事件番号:JP2001-0007

                                            裁 定

申立人:
氏名(名称)    サンキスト・パシフィック株式会社
住所            〒102-0083
                        東京都千代田区麹町3-5-1
                        全協連ビル麹町館4階
代理人:
                弁護士  吉武 賢次
                弁理士  菊池 栄
                弁理士  塩谷 信
                弁理士  上原 空也

登録者:
氏名(名称)    株式会社三上商事
住所            〒155-0032
                        東京都世田谷区代沢4-43-11

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン名
紛争処理のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理方針の
ための手続規則の補則及び条理に則り、申立書・答弁書・提出された証拠に基づいて審理
を遂げた結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定主文
        ドメイン名「sunkist.co.jp」の登録を申立人に移転せよ。

2 ドメイン名
        紛争に係るドメイン名は「sunkist.co.jp」である。

3 手続の経緯
        別紙のとおりである。

4 当事者の主張
a 申立人の主張
 (1)申立人
     申立人は、1893年にアメリカ合衆国カリフォルニア州において設立された農業協同
    組合「サンキスト・グロワーズ・インコーポレーテッド(以下「サンキスト社」という。)」によ
    る100パーセント出資の日本支社であり、サンキスト社の製品を日本において販売・管
    理する窓口として1963年に設立された株式会社である(甲第1号証、甲第2号証)。
 (2)申立人の商標登録状況・使用状況
     サンキスト社は、国内において「SUNKIST」および「サンキスト」の商標名で、84件の
    商標登録を受けている(甲第4号証)。これらの商標の使用状況は、主に柑橘類等卸売
    業としてオレンジ・レモン・グレープフルーツなどを中心に全国の小売業者に販売してい
    る他、株式会社ミツカンや森永乳業株式会社に対して清涼飲料、果実飲料、氷菓およ
    びゼリーについて商標のライセンスを許諾し、ライセンシーたる森永乳業などは
    「sunkist」の商標の下、国内において全35品目の商品を現在販売している(甲第5・6
    号証)。なお、申立人による柑橘類の販売額は、1999年11月1日から2000年10月
    31日までにおいて約110億円(甲第7号証)、森永乳業によるサンキスト商標を付した
    商品の販売額は1999年度において160億9328万7000円にも達している(甲第8号
    証)。さらに、テレビコマーシャルなどを始めとする宣伝広告活動を積極的に行っており、
    サンキスト社によるわが国における宣伝広告費は2億6千万円(1999年度)(甲第9号
    証)、森永乳業によるサンキスト商標を付した商品の宣伝広告費は、2億8千万円
    (1999年度)にも上る(甲第10号証)。このような盛大な営業努力の結果、サンキスト社
    の商標「Sunkist(登録第290827号)」、「SUNKIST(登録第849282号)」、「Sunkistおよ
    び図形(登録第1397222号)」、「Sunkistおよび図形(登録第1397223号)」および
    「Sunkistおよび図形(登録第1410675号)」は特許庁電子図書館において「日本国周知
    ・著名商標」として掲載されている事実を見ても明かのように(甲第11号証)、柑橘類や
    清涼飲料水のブランドとしてわが国一般国民の日常生活に永年広く浸透しかつ親しま
    れており、老若男女の別を問わず、およそ「sunkist(サンキスト)」の商標を知らぬ者はな
    いといっても過言ではないほどの著名性を得ているものである。
 (3)登録者
     登録者は、ドメイン名「sunkist.co.jp」(以下「本件ドメイン名」という。)をJPNICに登録し
    ており、2000年2月8日以降現在(2000年3月25日現在)に至るまで、URL
    「http://www.sunkist.co.jp <http://www.sunkist.co.jp/> 」において「E-FRESH」と題する
    ホームページを開設している(甲第3号証)。
 (4)本件ドメイン名とサンキスト社の登録商標「sunkist」との類似混同
     本件ドメイン名は「sunkist.co.jp」であるところ、「co.jp」は当該ドメインがJPNIC管理の
    ものでかつ登録者が会社であることを示すにすぎず、多くのドメイン名に共通のものであ
    る。したがって、「co.jp」は商品又は役務の出所を表示する機能はなく要部とはいえず、
    本件ドメイン名とサンキスト社の商標が同一又は類似であるかどうかの判断は、要部で
    ある第三レベルドメインである「sunkist」を対象として行うべきである。それ故、サンキスト
