事件番号:JP2006-0001

                                   裁  定

申立人:
(名称)ダイムラークライスラー  アクチエンゲゼルシャフト
(住所)ドイツ連邦共和国  シュツツトガルト  エプレシュトラーセ  225
代理人:弁護士  熊倉  禎男
        弁護士  辻居  幸一
        弁護士  外村  玲子
        弁護士  奥村  直樹
        弁理士  大島  厚

登録者:
(名称)Peter  Veggerby  Pedersen
(住所)9670  Loegstoer,Tinghojvej67,Denmark

  当紛争処理パネルは、申立書、提出された証拠、JPドメイン名紛争処理方針、JPド
メイン名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン
名紛争処理方針のための手続規則の補則に基づいて審理を遂げた結果、以下のとおり
裁定する。

1  裁定主文
    ドメイン名「MERCEDES.JP」の登録を申立人に移転せよ。

2  ドメイン名
     紛争に係るドメイン名は「MERCEDES.JP」である。

3  手続の経緯
     別記のとおりである。

4  当事者の主張
A  申立人
(1)当事者
  1)  申立人は、自動車等の製造、販売等を目的とするドイツ連邦共和国法人である。
      「Mercedes(メルセデス)」は、申立人ダイムラー・クライスラーアクチエン
    ゲゼルシャフト(以下、申立人という。)が製造販売する最高級の自動車の商標
    (ブランド)である「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」の略称として、
    極めて著名なものである。
  2)  メルセデス・ベンツの歴史
  a  「メルセデス・ベンツ」の誕生
  (a)  自動車の誕生(甲第36号証1頁)
      「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」のブランドに係る自動車を製造・
    販売するダイムラー・クライスラーグループの歴史は、同時に自動車の歴史でも
    ある。今日の自動車メーカーの礎を築き、発展に導いたのがゴットリープ・ダイ
    ムラー、カール・ベンツ、ウォルター・クライスラーである。
      1886年1月29日、ベルリンの帝国特許局は、カール・ベンツに対して世界で最
    初の自動車「ガソリン・エンジンを動力とする車両」に関する特許登録証を発行
    した。時を同じくして、ゴットリープ・ダイムラーも独自のアイデアを具現化し、
    ガソリン・エンジンを搭載した自動車の開発に成功した。この2つの発明により
    自動車が誕生した。この画期的な発明は蒸気機関車と馬に頼っていたそれまでの
    交通に革命をもたらした。その後、ダイムラー・モトーレン・ゲゼルシャフト社
    とベンツ&カンパニー社は自動車開発で互いに刺激しあい、技術革新のスピード
    が一気に加速していった。
  (b)  ダイムラー車「Mercedes(メルセデス)」の誕生(甲第37号証甲第38号証)
      19世紀末になると裕福な人々の間で、自動車はレジャーの道具になり、自動車
    レースが行われるようになった。オーストリア・ハンガリー帝国のニース総領事
    エミール・イェリネックも自動車の魅力の虜になった一人で、ダイムラー車を一
    台所有し、それをレースで走らせていた。彼は、自分の娘の名前「Mercedes(メ
    ルセデス)」をレースへのエントリー名として登録していた。
      1900年、イェリネックはダイムラー社にまったく新しいクルマの製造を提案し
    た。イェリネックの提案には、ヨーロッパ及びアメリカ合衆国における販売権を
    彼が有すること、その車の商標を「Mercedes(メルセデス)」とすることが含ま
    れていた。
      その新しい「Mercedes(メルセデス)」車は当時の重要なモーターレースの全
    てで勝利を収める大成功となり、その名はあっというまに世界中に浸透した。こ
    の成功を受け、ダイムラー社は、同社が製造する乗用車のすべてに「Mercedes
    (メルセデス)」の名を採用した。そして、1902年には、「Mercedes(メルセデ
    ス)」はダイムラー社の商標として登録された。
  (c)  「メルセデス・ベンツ」の誕生(甲第36号証,甲第37号証,甲第39号証)
      1926年6月28日、ダイムラー社は、ベンツ社と合併した。
      新しい会社名は「ダイムラー・ベンツ株式会社」となり、同社のブランド名は、
    すべて「メルセデス・ベンツ」とされたが、「ベンツ」はもともと創業者名(会
    社名)であり、自動車そのものの愛称としては今日まで「Mercedes(メルセデス)」
    と通称されてきた。

  b  日本における「メルセデス・ベンツ」の歴史等
  (a)  戦前の「メルセデス・ベンツ」車の輸入・販売
      日本での「メルセデス・ベンツ」車の販売は、1912年、ダイムラー社よりメル
    セデス  カルダンヴァーゲンが皇室御料車として輸入されたことに始まる。第二
    次世界大戦前の購入者は主に皇族、華族、財閥等であり、「メルセデス・ベンツ」
    車は、とくに公用車として活躍した(甲第40号証,甲第41号証)。
      財閥等の個人顧客向けには、ドイツ人、ルドルフ・ラーツェンが日本で販売代
    理業を行い、そのルドルフ・ラーツェン商館は、東京赤坂及び大阪東淀川に事務
    所を構えていた。事務所の建物や使用していた封筒には「メルセデス・ベンツ」、
    「MERCEDES BENZ 」の文字やマークが付されていた(甲第41号証)。
  (b)  戦後の「メルセデス・ベンツ」車の輸入・販売(甲第40号証,甲第41号証,甲42
    号証年表)
      戦後、日本では1948年に自動車の輸入が再開された。しかし、当時の輸入車は、
    病院、報道、観光といった特別な用途にのみ認められ、政策的にも経済復興を図
    るため、長期にわたり、輸出促進、輸入抑制が行われていた。
      1952年、ヤナセ株式会社の傍系会社ウェスタン自動車株式会社は「メルセデ
    ス・ベンツ」車の販売権を獲得し、その販売が再開された。1954年4月26日には
    ダイムラー・ベンツ社とヤナセ株式会社との間に販売代理店契約が締結された
    (甲第41号証,甲第43号証)。
      その後、1965年10月に外貨資金割当制度が撤廃され、外車輸入が自由化される
    と同時に輸入台数が増加していった。1964年には東京で大規模な「メルセデス・
    ベンツ・ショー」が開催された(甲第41号証)。
      1986年、ダイムラー・ベンツ社は、日本における直接の販売拠点としてダイム
    ラー・ベンツ社の100%子会社であるメルセデス・ベンツ日本株式会社(MBJ)
    を設立した(甲第41号証,甲第42号証)。
      また、1996年には、メルセデス・ベンツ日本株式会社とコマツによる商用車販
    売の合弁会社としてエムビーコマツ自動車販売株式会社が設立され、コマツによ
    る「メルセデス・ベンツ」商用車の販売が開始された(甲第40号証,甲第41号証,
    甲第42号証)。
      1998年、世界の自動車業界にとって歴史的なダイムラー・ベンツ社とクライス
    ラー社の合併が実現し、申立人ダイムラー・クライスラー社が誕生した。これに
    伴い、翌1999年、ダイムラー・クライスラー日本ホールディング株式会社が設立
    され、同年6月、メルセデス・ベンツ日本株式会社とクライスラージャパンセー
    ルス株式会社が統合され、ダイムラー・クライスラー日本株式会社が誕生した。
    以降、同社は、日本の自動車業界、市場の成長と発展に貢献してきている(甲第
    40号証,甲第41号証)。

