事件番号:JP2018-0005

                  裁 定

  申立人:
  (氏名/名称)ザ・リアルリアル・インコーポレーテッド
  (住所)フランシスコ・ストリート55番地、スイート600、サンフランシスコ、
カリフォルニア州、郵便番号94133、アメリカ合衆国
  代理人:弁護士 中澤 章
       同  石新 智規
       同  桃井 恭祐
  登録者:
  (氏名/名称)安永 亜希
  (住所)〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪
タワーB23階 Whois情報公開代行サービス by バリュードメイン

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル(以下、パネルという。)は、JPドメイン名
紛争処理方針、JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センタ
ーJPドメイン名紛争処理方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・答弁書・
提出された証拠に基づいて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定主文
  ドメイン名「THEREALREAL.JP」の登録を申立人に移転せよ。

2 ドメイン名
  紛争に係るドメイン名は「THEREALREAL.JP」である。

3 手続の経緯
  別記のとおりである。

4 当事者の主張
 a 申立人
 申立人は、「THEREALREAL」(商標登録第5617996号)が申立人の所有に係る著名ブランド
であることは、米国だけでなく日本でもよく知られており、登録者は、申立人の有する顧
客吸引力を利用するため、申立人が使用にあたって正当な利益を有する本件ドメイン名に
ついての登録を、申立人の不注意による登録喪失を機に取得したと主張している。申立人
の主張によれば、本件ドメイン名は、申立人の商標と混同を引き起こすほどに類似してお
り、登録者は本件ドメイン名について正当な利益を有しておらず、それゆえ、本件ドメイ
ン名は不正の目的で登録され且つ使用されている、とのことである。
 そして、申立人は、本件ドメイン名についての登録の申立人への移転を請求している。
 b 登録者
  登録者による答弁書の提出はされなかった。したがって、登録者の主張は無かったも
のと見做される。

5 争点および事実認定
 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則に
ついて、パネルに次のように指示している。「パネルは、提出された陳述・文書および審問
の結果に基づき、処理方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに
条理に従って、裁定を下さなければならない。」
 方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図してい
る。
 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利又は正当な利益を有する商標その他表示と
同一又は混同を引き起こすほど類似していること
 (2)登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないこと
 (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録又は使用されていること

 (1)同一又は混同を引き起こすほどの類似性
 申立人は、「THEREALREAL」(商標登録第5617996号)の商標権者である。
 本件ドメイン名「THEREALREAL.JP」のうち、「JP」の部分はトップレベルドメインであっ
て国別コードの日本を意味するに過ぎず、本件ドメイン名において識別力を有する要部は
「THEREALREAL」部分であり、申立人の有する登録商標と同一である。
 したがって、本件ドメイン名は、申立人が権利を有する登録商標と混同を引き起こすほ
ど類似していると認められる。

(2)権利又は正当な利益
 申立人は、登録者が本件ドメイン名を登録した2017年7月31日以前より、本件ドメイ
ン名を登録したうえで使用して過去何年にもわたりビジネスを行っていたが、2017年5月
1日に登録料の支払いを誤って怠ってしまい、本件ドメイン名についての登録を喪失して
いたところ、登録者は、それを奇貨として、2017年5月1日の略3ヶ月後に本件ドメイン
名を登録した。そして、登録者は、本件ドメイン名を用いていわゆる成人動画サイトを運
営しており、また、THEREALREALをサービス名称としてすら使用していないと説明してい
る。斯かるもとで、申立人は、登録者の行為は、申立人の有する顧客吸引力を利用するた
め、申立人が使用にあたって正当な利益を有する本件ドメイン名を、申立人の不注意によ
る登録喪失を機に取得したのであるから、登録者が本件ドメイン名に関係する正当な利益
を有していないことが明らかであると主張している。
 当該主張に対して、登録者は答弁書を提出しておらず、また、一件記録を検討しても、
方針第4条c(ⅰ)から(ⅲ)に該当するような登録者の本件ドメイン名に関係する権利
又は正当な利益の存在を裏付ける事実や、権利又は正当な利益の不存在を否定する例外的
な事情は認められない。
 したがって、登録者は本件ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないと
認められる。

