くの登録者が、 「xxxxx.comよりは.xxxxxというTLDの方が魅力的」と感じて殺到する恐れがある。 すなわちTLDの私有(Proprietary TLD)は、 数十万のTLDという悪夢につながる道として十分に警戒する必要があると我々は考える。 これは絶対に許してはならないという点で、我々の意見は一致した。

 逆に、私有TLD(Proprietary TLD)を許さない仕組みを作れれば、 市場原理が働いて、TLDの数が無理のない数に自然の落ち着くようにするのに、 それほど多くの困難は無いと我々は考えている。

4. 拡張したドメイン空間への移行はどうすべきか

 ドメイン空間の拡張を円滑に行うために、 拡張の速度がICANNの処理能力の許容範囲に納まることを考慮することは妥当であると考える。 その意味で、 「最初6〜10のgTLDを追加し、評価後に後続gTLDを検討する」としたWG-Cレポートの案は妥当であると考えるが、 後続gTLDの追加の有無があらかじめ明らかにされないことは以下のような問題を引き起こす恐れがあると考える。すなわち、

 このような混乱を回避するためには、 どのようなスケジュールでgTLDの数を増やすかについて、あらかじめ定めて公表し、 そのスケジュールどおりに実施することが必要であると考える。

 その点、Position Paper Bで示されている具体的なシナリオ (ICANNは、今後3年間に500個の新gTLDを追加する意図があることを宣言すべき。 最初の6ヶ月に10個、次の6ヶ月に40個、2年目に150個、 3年目に300個(3年間で計500個)増やし、その後無制限とする。) は一つの具体案として評価できると思われる。

 したがって、設問4に対する我々の結論は、次の2点に集約される。

5. 新gTLDレジストリの共有をどうすべきか。レジストラは競合か。

 すべての汎用gTLDレジストリは、共有レジストリシステムを備え、 競合する複数のレジストラに対してサービスを提供すべきである。

 gTLDレジストリを増やすことによって、 レジストリ間の競争が起きるものと考えるが、 各レジストリが独自の文字列をgTLDとして保有するため、レジストリ間の競争は、 同じ製品を販売する競合会社間で発生する競争とは性質を異にする。 つまり、利用者にとって人気が高いgTLDに登録が集中し、 人気がないgTLDには登録が少ないという状況が容易に想像できる。

 市場原理による価格形成を求めるとするならば、 レジストリ間の競争にのみ頼ることなく、 別の次元においても競争原理を導入すべきであると考える。 したがって、すべての汎用gTLDレジストリは、共有レジストリシステムを備え、 そのもとでレジストラが競争をする環境を作るべきである。

 なお、共有レジストリシステムについては、 レジストリ毎によって異なるシステムを採用することによるメリットはあまりなく、 現在、RRP(Registry Registrar Protocol)のRFC化も計画されているので、 基本的にはすべてのレジストリはRFC化されたRRPに準拠したシステムを採用すべきであると考える。

6.新gTLDレジストリは非営利であるべきか

 非営利、営利それぞれに利点があり、どちらかに限定する必要はない。 gTLDそれぞれの性格に合わせてどちらかが選ばれればよい。

7. 新gTLD及びレジストリの選択プロセスは?

 基本はマーケット・ドリブンであるべきである。 多くのレジストリ希望者は、 レジストリ業務そのものにインセンティブを感じているというよりも、 「特定の文字列を掲げたレジストリ」に大きなインセンティブを感じていると考えている。 したがって、 それぞれが取り扱いたいgTLDの文字列とともにレジストリの申請をするという形が望ましいと考える。

 なお、同一のgTLDの運用を複数レジストリが希望した場合、 その解決をどうするかは別の議論が必要である。 我々の中でも最終的な結論は出ていないが、 公平性を考えて抽選という形にすべきであるという意見と、 マーケット・ドリブンを考えて入札(bidding)という形にすべきであるという意見が出された。

8. あるgTLDのレジストリ業務は、レジストリ間で業務移転可能とすべきか

 7項目の設問以外に、標記issueも重要な議論であり、 十分な議論を尽くすべきと考える。

 業務移転可否に関しては、次の長所短所がある。

「移転不可」の長所:
ICANNがあるgTLDのレジストリ業務をある組織に括り付けてaccreditすることになる。このとき、レジストリを公平にaccreditすることが可能となり、資金力が比較的小さい組織も含めレジストリ業務を行いうる組織のすそ野が広がる。ただし、レジストリが業務続行不可能になった場合や、そのgTLDが.comのように大きなビジネス的な力をもってしまったときに起こる独占の弊害が出て来た場合には問題が起こる。
「移転可」の長所:
レジストリの破産等により業務が継続できなくなったとき、あるいはM&Aや業務移転などにより業務効率化を行いたい場合に対処するには移転可能とするしかない。これはマーケットドリブンが基本となり、より安定し効率的なレジストリにgTLD運営が集約されていく。弊害としては、大きなビジネス的な力を持ったgTLDが強大な独占力をもってしまう危険性が挙げられる。
「時限的強制移転」の長所:
「移転可」の弊害である「独占」を解決するために、たとえば4年毎に個々のgTLDのレジストリ業務担当組織を変更することが考えられる。ただし、この強制移転は、効率や安定性に対する努力を損なわせる危険性をはらむ。

 我々の議論では、次のような考えが支配的であった。 健全な発展のためにはマーケットドリブンであるべきであり、 最初のaccreditの段階でも、 同時に同一gTLDを申請した組織間では競売でレジストリを決めるべきである (抽選としても、結局資金のある組織がその業務を買い取ることが考えられるため)。 このためには、「移転可」を基本とし、 「時限的強制移転」を独占の弊害を小さくする手段に使う等を検討すべきである。

坪 俊宏(JPNIC ドメイン名登録検討部会、企画・国際部会)
堀田 博文(JPNIC 企画・国際部会)
久保 次三(JPNIC ドメイン名登録検討部会)
丸山 直昌(JPNIC ドメイン名登録検討部会、企画・国際部会)
田代 秀一(JPNIC 企画・国際部会)
      


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