    社の「sunkist」商標と本件ドメイン名は、類似であることは明白な事実であると考えられ
    る。
     しかも、本件の場合のようにドメイン名に使用されている商標が著名なものであれば
    尚更混同の可能性は高くなり、しかも登録者は当該ホームページ上において「sunkist」
    のラベルを貼ったオレンジを販売してさえいるのである(甲第3号証)。
     したがって、本件ドメイン名「sunkist.co.jp」は、申立人の著名な登録商標「sunkist」と類
    似し、混同を引き起こすおそれがあることは明らかである。
 (5)登録者の権利・正当な利益の欠如
     登録者はサンキスト社および申立人とは一切の資本関係、取引関係、業務提携関係
    等に立たず、申立人が登録者に対して、前記商標の使用を許諾した事実もない。また、
    申立人以外に、わが国において、「sunkist(サンキスト)」の名称で一般に認識されてい
    る者はいないと認められる。登録者の会社名は株式会社三上商事であり、ドメイン名
    「sunkist.co.jp」とは何の関連性も有していない。ドメイン名に用いられる文字列は自己
    の営業表示を用いるのが一般的であることからすれば、登録者たる三上商事は、例え
    ば「mikami.co.jp」なるドメイン名を採択使用すべきであると考えられる。以上の事実だ
    けをとっても、登録者がドメイン名について権利または正当の利益を有していないことは
    明らかである。
 (6)本件ドメイン名の不正の目的による登録・使用
  1)  上記のように登録者は、サンキスト社および申立人と一切の資本関係、取引関係等
    に立たず、かつ商標の使用を許諾された事実もないし、本来その商号の要部「三上商
    事」から例えば「mikami.co.jp」なるドメイン名を採択使用すべきである。にもかかわら
    ず、登録者は2000年2月8日以降現在に至るまでURL「http://sunkist.co.jp/」の下
    「E-Fruits」と題するホームページを開設し、「Sunkist」商標を付した柑橘類を通信販売し
    てきた(甲第3号証)。これらの登録者の一連の行為はサンキスト社・申立人の永年の
    営業努力により築き上げた業務上の信用・顧客吸引力にただ乗りし、不正に利益を得
    ることを意図したものであることは明らかであり、まさしく不法行為に該当するものと考え
    られる。
     なお、ホームページ上でサンキストの商標を付した商品を販売するのとは別に、登録
    者は「Sunkist」商標を付した柑橘類をインターネットオークションにおいて出品する等の
    行為を繰り返してきたものである(甲第12号証)。
  2) そこで、申立人は、本裁定の請求に先立ち、円満なる解決を図るべく本来は無償であ
    るべきところ30万円の対価による本件ドメイン名の移転を申し出たものである(甲第13
    号証)。しかしながら登録者は、「売上げ保証」なる概念を持ち出し、当該ドメイン名移転
    の対価として1,000万円もの支払いを要求してきた(甲第14号証)。本件ドメイン名は属
    性型ドメイン名であり、その取得に必要な費用は高々数万円程度である。これに比して
    登録者の要求額は著しく乖離した法外なものであり、登録者が本件ドメイン名を取得し
    た目的には、先に述べた業務上の信用・顧客吸引力に対するただ乗りに加え、転売目
    的も存在したことが容易に推認されるものである。甲第14号証回答書において登録者
    は「最近では一ヶ月に150万円以上の売り上げがあり、さらにこれからもその延びが期
    待されています。」と自らのEコマースにおける成功を述べているが、そもそも登録者が
    かかる成功を収め順調に利益を上げているのは、サンキスト社・申立人の莫大な費用
    を投じた永年の営業努力により築き上げた業務上の信用・顧客吸引力によるものであ
    ると考えられる。
  3) 以上より、登録者が不正の目的で本件ドメイン名を登録または使用していることは明ら
    かである。
 (7)その他
     申立人は登録者の本件ドメイン名が障害となり、本来サンキスト社の著名な商号商標
    である「sunkist」をドメイン名として採択・登録したかったのであるが、不本意にも
    「skst.co.jp」なるドメイン名の取得を余儀なくされたものである。
     したがって、申立人は本件ドメイン名の移転を請求するものである。

b 登録者の主張
 (1)本件ドメイン名と申立人の表示との混同
     登録者は申立人の言う通り該当するホームページにおいてsunkistの商標が入ったオ
    レンジを販売している。
     しかし、そこで販売しているサンキストオレンジは、当社が自らの名義で米国から輸入
    通関した商品であり、本物のサンキストオレンジをネット上でサンキストオレンジと、うた
    って販売しているものであって、何ら違法性は無いものと思われる。他社ブランドのオレ
    ンジを、サンキストオレンジと偽ってホームページで販売した事実はない。
     登録者は、自ら輸入通関したサンキストオレンジを、そのブランド名で販売する権利を
    有するものである。
     登録者が最近輸入通関したサンキストオレンジの明細は以下の通りであり、その一部
    をネット上で販売している。

