事件番号:JP2010-0001

裁 定

 申立人:
  (名称)ツイッター インコーポレイテッド(Twitter, Inc.)
  (住所)アメリカ合衆国 カリフォルニア州 94107 サンフランシスコ
    スイート 600 フォルサム ストリート 795
 代理人
  氏名:弁理士 小林 浩
  郵送先住所:〒104-0028東京都中央区八重洲二丁目8番7号 福岡ビル
               阿部・井窪・片山法律事務所
  電話番号:03-3273-2611
  ファクシミリ番号:03-3273-2034
  電子メールアドレス:kobayashi_hiroshi@aiklaw.co.jp
  氏名:弁護士 片山 英二
  郵送先住所:〒104-0028東京都中央区八重洲二丁目8番7号 福岡ビル
               阿部・井窪・片山法律事務所
  電話番号:03-3273-2611
  ファクシミリ番号:03-3273-2034
  電子メールアドレス:katayama@aiklaw.co.jp
  氏名:弁理士 鈴木康仁
  郵送先住所:〒104-0028東京都中央区八重洲二丁目8番7号 福岡ビル
               阿部・井窪・片山法律事務所
  電話番号:03-3273-2611
  ファクシミリ番号:03-3273-2034
  電子メールアドレス:suzuki@aiklaw.co.jp
  氏名:弁理士 瀧澤 文
  郵送先住所:〒104-0028東京都中央区八重洲二丁目8番7号 福岡ビル
               阿部・井窪・片山法律事務所
  電話番号:03-3273-2611
  ファクシミリ番号:03-3273-2034
  電子メールアドレス:takizawa@aiklaw.co.jp
登録者:
  (名称)合同会社 テラ・インターナショナル
     代表者 北畠徹也
  (住所)〒108-0014東京都港区芝4-16-2
    カテリーナ三田タワースイートイーストアーク3603(本社)
   (登記簿上:渋谷区円山町6番7号1階)

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン
名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理
方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・提出された証拠に基づいて審理
を遂げた結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定主文
  ドメイン名「twitter.co.jp」の登録を申立人に移転せよ
2 ドメイン名
  紛争に係るドメイン名は「twitter.co.jp」である。
3 手続の経緯
  別記のとおりである。

4 当事者の主張
 a 申立人
  申立人は、登録者が申立人の登録商標「TWITTER」及び「ついったー」と実質的に同一
であり、不正の目的で登録者によって採択されたドメイン名を登録していることを主張す
る。申立人によれば、本件紛争に係るドメイン名(以下「本件ドメイン名」という)は、
申立人の登録商標「TWITTER」と実質的に同一であり、また「ついったー」と同一の呼称を
有するため類似と認識され、登録者は本件ドメイン名について正当な利益を有していない、
そして本件ドメイン名は不正の目的で登録または使用されている。
 従って、申立人は、ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。
 b 登録者
  登録者によって答弁書は提出されなかった。

5 争点および事実認定
(登録者の特定について)
 申立書において、本件ドメイン名の登録者は、合同会社テラ・インターナショナルであ
り、代表者は北畠徹也氏とされている。ところが甲第10号証、甲第17号証には「株式会
社テラ・インターナショナル」との表記があり、また登録者から申立人に対して送られた
電子メールの転送記録である甲第15号証においても、登録者は「株式会社テラ・インター
ナショナル北畠」と名乗っていることが看取される。そこで、登録者が合同会社テラ・イ
ンターナショナルであるか株式会社テラ・インターナショナルに疑義が生じるので、以下
検討する。
 申立人が提出した証拠(甲第9号証)によれば、本件ドメイン名の登録者としてWhois
データベースに記載されているのは合同会社テラ・インターナショナルであり、代表者は
北畠徹也氏である。同名義による登録がなされていることは、本センターからの照会に対
して株式会社日本レジストリサービスから送付された「ドメイン名照会に対する通知」に
よっても明らかである。
 また、登録者からは答弁書が提出されていないが、本センター事務局担当者との間でや
りとりされた電子メールによれば、「株式会社テラ・インターナショナルの北畠」と名乗る
者がtwitter.co.jpを申立人に2万ユーロで売却することを申し出ていること、および
http://www.twitter.co.jp/takaponにリダイレクトを設定するなどの操作をしているこ
と、Twitter.co.jpを取得したことなどを自認するところである。なお、これらの登録者
と事務局との電子メール記録は正式な裁定記録を構成するものではなく、また申立人に写
しを交付してもいない資料だが、裁定の前提となる登録者の特定に資する資料としては、
斟酌することが許されるものと解する。
 以上の他、申立人提出に係る甲第15号証においても、「株式会社テラ・インターナショ
ナルの北畠」と名乗る者が本件ドメイン名の登録者であることを否定していないのはもち
ろん、むしろ登録者であることを前提にした内容となっている。
 従って、登録者が「株式会社テラ・インターナショナル」か「合同会社テラ・インター
ナショナル」かに関わらず、本件ドメイン名の登録者であることには齟齬がなく、登録者
の特定は十分であるものと認める。以下では申立書の表記に従い、登録者を「合同会社テ
ラ・インターナショナル」と表記する。
(本案について)
 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則に
ついてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・文書および審問の結果
に基づき、処理方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理
に従って、裁定を下さなければならない。」
 方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図してい
る。
 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示
と同一または混同を引き起こすほど類似していること
 (2)登録者が、ドメイン名の登録についての権利または正当な利益を有していないこ
と
 (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること

 (1)同一または混同を引き起こすほどの類似性
 申立人はTwitterの名称によりコミュニティサイトを運営している会社である。申立人
は、2006年7月16日から日本においても同じコミュニティサイトの運営を開始し、申立
人の集計によると2007年12月31日時点での登録ユーザー数は、46,622人であった
が(甲第2号証)、2010年1月には、5,000,000人となっている(甲第3号証)など、
著名な存在となっている。また日本での事業展開をするに際し、以下5件の商標登録出願
を行い、①、②について商標登録を受けている。③、④、⑤は出願中である。
 ①登録第5188811号(甲第4号証)
  商標:TWITTER
  役務:第38類、第42類、第45類
  登録日(出願日):2008年12月12日(2007年10月26日)
 ②登録第5278420号(甲第5号証)
  商標:ついったー
  役務:第38類、第42類、第45類
  登録日(出願日):2009年11月6日(2009年6月9日)
 ③出願2009-43802号(出願日:2009年6月11日)(甲第6号証)
  商標:TWEET
  役務:第38類、第42類、第45類
 ④出願2009-54304号(出願日:2009年7月16日)(甲第7号証)
  商標:つぶやく
  役務:第38類、第42類、第45類
 ⑤出願2009-54035号(出願日:2009年7月16日)(甲第8号証)
  商標:ツイート
  役務:第38類、第42類、第45類
 これに対して登録者の本件ドメイン名「twitter.co.jp」は、国別コードおよび属性部分
を除く要部「twitter」が識別機能を果たすところ、その部分は申立人が有する上記登録商
標「TWITTER」と同一であり、また、上記登録商標「ついったー」と同一の称呼を有するた
め混同を引き起こすほどに類似しているといえる。

 (2)権利または正当な利益の不存在
 申立人によれば、合同会社テラ・インターナショナルおよび北畠氏と申立人とは一切の
資本関係、取引関係、業務提携関係がなく、また申立人の調査によれば、本件ドメイン名
と同一または実質的に同一と認められる商標登録を登録者が有している事実は認められず、
申立人が前記登録商標「TWITTER」の使用を登録者に許諾した事実もうかがわれない。
 なお、甲第17号証によれば、登録者の沿革および標榜する活動内容に照らしても、本件
ドメイン名に関する権利または正当な利益があると認められる要素は存在しない。
 以上の事実から、登録者には本件ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有して
いないものと認められる。