(2)「Mercedes(メルセデス)」の著名性
  1)  ダイムラー・クライスラーグループ企業の日本における組織及び「メルセデ
    ス・ベンツ」の正規販売店
  (a)  組織(甲第44号証)
      申立人は、日本における持株会社として100%子会社であるダイムラー・クラ
    イスラー日本ホールディング株式会社を1999年に設立した。現在同持株会社の傘
    下に、同持株会社の100%子会社であるダイムラー・クライスラー日本株式会社
    (メルセデス・ベンツ乗用車・トラック及びクライスラー乗用車の卸売/小売及
    びサービスを主たる事業内容とする)、ダイムラー・クライスラー日本リテイル
    株式会社、及びエムティーユー・ジャパン株式会社(舶用エンジンの輸入販売)
    が組織されている。
      また、ダイムラー・クライスラー日本ホールディング株式会社を含む上記4社
    とは別に、ローン、リースを主たる事業目的とする、申立人が90%の株を保有す
    る子会社、メルセデス・ベンツ・ファイナンス株式会社及び100%保有する子会
    社ダイムラー・クライスラー・ファイナンシャル・サービス日本株式会社が組織
    され、ダイムラー・クライスラー・ファイナンシャル・サービス日本株式会社の
    下には、その100%子会社であるデビス・ファイナンシャル・サービス株式会社
    (保険募集を主たる事業目的とする)が組織されている。
  (b)  正規販売店(甲第42号証,甲第45号証)
      甲第42号証及び甲第45号証に示すとおり、ダイムラー・クライスラー日本株式
    会社は、全国47都道府県すべてに「メルセデス・ベンツ」車の正規販売店を持ち、
    広範囲な販売網により、きめ細かな高水準のサービスを提供している。

  2)  「メルセデス・ベンツ」車の輸入台数の推移(甲第41号証,甲第46号証)
      戦後1952年~2001年までのメルセデス・ベンツ車の輸入台数の推移は甲第41
    号証33頁の表のとおりである。また、1997年~2004年のメルセデス・ベンツの輸
    入車新規登録台数(車名別)は、日本自動車輸入組合の統計によれば、つぎのと
    おりである。メルセデス・ベンツ車の車名別輸入車新規登録台数におけるシェア
    は、1997年から1999年までは1位、2000年から2004年までは2位である。


          ┌─────────┬──────────┐
          │1997年        │42,133台      │
          ├─────────┼──────────┤
          │1998年        │42,556台      │
          ├─────────┼──────────┤
          │1999年        │53,474台      │
          ├─────────┼──────────┤
          │2000年        │51,613台      │
          ├─────────┼──────────┤
          │2001年        │53,438台      │
          ├─────────┼──────────┤
          │2002年        │47,983台      │
          ├─────────┼──────────┤
          │2003年        │45,759台      │
          ├─────────┼──────────┤
          │2004年        │44,375台      │
          └─────────┴──────────┘


  3)  宣伝広告その他の活動
  (a)  Annual Report、カタログ等による宣伝広告
      ダイムラー・クライスラーグループ企業は毎年、Annual Reportを発行している
    ほか(甲第47号証)、ダイムラー・クライスラー日本株式会社は、Corporate Pr
    ofileを発行し(甲第40号証,甲第42号証)、また「メルセデス・ベンツ」車をモデ
    ル別に解説したカタログを発行するなど(甲第48号証~甲第56号証)、積極的に
    広告宣伝活動を行い、日本におけるさらなる顧客拡大を図っている。
  (b)  ホームページによる宣伝広告
      ダイムラー・クライスラー日本株式会社は、「DAIMLER CHRYSLER」ホーム
    ページの日本語版を作成し、そのなかで、「メルセデス・ベンツ」車の宣伝広告
    を積極的に行っているほか(甲第57号証)、「メルセデス・ベンツ」専用のサイ
    トも設けて積極的に宣伝・広告を行っている(甲第58号証)。
  (c)  モーターショーへの出展やモータースポーツへの参戦
      申立人は、「メルセデス・ベンツ」車を数々のモーターショーにも出展させ、
    新型モデルの発表等を行っている(たとえば、1992年第29回東京モーターショー、
    1993年第30回東京モーターショー、1994年第31回東京モーターショー及び2005
    年東京モーターショー等、甲第42号証,甲第59号証)。なお、過去15年間に開催
    された各東京モーターショー(乗用車・二輪車に限る)の入場者数は150万人前
    後に達している(甲第60号証)。また、日本におけるモータースポーツにも積極
    的に参戦し、上位の成績を残している(たとえば、1989年世界スポーツプロトタ
    イプ選手権WSPC SUZUKA JAPAN、1990年世界スポーツプロトタイプ選手権シ
    リーズ第1戦WSPC富士フィルムカップ'90等、甲第61号証,甲第62号証)。
  (d)  その他社会支援活動等
      その他、ダイムラー・クライスラー日本株式会社は、自動車に関連のある社会
    問題を取り上げたセミナーを毎年開催したり、又、ダイムラー・クライスラーホ
    ールデイング日本株式会社の傘下にある「ダイムラー・クライスラー  ファウン
    デーション日本」は、スポーツ、芸術支援活動を行ったりと多数の社会慈善事業
    にも積極的に参加している(甲第40号証、甲第41号証,甲第42号証)。

  4)  「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」車の評価(甲第42号証)
      「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」が乗用車の最高級の世界的ブラン
    ドであることは論を待たないが、日本の自動車業界においても高い評価を得てき
    た。たとえば、1994年に、「第8回キング・オブ・ザ・カー」でメルセデス・ベ
    ンツCクラスが最優秀輸入車賞を受賞、1995年に、メルセデス・ベンツC200が
    「1995インポート・カー・オブ・  ザ・イヤー」を受賞、1995年第31回東京モー
    ターショーでは、メルセデス・ベンツEクラスが「RJCインポート・カー・オブ・
    ザ・イヤー」を受賞、1996年に、「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」をメ
    ルセデス・ベンツSLKクラスが受賞、1998年に、「インポート・カー・オブ・ザ・
    イヤー」をメルセデス・ベンツAクラスが受賞、2000年に「インポート・カー・
    オブ・ザ・イヤー」をメルセデス・ベンツCクラスが受賞するなど、数々の賞を
    受賞している。
      また、広告シリーズ「マークイメージ広告」が1993年朝日広告賞グランプリを
    受賞するなど、広告部門においても評価を受けている。

