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ニュースレターNo.26/2004年3月発行

特集1:インターネットのガバナンスとは?

1. 何を意味する言葉か

ガバナンス(governance)という言葉を英和辞典で引くと管理、支配といった言葉が出てきます。ですが、誰か特定の個人や団体がインターネット全体を一元的に管理しているかと言えば、現状ではそうなっていません。インターネットのこれまでの発展を支えてきたのは、長年の技術者の努力と創意工夫の積み重ねであると言ってよいと思いますが、発展の過程で先駆的な技術者達は、特定の権威者による中央集権的な統制の仕組みがなるべく少なくなるような技術標準を指向したようであり、そのような方向性はある程度まで成功したと言えるでしょう。そのために、現状のような一元的な管理者がいない、言い換えれば誰が最高責任者(機関)なのか不明確な状態になっているわけですが、そのような不明確な状況も含めて、インターネットの運営上の諸問題に対する取り組みのあり方の全般を、「インターネットのガバナンス」と呼んでいます。

2. IAHC(International AdHoc Committee)

インターネットのガバナンスに関するこれまでの出来事を思い起こしてみますと、1996年の終わり頃に結成されたIAHC(国際特別委員会)にまず触れなければいけません。それまで中央集権的な統制などとは無縁で発展してきたわけですが、この頃、急速にインターネットが社会に浸透していったことと、.comのドメイン名の登録数の爆発的増加がきっかけとなって、新しいトップレベルドメイン名(TLD)の創設に対する要望が非常に強くなってきました。また、World Wide Webの発展により、ドメイン名が企業の標識の性格を持ち始めたために、商標権を持つ有名企業によるドメイン名登録の仕組みに対する批判の声が高くなってきたこと、さらに.com、.org、.netの三つのTLDの登録を担当していたNetwork Solutions Inc.(当時)の目を見張る収益の伸びに対する批判が高まったのもこの時期でした。

このためインターネットは初めて、社会の注目が集まる中で何かを中央集権的に決めなければいけない状況に至りました。この状況に対処するために、当時多くの先駆的なインターネット技術者が所属していた非営利団体ISOC☆1の理事会の決定によりIAHCが結成され、1997年初めにはgTLD-MoU☆2と呼ばれる文書を含む一連の政策提言を発表して、1998年には新しいTLDを創設する計画を立てました。

しかし、その直後からアメリカ政府がこの問題に関心を示し始め、電子商取引に関して述べた文書(1997年3月☆3)に続いて、当時いわゆるGreen Paperと呼ばれた文書(1998年1月☆4)とWhite Paperと呼ばれた文書(1998年6月☆5)の三つの政策文書を出しました。その結果IAHCの計画は実現することはなくなり、代わってICANN☆6が1998年10月に組織され、IAHCが手掛けた諸問題はICANNに舞台を移してそこで再度議論されることになりました。

3. ICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)

ICANNは創設後にまず、新TLDの創設、ドメイン名登録事業の独占に対する対策、商標権とドメイン名の対立の問題に取り組み、結果として七つの新TLDの創設(2000年11月)、レジストリ・レジストラ制の導入(1999年11月)、UDRP☆7の導入(1999年10月)など、一定の成果を出しましたが、特に後の二つについてはIAHCでの検討の成果が大きな財産として生かされたことがうかがえる結果になりました。

一方、ICANNの使命として、ドメイン名の他にIPアドレスやプロトコル番号の扱いも含まれており、またIAHCの議論ではほとんど取り上げられなかった国コードTLD(ccTLD, County Code Top Level Domain)に関する議論もICANNでは取り上げられるようになりました。

当初ICANNが目指した体制は、ドメイン名に関してはドメイン名支持組織(DNSO)、IPアドレスに関してはアドレス支持組織(ASO)、プロトコル番号に関してはプロトコル支持組織(PSO)の三つの内部組織を柱として、これに政府諮問委員会(GAC)を含むいくつかの諮問委員会が援助する体制でしたが、成立後5年5か月を経た現在、分野別ドメイン名支持組織(GNSO)、国コードドメイン名支持組織(ccNSO)、アドレス支持組織(ASO)にいくつかの諮問委員会が援助する体制に変っています。(図1)

図1:現在のICANN組織構成図

4. ICANNの運営とインターネットガバナンスの背景にある思想

ICANNができた経緯には、上に述べたようにアメリカ政府が大きく関与したわけですが、アメリカ政府は上記の三つの政策文書の作成にあたってインターネット関係者の意見を広く聞く姿勢を示したこともあり、それまでインターネット技術者の間で培われてきたいくつかの伝統を、ICANNの運営に採り入れることが試みられました。その一つは“Private, Bottom-Up Coordination”(民間主導、下意上達的調整)という考え方であり、もう一つは“Rough consensus and running code”(大方の賛同と実際に動いている仕組みの尊重)です。その他、“Open and transparent”(公開と透明性)という言葉も、ICANNの会合では尊重されるべき基本思想としてたびたび言及されます。実際、ICANNがアメリカ・カリフォルニア州法に基づく非営利民間法人として設立されたのは、“Private”の実現としての意味だったわけです。

