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JPNICはインターネットの円滑な運営を支えるための組織です

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ニュースレターNo.30/2005年7月発行

JPNIC会員と語る〈特別編〉座談会:
インターネットが社会インフラとなった今新たに直面している課題とは

いつもの対談とは趣を変え、今回はJPNIC会員の皆様とJPNIC理事長 村井純の他、JPNIC執行理事による座談会の模様をお伝えします※1。現在のインターネットの抱える課題とJPNICに期待される役割についてなどが話題にのぼり、インターネットの発展に向けた様々な問題が提起されました。

※1 座談会は、2005年5月27日ホテルメトロポリタンエドモントにて行われました。2005年6月17日の理事会にて役員人事が承認され、後藤滋樹が新理事長に就任しました。

[参加者紹介]※50音順

JPNIC会員
(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモプロダクト&サービス本部プラットフォーム部マルチアクセスプラットフォーム開発担当部長◎加賀屋 泰徳氏
(株)エヌ・ティ・ティ ピー・シー コミュニケーションズ取締役 ネットワーク事業部長◎細川 雅由氏
ソニーコミュニケーションネットワーク(株)執行役員 常務◎菊池 正郎氏
(株)パワードコムマーケティング・商品統括本部 インターネット商品企画部長◎山本 浩一氏
ファーストサーバ(株)代表取締役社長◎岡田 良介氏
松下電器産業(株)eネット事業本部CTO兼ネットワークサービスエンジニアリングセンター所長◎吉田 純氏
メディアエクスチェンジ(株)代表取締役社長◎吉村 伸氏
(株)ユーズコミュニケーションズ代表取締役社長◎鈴木 達氏

JPNIC理事・事務局長(2005年5月27日現在)
理事長◎村井 純
副理事長◎野村 純一
理事◎佐野 晋
理事◎前村 昌紀
理事◎丸山 直昌
事務局長◎成田伸一

村井理事長が考えるJPNICの役割・責任・方向性

冒頭で、村井理事長よりJPNICの役割・責任についての話があり、いくつかの問題提起がなされました。

写真:JPNIC村井理事長
JPNIC村井理事長

JPNICの活動の発端は、インターネットの黎明期に遡ります。故ジョン・ポステル氏※2がドメイン名の運用体系を作ろうとした時、データベースやルールは全てが英語で書かれ、その内容もアメリカ以外での運用を考えていないものでした。そうした背景の中、日本のマーケットとインターネットの発展のために、日本におけるインターネットのスムーズなオペレーションが求められていました。そのために私はポステルと相談し、IPアドレスブロックとJPドメイン名の管理を実験としてやっていくことになり、私がそれを任されることになったのです。これは、各国がグローバルなインターネットを支えていくケースの最初のステップであり、日本がそのモデルケースのリーダーシップを取っていたと言えます。自律的にグローバルなリソースをどのように運用していくか、運用していくにあたって日本の責任はどこにあるか等を実験して確認しようとしたきっかけは、すべて英語で書かれたルール等を米国以外で運用したらどうなるかという言語の問題でもあったわけです。

インターネットのオペレーションは、グローバルな展開の中で何度も見直すというフェイズがあります。JPNICは他国との関係の中で技術の発展や運用に関わるとともに、変化していくグローバルなインターネットの仕組みと日本のマーケットを比較しながら特徴をとらえていくということが、組織としての責任感となっていったと思います。また、こうしたJPNICの活動や提言は、JPNIC会員として支えてくださる皆様からいただいたご意見が根拠となっています。こうした根拠があることにより、グローバルなインターネットの未来をデザインしていく方向性に対する我々の提言に説得力が生まれてくるのです。

日本には先頭ランナーとしての課題が数多くあり、それらを解決し、成功例として世界に伝え、世界をリードし、世界に貢献していく役割があります。JPNICはグローバルインターネットの運用に関して、日本での拠点の一部を担っており、日本の産業やマーケット、会員の方々のグローバルな展開、国内での先端性を支えていくメカニズムとして機能していると思っています。問題はそのために何をしていくのかということです。IPレジストリとして、またJPドメイン名の公共性の担保といった継続した業務がある一方、新しいことにどのように関わっていくのかという課題もあります。また国際電気通信連合(ITU)の動向などもJPNICの行く末と関係があるでしょう。こうしたこと全てについて、皆さんのご意見を頂戴したいと思っております。

最近のインターネットに関する議論の主流は、技術的なことから利用や社会性というフェイズに移ろうとしていてます。JPNICでもポリシー・社会的役割に関する議論と技術・運用に関する議論の両方がありますが、どのようなバランスで進めていくべきか、ぜひ皆さんのご意見をお伺いしたいところです。

