事件番号:JP2016-0010

                  裁 定

  申立人:
  名称:インダストリア・デ・ディセーニョ・テキスティル・エス・エイ(インディテク
     ス・エス・エイ)
  住所:スペイン国、ア・コルーニャ、アルテイホ 15142、エディフィシオ・イ
     ンディテクス、アブニーダ・デ・ラ・ディピュタシオン
  代理人:弁護士 宮川 美津子
      弁理士 森本 久実
      弁護士 新谷 美保子

  登録者:名称:Taizhou Kingdom Toys & Gifts Co. ,Ltd.
  住所:東京都渋谷区桜丘町26-1セルリアンタワー11階
     Postal Address: 6F Yaoda Bldg, Shifu Rd

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン
名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理
方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・答弁書・提出された証拠に基づ
いて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定主文
  ドメイン名「ZARAHOME.JP」の登録を申立人に移転せよ。
2 ドメイン名
  紛争に係るドメイン名は「ZARAHOME.JP」(本件ドメイン名)である。
3 手続の経緯
  別記のとおりである。
 

4 当事者の主張
 a 申立人
   申立人は、申立人の世界的に著名なファッションブランドとして使用し我が国にお
  いても商標登録第5215667号(甲3)、国際商標登録第834842号(甲4)、国際商標登
  録第976068号をもって登録されている登録商標「ZARA HOME」を、登録者が
  実質的に模写し、申立人の上記商標ないしブランドにおける申立人の好評を利用する
  意図をもって登録者によって採択された本件ドメイン名「ZARAHOME.JP」を登録して
  いることを主張する。申立人によれば、本件ドメイン名は、申立人の商標と混同を引
  き起こすほどに類似し、登録者はドメイン名について正当な利益を有していない、そ
  してドメイン名は不正の目的で登録され且つ使用されている。
   従って、申立人は、ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。
 b 登録者
   登録者によって答弁書は提出されなかった。

5 争点および事実認定
  規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則
 についてパネルに次のように指示する。
「パネルは、提出された陳述・文書および審問の結果に基づき、処理方針、本規則および
 適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理に従って、裁定を下さなければなら
 ない。」
  方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図して
 いる。
(1)登録者のドメイン名が、申立人が権利又は正当な利益を有する商標その他表示と同
 一又は混同を引き起こすほど類似していること
(2)登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないこと
(3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録又は使用されていること

(1)同一又は混同を引き起こすほどの類似性
 (a)申立人が権利又は正当な利益を有する商標その他表示
    申立人は、我が国において次の登録商標およびドメイン名を所有している。
 (ア)商標登録第5215667号(甲3の1,3の2)
    商標の構成:「ZARA HOME」という標準文字からなる商標
    商品及び役務の区分並びに指定商品または指定役務:第35類
    「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便宜の提供」、「家具の
    小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便宜の提供」その他別紙ア参照。
    (以下「本件商標1」という。)
 (イ)国際商標登録第834842号(甲4の1、4の2)
    商標の構成:英文字「ZARA HOME」を横書きしてなる商標
    商品及び役務の区分並びに指定商品または指定役務:第25類「女性用、男性用
   及び子供用の既製被服」、第20類「木製家具」その他別紙イ参照
   (以下「本件商標2」という。)
 (ウ)国際商標登録第976068号(甲5の1、5の2)
    商標の構成:英文字「ZARA HOME」を横書きしてなる商標
    商品及び役務の区分並びに指定商品または指定役務:第15類「楽器、オルゴー
   ル」他、第34類「喫煙用具」その他別紙ウ参照
   (以下「本件商標3」という。)
 (エ)その他の標章
    上記に加え、申立人は日本において「http://www.zarahome.com/jp/」のドメイ
   ン名でインターネットによる被服・家具等の商品販売を行っている。
    (以下、「申立人ドメインネーム」という。)
 (b)申立人の本件商標に対する正当な利益
    申立人は、本件商標1ないし3の商標を我が国その他の国において登録して
   おり、また、被服については「ZARA」の、家具等については本件各商標「Z
   ARA HOME」を付した商品を、スペインを本拠とし、欧州各国その他日
   本を含む多数の国で広く販売し、また、本件役務商標を付した店舗を、欧州各
   国その他日本を含む極めて多数の国に展開し営業を行ってきたことが認められ
   る(甲6、8~10)。また、申立人は申立人ドメインネームを付したホームペ
   ージを通じて被服や家具の商品の販売を行っていると認められる(「http:
   //www.zarahome.com/jp/」参照)。
    したがって、申立人は本件商標について正当な利益を有するものと認められる。
 (c)本件ドメイン名と本件商標1ないし3との混同を惹起するほどの類似性
    本件ドメイン名「ZARAHOME.JP」のトップレベル・ドメインの「JP」は日本国を
   示す国名コードである。したがって、本件商標と比較する場合は、ドメイン名
   「ZARAHOME」が本件ドメイン名における要部ないし比較対象であると認められる。
    すなわち、「ZARAHOME」の部分のみが、本件ドメイン名における自他識別力を有
    する部分であり、その部分と本件商標1ないし3の「ZARA HOME」とを比
   較すると、本件商標1ないし3が「ZARA」と「HOME」の間に僅かに間隔を
   設けて構成されており、本件ドメイン名は「zarahome」と一連に構成され
   ている点に相違があるとはいえ、両者の構成はほとんど同一であり,「ザラホーム」
   という称呼も同一である。よって、本件ドメイン名は本件商標1ないし3と混同を
   惹起するほどに類似していると認められる。

