事件番号:JP2014-0005

              裁   定

  申立人:
  (名称)Lytro, Inc.
  (住所)米国、カリフォルニア州、マウンテンビュー、スイート100、
テラベラアベニュー1300
(1300 Terra Bella Avenue, Suite 100, Mountain View,California 94043,
USA)
  (送達場所)〒245-0052
             神奈川県横浜市戸塚区秋葉町520―71
    電話番号:+1-650-227-8869
    ファクシミリ番号:+1-650-227-2251
    電子メールアドレス:legal-internal@lytro.com

  登録者:
  (名称)Roll
  (住所)〒140-0011 東京都品川区東大井2-2-11
     電話番号:00810909387064
     FAX番号:00811111111
     電子メールアドレス:koriki@yahoo.com
 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、
JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センター
JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立
書・答弁書・提出された証拠に基づいて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定
する。

1.裁定主文
    ドメイン名「LYTRO.JP」の登録を申立人に移転せよ。
2.ドメイン名
  紛争に係るドメイン名は「LYTRO.JP」(以下本件ドメイン名という。)
である。
3 手続の経緯
  別記のとおりである。
 
4 当事者の主張
 (1)申立人
  ① 申立人は、下記の日本登録商標(以下、「本件登録商標」という。)の
所有者である。
    【発行日】平成25年3月19日(2013.3.19)
    【登録番号】商標登録第5558202号
    【登録日】平成25年2月15日(2013.2.15)
    【登録商標(標準文字)】LYTRO
    【商品及び役務の区分の数】3
    【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
 第9類 カメラ,カメラ用ケース,カメラ用ハウジング,カメラ用ストラッ
プ,その他のカメラ用部品及び附属品,デジタルカメラ,デジタルカメラ用ケ
ース,デジタルカメラ用ハウジング,デジタルカメラ用ストラップ,その他の
デジタルカメラ用部品及び附属品,デジタルビデオカメラ,デジタルビデオカ
メラ用ケース,デジタルビデオカメラ用ハウジング,デジタルビデオカメラ用
ストラップ,その他のデジタルビデオカメラ用部品及び附属品,カメラ用三脚,
カメラ用バッテリー,カメラ用レンズ,カメラ用無線アダプター,カメラ用電
源アダプター,カメラ用レンズマウントアダプター,カメラ用充電器,カメラ
用フィルター,カメラ用レンズプロテクター,デジタルカメラ・ビデオカメラ
用画像データ転送装置,デジタルカメラ・ビデオカメラ用バッテリーの充電装
置,デジタルカメラ・ビデオカメラで撮影した画像を共有するための電子計算
機用プログラム,デジタルカメラ用ディスプレイ,カメラ用光度計,露出計,
カメラ用リモートコントローラー,ビデオカメラ用マイクロフォン,カメラ用
SDカード,カメラ用フラッシュ,光の方向を記録することが可能な写真機械
器具及びビデオ装置用の光学センサー,カメラ付携帯電話機・その他のカメラ
付きの携帯型電気通信機械器具,デジタルフォトフレーム,デジタルビデオプ
レーヤー,デジタル画像及びビデオ映像の撮影・加工・閲覧・保存・編集・調
整・合成・共有・処理・修正・コメント付け・解像度の向上・画像処理及び修
正の制限・ダウンロード用のコンピュータソフトウェア,デジタル画像及びビ
デオ映像を保存したデータベース・ライブラリー・リポジトリーの作成・編集・
保守用のコンピュータソフトウェア,デジタル画像及びビデオ映像のデータベ
ース・ライブラリー・リポジトリーの検索用のコンピュータソフトウェア,カ
メラ付携帯電話機・その他のカメラ付きの携帯型電気通信機械器具の画像品質
及び操作性を向上させるためのコンピュータソフトウェア,携帯電話機・その
他の携帯型電気通信機械器具で映像・画像・ビデオ映像を送信又は表示するた
めのコンピュータソフトウェア,画像品質及び操作性向上のためにソーシャル
ネットワーキングサイトで使用されるコンピュータソフトウェア,写真機械器
具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具及び
その部品
 第41類 写真の撮影技術及びビデオ撮影技術に関するオンラインセミナ
ー・個人指導・書籍・ホワイトペーパー・研究報告書・取扱説明書・個人教授・
論文・教育用ゲームに関するオンライン学習用電子出版物の提供,写真の撮影
技術及びビデオ撮影技術の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの
企画・運営又は開催,電子出版物の提供
 第42類 ダウンロード不可能な画像編集用コンピュータソフトウェアの提
供,デジタル画像及びビデオクリップの閲覧・保存・編集・調整・合成・共有・
処理・修正・解像度の向上・コメント付け・ダウンロードに関するコンピュー
タプログラムの提供,デジタル写真・デジタルビデオのコンピュータデータの
オンラインバックアップ処理,ユーザーがデジタル写真・デジタルビデオのア
ップロード・閲覧・保存・編集・処理・修正・解像度の向上・タグ付け・コメ
ント付け・ダウンロードすることが出来るウェブサイトの作成,ユーザーが映
像・画像・写真・ビデオ映像及びビデオログをアップロード・閲覧・保存・編
集・調整・合成・交換・共有・処理・修正・解像度の向上・コメント付け・ダ
ウンロードすることが出来るウェブサイトの作成,電子計算機のプログラムの
設計・作成又は保守,ウェブサイトの作成又は保守,電子計算機用プログラム
の提供,写真撮影技術及びビデオ撮影技術に関する情報・指導書・提案・カメ