    申告年月日 申告番号  本船名       ブランド   貨物重量
    2001,02,21 11141657541 OCL Hong Kong ゼネシス  22,118kg
    2001,03,16 11148479630 NYK Vega    マハラ   19,350kg
    2001,04,03 11153515321 OCL Hong Kong リンカーン  23,511kg
    2001,04,12 11157056141 Ludwigshafen  ルースター  19,046kg

    上記のゼネシス、マハラ、リンカーン、ルースターは全てサンキストブランドである。

    なお今後は、申立人が販売してるという誤解を招かぬよう、その旨のメッセージをホーム
    ページ上に載せ、閲覧者に告知する用意はある。

 (2)ドメイン名についての権利または正当な利益
     申立人のホームページでは、自らの名義で輸入通関したサンキストオレンジの販売比
    率が他ブランドよりも高い。それ故、販売比率が高いブランド名をドメインに使おうと思
    い、昨年2月これを取得したのである。
     申立人は申立書のなかで、登録者に対して商標の使用を許諾した事実はないと言っ
    ているが、(株)ミツカン、森永乳業(株)などの食品メーカーが自社工場でライセンス生産
    を行う時には必要であっても、すでにアメリカで製品になったサンキストオレンジを輸入
    通関し、それをネット販売するにあたっては、この種の許諾は必要ないと思われる。
     なおホームページ上に掲載されているフルーツ、カートンボックス、ロゴマークなどのイ
    メージ写真は、当社が輸入通関したしたサンキストオレンジならびにカートンボックスを
    写したものである。
     またイメージ写真、販売商品の中には申立人から購入したり、また無償で譲り受けた
    販売促進グッズも含まれている。また口答ではあるが、担当者にはそれらの販売促進
    グッズをネット上でサンキストオレンジを販売する目的で使用する旨を伝えてある。
     それらのイメージ写真はサンキストオレンジのイメージアップならびに販売促進を目的
    としてネット上で使っているものであり、申立人の言う不正に利益を得る目的、または不
    法行為であると言う指摘は全くあてはまらない。

 (3)ドメイン名の登録・使用と「不正の目的」
     登録者は自社の名義で輸入通関したサンキストオレンジを、積極的に販売する目的
    の為にドメインを取得したのであって、決して不正使用をする目的では取得しているもの
    ではない。
     また申立人は転売目的であると言っているが、当社は申立人からの転売の申し出を
    以下の理由で断わっている。
    1)取得してから一年以上もたち、ネット販売も順調に推移している。
    2)気にいったco.jpドメインが残っていない可能性がある。
     しかし申立人代理人からの度重なるファックスで、強引にもその金額を当社に一方的
    に提示してきており、お断わりの意味を込めてカウンター価格を提示した。
     米系企業ならではの強引な態度ならびに回答を指定してまで当社にその価格を提示
    させたのは、今考えると今回の紛争処理を念頭にいれ、申立人に事を有利にすすめる
    為の専門家による罠であったことも、容易に推察される。

5 争点及び事実認定
     規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則に
    ついてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述及び文書の結果に基
    づき、方針、規則、及び適用されうる関係法規の規定、原則ならびに条理に従って、裁
    定を下さなければならない。」
     処理方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図
    している。
    (i)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表
    と同一または混同を引き起こすほど類似していること
    (ii)登録者が、ドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有していないこと
    (iii)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること

a 登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同
一または混同を引き起こすほど類似しているかどうか。
a-1.申立人は表示「SUNKIST」又は「Sunkist」の使用についての権利または正当な利
益を有するかどうか。
 (1) 証拠によれば、以下の事実が認められる。
  1) 申立人は、アメリカ合衆国カリフォルニア州において設立された農業協同組合「サンキ
   スト・グロワーズ・インコーポレーテッド(以下「サンキスト社」という。)」による100パーセ
   ント出資の日本法人であり、日本においてサンキスト社の商標管理並びにサンキスト社
   との連絡業務を行う窓口として1963年に設立された株式会社であると認められる(甲
   第1号証、甲第2号証)。
  2) 申立人は、主として商標管理、商標ライセンスに係る商品の品質検査などを行なう者
   と認められる。なお、申立人は自ら柑橘類を販売しているとの主張を行なっている(申立
   書4.(2))。ところで、甲第2号証によれば、申立人の目的からサンキスト社取扱いの
   生鮮柑橘類の販売が除かれており、販売高を示す甲第7号証においても「BY SUNKI
   ST GROWERS,INC」と記載されている。そうすると、申立人が、自ら商標
   「SUNKIST」又は「サンキスト」を使用してオレンジなどを販売する者であるとは認め難
   い。尤も、登録者が提出する資料2(申立人から請求書)によれば、申立人が登録者に
   オレンジを販売した事実が認められるところではあるが、わが国におけるサンキスト社の
   柑橘類の販売が主として申立人によって行われると認めるべき証拠はない。
  3) サンキスト社は、国内において「SUNKIST」および「サンキスト」の商標名で、多数の商
   標登録を受けており(甲第4号証)、これらの商標は、主に柑橘類について使用されてい
   るものと認められる。
  4) サンキスト社は、株式会社ミツカンや森永乳業株式会社に対して清涼飲料、果実飲
   料、氷菓およびゼリーについて商標のライセンスを許諾し、ライセンシーたる森永乳業な
   どは「sunkist」の商標の下、国内において多数の商品を現在販売しているものと認めら
   れ(甲第5・6号証)、また係るライセンス商品の品質管理は申立人が行なっているもの
   と認められる(甲第2号証)。
    なお、サンキスト社と株式会社ミツカン及び森永乳業株式会社との間にライセンス契
   約が存する事実を裏付ける証拠は提出されていないが、係る関係を登録者は争ってお
   らず、また株式会社ミツカン及び森永乳業株式会社が商標「sunkist」又は「サンキス
   ト」を使用する商品はサンキスト社の登録商標の指定商品に含まれていながら、平穏理
   に使用されていると認められることから、上記のように推認することができる。
  5) サンキスト社による柑橘類の販売額は、1999年11月1日から2000年10月31日ま
   でにおいて約110億円(甲第7号証)、森永乳業によるサンキスト商標を付した商品の
   販売額は1999年度において160億9328万7000円と認められること(甲第8号証)、テ
   レビコマーシャルなどを始めとするサンキスト社のわが国における宣伝広告費は2億6
   千万円(1999年度)(甲第9号証)、森永乳業によるサンキスト商標を付した商品の宣伝
   広告費は、2億8千万円(1999年度)と認められること(甲第10号証)、そして、サンキス
   ト社の商標「Sunkist(登録第290827号)」、「SUNKIST(登録第849282号)」、「Sunkist
   および図形(登録第1397222号)」、「Sunkistおよび図形(登録第1397223号)」および
   「Sunkistおよび図形(登録第1410675号)」は特許庁電子図書館において「日本国周知
   ・著名商標」として掲載されていること(甲第11号証)が認められる。
   これらの事実を総合すると、商標「SUNKIST」「Sunkist」は柑橘類を中心としたサンキス
   ト社の商品を表示するものとして、需要者の間で広く知られていたものと認められる。

 (2)申立人の地位
     以上認定した事実1)2)4)によれば、申立人はサンキスト社の指揮監督のもとに、サン
    キスト社の商標管理並びにサンキスト社との連絡業務を行う者であり、申立人とサンキ
    スト社とはきわめて緊密な関係にあり、いわば申立人はサンキスト社の一部門として位
    置づけられるものと認められる。
     また、当センターからの照会に対する申立人の回答(2001年5月30日付けで提出さ
    れたもの)によれば、外国法人がjpドメインを取得するためにはわが国において外国法
    人として登記されていることが要求されているところ、サンキスト社はかかる要件を満た
    さないために、日本法人である申立人はサンキスト社から「sunkist」の文字列を含むjp
    ドメインを取得する権限を付与されていたと認めることができる。
     したがって、申立人はわが国において表示「SUNKIST」を使用することについて権利
    又は正当な利益を有する者と認められる。
     なお、上記認定事実2)4)そして前記回答書によれば、「SUNKIST」「Sunkist」の商
    標権はサンキスト社に帰属するものであり、かつ「SUNKIST」「Sunkist」商標の本源
    的所有者はサンキスト社であると認められるが、申立人とサンキスト社とは「SUNKIS
    T」「Sunkist」商標を用いる事業体として極めて緊密な関係にあると認められる以上、
    申立人が商標権を保有していないことは、申立人の権利又は正当な利益を否定する理
    由とはならない。

