事件番号:JP2018−0002

                裁 定

申立人:
  氏名(名称):ニクソン インコーポレーテッド

  住所:アメリカ合衆国 カリフォルニア州 92024 エンシニタス
     サウス コースト ハイウェイ 701

  代理人:
  氏名(名称):弁理士 加藤 勉
  氏名(名称):弁理士 萼 經夫
  氏名(名称):弁理士 熊坂 美由紀

登録者:
  氏名(名称):Zhao Ke

  住所:中華人民共和国200041 上海市 威海路 655

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、
JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センター
JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立
書・答弁書・提出された証拠に基づいて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定
する。

1 裁定主文
  ドメイン名「NIXON.JP」の登録を申立人に移転せよ。
2 ドメイン名
  紛争に係るドメイン名は「NIXON.JP」である。
3 手続の経緯
  別記のとおりである。

4 当事者の主張
 a 申立人
 申立人は、以下の2件の登録商標(以下「本件登録商標」という。)の権利者
である(甲第1号証及び甲第2号証)。

商標登録第4380366号「NIXON」(標準文字、指定商品第14類「腕
時計、懐中時計」等)
商標登録第5068403号「NIXON」(標準文字、指定商品第18類「革
製・獣皮製・皮革製・模造皮革製のかばん類,織物製かばん」等)

 申立人は、登録者が、本件登録商標をその構成中に含むドメイン名「NIXON.JP」
(以下「本件ドメイン名」という。)を、使用する目的ではなく専ら転売目的で
登録していると主張し、本件ドメイン名登録の申立人への移転を請求している。

 b 登録者
  登録者によって答弁書は提出されなかった。

5 争点および事実認定
 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになって
いる原則についてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・
文書および審問の結果に基づき、処理方針、本規則および適用されうる関係法
規の規定・原則、ならびに条理に従って、裁定を下さなければならない。」
 方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを
指図している。
 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利又は正当な利益を有する商標そ
の他表示と同一又は混同を引き起こすほど類似していること
 (2)登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していない
こと
 (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録又は使用されていること

 (1)同一又は混同を引き起こすほどの類似性
 本件ドメイン名「NIXON.JP」において、「.JP」は日本を意味するトップレ
ベルドメインであって類否判断には影響しない部分であるので、本件ドメイン
名は「NIXON」の要部において本件登録商標と一致する。すなわち、本件ドメ
イン名は、本件登録商標と、外観及び称呼において類似する。
 本件登録商標に周知著名性が認められるとの十分な立証はないが、同商標を
使用して、公式オンラインストア及び国内の有名デパート等で時計、バッグが
販売され(甲第6号証乃至甲第11号証)、映画「スターウォーズ」とのコラ
ボ商品が販売された(甲第8号証乃至甲第11号証「関連ニュース」参照)な
どの事実から、時計等の需要者の間で一定程度の周知性があると推認される。
よって、本件ドメイン名が時計等を販売するウェブサイトについて使用された
場合には、本件登録商標と出所混同のおそれがある。
 よって、本件ドメイン名を使用した場合には、本件登録商標と混同を引き起
こすほどの類似性があるということができる。

 (2)権利又は正当な利益
 申立人は、登録者のドメイン名「NIXON.JP」に係るウェブサイトが、特別な
コンテンツを持たず、Sedoのドメインマーケットプレイスにおいて、登録者
のドメイン名「NIXON.JP」を小文字で表示した「nixon.jp」の販売を行ってい
る、と主張する。これについては、https://sedo.comのウェブサイトにおい
て、本件ドメイン名と実質的に同一の「nixon.jp」が販売の申し出を行ってい
る事実は、これを認めることができる(甲第12号証)。
 登録者が本件ドメイン名の販売の申し出を行っているということは、これを
使用する意思がないと認められるものであり、加えて本件ドメイン名の登録者
名はZhao Keであって、本件ドメイン名との関連性は認められない。
 よって、登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有している
と認めることはできない。

 (3)不正の目的での登録及び使用
 登録者は、他のドメイン名紛争事件、すなわち「joneslanglasalle.jp」の事
例でもドメイン名の登録者になっており、同ドメイン名について移転の裁定が
されている(甲第13号証)。
 また、株式会社日本レジストリサービスのサイト「WHOIS」において、登録者
名を「Zhao Ke」で検索すると、「該当する結果が多すぎます。」と表示され(甲
第14号証)、ドメイン名を転売目的で多数登録していることが窺える。よって、
本件ドメイン名の登録は、正当な使用目的によるものではないと考えられる。

6 結論
 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン名
「NIXON.JP」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者が、ドメ
イン名について権利又は正当な利益を有していない、登録者のドメイン名が不
正の目的で登録され且つ使用されているものと裁定する。
 よって、方針第4条i.に従って、ドメイン名「NIXON.JP」の登録を申立人
に移転するものとし、主文のとおり裁定する。

   2018年6月18日

   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
              西村 雅子
              単独パネリスト

別記  手続の経緯
(1)申立書受領日
      2018年4月12日(電子メール)及び4月13日(書面)
(2)手数料受領日
      2018年4月12日  申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
      2018年4月13日  JPRSへ照会
      2018年4月13日  JPRSから登録情報の回答
      回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、
               JPRSに登録されている登録者の電子メールアドレス及び住
               所等
(4)適式性
      日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2018
    年4月19日に、申立書が処理方針と規則に照らし申立書が適合している
    ことを確認した。
(5)登録者への通知日及び内容
      1) 申立書送付日(手続開始日) 2018年4月19日(電子メール及
        び郵送)
      2) 申立書及び証拠等一式
      3) 答弁書提出期限  2018年5月22日
(6)手続開始日  2018年4月19日
      センターは、2018年4月19日に申立人及び登録者には電子メール
    及び郵送で、JPRS及びJPNICには電子メールで、手続開始日を通知した。
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
      センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2018
      年5月23日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提
      出通知書を、電子メール及び郵送で申立人及び登録者に送付した。
(8)パネリストの指名 2018年5月29日
      申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
      言明書の受領日:2018年6月1日
      パネリスト:弁理士 西村 雅子
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
      2018年5月29日  JPNIC及びJPRSへ電子メールで通知
                          申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知
      裁定予定日:2018年6月18日
(10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し
      2018年5月29日(電子メール及び郵送)
(11)パネルによる審理・裁定
      2018年6月18日  審理終了、裁定。