※2 ジョン・ポステル(Jon Postel) 1943年8月6日- 1998年10月16日
インターネットの創始者の1人。1969年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校在籍中に、米国防総省のプロジェクト(ARPANET)に参加。IPアドレスの管理業務を政府より委託され、IANA(Internet Assigned Numbers Authority)を創設するなど、インターネットの発展に貢献した。
写真:座談会の模様
座談会の模様

次に会員の皆様から、現在のインターネットをめぐる状況について危惧していること、その中でJPNICが果たすべき役割とは何かという点について議論が行われました。ここでは、会員の皆様から出たご意見をまとめました。

インターネットに関する教育

「インターネット」という言葉の意味の広がりにより、インターネットについての正しい理解と説明が十分になされていない現状について、インターネットに関する教育のあり方に議論が及びました。

写真:鈴木達氏、岡田良介氏
左から(株)ユーズコミュニケーションズ 鈴木達氏、 ファーストサーバ(株) 岡田良介氏

・ユーザレベルに応じた教育プランの整備が必要だ

インターネットの普及初期の頃は、インターネット上で公開されているドキュメントのほとんどがJPNIC関係で加工されたものでありJPNICの役割が大きかった。しかし、インターネットへの参加者の範囲が広がってくるにしたがい、各々の関心やテーマを中心に据えて加工し展開した情報でないと理解できないということが多くなってきた。また、そうした情報や技術関連文書が色々なところで出されたり公開されたりするようになったが、それらが必ずしも正しい内容とは言えない状況である。JPNICの役割であるかどうかは疑問ではあるが、参加者が増えてきた中、各々のユーザレベルに応じた教育プランを整えることが必要になってくるのではないか。

・インターネットに関してどのような教育が必要か?

現在、学校教育の中で「情報」という科目があるが、これはコンピュータ、ネットワークを使えるようにという科目で職業訓練教育という側面が強い。しかし、インターネットは既に社会インフラの一部となっており、小学校で郵便局を見学したりするのと同じように、what is an internet? を教える教育が必要になってきている。そういった教育をきちんとやるように文部科学省に提言をしていかないといけない。今やインターネットそのものを教えるカリキュラムの研究が必要となってきているのではないか。

・環境整備が必要な教育現場

高校のインターネットに関する教育現場の話を聞くと、どういうゴールを目指しているいるのか素朴な疑問を感じる。担当教諭が工夫して自分が調べてきた内容を一生懸命教えようとしているようだが、収集したものが必ずしも正確な情報ばかりとは限らないようである。また、どこから情報を収集すべきか困る場合もあるらしい。

左から、(株)パワードコム 山本浩一氏、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ 加賀屋泰徳氏
左から、(株)パワードコム 山本浩一氏、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ 加賀屋泰徳氏

適切な情報提供と提言を

インターネットに関する適切な理解の上に日本の政策を考えていくことの重要性と、そこでJPNICに期待することについて様々なご意見をいただきました。

・日本のマーケットの立場で考える

JPNICがフォーカスしている国際的な問題、いわゆるインターネットガバナンスは、日本のインターネットビジネスに関わっている人々にはメリットが全くわからないことが多く、ますます理解が得にくくなってきている。我々企業としては利益追求の話、企業戦略の話を主にしていくわけだが、JPNICはインターネットにおける日本のコミュニティの代表というポジションにいるのだから、日本のコミュニティのためというようなことを考えてもいいのではないか。中国、韓国、ヨーロッパもIT推進が進められている。脇を甘くしていると日本の先進的なポジションも磐石とは言えなくなるだろう。JPNICはSIPの相互接続でENUMを積極的にやっているが、最終的にどうなるのか関心をもっているところだ。個別の企業グループの考え方と日本全体の考えとが折り合いをつけて前進していけるとよいが。

・政策への提言と問題の整理を期待する

インターネットオークション上の不正行為を防ぐため規制を強化する取り組みが進められているようだ。しかし、インターネットはグローバルなものである。行政が関与して規制したとしても、日本で利用しにくくなったら、国外でやる人が出てくる。結果として日本の産業やIT産業が国内で発展しなくなる。こうしたことからも、インターネットの発展に対し、政府がどのように関与していけるか、適切な提言をしていくことをJPNICに期待したい。

グローバル時代に、インターネットの日本の政策はどうあるべきかという視点で、国会議員向けの政策提言をまとめ、諸外国の状況を整理し、議論する場を作ることが必要である。その中で、インターネットは本質的にオープンな仕組みであることを前提に、国家の枠組みとの折り合いをどうつけていくかの考えについて取りまとめてほしい。

・論点の整理と議論の場の提供

ネイションワイドな連携でJPNICができることがあるのではないか。事業権益から企業としては開示できない問題に対して、JPNICがその問題の論点を整理し、アジェンダを用意し、議論の土台を作っていくことは、今後の日本のマーケットにとって非常に重要なことである。

