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ニュースレターNo.46/2010年11月発行

.xxxの復活?〜ICANNのガバナンスメカニズムの実例〜

2003年に申請がなされたgTLDである、.xxx(ドットトリプルエックス)の話題を本稿で取り上げる理由は、ICANNによる.xxxの申請却下決定に対して申請者から異議が申し立てられ、独立審査プロセスに付された結果、2010年2月にICANNの決定を覆す裁定が下されたためです。これはICANNのガバナンスを考える上で、非常に大きな意味があります。本稿は第27回・28回ICANN報告会でのJPNICの前村昌紀による報告※1をベースとしています。

.xxxとは何か?

.xxxとは、2003年の新gTLD追加第2ラウンドで応募されたgTLDで、オンラインアダルトエンターテイメント業界向けとして申請された、スポンサ付きgTLD(sTLD)※2です。応募した事業者は、ICM Registry,LLC(以下ICM)という、.xxxのレジストリを目指して設立された組織です。アダルトと明示するTLDということから、物議を醸しました。

申請から申請却下までの経緯

ICANN理事会は、2005年6月1日に一旦.xxxの応募事業者であるICMと契約交渉開始を決議したものの、紆余曲折の後、2007年3月に申請を却下しました。この過程で、却下理由として挙げられたものは下記の通りです。

独立審査パネルの判断

ICANNでは、理事会ガバナンス委員会、第三者による独立審査、オンブズマンの三つが、決定に対する異議申し立て機関として用意されています。今回ICMは、応募却下を不服とし、第三者による独立審査を用いた異議申し立てを、2008年6月に行いました。これを受けて3名のパネリストによる独立審査パネルの審査プロセスが始まり、2010年2月19日に応募却下は不当であるとした審査結果の告知書※3が発行されました。

独立審査勧告に至る背景

ICANN理事会がICMとの契約交渉開始を決議した後、GAC、米国政府、(パブリックコメントを通じて)一般市民などから、アダルトコンテンツ用TLDの是非という観点から、懸念が相次いで出されました。ICANN理事会は、これらの懸念を大きくとらえる立場と、技術的任務とプロセスを重んじる立場に分かれる中、決議で常に票が割れる状況でした。

独立審査結果の告知書中には、.xxxに関するICANN理事会決議およびその背景となる事実が、新たに判明したものを含め詳細に列挙されています。その中には、情報公開法により入手した情報を元に、有力者による圧力や米国商務省の本件に関する立場の変節があったことが示されています。

本件の審査においては、2005年6月1日のICANN理事会による契約交渉開始の決議が、募集要項記載の要件を満たしているか否かが、争点の一つでしたが、「契約・技術的交渉は、sTLD選定過程の完了を持って着手する」という、2003年10月31日カルタゴ会議における理事会決議※4を引用して、「募集要項記載の要件を満たした決議である」と独立審査パネルは判断しました。

独立審査プロセス後の動き

ICMによる申請取り扱いの進め方に関して、ICANNが取り得る選択肢を示した文書への意見募集※5が、2010年3月26日から5月10日まで行われました。この意見募集には約1万3千もの意見が寄せられましたが、大半は.xxxの運用開始に反対を表明するものでした。

その後、ICANN理事会は、ICANNブリュッセル会議会期中の2010年6月25日に、独立審査パネルの事実認定を受け入れるとともに、その時点までのGAC勧告:

ICMが約束した公益への配慮は、現契約書案では盛り込まれていない
ウェリントンコミュニケの確認および、スポンサー要件充足に関して未回答ということと、提案されている契約案では、ICANNの技術任務を超えてコンテンツ監視を担う方向に向かう恐れがあり好ましくない

を考慮しつつ、定款を遵守して契約承認に向けたプロセスを進める旨の決議を行いました。※6
そして、8月24日には.xxx契約書案がICANNより公開※7され、9月23日まで意見募集がなされました。

今後の動向

ICANNは、理事会決議時点までのGAC勧告を勘案するとして、新たな勧告を受け入れないことを明言し、なおかつ意見募集も終了していることから、今後の承認プロセスには、コミュニティの意見が入る余地がありません。

しかし、.xxxが実際に承認されるとなると、2005〜2007年と同じく反対意見の大合唱となることは確実で、各国の公共政策担当官にとっては頭の痛い問題となるであろうことは容易に想像できます。

今後の理事会と事務局による検討で、.xxxの承認が不適切であるという材料が出てくるのか、あるいは、それが見つからず承認をもってプロセスを終了するのか、また、承認された場合に、各国の公共政策とのギャップがどのように埋められるのかと、本件はまだまだ目を離せません。

(JPNIC インターネット推進部 山崎信)


※1 JPNIC News & Views vol.745、vol.771
/ja/mailmagazine/backnumber/2010/vol745.html
/ja/mailmagazine/backnumber/2010/vol771.html
※2 スポンサ付きgTLD
通常のgTLDとは違い、特定の業界・分野を代表する「スポンサ組織」がポリシーを定め、そのポリシーに従って、スポンサ組織とは別組織のレジストリが登録管理業務を行い、そのコミュニティにドメイン名を提供することを目的としたgTLDです。
※3 ICDR Case No. 50 117 T00224 08
http://www.icann.org/en/irp/icm-v-icann/irp-panel-declaration-19feb10-en.pdf
※4 ICANN Board Resolutions in Carthage, Tunisia 31 October 2003
http://www.icann.org/en/announcements/advisory-31oct03.htm
※5 Public Comment: Report of Possible Process Options for Further Consideration of the ICM Application for the .XXX sTLD 26 March 2010
http://www.icann.org/en/announcements/announcement-2-26mar10-en.htm
※6 Board Meeting-Agenda 25 June 2010
http://www.icann.org/en/minutes/resolutions-25jun10-en.htm#5
※7 .xxxレジストリ契約書案公開についてのアナウンス
http://www.icann.org/en/announcements/announcement-24aug10-en.htm


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