  5)  「メルセデス・ベンツ」を扱った書籍・新聞記事等
  (a)  書籍
      「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」は世界有数の高級自動車として日
    本においても高級車の代名詞ともいえるほど著名性を有し、人気を誇っている。
    そのため、「メルセデス・ベンツ」の新型モデルが発売されるたびに新聞、雑誌
    や業界紙等で取り上げられているほか、「メルセデス・ベンツ」の歴史や歴代各
    モデルの性能等を解説した書籍も多数存在している(甲第63号証)。一例を挙げ
    れば、次のとおりである。
      「メルセデス・ベンツ」に関する歴史や逸話、「メルセデス・ベンツ」車のメ
    ンテナンスについて解説した本には、「メルセデス・ベンツの思想」(1999年5
    月  株式会社講談社発行、甲第37号証)や「メルセデス・ベンツの作り方クルマ・
    ヒト・モノにまつわる逸話録」(2003年3月  株式会社TOKIMEKIパブリッシン
    グ発行、甲第38号証)、「輸入車に安心して乗る方法」(2005年8月  辰巳出版
    株式会社発行、甲第64号証)などがある。
      また、「メルセデス・ベンツ」の歴史や歴代各モデルの写真が掲載され、機能
    等が解説されている雑誌や書籍には、「CARグラフィック  3」1966年3月  発
    行、甲第65号証)、「CARグラフィック  5」1966年5月  発行、甲第66号証)、
    「メルセデス・ベンツ栄光の歴史」(2000年11月  株式会社ティー・ビー・エス
      ブリタニカ発行、甲第  67  号証)、「MERCEDES-BENS GRAND PRIX RA
    CE CARS1935-1955」(甲第68号証)等がある。
      さらに、新型モデルについて詳細に解説する雑誌記事としては、たとえば、1
    993年に行われたメルセデス・ベンツCクラス試乗会に関する甲第69号証がある。
    また、2005年1月には、車種別に解説を加えた「メルセデス・ベンツ・バイブル
    Vol.3」といった雑誌が発行されている(甲第70号証)。
      そのほか、「パワー・ブランドの本質」1999年7月  ダイヤモンド社発行)と
    いう書籍には、11頁に『人々の頭の中に圧倒的存在感と独自の世界を気づいてい
    るという点で、メルセデス・ベンツ(正式な企業名は「ダイムラー・クライスラ
    ー」だが、本書ではブランド名の「メルセデス・ベンツ」を使用する)とナイキ
    は間違いなく世界を代表するブランドである。』と記載されているなど、「Mer
    cedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」を取り上げた書籍は枚挙にいとまがない(甲
    第71号証)。
  (b)  新聞記事(甲第72号証)
      「メルセデス・ベンツ」を取り上げた新聞記事は無数に存在しており、2005
    年の全国紙のみに限っても107件の記事がある。一例を挙げると、2005年10月16
    日読売新聞社『ダイムラー・クライスラー日本は、高級SUV(スポーツ用多目的
    車)「メルセデス・ベンツMクラス」(5人乗り)を全面改良して発売した。...』、
    2005年10月12日朝日新聞社『ダイムラークライスラー日本は、11日、メルセデス・
    ベンツのスポーツ用多目的車(SUV)「Mクラス」=写真=を7年ぶりに全面改
    良して発売した。...』、2005年10月7日朝日新聞社「日本自動車輸入組合が6日に
    発表した今年度上半期(4~9月)の外国メーカー車の国内販売台数は、(中略)
    メルセデス・ベンツが同12.5%伸ばし、ブランド別の販売台数で上半期では6年
    ぶりの首位となったほか、(中略)ドイツの高級車が軒並み好調だった。」、2
    005年10月7日読売新聞社「日本自動車輸入組合は、6日、2005年度上半期(4~9
    月)の輸入車販売台数を発表した。(中略)、メルセデス・ベンツが同12.5%増、
    (中略)となるなど好調だった。」等の記事が掲載されている。
  (c)  インターネット
      たとえば、インターネットの有力な検索エンジンである「Google」において、
    「Mercedes-Benz」を含む日本語サイトを検索すると、約26万件にヒットし(甲
    第73号証)、これらはすべて申立人の「Mercedes-Benz」に関する記事である。

  6)  「Mercedes(メルセデス)」について
      「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」が著名であることはいうまでもな
    いが、「Benz(ベンツ)」はもともと創業者名(会社名)であり、自動車そのも
    のの愛称としては「Mercedes(メルセデス)」であり、このことは甲号証におけ
    る多数の記載からも明らかである。また、辞書類においても「Mercedes(メルセ
    デス)」は「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」を指すものとして記載さ
    れている(甲第74号証,甲第75号証)。
      さらに、申立人は、前記のとおり「MERCEDES」の文字からなる商標につい
    て多数商標登録を取得し、積極的にこの商標を使用してきた。日本国内の有名商
    標を掲載した「日本商標名鑑'97」及び「日本商標名鑑2000」には、申立人商標
    「MERCEDES」が載せられている(甲第76及び77号証)。また、外国ブランド
    の模倣商品輸入等を阻止する目的で、政府関係機関等に配布するために作成され
    た、「外国ブランド権利者名簿(2005年)」にも申立人商標「MERCEDES」が
    載せられている。
      また、たとえば、客観的な国際ブランド価値調査であるInterbrandの「The 100
     Top Brands」(2001年、2003年、2004年及び2005年)によっても、申立人の「M
    ERCEDES」は、あらゆる分野のブランド中において、毎年第10位前後にランク
    されている(甲第79号証)。
      したがって、「Mercedes(メルセデス)」が、申立人の商品「自動車」に係る
    著名商標であることは疑いない。

(3)申立人の商標登録状況・使用状況
      申立人は、「自動車」について商標「MERCEDES」を1901年より使用してい
    る。
      申立人は、商品「自動車」等について、日本において次の登録商標(以下「申
    立人商標」という)を所有している(甲第2号証~甲第5号証)。

        商    標:MERCEDES
        登録番号:490538
        登 録 日:昭和31年(1956)10月29日
        出 願 日:昭和30年(1955)4月22日
        指定商品:旧々第20類  -  運搬用機械器具及び其の各部

        商    標:MERCEDES
        登録番号:4832214
        登 録 日:平成17年(2005)1月14日
        出 願 日:平成16年(2004)4月1日
        指定商品:第12類  -  荷役用索道,カーダンパー,カープッシャー,カー
                  プラー,牽引車,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),
                  陸上の乗物用の機械要素,落下傘,乗物用盗難警報器,車いす,
                  陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),
                  船舶並びにその部品及び附属品,航空機並びにその部品及び附属
                  品,鉄道車両並びにその部品及び附属品,自動車並びにその部品
                  及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,
                  乳母車,人力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー,タイ
                  ヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片
                  第7,9,11,14,18,24,25,28類(省略)