ラ・ビデオ製品に関する講評が掲載された娯楽及び教育用コンピュータソフト
ウェアの提供,ユーザーが写真及びビデオ映像の投稿・閲覧・保存・編集・処
理・修正・調整・合成・共有・コメント付け・解像度を向上することができる
娯楽及び教育用コンピュータサーバ記憶領域の貸与,写真の撮影技術及びビデ
オ撮影技術に関するオンラインセミナー・個人指導・書籍・ホワイトペーパー・
研究報告書・取扱説明書・個人教授・論文・教育用ゲームに関するオンライン
学習用コンピュータプログラムの提供,映像・画像及びビデオクリップ用コン
ピュータプログラムの提供
    【国際分類第9版】
    【出願番号】商願2011-63311
    【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
    【優先権主張番号】85/256,081
 申立人の「LYTRO」の商標は、撮影機器と関連ソフトウェアおよび関連
資料に関わるものである。
  ②本申立におけるドメイン名「LYTRO.JP」は、申立の時点において
JPRSに登録されている。
  ③ 申立人の商標「LYTRO」について
  ア Lytro,Inc.は、商標名「LYTRO.JP」を用いて一般向けデジタル
カメラの開発、宣伝、販売を行う米国の企業である。Lytroのライトフィールド
カメラは、撮影シーンから従来よりも多くのライトフィールドの情報を取り込
み、高度なソフトウェア・アルゴリズムを用いることで、記録した視野情報
から「ピントを可変できる写真」を生み出す。3次元で構成されているため、
撮影後に再フォーカスでき、3Dイメージを提供し、マルチビューが可能であ
る。Lytroのライトフィールドカメラは、日本を含む世界各国で販売されてい
る。Lytroのカメラを日本で販売するオンラインショップのスクリーンショッ
トは、ANNEX2である。
  イ 申立人の商標「LYTRO」は一般的な用語ではない。
「LYTRO」という単語は、2011年初頭に、社外の商標コンサルタント
が申立人に対し、会社および製品の名称とする目的で提案したものである。申
立人は2011年2月28日に正式に「Lytro,Inc.」の名称を採用し
た。2011年6月22日まで「Lytro,Inc.」は、ネット上の居場所
を公開しない「ステルスモード」で営業していたため、その存在を公表せず、
技術や製品の宣伝を行なっていなかった。当時申立人は、まだ一般に公表する
には至らない製品の技術開発に取り組んでいたことが理由である。
2011年6月22日、申立人は世界的なPRキャンペーンに着手し、会社の
存在および画期的なライトフィールド画像技術を公開した。PRの努力の結果、
日本を含む幅広いメディアに取り上げられた。2011年6月に掲載された日
本の記事を、本申立書のANNEX3、4、5として提出する。「LYTRO」
という単語は申立人の名称と強い関連性を持つ。その証拠として、「LYTRO」
でGoogle検索を行なった場合の結果を本申立書のANNEX6として提
出する。
  ウ 申立人の商標は、前記の通り、商標登録第5558202号「LYTR
O」である。本件ドメイン名は、「LYTRO.JP」であり、国別コードであ
るトップレベルドメイン「.JP」は本質的部分でなく、なんら識別の価値を持
たないのであり、申立人の商標と本件ドメイン名は類似する。
  ④「LYTRO.JP」の登録者は当該ドメイン名に関する権利もしくは合
理性を持たない。申立人と本件ドメイン名の登録者の間では商業上又はその他
の関係は一切ない。申立人は、登録者に対し、本件ドメイン名「LYTRO.
JP」の登録と「LYTRO」の商標を使用することを認めていない。
 申立人が特許庁で商標データベースの検索を行なったところ、登録者に関す
る商標登録情報は表示されなかった。
 登録者の名前であるRollは、申立人の商標「LYTRO」と類似しない。
また、登録者の通称は「LYTRO」ではなく、登録者は「LYTRO」の名
を冠した製品やサービスの提供あるいは売買を行なっていない。
  ⑤登録者のドメイン名は不正目的によって登録し、使用していた。
  ア 登録者が「LYTRO.JP」を登録したのは2011年7月12日で、
申立人が「Lytro,Inc.」を2011年6月22日に世界的なPRキャ
ンペーンをして、その画期的技術が広く世界に公表されたわずか3週間後であ
る。一般的用語ではない「LYTRO」がまだ誰にも利用されていなかった頃
である。登録者が「LYTRO」に関する報道を知った後に「LYTRO.JP」
を登録したと推測される。
 更に、登録者は「LYTRO.JP」は、ドメイン登録後3年も経過している
にも関わらず、当該ドメインのホームページにはいまだに「準備中」と表示さ
れていた。2014年5月27日に申立人が記録した「LYTRO.JP」のス
クリーンショットを、ANNEX9である。しかし現在では使用されていない。
  イ 申立人と登録者の間で交わされたEメールは、登録者が、lytro.jpに
直接関わる妥当な金額を上回る対価で申立者に売ることを主な目的としてl
「LYTRO.JP」を登録したことを示している。
 2014年5月23日、申立人の従業員である法律顧問Mariana Antcheva
は、「LYTRO.JP」の登録者にEメールを送り、「LYTRO.JP」を妥
当な金額で買い取る旨を申し出た。法律顧問Mariana Antchevaが見積もった買
い取り金額は500USドルである。登録者から2014年5月26日に届い
た返信で、ドメインは「使用中である」と主張され、「ドメインの移転について
話し合ってもよいが、この提示金額は対価として不適切である」と述べられて
いる。2014年5月27日に法律顧問Mariana Antchevaが登録者に返信を送
り、妥当な金額でドメインを買い取る旨を再度伝えた。このメールに対する登
録者からの返信はない。妥当な金額を支払うという申立人の申し出を検討する
ことを拒否し、かっ「対価として不適切である」と述べていることから、登録
者は当該ドメインに対してより高額の支払いを期待していることは明白である。
登録者の行為は正にJPドメイン名紛争処理方針の第4条b.(i)に該当する。

