事件番号:JP2019-0002

                   裁 定

  申立人:
  (氏名/名称)元気株式会社
  (住所)〒164-8721 東京都中野区本町一丁目32番2号 ハーモニータワー
  代理人:弁護士 對崎 俊一、同 對崎 綾子
  登録者:
  (氏名/名称)Midori Hachisuka
  (住所)〒100-6005 東京都千代田区霞が関 霞が関ビル5階
   ※但し、上記JPRS登録情報の「公開連絡窓口」住所は不完全な住所であるため、日
   本知的財産仲裁センターからの通知は同情報の「登録者の所在地」住所に送付した。

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン
名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理
方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・答弁書・提出された証拠に基づ
いて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定主文
  ドメイン名「SB-X.JP」の登録を申立人に移転せよ。
2 ドメイン名
  紛争に係るドメイン名は「SB-X.JP」である。
3 手続の経緯
  別記のとおりである。
4 当事者の主張
 a 申立人
  申立人は、ゲームソフトやデジタルコンテンツの企画・開発・販売及び運営、並びに
 パチンコ・パスチロの企画及び開発等を主な事業内容として、平成2年10月16日に
 設立された株式会社である。申立人は、主力製品であるゲームソフトウエア「首都高バ
 トル」のシリーズ作品として、スマートフォン向けゲームアプリ「首都高バトルXTREME」
 (以下、「本件ゲームアプリ」という)を平成29年1月より「Apple Store」及び「Google
 Play」で一般向けに頒布し、平成29年11月のサービス終了まで頒布回数を50万回
 以上、売り上げ約2億8500万円をあげ、最盛期にはアプリランキング1位を獲得し
 た(甲9、10、11)。
  申立人は本件アプリの頒布に先立ち、平成28年4月28日に、本件ゲームアプリの
 略称「SB-X」に「.JP」を加えた表示である本件ドメイン名「SB-X.JP」を「申立人のド
 メイン名」として正式に登録した(甲4~6)。その後本件ゲームアプリの頒布は平成
 29年10月末をもって終了した。それに伴い、申立人は、平成30年4月30日付で
 このドメイン名を更新することなく登録を終了させ、ドメイン名を使用する旧公式サイ
 トも閉鎖した。
 b 登録者
  他方、登録者は、平成30年6月1日付けで申立人の終了したドメイン名「SB-X.JP」
 を登録し(甲15)、前述した申立人の本件ゲームアプリの名称を無断で使用した(甲
 16)。また、登録者は、申立人の本件ゲーム画像を切り取って添付したり、無断で申
 立人の旧公式サイトをあたかも本物であるかのように使用し(甲7、16)、オンライ
 ン紹介サイトに誘因している(甲17)。
5 争点および事実認定
  規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則
 についてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述証拠の結果に基づ
 き、処理方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理に従っ
 て、裁定を下さなければならない。」
  方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図して
 いる。
 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利又は正当な利益を有する商標その他表示と
   同一又は混同を引き起こすほど類似していること
 (2)登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないこと
 (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録又は使用されていること

 (1)同一又は混同を引き起こすほどの類似性
  同一のドメイン名であるから、類似に疑問の余地はない。
 (2)権利又は正当な利益
  登録人に自己の権利並びに正当な利益のないことは、種々説明するまでもない。
 (3)不正の目的での登録及び使用
  上記申立人によるドメイン名の廃止、並びにその登録終了後による登録者による同一
 ドメイン名の登録と、申立人の閉鎖・終了させたゲームアプリの使用の実態からみて、
 申立人の主張に正当な根拠があるものとこ認定するのが合理的である。
6 結論
  以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン名「SB-X.JP」
 が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者が、ドメイン名について権利又
 は正当な利益を有していない、登録者のドメイン名が不正の目的で登録され且つ使用さ
 れているものと裁定する。
  よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「SB-X.JP」の登録を申立人に移転するも
 のとし、主文のとおり裁定する。

    2019年3月27日
   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
                            パネリスト名
              単独パネリスト  松 尾  和 子


別記  手続の経緯
(1)申立書受領日
   2019年2月5日(電子メール)及び2月6日(書面)
(2)手数料受領日
   2019年2月6日  申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
   2019年2月6日  JPRSへ照会
   2019年2月6日  JPRSから登録情報の回答
   回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、JPRSに登
         録されている登録者の電子メールアドレス及び住所等
(4)適式性
   日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2019年2月13
  日に、申立書が処理方針と規則に照らし申立書が適合していることを確認した。
(5)登録者への通知日及び内容
   1) 申立書送付日(手続開始日) 2019年2月13日(電子メール及び郵送)
   2) 申立書及び証拠等一式
   3) 答弁書提出期限  2019年3月13日
(6)手続開始日  2019年2月13日
   センターは、2019年2月13日に申立人及び登録者には電子メール及び郵送で、
   JPRS及びJPNICには電子メールで、手続開始日を通知した。
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
   センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2019年3月14
  日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知書を、電子メー
  ル及び郵送で申立人及び登録者に送付した。
(8)パネリストの指名 2019年3月18日
   申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
   言明書の受領日:2019年3月20日
   パネリスト:弁護士 松尾 和子
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
   2019年3月18日 JPNIC及びJPRSへ電子メールで通知
              申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知
   裁定予定日:2019年4月8日
(10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し
   2019年3月18日(電子メール及び郵送)
(11)パネルによる審理・裁定
   2019年3月27日  審理終了、裁定。