      また、申立人は、これ以外にも「MERCEDES」の文字のみからなる商標につ
    いて、次のとおり多数の商標登録を所有している(甲第6号証~甲第35号証)。
        登録第0488739号  MERCEDES  (旧々第19類)
        登録第0488740号  MERCEDES  (旧々第17類)
        登録第1038491号  MERCEDES  (第1,5,9,10,12類)
        登録第1078195号  MERCEDES  (第3,6,8,11,14,16,17,18,20,21,26類)
        登録第1082793号  MERCEDES  (第7,8,9,10,11,12,17,21類)
        登録第3038689号  Mercedes  (第38類)
        登録第3080080号  Mercedes  (第39類)
        登録第3118045号  Mercedes  (第41類)
        登録第3155178号  Mercedes  (第35類)
        登録第3155815号  Mercedes  (第37類)
        登録第3206931号  Mercedes  (第42類)
        登録第3229153号  Mercedes  (第40類)
        登録第3231071号  Mercedes  (第36類)
        登録第3338456号  Mercedes  (第41類)
        登録第3356363号  Mercedes  (第35類)

(4)登録の事実
      登録者はドメイン名「MERCEDES.JP」をJPRSに登録している(甲第1号証)。

(5)JPドメイン名紛争処理方針第4条a.(i),(ii),(iii)の該当性
  1)  JPドメイン名紛争処理方針第4条a.(i)について
      登録者の本件ドメイン名は、欧文字「MERCEDES.JP」から構成されるもので
    ある。
      これに対し、申立人商標は欧文字「MERCEDES」から構成されるものである。
      しかして、本件ドメイン名中の「.JP」は、国名を示すトップレベルドメイン
    に過ぎず、商品、役務、営業等の出所を表示するものではないから、本件ドメイ
    ン名の要部は、「MERCEDES」に存することが明らかであり、かつ、この部分
    は申立人商標と同一である。
      したがって、本件ドメイン名が、申立人が権利を有する商標(申立人商標)と
    同一または混同を引き起こすほどに類似していることは明白である。

  2)  JPドメイン名紛争処理方針第4条a.(ii)について
      登録者が本件ドメイン名についての権利または正当な利益を有していないこ
    とは、次の事実から明らかというべきである。
  (a)  登録者は、日本において「MERCEDES」もしくはこれと同等の商標の登録ま
    たは商標登録出願を有していないこと。
  (b)  登録者が本件ドメインを登録した際、前記Interbrandの「The 100 Top Brands」
    調査結果等からみても、国際的な著名商標である申立人商標「MERCEDES」を
    知らなかったということは経験則上あり得ないこと。
  (c)  登録者の氏名は「Peter Veggerby Pedersen」であり、後述する本件ドメイン名
    に係るウェブページ(甲第80号証)によれば、その商号は「Veggerby Pedersen
    A/S」であり、いずれも本件ドメイン名とは無関係であること。
  (d)  申立人の調査した限り、登録者が「MERCEDES」またはこれと同等の名称を
    使用して営業活動等を行っている事実はないこと。

  3)  JPドメイン名紛争処理方針第4条a.(iii)について
  (a)  上記のとおり、本件ドメイン名は、申立人の所有にかかる世界的に著名な商標
     を要部とするものであり、前記Interbrandの「The 100 Top Brands」調査結果等か
     らみても、登録者が、申立人商標「MERCEDES」を知らず、これと無関係に本
     件ドメイン名を採用・登録したということは経験則上あり得ない。したがって、
     この事実のみからも、登録者が申立人商標に化体された莫大な信用にただ乗りし
     ようという不正の目的をもって本件ドメイン名を登録ないし使用していること
     は明らかである。
  (b)  また、登録者は、本件ドメイン名に係るウェブサイトを一応開設しているが、
     甲第80号証に示すとおり、このウェブページはわずか1頁からなる極めて形式
     的・名目的なものに過ぎず、単に、アクセスしてきた者をメールアドレス「info
     @mercedes.jp」に誘引しようとするものと考えられる。つまり、登録者は、何ら
     かの商業上の利得を得る目的で、そのウェブサイトの出所、スポンサーシップ、
     取引提携関係、推奨関係などについて誤認混同を生ぜしめることを意図して、イ
     ンターネット上のユーザーを、上記メールアドレスに誘引するために、当該ドメ
     イン名を使用していると見られるものである。したがって、このような登録者の
     行為は、「JPドメイン名紛争処理方針」第4条b(iv)に該当し、不正の目的を有す
     るものと認定されるべきである。
       さらに、ドメイン名が使用されず、単に保有されているというに過ぎない場合
     であっても、その保有は、正当な権利者による当該ドメイン名の採用・使用を不
     当に妨害するものであり、本件ドメイン名は、その意味においても不正の目的で
     登録されていると解すべきである(当仲裁センターにおける「SONYBANK.CO.
     JP」に係るJP2001-0002,「PHARMACIA.JP」に係るJP2002-0007,「MOTORUP.
     CO.JP」に係るJP2003-0001,「WALMART.JP」に係るJP2005-0001の各裁定参照。)。
  (c)  加えて、登録者は申立人に対し、電話により、本件ドメイン名を有償で譲渡し
     たいとの申し出を行った。その際、登録者の提示した価格は具体的ではなかった
     が、本件ドメイン名の「価値(value)」に見合う額を示唆した(甲第81号証)。
       前記のとおり、本件ドメイン名の要部である「MERCEDES」は、世界的な著
     名商標であり、その「価値(value)」は莫大なものといえる。つまり、登録者
     は、申立人に対し、そのような莫大な対価を暗に要求したのであり、これは、「J
     Pドメイン名紛争処理方針」第4条b(i)に規定する場合、すなわち「登録者が、
     申立人または申立人の競業者に対して、当該ドメイン名に直接かかった金額(書
     面で確認できる金額)を超える対価を得るために、当該ドメイン名を販売、貸与
     または移転することを主たる目的として、当該ドメイン名を登録または取得して
     いるとき」に該当し、本件ドメイン名は、この条項に照らしても、不正の目的で
     登録されているものと認定されるべきである。
  (d)  以上の諸事情を総合勘案すれば、本件ドメイン名が不正の目的で登録または
     使用されていることは、さらに明白である。

(6)求める救済措置
      『登録者は登録者ドメイン名「MERCEDES.JP」の登録を申立人に移転せよ。』

B  登録者の主張
    登録者は答弁書を提出しなかった。

5  争点及び事実認定
     JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則(以下「規則」という)15条(a)
   は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則についてパネルに
   次のように指示する。「パネルは、提出された陳述及び文書の結果に基づき、方針、
   規則、及び適用されうる関係法規の規定、原則ならびに条理に従って、裁定を下さ
   なければならない。」
    処理方針4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指
   図している。
   (i)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その
   他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること
   (ii)登録者が、ドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有していな
   いこと
   (iii)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること
     本パネルは、提出された陳述及び証拠の結果に基づき、次のとおりの事実を認定
   した。