(2)登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないこと
   登録者が、「ZARA HOME」の商標を所有、あるいは使用している事実は存し
  ないと認められる。また、登録者が、申立人と商標使用許諾契約や販売契約その他申
  立人から本件ドメイン名を使用することについて同意を得ている事実も、認められな
  い。
   一方、世界的に広汎に「ZARA」ないし「ZARA HOME」のブランドで営
  業を展開している申立人が、営業的に関係のないと認められる登録者に対し、そのホ
  ームページに本件ドメイン名の使用を許諾することを、合理的に推測することもでき
  ない。
   よって、登録者は、本件ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していない
  と認められる。

(3)不正の目的での登録及び使用
   上述のとおり、登録者は、「ZARAHOME」の商標を所有していないし、また、
  商標として使用している事実も存しない。また、登録者は、申立人と商標使用許諾契
  約や販売契約その他申立人から本件ドメイン名を使用することについて同意を得て
  いる事実も認められない。
   しかるところ、登録者は、そのホームページにおいて、本件ドメイン名「zarahome.jp」
  を使用して、自己の営業であるKingdom Toys & Gift Co., Ltd. およびL.F. Arts &
  Crafts Co., Ltd.における広告に使用しており、その使用は、もっぱら、インターネ
  ットの視聴者に登録者の営業が申立人の営業となんらかの関係があるごとく誤信さ
  せる機能をはたしているに過ぎない。
   よって、登録者が、上記の記載をしたウェブサイトを引続き維持することによる本
  件ドメイン名の使用は、登録者が商業上の利得を得る目的で、そのウェブサイトに申
  立人との取引提携関係があるような誤認混同を生ぜしめるものであり、また、インタ
  ーネットユーザーに当該ウェブサイトに誘引するために、本件ドメイン名を使用する
  ものであるから、本件ドメイン名が登録者により不正の目的で登録且つ使用されてい
  るものと認められる。

6 結論
  以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録された本件ドメイン名
 「ZARAHOME.JP」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者が、本件ドメ
 イン名について権利又は正当な利益を有していない、登録者の本件ドメイン名が不正の目
 的で登録され且つ使用されているものと裁定する。
  よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「ZARAHOME.JP」の登録を申立人に移転す
 るものとし、主文のとおり裁定する。

    2016年9月27日

   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
                            パネリスト 熊倉 禎男
              単独パネリスト
 
別記  手続の経緯
(1)申立書受領日
   2016年7月27日(電子メール)及び7月28日(書面)
(2)手数料受領日
   2016年7月27日  申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
   2016年7月28日  JPRSへ照会
   2016年7月28日  JPRSから登録情報の回答
   回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、JPRSに登
  録されている登録者の電子メールアドレス及び住所等
(4)適式性
   日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2016年7月29日
   に、申立書が処理方針と規則に照らし申立書が適合していることを確認した。
(5)登録者への通知日及び内容
   1) 申立書送付日(手続開始日) 2016年7月29日(電子メール及び郵送)
   2) 申立書及び証拠等一式
   3) 答弁書提出期限  2016年8月29日
(6)手続開始日  2016年7月29日
   センターは、2016年7月29日に申立人及び登録者には電子メール及び郵送で、
  JPRS及びJPNICには電子メールで、手続開始日を通知した。
  (但し登録者宛郵送分については「あて所に尋ねあたりません」として返送された。)
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
   センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2016年8月30
  日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知書を、電子メー
  ル及び郵送で申立人及び登録者に送付した。
  (但し登録者宛郵送分については「あて所に尋ねあたりません」として返送された。)
(8)パネリストの選任  2016年9月5日
   申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
   中立宣言書の受領日:2016年9月12日
   パネリスト:弁護士 熊倉禎男
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
   2016年9月5日  JPNIC及びJPRSへ電子メールで通知
             申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知
(但し登録者宛郵送分については「あて所に尋ねあたりません」として返送された。)
   裁定予定日:2016年9月27日
(10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し
   2016年9月5日(電子メール及び郵送)
(11)パネルによる審理・裁定
   2016年9月27日  審理終了、裁定。


別紙ア
別紙イ
別紙ウ