事件番号:JP2011-0009

裁 定

  申立人:
  (名称)Air Aroma Japan株式会社
  (住所)東京都世田谷区用賀4丁目10番3号
  登録者:
  (名称)アース・スタジオ株式会社(社名変更により現在はアットアロマ株式会社)
  (住所)東京都世田谷区鎌田3丁目12番16号

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン
名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理
方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・答弁書・提出された証拠に基づ
いて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定文
  ドメイン名「air-aroma.jp」の登録を申立人に移転せよ
2 ドメイン名
  紛争に係るドメイン名は「air-aroma.jp」である。
3 手続の経緯
  別記のとおりである。

4 当事者の主張
 a 申立人
 申立人は、申立人の登録商標「air aroma」を実質的に模写し、マークにおける申立人
の好評を利用する意図をもって、登録者が本件ドメイン名「air-aroma.jp」を登録してい
ることを主張する。申立人によれば、本件ドメイン名は、申立人の商標と混同を引き起こ
すほどに類似し、登録者は本件ドメイン名について正当な利益を有していない、そして本
件ドメイン名は不正の目的で登録され且つ使用されている。
従って、申立人は、ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。
b 登録者
 登録者によって答弁書は提出されなかった。

5 争点および事実認定
 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則に
ついてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・文書および審問の結果
に基づき、処理方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理
に従って、裁定を下さなければならない。」
 方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図してい
る。
 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示
と同一または混同を引き起こすほど類似していること
 (2)登録者が、ドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有していないこと
 (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること

 (1)同一又混同を引き起こすほどの類似性
 申立人は、本拠地をオーストラリア国に置く「エア アロマ リサーチ プロプライエ
タリー リミティッド」(以下、「申立人親会社」という。)の100%子会社の日本法人と
して、2011年1月13日に設立された日本市場でのリジョナルオフィスであり、申立
人親会社は、「air aroma」の文字を有する商標(別紙商標記載の商標)について、オースト
ラリア国において2001年に商品区分第3類、第5類及び第11類で商標登録を受けて
おり、日本国においても2005年に商品区分第3類及び第11類で商標登録を受けてい
る。
 そして、申立人の商標は、別紙商標記載のとおり、上下左右に配した4個の円図形(右
上に位置する円のみ青色)の右側に、「air aroma」の文字(「air」のみ青色)を配した構成
よりなり、図形と文字を常に一体のものとして称呼観念しなければならない格別の事由が
存するものとも理解し得ないから、「air aroma」の文字部分が独立して自他商品の識別標識
としての機能を果たし得るものと解される。
 したがって、申立人は、「air aroma」なる表示に商標としての正当な利益を有している。
 登録者は、2003年4月22日付で本件ドメイン名「air-aroma.jp」を登録し、イン
ターネットサイトを開設している。
 ところで、本件ドメイン名は、その構成中の「jp」は国別を示すものであり、その要部
となるのは「air-aroma」の部分である。
 そこで、「air aroma」と「air-aroma」を対比すると、両者は、「air」と「aroma」との間
にハイフン「-」を有するか否かの差異にすぎず、「エアアロマ」の称呼が共通し類似する。
 したがって、本件ドメイン名は、申立人の登録商標と混同を引き起こすほど類似してい
ると認められる。

 (2)権利又は正当な利益
 登録者の名称は、本件ドメイン名登録時(2003年4月22日)はアース・スタジオ株
式会社であり、本件ドメイン名と一致しない。
 ところで、申立人の主張及び提出した証拠によると、登録者は、申立人親会社の代理店
として「air aroma」商品の輸入販売をしていたが、代理店規約に違反して「air aroma」商品
のコピー商品を製造販売し始めたため、一時使用していたエアアロマ株式会社の社名を2
008年に現在のアットアロマ株式会社に変更したが、申立人親会社が2010年5月に
「air aroma」商品の販売停止と商標の使用禁止の勧告を出したにもかかわらず、引き続きコ
ピー商品を宣伝・販売するために本件ドメイン名を使用しているとのことである。
 そして、登録者は答弁書を提出せず、本件ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を
有していることの証明をしないことも併せて考慮すると、登録者が本件ドメイン名につい
て権利又は正当な利益を有するものとは認めることはできない。