(1)申立人が権利または正当な利益を有する商標
  1)  申立人は、商品「自動車」等について、日本において次の登録商標(以下「申
    立人商標」という。)を所有している(甲第2号証~甲第5号証)。

        商    標:MERCEDES
        登録番号:490538
        登 録 日:昭和31年(1956)10月29日
        出 願 日:昭和30年(1955)4月22日
        指定商品:旧々第20類-運搬用機械器具及び其の各部

        商    標:MERCEDES
        登録番号:4832214
        登 録 日:平成17年(2005)1月14日
        出 願 日:平成16年(2004)4月1日
        指定商品:第12類-荷役用索道,カーダンパー,カープッシャー,カープラ
                  ー,牽引車,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),陸
                  上の乗物用の機械要素,落下傘,乗物用盗難警報器,車いす,陸
                  上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),
                  船舶並びにその部品及び附属品,航空機並びにその部品及び附属
                  品,鉄道車両並びにその部品及び附属品,自動車並びにその部品
                  及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,
                  乳母車,人力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー,タイ
                  ヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片
                  第7類-(省略)
                  第9類-(省略)
                  第11類-(省略)
                  第14類-(省略)
                  第18類-(省略)
                  第24類-(省略)
                  第25類-(省略)
                  第28類-(省略)

  2)  また、申立人は、上記2商標の他にも「MERCEDES」及び「Mercedes」の文字
    のみからなる商標について、以下のとおりの商標登録を所有している(甲第6号
    証~甲第35号証)。
      登録第0488739号  MERCEDES  (旧々第19類)
      登録第0488740号  MERCEDES  (旧々第17類)
      登録第1038491号  MERCEDES  (第1,5,9,10,12類)
      登録第1078195号  MERCEDES  (第3,6,8,11,14,16,17,18,20,21,26類)
      登録第1082793号  MERCEDES  (第7,8,9,10,11,12,17,21類)
      登録第3038689号  Mercedes  (第38類)
      登録第3080080号  Mercedes  (第39類)
      登録第3118045号  Mercedes  (第41類)
      登録第3155178号  Mercedes  (第35類)
      登録第3155815号  Mercedes  (第37類)
      登録第3206931号  Mercedes  (第42類)
      登録第3229153号  Mercedes  (第40類)
      登録第3231071号  Mercedes  (第36類)
      登録第3338456号  Mercedes  (第41類)
      登録第3356363号  Mercedes  (第35類)

  3)  「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」及び「Mercedes(メルセデス)」
    について
  A  「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」及び「Mercedes(メルセデス)」の
    誕生
  a  自動車の誕生
      1886年1月29日、ベルリンの帝国特許局は、カール・ベンツに対して世界で最
    初の自動車「ガソリン・エンジンを動力とする車両」に関する特許登録証を発行
    した。時を同じくして、ゴットリープ・ダイムラーも独自のアイデアを具現化し、
    ガソリン・エンジンを搭載した自動車の開発に成功した。この2つの発明により
    自動車が誕生した。この画期的な発明は蒸気機関車と馬に頼っていたそれまでの
    交通に革命をもたらした。その後、ダイムラー・モトーレン・ゲゼルシャフト社
    とベンツ&カンパニー社は自動車開発で互いに刺激しあい、技術革新のスピード
    が一気に加速していった(甲第36号証)。
  b  「Mercedes(メルセデス)」商標の誕生
        19世紀末になると裕福な人々の間で、自動車はレジャーの道具になり、自動
    車レースが行われるようになった。オーストリア・ハンガリー帝国のニース総領
    事エミール・イェリネックも自動車の魅力の虜になった一人で、ダイムラー車を
    一台所有し、それをレースで走らせていた。彼は、自分の娘の名前「Mercedes
    (メルセデス)」をレースへのエントリー名として登録していた。
    1900年、イェリネックはダイムラー社に、まったく新しいクルマの製造を提案し
    た。イェリネックの提案には、ヨーロッパ及びアメリカ合衆国における販売権を
    彼が有すること、その車の商標を「Mercedes(メルセデス)」とすることが含ま
    れていた。その新しい「Mercedes(メルセデス)」車は当時の重要なモーターレ
    ースの全てで勝利を収める大成功となり、その名はあっというまに世界中に浸透
    した。この成功を受け、ダイムラー社は、同社が製造する乗用車のすべてに「M
    ercedes(メルセデス)」の名を採用した。そして、1902年には、「Mercedes(メ
    ルセデス)」はダイムラー社の商標として登録された(甲第37号証、甲第38号証)。
  c  「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」ブランドの誕生
         1926年6月28日、ダイムラー社とベンツ社は合併した。合併による新会社名は
    「ダイムラー・ベンツ」社となったが、同社の製造・販売にかかる自動車には、
    ダイムラー社のブランド名であった「Mercedes(メルセデス)」とベンツ社の創
    業者名の「Benz(ベンツ)」を結合した「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」
    のブランドが付された(甲第36号証、甲第37号証、甲第39号証)。
      以後、「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」とともに、ダイムラー社の
    ブランド名であった「Mercedes(メルセデス)」は「Mercedes-Benz(メルセデ
    ス・ベンツ)」の略称として、ベンツ社の創業者名であった「Benz(ベンツ)」
    も「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」の略称として、ダイムラー・ベン
    ツ社の製造・販売にかかる自動車等のブランド(商標、商品等表示)として通称
    されてきた。
  d  1998年、ヨーロッパの有力自動車会社であるダイムラー・ベンツ社とアメリカ
    の有力自動車会社クライスラー社が合併し、申立人ダイムラー・クライスラー社
    が誕生した。
      申立人ダイムラー・クライスラー社誕生後も、「Mercedes-Benz(メルセデス・
    ベンツ)」、「Mercedes(メルセデス)」及び「Benz(ベンツ)」は申立人ダイ
    ムラー・クライスラー社の自動車等のブランド(商標、商品等表示)として通称
    されている(甲第40号証)。
  e  英和辞典における「Mercedes」の項では、「《商標》メルセデス:ドイツのD
    aimler社製(Benzと合併前の社名)の乗用車:米国ではMercedes-Benzとなった今
    でも単にMercedesと呼ぶことが多い」と記載されており(甲第75号証)、他の辞
    典類でも「Mercedes(メルセデス)」は「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」
    を指すものと記載されている(甲第74号証).