しかし、これらの思想を、現実社会の利害対立が持ち込まれる場面で貫き通すことは、非常に困難なことですし、またそれが常に良い結果をもたらすとも言い切れないかもしれません。簡単な例をあげると、“rough consensus”というのは、いったいどれくらいの割合の人が同意すれば“rough consensus”があると考えればよいのか、という問題があります。インターネット技術者達が行ってきた技術開発の相談の方式の良い面をそのまま法人運営や広く社会に影響を与える事項の決定に適用できるかと言えば、簡単な問題ではないことは容易に想像できます。また、現在はインターネットが各国の政治や経済にまで影響を与える力を持ってしまったために、一層ICANNの運営は難しいものになっていると言えるでしょう。そのような状況の中でICANNは、インターネットの発展の可能性を損なわずにどのように必要な意思決定を行う仕組みを作れば良いのか、これまで5年間試行錯誤を続けてきたと言うことができるでしょう。

5. WSIS(World Summit for Information Society)

このような状況での、ICANNの仕組みとインターネットガバナンスの在り方に一石を投じる動きが最近、ICANNの外で生じています。2001年12月から2002年1月にかけての国連総会の決議により、WSIS(世界情報社会サミット)と呼ばれる会合が、政府間の会合として開かれることになり、その第1回会合が2003年12月にジュネーブで開かれました。その会合の議題には、インターネットガバナンスの問題が含まれており、これがICANNへのこれまでの参加者を含め、インターネットの発展に関わってきた人々の警戒感を引き起こす結果になっています。

WSISは国際電気通信連合(ITU)がこれまで準備を主導しており、事前に開かれた何回かの準備会合でもインターネットガバナンスがテーマとして取り上げられ、その頃から一部のICANN参加者達の注目を集めていました。これらの人々の中には、ITUにおける議論の進め方がこれまでのインターネットガバナンスの思想、特に“Private, Bottom-Up Coordination”や“Open and transparent”と相容れないものであるという声が聞こえてきます。実際、ジュネーブでの第1回会合や、事前の準備会合に参加してみた人々からは、民間組織がインターネットガバナンスの議論で軽んじられた、という不満が聞かれました。また、インターネットの技術開発に長年携わった技術者の中には、十数年前にあったITUの電気通信分野での国際規制が、当時実際にインターネット発展の足枷になった歴史を忘れていない人もおり、これらが重なってWSISへの警戒感につながっていることがうかがえます。

その一方で、開発途上国の政府には、WSISでのインターネットガバナンスの議論を歓迎する空気が強いようです。その理由として考えられるのは、先進国にインターネット分野で追い付きたいと考える開発途上国にとって、民間主導よりは国連主導やITU主導の方が頼りになると考えているのかもしれません。あるいは、これらの国々にはICANNの場では十分に発言させてもらえていない、という不満があるのかも知れません。理由はともかく、ジュネーブのWSISの場では、これまでの民間主導を支持する先進国を中心とした国々との間で意見が一致せず、インターネットガバナンスについてはこれといった成果は出ずに、結論が先送りされました。

なお、JPNICはこれまで.jpのドメイン名登録やIPアドレス割り当てを民間組織として行ってきた経験から、基本的に民間主導によるインターネットの運営を支持しています。また、日本政府も民間指導を支持しており、ジュネーブのWSISでもその立場で発言したと聞いています。

6. 今後の展開

入り乱れるさまざまな思惑や期待や不信を遠ざけて冷静に物事を判断するには、やはり、現在のインターネットが多くの民間組織の協力によって成り立っているという事実を直視する必要があるでしょう。それら民間組織は、国境を越えて存在しており、規模や業務形態もさまざまです。それらに対して国連機関や国際機関が号令を下す、という仕組みは無理であろう、やはりICANNのような民間組織がインターネットガバナンスを担うより他ないであろう、というのが最近ローマで開かれたICANN会合でのICANN事務総長Paul Twomey氏の意見です。この問題を考える上で、傾聴すべき意見であると思われます。

(JPNIC理事 丸山直昌)

参照URL

☆1 ISOC:Internet Society
http://www.isoc.org/
☆2 gTLD-MoU:インターネットドメインネームシステムの一般トップレベル・ドメイン名空間に関する覚書
(日本語訳)http://www.nic.ad.jp/ja/translation/domain/iahc-gTLD-MoU.html
☆3 地球規模での電子商取引の枠組み
A Framework for Global Electronic Commerce(1997年7月)
http://www.technology.gov/digeconomy/framewrk.htm
https://clintonwhitehouse4.archives.gov/WH/New/Commerce/*1
☆4 インターネットの名前およびアドレスの技術的管理の改善についての提案 ディスカッション・ドラフト(いわゆるGreen Paper)
A PROPOSAL TO IMPROVE TECHNICAL MANAGEMENT OF INTERNET NAMES AND ADDRESSES DISCUSSION DRAFT(1998年1月)
(日本語訳)http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/bunsho-green.html
☆5 インターネットの名前およびアドレスの管理(いわゆるWhite Paper)
Management of Internet Names and Addresses(1998年6月)
(日本語訳)http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/bunsho-white.html
☆6 ICANN:The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers
http://www.icann.org
☆7 UDRP:Uniform Dispute Resolution Policy
(日本語訳)http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/icann-udrp-policy-j.html

*1 2017年7月26日更新 URLが変更になっています。

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