 (3)同一又は混同を引き起こすほどの類似性があるか
     申立人の表示は「Sunkist」及び「SUNKIST」であり、登録者のドメイン名は「sunkis
    t.co.jp」である。
     そこで,本件ドメイン名「sunkist.co.jp」と上記表示「Sunkist」「SUNKIST」とを比
    較すると、本件ドメイン名から第2ドメイン以下の「co.jp」を除いた登録者を示す第3ドメ
    インである「sunkist」は、上記各表示を全て小文字で表したにすぎないものである。
     そして、本件ドメイン名中「co.jp」は,当該ドメインがJPNIC管理のもので、かつ登録
    者が会社であることを示しているにすぎず多くのドメイン名に共通する要素であるから、
    登録者のドメイン名において主たる識別力を有するのは「sunkist」の部分であると認め
    られる。そして、大文字表記と小文字表記とは適宜使用されているところであり、係る差
    異もまた識別力を有するものとは認められない。したがって、本件ドメイン名と申立人の
    表示とは共に共通する文字列を要部とし、その称呼を共通にするものであり、全体とし
    て類似するものである。

 (4)処理方針4条a(i)該当性
     以上(1)の認定事実に基づき(2)(3)に認定したところにより、登録者のドメイン名
    が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き
    起こすほど類似しており、処理方針4条a(i)の要件に該当するものと認める。

b 登録者が、ドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有するかどうか
 (1)証拠によれば、以下の事実が認められる。
  1)登録者は本件ドメイン名によりアクセスされるホームページ「E-FLESH」(以下「ホーム
   ページ」という。)を開設している(甲第3号証、答弁書)。
  2)登録者は、ホームページにおいて、sunkistの商標が入ったオレンジその他の果実を販
   売している(甲第3号証、答弁書)。
  3)登録者がホームページで販売しているサンキストオレンジは、登録者が自らの名義で米
   国から輸入通関した商品であると認められる(登録者提出の通関資料)。

 (2) 以上認定した事実1)2)3)によれば、登録者はサンキストオレンジなどサンキスト社の
    商品を輸入し、販売するに過ぎない者であり、「SUNKIST」「Sunkist」商標の使用に
    関してサンキスト社と何らかの契約関係にある者と認めることはできない。そして、サン
    キスト社又は申立人が登録者に商標の使用を許諾した事実も認められない。
     また、登録者の名称は三上商事株式会社であり、開設するホームページの名称は「E
    -FLESH」であって、いずれも「SUNKIST」とは全く関係のない名称である。
     したがって、登録者がドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有するもの
    であるとは認められない。なお、後述するように、登録者がサンキスト社製品を取り扱っ
    ていることは前記認定に影響を与えるものではない。
     よって、処理方針4条a(ii)の要件に該当するものと認める。