  B  日本における「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」車の販売

  a  戦前の「メルセデス・ベンツ」車の輸入・販売
      日本での「メルセデス・ベンツ」車の販売は、1912年、ダイムラー社より「メ
    ルセデス  カルダンヴァーゲン」が皇室御料車として輸入されたことに始まる。
    第二次世界大戦前の購入者は主に皇族、華族、財閥等であり、「メルセデス・ベ
    ンツ」車は、とくに公用車として活躍した(甲第40号証、甲第41号証)。
      財閥等の個人顧客向けには、ドイツ人、ルドルフ・ラーツェンが日本で販売代
    理業を行い、そのルドルフ・ラーツェン商館は、東京赤坂及び大阪東淀川に事務
    所を構えていた。事務所の建物や使用していた封筒には「メルセデス・ベンツ」、
    「MERCEDES BENZ 」の文字やマークが付されていた(甲第41号証)。

  b  戦後の「メルセデス・ベンツ」車の輸入・販売
      戦後、日本では1948年に自動車の輸入が再開された。しかし、当時の輸入車は、
    病院、報道、観光といった特別な用途にのみ認められ、政策的にも経済復興を図
    るため、長期にわたり、輸出促進、輸入抑制が行われていた。
      1952年、ヤナセ株式会社の傍系会社ウェスタン自動車株式会社は「メルセデ
    ス・ベンツ」車の販売権を獲得し、その販売が再開された。1954年4月26日には、
    ダイムラー・ベンツ社とヤナセ株式会社との間に販売代理店契約が締結された
    (甲第41号証、甲第43号証)。
      その後、1965年10月に外貨資金割当制度が撤廃され、外車輸入が自由化される
    と同時に輸入台数が増加していった。1964年には東京で、大規模な「メルセデス・
    ベンツ・ショー」が開催された(甲第41号証)。
      1986年、ダイムラー・ベンツ社は、日本における直接の販売拠点としてダイム
    ラー・ベンツ社の100%子会社であるメルセデス・ベンツ日本株式会社(MBJ)
    を設立した(甲第41号証、甲第42号証)。
      また、1996年には、メルセデス・ベンツ日本株式会社とコマツによる商用車販
    売の合弁会社としてエムビーコマツ自動車販売株式会社が設立され、コマツによ
    る「メルセデス・ベンツ」商用車の販売が開始された(甲第40号証、甲第41号証、
    甲第42号証)。
      1998年、ヨーロッパの有力自動車会社ダイムラー・ベンツ社とアメリカの有力
    自動車会社クライスラー社の合併が実現し、申立人ダイムラー・クライスラー社
    が誕生し、これに伴い、翌1999年、ダイムラー・クライスラー日本ホールディン
    グ株式会社が設立され、同年6月、メルセデス・ベンツ日本株式会社とクライス
    ラージャパンセールス株式会社が統合され、ダイムラー・クライスラー日本株式
    会社が誕生した(甲第40号証、甲第41号証)。

  c  申立人グループ企業の日本における組織及び「メルセデス・ベンツ」の正規販
    売店について
  (a)  組織
      申立人は、日本における持ち株会社として100%子会社であるダイムラー・ク
    ライスラー日本ホールディング株式会社を1999年に設立した。現在同持株会社の
    傘下に、同持株会社の100%子会社であるダイムラー・クライスラー日本株式会
    社(メルセデス・ベンツ乗用車・トラック及びクライスラー乗用車の卸売/小売
    及びサービスを主たる事業内容とする)、ダイムラー・クライスラー日本リテイ
    ル株式会社、及びエムティーユー・ジャパン株式会社(舶用エンジンの輸入販売)
    が組織されている。また、ダイムラー・クライスラー日本ホールディング株式会
    社を含む上記4社とは別に、ローン、リースを主たる事業目的とする、申立人が
    90%の株を保有する子会社、メルセデス・ベンツ・ファイナンス株式会社及び1
    00%保有する子会社ダイムラー・クライスラー・ファイナンシャル・サービス日
    本株式会社が組織され、ダイムラー・クライスラー・ファイナンシャル・サービ
    ス日本株式会社の下には、その100%子会社であるデビス・ファイナンシャル・
    サービス株式会社(保険募集を主たる事業目的とする)が組織されている(甲第
    44号証)。
  (b)  正規販売店
      ダイムラー・クライスラー日本株式会社は、全国47都道府県すべてに「メルセ
    デス・ベンツ」車の正規販売店を持ち、広範囲な販売網により、きめ細かな高水
    準のサービスを提供している(甲第42号証、甲第45号証)。

  d  「メルセデス・ベンツ」車の輸入台数の推移
      1997年~2004年のメルセデス・ベンツの輸入車新規登録台数(車名別)は、日
    本自動車輸入組合の統計によれば、つぎのとおりである。メルセデス・ベンツ車
    の車名別輸入車新規登録台数におけるシェアは、1997年から1999年までは1位、2
    000年から2004年までは2位である(甲第46号証)。


          ┌─────────┬──────────┐
          │1997年        │42,133台      │
          ├─────────┼──────────┤
          │1998年        │42,556台      │
          ├─────────┼──────────┤
          │1999年        │53,474台      │
          ├─────────┼──────────┤
          │2000年        │51,613台      │
          ├─────────┼──────────┤
          │2001年        │53,438台      │
          ├─────────┼──────────┤
          │2002年        │47,983台      │
          ├─────────┼──────────┤
          │2003年        │45,759台      │
          ├─────────┼──────────┤
          │2004年        │44,375台      │
          └─────────┴──────────┘


  e  宣伝広告その他の活動
  (a)  Annual Report(年報)、カタログ等による宣伝広告
      申立人グループ企業は毎年、Annual Report(年報)を発行しているほか(甲第
    47号証)、ダイムラー・クライスラー日本株式会社は、Corporate Profile(会社
    案内)を発行し(甲第40号証,甲第42号証)、また「メルセデス・ベンツ」車を
    モデル別に解説したカタログを発行するなど(甲第48号証~甲第56号証)、積極
    的に広告宣伝活動を行い、日本におけるさらなる顧客拡大を図っている。
  (b)  ホームページによる宣伝広告
      ダイムラー・クライスラー日本株式会社は、「DAIMLER CHRYSLER」ホーム
    ページの日本語版を作成し、そのなかで、「メルセデス・ベンツ」車の宣伝広告
    を積極的に行っているほか(甲第57号証)、「メルセデス・ベンツ」専用のサイ
    トも設けて積極的に宣伝・広告を行っている(甲第58号証)。
  (c)  モーターショーへの出展やモータースポーツへの参戦
      申立人は、「メルセデス・ベンツ」車を数々のモーターショーにも出展させ、
    新型モデルの発表等を行っている(たとえば、1992年第29回東京モーターショー、
    1993年第30回東京モーターショー、1994年第31回東京モーターショー及び2005
    年東京モーターショー等(甲第42号証,甲第59号証))。なお、過去15年間に開
    催された各東京モーターショー(乗用車・二輪車に限る)の入場者数は150万人
    前後に達している(甲第60号証)。また、日本におけるモータースポーツにも積
    極的に参戦し、上位の成績を残している(たとえば、1989年世界スポーツプロト
    タイプ選手権WSPC SUZUKA JAPAN、1990年世界スポーツプロトタイプ選手権
    シリーズ第1戦WSPC富士フィルムカップ'90等(甲第61号証、甲第62号証))。
  (d)  その他社会支援活動等
      その他、ダイムラー・クライスラー日本株式会社は、自動車に関連のある社会
    問題を取り上げたセミナーを毎年開催したり、又、ダイムラー・クライスラーホ
    ールデイング日本株式会社の傘下にある「ダイムラー・クライスラー  ファウン
    デーション日本」は、スポーツ、芸術支援活動を行ったりと多数の社会慈善事業
    にも積極的に参加している(甲第40号証、甲第41号証、甲第42号証)。