・JPNIC理事より

最近話題の「放送と通信」に関する議論の中でも、インターネットについて正しく認識されていないケースも見受けられる。「インターネット」という言葉の意味が広がりすぎて本質がわかりにくくなっている感がある。そうした状況の中で、JPNICが果たせる役割は、わかりやすい説明を行っていくことだろう。JPNIC会員がチェックをし、ある程度のコンセンサスを得て、政府に対して問題提起をしていくようなプロセスができるといいのではないか。

写真:菊池正郎氏、細川雅由氏
左から、 ソニーコミュニケーションネットワーク(株) 菊池正郎氏、 (株)エヌ・ティ・ティ ピー・シー コミュニケーションズ 細川雅由氏
写真:吉村伸氏、吉田純氏
左から、メディアエクスチェンジ(株) 吉村伸氏、 松下電器産業(株) 吉田純氏

わかりやすい説明を

物事の本質とメリット・デメリットをきちんと説明することの重要性について、次のような指摘がありました。

・最近のインターネットはメリットが見えにくいことが多いのでは

最近のインターネットは以前に比べて、メリット・デメリットが見えにくいことが多くなりすぎているような気がする。たとえば、新しく開発された技術やソフトについて、そのメリットが十分に説明がされず理解が得られにくいために導入が進まない状況が見受けられる。何事もそのメリットが明確に説明され理解されて初めて受け入れられるものである。そうした観点からみると、インターネットオークションを規制するという取り組みは、消費者保護という観点では、そのメリットが明確であるため、ある特定の人たちにとっては受け入れやすいものとして議論が進められてしまっているのではないか。

JPNICの今後

最後に今後のJPNICへの期待や提言など、ご意見をいただきました。

・会員・参加者の拡大を

会費で運営されているJPNICは、もっと会員を広げていかないとだめだろう。JPNICがより大きな発言力を持つためには、資金的な裏付けが必要と思う。参加者の範囲拡大も考えたほうがよいのではないか。

・大きな改革の中できちんとした提言を

既存のものを壊し新しいものを作っていくというところに大きな改革が生まれる。現在電話業界や通信放送業界などは大きな変革に直面している。こうした大きな変革に直面し、日本の既存企業がどのように行動すべきか考える時に、JPNICがきちんとした提言をできるような団体となって欲しい。また、そうなることで、JPNICの権威も高まるであろう。色々な事業権益があると言えないことが沢山ある。しかし、正しい話ができる場は必要であり、JPNICがそういう場であって欲しいと願っている。

・JPNIC理事より

今回の座談会で会員の皆様から提起されたインターネットが抱える幅広い問題について、コストとリソースの手当てを検討しつつ、何をどのくらいやるかというバランスを考えて取り組んでいきたい。また、こうしたJPNICの取り組みは、会員の皆さまのご支援とご協力があってこそ、成功へとつながるので、引続きのご支援とご協力宜しくお願いしたい。

現在のインターネットが抱えている課題が色々な角度から提起され、課題の多さとその問題の本質の奥深さを考えさせられる座談会となりました。こうした議論の末に、インターネットの未来が見えてくるのかもしれません。

会員企業紹介
会社名:株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
所在地:東京都千代田区永田町2-11-1 山王パークタワー
設立:1992年7月1日
資本金:9,496億7,950万円(2004年3月31日現在)
URL:http://www.nttdocomo.co.jp/
会社名:株式会社エヌ・ティ・ティ ピー・シー コミュニケーションズ
所在地:東京都港区新橋6-1-11 ダヴィンチ御成門ビル
設立:1985年9月4日
資本金:40億円
URL:http://www.nttpc.co.jp/
会社名:ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社
所在地:東京都品川区北品川4-7-35
設立:1995年11月1日
資本金:52億46百万円(2005年3月末現在)
URL:http://www.so-net.ne.jp/
会社名:株式会社パワードコム
所在地:東京都港区港南2-16-1
設立:1986年3月7日
資本金:450億1,000万円(2004年10月1日現在)
URL:http://www.poweredcom.net/
会社名:ファーストサーバ株式会社
所在地:大阪市中央区安土町1-8-15 野村不動産大阪ビル3F
営業開始日:2000年6月1日
資本金:3億6357万円
URL:http://www.fsv.jp/
会社名: 松下電器産業株式会社
所在地:大阪府門真市大字門真1006
設立:1935年12月
資本金:2,587億4,000万円(2004年3月31日現在)
URL:http://panasonic.co.jp/
会社名:メディアエクスチェンジ株式会社
所在地:東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60 10階
設立:1997年5月26日
資本金:16億4,150万円
URL:http://www.mex.ad.jp/
会社名:株式会社ユーズコミュニケーションズ
所在地:東京都渋谷区神泉町9-1 神泉プレイス
設立:2000年7月6日
資本金:239億8千万円
URL:http://www.fttx.co.jp/

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