 (3)不正の目的での登録及び使用
 申立人は、登録者がアダルトサイトを運営するために申立人の登録商標と同一のドメイ
ン名を利用する合理的な理由が全くない以上、申立人の登録商標が有する顧客吸引力を利
用するという不正な目的のためにのみ本件ドメイン名が登録されかつ使用されたことは明
白であると主張している。
 また、登録者は、申立人からの本件ドメイン名の返還交渉の申し入れに対し何ら回答し
ておらず、それに加えて、登録代行業者は、登録者に連絡を取ることができない状況にあ
るという経緯を説明している。
 そして、申立人の主張に対して、登録者は答弁書を提出しておらず、また、一件記録を
検討しても、不正の目的での登録又は使用を否定する例外的な事情は認められない。
 したがって、本件ドメイン名は登録者によって不正の目的で登録され、使用されている
と認められる。

6 結論
 以上に照らして、パネルは、登録者によって登録されたドメイン名「THEREALREAL.JP」
が申立人の登録商標と混同を引き起こすほど類似しており、登録者が当該ドメイン名につ
いて権利又は正当な利益を有しておらず、当該ドメイン名が登録者によって不正の目的で
登録され且つ使用されている、と裁定する。
 よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「THEREALREAL.JP」の登録を申立人に移転
すべきものとし、主文のとおり裁定する。

   2018年8月27日

   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
              中 村  仁
              単独パネリスト




別記  手続の経緯
(1)申立書受領日
   2018年6月7日(電子メール)及び6月8日(書面)
(2)手数料受領日
   2018年6月15日 申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
   2018年6月15日 JPRSへ照会
   2018年6月15日 JPRSから登録情報の回答
   回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、
         JPRSに登録されている登録者の電子メールアドレス及び住
         所等
(4)適式性
   日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2018
  年6月19日に申立人に対し、不備通知書(証拠の一覧と説明書、委任状
  及び法人の代表者を証明する公的証明書類の提出)を発信し、6月26日
  に申立人から書類を受領した。センターは、6月28日にこれらの書類に
  ついて更に不備通知書(法人の代表者を証明する公的証明書類についての
  補足、委任状の日本語訳についての確認)を発信し、7月3日に申立人か
  ら書類を受領し、申立書が処理方針と規則に照らし適合していることを確
  認した。
(5)登録者への通知日及び内容
   1) 申立書送付日(手続開始日) 2018年7月5日(電子メール及び
    郵送)
   2) 申立書及び証拠等一式
   3) 答弁書提出期限日 2018年8月3日
(6)手続開始日 2018年7月5日
   センターは、2018年7月5日に申立人及び登録者には電子メール及
  び郵送で、JPRS及びJPNICには電子メールで、手続開始日を通知した。
  (但し登録者宛郵送分については「あて名不完全で配達できません」とし
  て返送された)
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
   センターは、提出期限日(2018年8月3日)までに答弁書を受領し
  なかったので、2018年8月6日に、「答弁書の提出はなかったものと
  見做す」旨の答弁書不提出通知書を、電子メール及び郵送で申立人及び登
  録者に送付した。
  (但し登録者宛郵送分については「あて名不完全で配達できません」とし
  て返送された)
(8)パネリストの指名 2018年8月7日
   申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
   言明書の受領日:2018年8月15日
   パネリスト:弁理士 中村 仁
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
   2018年8月7日 JPNIC及びJPRSへ電子メールで通知
             申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知
  (但し登録者宛郵送分については「あて名不完全で配達できません」とし
  て返送された)
   裁定予定日:2018年8月27日
(10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し
   2018年8月7日(電子メール及び郵送)
(11)パネルによる審理・裁定
   2018年8月27日  審理終了、裁定。