 (3)不正の目的での登録または使用
a. Twitter de PONと不正目的
 申立書および各甲号証によれば、以下の事実が認められる。
 1) 登録者は、2010年1月15日の時点において「Twitter de PON」と題する投票サイト
においてtweetされるべき人を選んで投票するよう募るサイトを開設し、その中には
twitter.comへのリンクが付けられた「管理人-http:www.twitter.com/Tetsuya_K」という
表示があった(甲第12号証)。
 2) 「Twitter de PON」というサイト名自体が既に申立人と当該サイトとが何らかの関連
性を有することをうかがわせる。加えてその内容、特に甲第12号証に見られるように1行
目にTwitter de PON(http://twitter.co.jp/)とあり、2行目にTwitter, Inc.と申立人
の名称が記載され、あたかも申立人が当該サイトを運営するかのような記載となっている。
Tweetされるべき人の投票を募るとの内容は、申立人によるSuggested Usersへの推薦を
募る内容と解されるが、これも当該サイトと申立人との関連性もしくは提携関係をうかが
わせるものとなっている。
 3) 登録者は、下記(b)で述べる本件ドメイン名の譲渡申出において、登録者(代表北畠
氏)をTwitterの「Suggested Users List」(おすすめユーザーリスト)に加えてほしいと
の要求をした。このリストに加えられると、Twitterにおけるフォロワーが一気に増え、
極めて多数の利用者に登録者が発信する情報を伝えることができる効果が認められ、商業
上の利得につながりうるものと評価できる。
 以上の事実に照らし、登録者の本件ドメイン名の登録または使用は、商業上の利得を得
る目的で、そのウェブサイト「Twitterd de PON」およびその他の関係する登録者のサービ
スについて申立人との提携関係や推奨関係があるかのような誤認混同を生ぜしめることを
意図して、インターネット上のユーザーを登録者のウェブサイトその他のサービスに誘引
するためにされているものと解することが出来る。このことはJPドメイン名紛争処理方
針第4条b. (iv)を満たすものである。
b. ドメイン名譲渡目的による登録
 申立書および甲第15号証によれば、登録者は、本件ドメイン名の取得日から1月程しか
経過していない2010年1月4日に、申立人に本件ドメイン名を20,000ユーロ(約26
0万円)で譲りたい旨の連絡をして来たとの事実が認められる。他方、ドメイン名取得に
要する費用は、高くても1万円程度と考えられる。
 この事実はJPドメイン名紛争処理方針第4条b. (i)に定められた「当該ドメイン名に
直接かかった金額(書面で確認できる金額)を超える対価を得るために、当該ドメイン名を
販売、貸与または移転することを主たる目的として、当該ドメイン名を登録または取得」
したことをうかがわせる。
c. 以上、aおよびbに示したとおり、登録者は本件ドメイン名を不正の目的で登録または
使用していると認めることができる。

6 結論
 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン名
「twitter.co.jp」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者がドメイン名に
ついて権利または正当な利益を有しておらず、かつ、登録者のドメイン名が不正の目的で
登録または使用されているものと認める。
 よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「twitter.co.jp」の登録を申立人に移転す
るものとし、主文のとおり裁定する。

    2010年3月31日

   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
                            町村泰貴
              単独パネリスト


別記  手続の経緯
(1)申立書受領日
      電子メール 2010年1月28日 書面 2010年1月28日
(2)手数料受領日
      2010年1月28日  申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
      2010年1月28日  JPRSへ照会
      2010年1月28日  JPRSから登録情報の確認
      確認内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること
(4)適式性
      日本知的財産仲裁センター(以下、センターという。)は、2010年1月28日
  に申立書が処理方針と規則に照らし適合していることを確認した。
(5)手続開始日  2010年2月2日
      手続開始日の通知  2010年2月2日
      申立人らへ通知(電子メール、ファクシミリおよび郵送)
(6)登録者への通知日及び内容
      1) 2010年2月2日(電子メール、ファクシミリおよび郵送)
      2) 申立書及び証拠等一式
      3) 答弁書提出期限  2010年3月3日
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
      日本知的財産仲裁センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2
  010年3月4日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知
  書を、電子メールとファクシミリにて申立人および登録者に送付した。
(8)パネリストの選任  2010年3月10日
      申立人らは1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
      中立宣言書の受領日:2010年3月15日
      パネリスト:町村 泰貴
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
      2010年3月11日  JPNICおよびJPRSへ通知(電子メール)
                          申立人および登録者へ通知
              (電子メール、ファクシミリおよび郵送)
      裁定予定日:2010年3月31日
(10)パネリスト指名書及び一件書類受け渡し
      2010年3月11日(電子メールおよび郵送)
(11)パネルによる審理・裁定
      2010年3月31日  審理終了、裁定。