5.争点および事実認定
 (1).規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することに
なっている原則についてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された
陳述及び文書の結果に基づき、方針、規則、及び適用されうる関係法規の規定、
原則ならびに条理に従って、裁定を下さなければならない。」
 方針第4条aは、申立人が次事項の各々を証明しなければならないことを指
図している。
  ① 登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標
その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること
  ② 登録者が、ドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有して
いないこと
  ③ 登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること
 したがって、以上の①から③について申立人の主張について検討する。
 (2).(1)の①乃至③について検討する。
  ① 同一又混同を引き起こすほどの類似性について
   登録者は答弁書を提出していないので、申立人の主張について、認定で
来る事実を前提に判断する。
  申立人の商標は、商標登録第5558202号「LYTRO」であり、本
件ドメイン名は、「LYTRO.JP」であるから、両者は、混同を惹き起すほ
どに類似すると認定できる。
  ② 権利又は正当な利益の欠如について
   申立人と本件ドメイン名の登録者の間では商業上又はその他の関係は一
切なく、申立人は、登録者に対し、本件ドメイン名「LYTRO.JP」の登録
と「LYTRO」の商標を使用することを認めていない。申立人は、特許庁で
商標データベースでも、登録者に関する商標登録情報は表示されなかった。登
録者は商標「LYTRO」の名を冠した製品やサービスの提供あるいは売買を
行なっていない。
   よって、登録者は本件ドメイン名に関する権利、及び正当な利益を有し
ていないと認定出来る。
  ③ 不正の目的での登録または使用
  登録者が「LYTRO.JP」を登録したのは2011年7月12日であり、
申立人が「Lytro,Inc.」について2011年6月22日に世界的なP
Rキャンペーンをした約3週間後である。
  登録者は「LYTRO.JP」は、ドメイン登録後3年も経過しているにも
関わらず、当該ドメインのホームページにはいまだに「準備中」と表示されて
いた(2014年5月27日)。なお現在では表示されない。
   又、申立人と登録者の間で交わされたEメールでは、2014年5月2
3日に申立人の従業員である法律顧問Mariana Antchevaは、「LYTRO.JP」
の登録者にEメールを送り、「LYTRO.JP」を500USドルという妥当
な金額で買い取る旨を申し出た。その後、登録者から2014年5月26日に
届いた返信で、ドメインは「使用中である」と主張され、「ドメインの移転に
ついて話し合ってもよいが、この提示金額は対価として不適切である」と述べら
れており、その後申立人から妥当な金額でドメインを買い取る旨を再度伝えた
が、このメールに対する登録者からの返信はなかった。
   この事実は、登録者が申立人に対して、当該ドメイン名に直接かかった
金額を超える対価を得るために、当該ドメイン名を移転することを主目的に当
該ドメイン名を登録したと認定できる。
   よって、登録者のドメイン名が不正の目的で登録された、使用されたと
認定できる。