  f  「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」車の評価
      「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」が乗用車の最高級の世界的ブラン
    ドであることは論を待たないが、日本の自動車業界においても高い評価を得てき
    た。たとえば、1994年に、「第8回キング・オブ・ザ・カー」でメルセデス・ベ
    ンツCクラスが最優秀輸入車賞を受賞、1995年に、メルセデス・ベンツC200が
    「1995インポート・カー・オブ・  ザ・イヤー」を受賞、1995年第31回東京モー
    ターショーでは、メルセデス・ベンツEクラスが「RJCインポート・カー・オブ・
    ザ・イヤー」を受賞、1996年に、「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」をメ
    ルセデス・ベンツSLKクラスが受賞、1998年に、「インポート・カー・オブ・ザ・
    イヤー」をメルセデス・ベンツAクラスが受賞、2000年に「インポート・カー・
    オブ・ザ・イヤー」をメルセデス・ベンツCクラスが受賞するなど、数々の賞を
    受賞している(甲第42号証)。
      また、広告シリーズ「マークイメージ広告」が1993年朝日広告賞グランプリを
    受賞する(甲第42号証)など、広告部門においても評価を受けている。

  g  「メルセデス・ベンツ」を扱った書籍・新聞記事等
  (a)  書籍
      「メルセデス・ベンツ」は世界有数の高級自動車として日本においても高級車
    の代名詞ともいえるほど著名性を有し、人気を誇っている。そのため、「メルセ
    デス・ベンツ」の新型モデルが発売されるたびに新聞、雑誌や業界紙等で取り上
    げられているほか、「メルセデス・ベンツ」の歴史や逸話、歴代各モデルの性能
    等を解説した書籍も多数存在している(甲第63号証、甲第37号証、甲第38号証、
    甲第64号証、甲第65号証、甲第66号証、甲第67号証、甲第68号証、甲第69号証、
    甲第70号証、甲第71号証)。
  (b)  新聞記事
      「メルセデス・ベンツ」を取り上げた新聞記事は多数存在しており、2005年の
    全国紙のみに限っても107件の記事がある(甲第72号証)。
  (c)  インターネット
      インターネットの有力な検索エンジンである「Google」において、「Mercedes
    -Benz」を含む日本語サイトを検索すると、約26万件にヒットし(甲第73号証)、
    これらはすべて申立人の「Mercedes-Benz」に関する記事である。

  C  「Mercedes、MERCEDES及びメルセデス」について
      申立人は、「MERCEDES」の文字からなる商標について多数商標登録を取得
    しているが、日本国内の有名商標を掲載した「日本商標名鑑'97」及び「日本商
    標名鑑2000」には申立人商標「MERCEDES」が掲載されており(甲第76号証、
    甲第77号証)、外国ブランドの模倣商品輸入等を阻止する目的で、政府関係機関
    等に配布するために作成された「外国ブランド権利者名簿(2005年)」にも申立
    人商標「MERCEDES」が掲載されている(甲第78号証)。
      また、国際ブランド価値調査「The 100 Top Brands」(2001年、2003年、2004
    年及び2005年)によっても、申立人商標(ブランド)「MERCEDES」はあらゆ
    る分野のブランド中において毎年第10位前後にランクされている(甲第79号証)。
      言うまでもなく、「MERCEDES」は「Mercedes」を全て欧文字の大文字を用
    いて表記したものであり、両者の片仮名表記は「メルセデス」であり、いずれも
    「メルセデス」と称呼される。

  4)  以上によれば、Mercedes、MERCEDES及びメルセデスは申立人の商品「自動
    車」に係る著名商標であると認められ、申立人は商標「MERCEDES」につき商
    標権並びに不正競争防止法によって保護される権利及び利益を有し、これを保有
    し使用するについて正当な利益を有するものと認められる。

(2)登録者ドメイン名と申立人商標「MERCEDES」との類似性
      登録者ドメイン名は「MERCEDES.JP」であり、申立人が権利または正当な利
    益を有する商標「MERCEDES」とは混同を引き起こすほどに類似するものであ
    ると認められる。
      登録者ドメイン名は「MERCEDES.JP」であるが、同ドメイン名中の「.JP」は、
    国名を示すトップ(第1)レベルドメインを構成するものであり、国別コードに
    より日本を意味する部分であって、同ドメイン名を使用する主体(商品、役務、
    営業等の出所)を示す表示ではなく、このことはドメイン名に接する者の知ると
    ころであり、「JP」は同ドメイン名の要部とは認められない。したがって、同ド
    メイン名の要部は「MERCEDES」に存するものと認められるところ、同ドメイ
    ン名の要部「MERCEDES」は申立人商標「MERCEDES」と同一と認められる。
      したがって、登録者ドメイン名はJPドメイン名紛争処理方針第4条a.(i)の
    要件に該当するものと認められる。

(3)「登録者が、ドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有していない
    こと」(JPドメイン名紛争処理方針第4条a.(ii))について
  1)  登録者は答弁書を提出せず、登録者がドメイン名の登録についての権利又は正
    当な利益を有していることを積極的に主張するものではないが、申立書及び提出
    された証拠によれば次の事実が認められる。
    (i)  登録者は、日本において「MERCEDES」もしくはこれと同等の商標の登
         録または商標登録出願を有していない。
    (ii)  登録者が「MERCEDES」またはこれと同様の名称を使用して営業活動等を行
         っている事実はない。
    (iii)  登録者の氏名は「Peter Veggerby Pedersen」であり、その商号は「Veggerby
         Pedersen A/S」であり(甲第80号証)、いずれも登録者ドメイン名とは無関係
         である。
    (iv)  登録者が登録者ドメインを登録した際、Interbrand「The 100 Top Brands」調
        査結果(甲第79号証)等からみて、国際的に著名である申立人商標「MERCE
        DES」を知らなかったということは経験則上あり得ないことであり、登録者は
        申立人商標「MERCEDES」を知っていたと推認される。
  2)  JPドメイン名紛争処理方針第4条a.(ii)における「権利または正当な利益」
    とは、本来の正当権利者に優先する権利または利益が存在することをいい、単に
    本来の正当権利者に先行してドメイン名登録を得たこと自体をもって、ドメイン
    名の登録についての権利又は正当な利益を有するものと言うことはできない。
  3)  したがって、登録者ドメイン名はJPドメイン名紛争処理方針第4条a.(ii)の
    要件に該当するものと認められる。