c 登録者のドメイン名が不正な目的で登録又は使用されているか
 (1) 証拠により以下の事実が認められる。
  1)申立人に正当な利益が認められる表示「SUNKIST」「Sunkist」は申立人及びサンキ
   スト社が取り扱う果実の商標として需要者の間に広く知られたものである(a、(1)5))。
  2)登録者が本件ドメイン名でアクセスされるホームページで販売する商品は果実であり、
   その中にはサンキスト社製のものとそれ以外のものが含まれる(甲第3、12号証)。
  3)本件ドメイン名の移転交渉の経緯は以下のとおりと認められる(平成13年5月22日付
   けで申立人から提出された資料)。
  平成13年1月12日 サンキスト社代理人から登録者への移転の申し出
  平成13年1月13日  登録者「違法性はない」「困惑している」旨の回答
   平成13年2月1日  サンキスト社代理人、対価3000米ドル提示
   平成13年2月2日  登録者「簡単にまた安価にはお譲りできない」との回答
  平成13年2月5日  サンキスト社代理人、登録者に対価の提示を求める。
  平成13年2月6日  登録者、売上保証900万円を含み、対価1000万円を提示。
 (2) 登録者は、本件ドメイン名の選択の理由として「当社のホームページでは、自らの名
    義で輸入通関したサンキストオレンジの販売比率が他ブランドより高い。それ故、販売
    比率が高いブランド名をドメインに使おうと思い、昨年2月にこれを取得した。」と主張す
    る。
     しかしながら、ホームページ開設時には当該ホームページで販売される何れの商品の
    比率が高いかは不明なはずであり、上記登録者の主張するドメイン名選択の理由は俄
    かに信用することができない。
     他方、ドメイン名については以下の事実が認められる。
     本来ドメイン名は登録者の名称やその有する商標等,登録者と結びつく何らかの意
    味のある文字列であることは予定されていないが,登録者の名称,社名,その有する商
    標等をドメイン名として登録することが通常行われていることに照らせば,利用者として
    はドメイン名が必ずしも登録者の名称等を示しているとは限らないことを認識しつつも,
    ドメイン名が特定の固有名詞と同一の文字列である場合などには,当該固有名詞の主
    体がドメイン名の登録者であると考えるのが通常と認められる。
     ホームページの閲覧者は、閲覧しようとするホームページのドメイン名が分からない場
    合、ホームページ開設者の名称や商標などを第三ドメインとしてドメイン名を指定した
    り、検索エンジンを利用して閲覧しようとするホームページの開設者の名称や商標をキ
    ーワードとしてウエブサイトを検索する手法がとられることは周知の事実である。
     そして、前者の手法により申立人又はサンキスト社のホームページにアクセスしようと
    する者は、本件ドメイン名である「sunkist.co.jp」と入力することは想像に難くなく、そ
    の結果登録者のホームページにアクセスすることとなる。また後者の手法による場合は
    「サンキスト」をキーワードとすることが予想され、その結果周知な商標「SUNKIST」と
    綴りが一致した第三ドメインを有する登録者のサイトを発見すると、これを申立人又は
    サンキスト社の正規のホームページと誤認してアクセスする者が少なくないものと認めら
    れる。
     かかる事実が認められる以上、登録者が果実を販売するホームページのドメイン名と
    して本件ドメイン名を採択・登録し、使用する行為は、申立人らが使用する表示「SUNK
    IST」「Sunkist」のもつ著名性及び高い顧客吸引力を利用して需要者を自己のホーム
    ページに誘導し、登録者がホームページで販売する果実が、サンキスト商品以外の商
    品を含めて、あたかも申立人又はサンキスト社の直販商品であるかのごとく需要者を誤
    認させて顧客を獲得し、売上を増大することを意図したものというべきものである。
     特に、果実は鮮度が要求される商品であり、本件ドメイン名の使用によってホームペ
    ージの閲覧者にその取扱い商品が申立人又はサンキスト社の直販に係るものであると
    誤認させることにより、需要者に鮮度についての期待を与えることが可能であると認め
    られることは重視されなければならない。
     以上から、登録者は本件ドメイン名を不正な目的で使用するために登録を受け、現に
    その使用を行なっているものということができる。そして、登録者は自ら使用するために
    本件ドメイン名を取得したものと認められる以上、登録者は転売の申し出を断わるのは
    極当然のことであり、転売の申し出を断った事実は上記認定を左右するものではない。

 (3)並行輸入品の販売との関係
     登録者は、登録者がホームページにおいて、サンキストオレンジなどサンキスト社の商
    品を販売していることをもって、本件ドメイン名の登録及び使用について不正の目的が
    ないと主張するものであると認められるので(登録者の主張(2)(3))、この点につき検
    討する。
     いわゆる真正商品の並行輸入は原則として商標権侵害あるいは不正競争防止法上
    の不正競争行為を構成しないものとされている。したがって、「本物のサンキストオレン
    ジをネット上でサンキストオレンジと、うたって販売しても、何ら違法性は無いものと思わ
    れる。」という登録者の主張はこの限りでは妥当性があるものと一応認められる(なお、
    鮮度が重視される果実という商品の特質から、商品の品質の同一性については疑問な
    しとしない)。
     ところで、真正商品の並行輸入や販売等の行為が違法性を欠くものとされているの
    は、品質の同一性が確保されている以上、これを他者が販売しても商標権保有者など
    の業務上の信用を害することも、また、需要者の利益の保護を害することもなく、商標
    法が右目的達成のために保護している商標の出所識別及び品質保証の各機能を害す
    ることはないと認められることを理由とするものである。
     かかる理由は、他人の商標が使用された商品の、商標権者等以外(第三者)による輸
    入・販売・宣伝広告などを許容する理由とはなりえても、第三者が当該商標等を自己の
    表示として積極的に使用することまでを許容する根拠とはなり得ないものと認められる。
    すなわち、他人の商標が付された並行輸入品の販売が許容されるとしても、並行輸入
    品の販売者が自己の店舗等の名称として並行輸入品の商標を使用することまでも許容
    するものではないというべきである。
     これを本件に当てはめると、登録者が「SUNKIST」「Sunkist」商標が表示されたサ
    ンキスト社商品を販売することは、商品の品質の同一性を条件として許容されるとして
    も、「SUNKIST」「Sunkist」又はこれに類似した表示を用いて自己のホームページに
    顧客を誘導する行為は許容されないというべきである。
     したがって、並行輸入品の販売を理由とする上記登録者の主張には理由が無いもの
    といわなければならない。

