ニュースレターNo.13/1999年4月発行
3. 最新トピックス
3.1 不正アクセス対策法制に関する緊急討論会
JPNIC 副理事長 丸山 直昌
1998年11月17日、警察庁より「不正アクセス対策法制の基本的考え方」が同庁ホームページ上で公開され、あわせてこれに対するパブリック・コメントの募集が行なわれました。また11月25日には郵政省からも「電気通信システムに対する不正アクセス対策法制の在り方について」という文書が同省ホームページ上で公表され、これもパブリック・コメントの募集が行なわれました。これらの動きを受けて、JPNICでは会員の意見を取りまとめて提出するために11月30日、(財)総評会館において「不正アクセス法制に関する緊急討論会」を開催致しました。この法制は産業界、特にインターネット業界には様々な形で大きな影響を与える可能性があるためか、緊急の開催であったにも関わらず、当日会場にはJPNIC会員所属の人々、理事、運営委員など50名が集まり、関心の高さが感じられました。この日の討論を取りまとめて以下の意見書を郵政省と警察庁に提出いたしました。
なお、中央省庁がインターネットを通じて一般からの意見募集を行なったことは、1994年に内閣の高度情報通信社会推進本部が行なった例(Newsletter No.2 9節参照)がありますが、具体的な法律案を巡っての意見募集は、おそらく今回が始めてであり、日本の社会にもインターネットが確実に浸透して民主主義のあり方までも変革しつつあることを示す一つのエポックと言えるでしょう。これは日本のインターネット発展に寄与することを目的とするJPNICとしては喜ぶべきことであると考えます。
不正アクセス対策法制に関する意見
1998年12月16日
社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター
副理事長 丸山 直昌
社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)は、先月警察庁及び郵政省から出された不正アクセス対策法制に関する意見募集に応ずべく、11月30日に会員による緊急の討論集会を開催いたしました。集会にはJPNIC法人会員所属の約50名が参加し、活発な意見交換が行なわれました。本文書ではこの会議で出た意見をまとめて、両省庁に提出いたします。
なお、当社団は会員の殆んどがいわゆるインターネットサービスプロバイダであり、ここに述べる意見はインターネットサービスプロバイダの立場からの意見が多くなっていることをご理解頂きたいと思います。またこの文書をまとめるにあたって、総会や理事会などの正式の承認手続きを経る時間的余裕が取れなかったため、丸山の文責において提出することをご了解下さい。
1.一般的事項
不正アクセス法制そのものの必要性に関しては大きな反対意見はありませんでした。ただし、本件に関して省庁間でのすり合わせを望む声が出ました。
2.不正アクセスの定義
不正アクセスの定義に関しては、警察庁及び郵政省のホームページに示されている定義に対して、多くの会員がインターネットの技術者として違和感を感じていることが判明しました。ただし、立法の手法として、「最低限取り締まるべき不正アクセス」としては、提示された定義が広過ぎるという意見はありませんでした。
3.特定電子計算機について
この定義では、事業所に置かれているコンピュータの殆んどが「特定電子計算機」に該当すると指摘されました。
4.ログの保存に関して
前項 3.により余りにも多くのコンピュータにログの保存義務が課せられると労力、コストの点で過大な負担となり困る、との指摘がなされ、多数とは言えませんが、かなり強くこの保存義務に反対する意見が出ました。また、ログの定義に関して、不明確であるとの指摘が出ました。実際、一旦コンピュータがインターネットに接続されると、ある意味でそのコンピュータのすべての機能が通信に関係する可能性があり、「通信履歴」としてどの範囲までの記録を考えれば良いのか、大きな疑問が残ります。
また、証拠としてログが押収された場合の扱いに対する不安や、ログの改ざんの可能性に言及した意見も多く出ました。
5.管理者責任
不正アクセスの行なわれたコンピュータの管理者が処罰の対象になる可能性があるかどうか、懸念する意見が出ました。また管理者が民事裁判において責任を問われることを懸念する意見も出ました。
6.公安委員会への届出義務
圧倒的多数が反対であることが判明しました。
7.郵政省案におけるログの扱い
ログの保存義務に関しては郵政省案の方が現実的との意見が多く出ました。しかし、プライバシー保護の観点から一定期間後のログの消去を義務付けていることに関しては、場合によっては業務上の支障を生じるとの懸念が出されました。また、基本的人権とも言える通信の秘密にも関係する通信履歴の保存について、郵政大臣に指針の制定や勧告などの大きな権限が与えられることに疑問を呈する意見が出ました。このような権限は行政による裁量ではなく、明確に立法措置によって定められるべきものである、との意見です。