(4)「登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること」(J
    Pドメイン名紛争処理方針第4条a.(iii))について
  1)  登録者は答弁書を提出せず、「登録者のドメイン名が、不正の目的で登録また
    は使用されていること」を積極的に否認するものではないが、申立書及び提出さ
    れた証拠によれば次の事実が認められる。
    (i)  登録者の氏名は「Peter Veggerby Pedersen」であり、その商号は「Veggerby
         Pedersen A/S」であり(甲第80号証)、いずれも登録者ドメイン名とは無関係
        である。
    (ii)  登録者が登録者ドメインを登録した際、Interbrand「The 100 Top Brands」調
        査結果(甲第79号証)等からみて、国際的に著名である申立人商標「MERCE
        DES」を知らなかったということは経験則上あり得ないことであり、登録者は
        申立人商標「MERCEDES」を知っていたと推認される。
    (iii)  登録者は、登録者ドメイン名に係るウェブサイトを開設しているが、当該ウ
        ェブサイトは単にアクセスしてきた者を「Veggerby Pedersen A/S」(Fax+457
        0240240、Email:info@mercedes.jp)に誘引しようとするものに過ぎない(甲
        第80号証)。
          登録者は、商業上の利得を得る目的で、そのウェブサイトの出所、スポンサ
        ーシップ、取引提携関係、推奨関係などについて誤認混同を生ぜしめることを
        意図して、インターネット上のユーザーを「Veggerby Pedersen A/S」(Fax+4
        570240240、Email:info@mercedes.jp)に誘引するために登録者ドメイン名を
        使用していると認められる。
    (iv)  登録者は申立人に対し、電話により、登録者ドメイン名を有償で譲渡したい
        との申し出を行っている。その際、登録者の提示した価格は具体的ではなかっ
        たが、登録者ドメイン名の「価値」に見合う額を示唆した(甲第81号証)。
  2)    上記事実に照らすと、登録者ドメイン名は不正の目的で登録または使用されて
      いると言うべきである。
        登録者が、その氏名及び商号と無関係であるにも係わらず、国際的に著名であ
      る申立人商標「MERCEDES」と同一の構成「MERCEDES」を要部とするドメイ
      ン名「MERCEDES.JP」を登録者ドメイン名として登録し、申立人商標に化体さ
      れた信用にただ乗りしようとする行為は不正の目的を有するものというべきで
      あり、また、登録者は商業上の利得を得る目的で、そのウェブサイトの出所、ス
      ポンサーシップ、取引提携関係、推奨関係などについて誤認混同を生ぜしめるこ
      とを意図して、インターネット上のユーザーを「Veggerby Pedersen A/S」(Fax
      +4570240240、Email:info@mercedes.jp)に誘引するために登録者ドメイン名を
      使用していると認められる。「JPドメイン名紛争処理方針」は、商業上の利得を
      得る目的で、そのウェブサイトの出所、スポンサーシップ、取引提携関係、推奨
      関係などについて誤認混同を生ぜしめることを意図して、インターネット上のユ
      ーザーをそのウェブサイトまたはその他のオンラインロケーションに誘引する
      ために登録者ドメイン名を使用するときは不正の目的であると認めることがで
      きる、としているところである(「JPドメイン名紛争処理方針」第4条b(iv))。
        さらに登録者ドメイン名が積極的に使用されず、単に、登録(保有)されて
      いるに過ぎない場合であっても、その登録の存在によって、正当な利益保有者に
      よる当該登録者ドメイン名と同一または類似するドメイン名の登録及び使用は
      妨げられるのであり、登録者はこのことを知って登録しているのであるから、正
      当な利益保有者による当該登録者ドメイン名と同一または類似するドメイン名
      の登録及び使用を妨害するという不正の目的を有すると言うべきである。
        加えて、登録者は申立人に対して譲渡の対価として登録者ドメイン名の「価
      値」に見合う額を示唆していると認められるが、「JPドメイン名紛争処理方針」
      第4条b(i)によれば、譲渡の対価は当該ドメイン名に直接かかった金額(書面
      で確認できる金額)が基準とされるのであり、殊更に登録者ドメイン名の「価値」
      に見合う金額を示唆したのは、登録者ドメイン名の要部であり、かつ、申立人の
      著名な商標である「MERCEDES」標章の有する価値を示唆したものと推認され
      る。「JPドメイン名紛争処理方針」第4条b(i)は「登録者が、申立人または申
      立人の競業者に対して、当該ドメイン名に直接かかった金額(書面で確認できる
      金額)を超える対価を得るために、当該ドメイン名を販売、貸与または移転する
      ことを主たる目的として、当該ドメイン名を登録または取得しているとき」には
      当該ドメイン名の登録または使用は不正の目的であると認めることができると
      規定している。
  3)    したがって、登録者ドメイン名はJPドメイン名紛争処理方針第4条a.(iii)の
      要件に該当するものと認められる。

  6  結論
      以上に照らして、本紛争処理パネルは、全員一致の意見によって、登録者によ
    って登録されたドメイン名「MERCEDES.JP」が申立人商標と混同を引き起こす
    ほど類似し、登録者が登録者ドメイン名について権利又は正当な利益を有してお
    らず、登録者ドメイン名が不正の目的で使用されているものと裁定する。
      よって、処理方針4条i.に従って、ドメイン名「MERCEDES.JP」の登録を申
    立人に移転を命ずるものとし、主文のとおり裁定する。

  2006年4月3日

  日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル

               主任パネリスト   田  倉      整

                  パネリスト    土  肥  一  史

                  パネリスト    島  田  康  男


別記(手続の経過)
(1)申立受領日
      電子メール  2006年1月13日    書面  2006年1月16日
(2)適式性
      日本知的財産仲裁センターは、申立書が社団法人日本ネットワークインフォメー
    ションセンター(JPNIC)のJPドメイン名紛争処理方針(方針)、JPドメ
    イン名紛争処理方針のための手続規則(規則)、JPドメイン名紛争処理方針のた
    めの補則(補則)の形式要件を充足することを確認した。
(3)手続開始日    2006年1月23日
      申立人は、センターに対して、2006年1月13日に規定料金を支払った。
(4)ドメイン名及び登録者の確認日
      センターの照会日(電子メール)    2006年1月16日
      JPRSの確認日及び確認内容(電子メール)
      1)2006年1月16日
      2)申立書に記載の登録者はドメイン名の登録者である。
(5)登録者・登録担当者への通知日及び内容
      1)2006年1月23日
      2)申立書、申立通知書(郵送及び電子メール)
      3)答弁書提出期限    2006年2月20日
(6)答弁書の提出の有無及び提出日
      登録者は、答弁書を提出しなかった。
(7)答弁書不提出通知書の登録者への送付日    2006年2月21日
(8)パネリストの選任
      3名パネル(申立人のみ指定あり、2名はセンターの選出)
      パネリストの指名    田倉  整(主任)、土肥一史、島田康男
(9)紛争処理パネルの指名及び予定裁定日の通知日  2006年3月13日
(10)宣言書の受領日    2006年3月16日、17日、27日
(11)予定裁定日    2006年4月3日