 (3)不正の目的での登録及び使用
 申立人の主張及び提出した証拠によると、登録者は、申立人親会社の代理店であったが、
代理店規約に違反して「air aroma」商品のコピー商品を製造販売し始めたため、申立人親会
社は、2010年5月に「air aroma」商品の販売停止と商標の使用禁止の勧告を出し、日本
国で特許出願中のアロマディフューザーの散布技術に関して特許を取得すると、登録者の
コピー商品に対し法的措置を取るとのことである。
 また、本件ドメイン名は、「air aroma」で検索したネットユーザーを登録者のウェブサイ
トにリンクさせ誘導するように利用されており、ユーザーからも申立人(申立人親会社)
と登録者とが同じ会社であるかのように錯覚を起こさせるとの苦情を受けており、世界8
0カ国でビジネスを行っている申立人(申立人親会社)のブランドイメージを大きく下げ
るとのことである。
 ところで、方針第4条a(zB)は「登録または使用」と定められているため、後発的に
不正な目的で使用する場合をも含まれると解されるところ、登録者は、上記のとおり、申
立人親会社の代理店であったが、その後代理店規約に違反して「air aroma」商品のコピー商
品を製造販売し始めたため、申立人親会社より「air aroma」商品の販売停止と商標の使用禁
止の勧告を受けている。
 そして、登録者は、勧告後も本件ドメイン名を継続使用することによって、「air aroma」
で検索したネットユーザーを登録者のウェブサイトに誘導するように利用しており、申立
人(申立人親会社)と登録者とが同じ会社であるかのように錯覚を起こさせ、ユーザー間
で「air aroma」商品の混乱を招く原因となっている。
 以上の事実から判断すれば、登録者は、申立人の商標を利用して商業上の利得を得る目
的で本件ドメイン名の登録及び使用していると認められる。

6 結論
 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン名「air-
aroma.jp」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者がドメイン名について
権利又は正当な利益を有していない、登録者のドメイン名が不正の目的で登録され且つ使
用されているものと裁定する。
 よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「air-aroma.jp」の登録を申立人に移転す
るものとし、主文のとおり裁定する。

   2011年12月5日

   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
              福井 陽一
              単独パネリスト



別紙商標
            

air aromaロゴ





別記 手続の経緯
(1)申立書受領日
   電子メール及び書面 2011年9月5日(電子メール)及び同6日(書面)
(2)手数料受領日
   2011年9月21日 申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
   2011年9月15日 JPRSへ照会
   2011年9月15日 JPRSから登録情報の確認
   確認内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること
(4)適式性
   日本知的財産仲裁センター(以下、センターという。)は、2011年9月15
  日に、申立書が処理方針と規則に照らし、登録者の特定、証拠書類の一覧及び説明
  書並びに申立の対象となっているドメイン名に適用される処理方針の写しの添付
  を追完し、書面受領後10営業日以内に申立手数料を納付すべき旨の申立不備通知
  を、電子メールおよびファクシミリにて申立人に対し送信し、同月21日に申立手
  数料を受領し、同日に電子メールにより翌22日に書面により補正書を受信・受領
  し、10月6日に対象ドメイン名に適用される処理方針の写しを受領した。
(5)手続開始日 2011年10月6日
   手続開始日の通知 2011年10月6日に申立人、登録者、JPRS及びJPNIC
  へ通知(電子メール及び郵送)
(6)登録者への通知日及び内容
   1) 2011年10月6日(電子メール及び郵送。電子メールは到達せず、郵送
                分は「あて所に尋ねあたりません」として当センタ
                ーに返送された。)
   2) 申立書及び証拠等一式
   3) 答弁書提出期限 2011年11月7日
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
   日本知的財産仲裁センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、
  2010年11月8日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不出
  通知書を、電子メールと郵送にて申立人および登録者に送付した(登録者宛送信・
  郵送分については前記同様、不達・返送された)。
(8)パネリストの選任 2011年11月14日
   申立人は1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
   中立宣言書の受領日:2011年11月15日
   パネリスト:福井 陽一
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
   2011年11月14日 JPNICおよびJPRSへ通知(電子メール)
               申立人および登録者へ通知(電子メール及び郵送。登
               録者宛郵送分については前記同様、返送された)
   裁定予定日:2011年12月5日
(10)パネリスト指名書及び一件書類受け渡し
   2011年11月14日(電子メール及び郵送)
(11)パネルによる審理・裁定
   2011年12月5日 審理終了、裁定。