 (4)処理方針4条a(iii)の要件該当性
     以上認定した事実を総合すると、登録者のドメイン名は不正な目的で登録され、使用
    されているものというべきである。
     よって、処理方針4条a(iii)の要件に該当するものと認める。

6 結論
     以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン名「sunkis
    t.co.jp」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者は、ドメイン名につ
    いて権利又は正当な利益を有しておらず、登録者のドメイン名が不正の目的で登録さ
    れ且つ使用されているものと裁定する。
     よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「sunkist.co.jp」の登録を申立人に移転す
    るものとし,主文のとおり裁定する。

    2001年6月4日

   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
                            峯 唯夫
              単独パネリスト


別記 手続の経緯

(1)申立受領日
    2001年3月30日(電子メール)
    2001年4月3日(郵送)
(2)料金受領日
    2001年3月30日 金189,000円入金
(3)ドメイン名及び登録者の確認日
    2001年3月30日 センターの照会日(電子メール)
    2001年3月30日 JPNICの確認日(電子メール)
確認内容
    1) 申立書に記載の登録者はドメイン名の登録者であること
    2) 登録担当者は増淵修司であること
(4)適式性
     センターは、2001年4月6日、申立書がJPNICの処理方針、規則、補則の形式要
    件を充足することを確認した。
(5)手続開始日    2001年4月6日
   手続開始日の通知 2001年4月6日
            JPNICへ(電子メール)
            申立人代理人へ(電子メール及び郵送)
(6)登録者・登録担当者への通知日及び内容
   1) 2001年4月6日 申立書一式及び申立通知書送付(電子メール、郵送及びFAX)
   2) 答弁書提出期限(2001年5月9日)を通知
   3) 2001年4月7日 登録者が申立書受領
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
   1) 提出有
   2) 2001年5月9日(電子メール及び窓口)
(8)答弁書の申立人代理人への送付日
    2001年5月10日(電子メール及び郵送)
(9)パネリストの選任
    申立人は1名のパネリストによる審理・裁定を要求
    登録者において、3名のパネリストによる審理・裁定を要求していないことから、センタ
    ーは、2001年5月16日、次のとおり、パネリスト1名を指名し、パネリストは同日、これ
    を受諾した。
     パネリスト    峯 唯夫
     中立宣言書受領日  2001年5月18日
(10)紛争処理パネルの指名及び予定裁定日の通知日
   1) 裁定予定日 2001年6月5日
   2) 裁定予定日の通知 2001年5月16日(JPNIC及び両当事者へ)
      JPNIC(電子メール)
      両当事者 (電子メール、郵送及びFAX)
(11)パネリスト指名書及び一件書類受け渡し
    2001年5月16日(電子メール及び郵送)
(12)パネルによる審理・裁定
    2001年5月18日 両当事者へ陳述・書類の追加提出要請書(5月25日期限)を送
                              付(電子メール、郵送及びFAX)
    2001年5月22日 申立人代理人からの回答文書受領(FAX)
    2001年5月23日 申立人代理人からの回答文書受領(郵送)
               登録者より、要請書類は既に破棄しているため、提出できない旨
               連絡有り
    2001年5月28日 両当事者に対し、2回目の陳述・書類の追加提出要請書(5月3
               0日期限)を送付(電子メール、郵送及びFAX)
               但し、追加提出要請は申立人に対してのみ
    2001年5月30日 申立人代理人からの回答文書受領(郵送及びFAX)
    2001年6月1日  パネルによる裁定