6. 結論
 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録された本件ドメイ
ン名が申立人の本件登録商標と同一又は混同を引き起こすほど類似しており、
登録者の本件ドメイン名に関して権利又は正当な利益を有しておらず、登録者
の本件ドメイン名が不正の目的で登録され、使用されているとは認定出来ると
判断した。
 よって、申立人が求めた本件ドメイン名「LYTRO.JP」の申立人への移
転請求を認容し、方針第4条ⅰに従って、ドメイン名「LYTRO.JP」の登
録を申立人に移転するものとし、主文の通り裁定した。
  
2014年9月29日
        日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル

        単独パネリスト     渡 邊    敏

別記  手続の経緯
(1)申立書受領日
      2014年7月15日(電子メール)及び7月16日(書面)
(2)手数料受領日
      2014年7月30日  申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
      2014年7月30日  JPRSへ照会
      2014年7月30日  JPRSから登録情報の回答
      回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、
                JPRSに登録されている登録者の電子メールアドレス及び住
                所等
(4)適式性
      日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2014
    年7月30日に、申立書が処理方針と規則に照らし申立書が適合している
    ことを確認した。
(5)登録者への通知日及び内容
      1) 申立書送付日(手続開始日) 2014年8月1日(電子メール及び
郵送)
      2) 申立書及び証拠等一式
      3) 答弁書提出期限  2014年8月29日
(6)手続開始日  2014年8月1日
      センターは、2014年8月1日に申立人及び登録者には電子メール及
    び郵送で、JPRS及びJPNICには電子メールで、手続開始日を通知した。
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
      センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2014
    年9月2日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出
    通知書を、電子メールと郵送にて申立人及び登録者に送付した。
(8)パネリストの選任  2014年9月5日
      申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
      中立宣言書の受領日:2014年9月10日
      パネリスト:弁護士 渡邊 敏
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
      2014年9月5日  JPNIC及びJPRSへ電子メールで通知
                         申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知
      裁定予定日:2014年9月29日
(10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し
      2014年9月5日(電子メール及び郵送)
(11)パネルによる審理・裁定
      2014年9月29日  審理終了、裁定。