事件番号:JP2020-0004

                  裁 定

  申立人:
  名称:TikTok株式会社
  住所:東京都千代田区霞が関三丁目2番6号 東京倶楽部ビルディング11階
  代理人:弁理士 加藤 勉
      弁理士 萼 經夫
      弁里士 熊坂 美由紀

  登録者:
  名称:沁善株式会社
  住所:山口県岩国市門前町1-6-24

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン
名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理
方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・答弁書・提出された証拠に基づ
いて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定主文
  ドメイン名「TIKTOK.CO.JP」の登録を申立人に移転せよ。

2 ドメイン名
  紛争に係るドメイン名は「TIKTOK.CO.JP」(本件ドメイン名)である。

3 手続の経緯
  別記のとおりである。

4 当事者の主張
 a 申立人
   申立人はダンスなどの短い動画を配信するSNSとして世界的に周知著名な動画投
  稿アプリ「TikTok」を運営する中国企業バイトダンス エルティーディー (以
  下「申立人親会社」という)の日本における子会社として「TikTok株式会社」
  の社名及び「tiktok.com」のドメイン名で、世界的に周知著名な「TikTok」の
  表示により上記動画投稿アプリの運営を行い、また、申立人は申立人親会社の保有す
  る「Tik Tok」の複数の登録商標にもとづく許諾を受けて上記動画投稿アプリ
  の運営の役務に「TikTok」の商標を使用しているものであるところ、登録者が
  申立人の使用する本件商標及び上記表示と混同を引き起こすほどに類似した本件ドメ
  イン名「TIKTOK.CO.JP」を登録して保持していると主張する。申立人によれば、登録
  者はドメイン名について正当な利益を有していない。そしてドメイン名は不正の目的
  で登録され、かつ、保持されている。
   従って、申立人は、本件ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。
 b 登録者
   登録者は、答弁書を提出し、登録者の今後の事業の展開としてTikTokで動画
  をアップし自己の商品をPRする意図で本件ドメイン名を予め登録したものであり、
  今後ホームページ等で使用する意図があるが、不正の目的で登録及び保持しているも
  のではない等の主張を行っている。

5 争点及び事実認定
  規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則
 についてパネルに次のように指示する。
 「パネルは、提出された陳述・文書及び審問の結果に基づき、処理方針、本規則及び適
 用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理に従って、裁定を下さなければならな
 い。」
  方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図して
 いる。
(1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と
  同一または混同を引き起こすほど類似していること
(2)登録者が、ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと
(3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること

 a 同一または混同を引き起こすほどの類似性
 (a)申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示
  (ⅰ)申立人は、我が国において申立人親会社が保有する次の登録商標にもとづく許
    諾を受けて商標を動画投稿アプリの運営に使用している。
   (ア)商標登録第6064328号(甲1)
      商標の構成:英文字「Tik Tok」を横書きしてなる商標
      商品及び役務の区分並びに指定商品または指定役務:  第41類
      「携帯情報端末を通じたオンラインによる音楽ビデオの提供」その他甲1参
      照。
      (以下「本件商標1」という。)
   (イ)商標登録第6144093号(甲2)
      商標の構成:英文字「Tik Tok」を横書きしてなる商標
      商品及び役務の区分並びに指定商品または指定役務:第9類「アプリケーシ
      ョンソフトウェア」その他甲2参照
      (以下「本件商標2」という。)
  (ⅱ)また、申立人は日本においてTikTok株式会社の商号(以下「申立人社名」
    という)により、「tiktok.com」のドメイン名を有し(以下「申立人ドメイン名」
    という)、「http://www.tiktok.com/ja/」のURLでインターネットによる動画投
    稿アプリの運営を行っている(以下、「申立人社名」及び「申立人ドメイン名」を
    合わせて「本件表示」という)。
 (b)申立人の本件商標及び本件表示に対する正当な利益
    申立人は、申立人親会社が保有する本件商標1及び2にもとづく許諾を受け
   て我が国においてその指定商品及び指定役務に使用しており、また、上記親会
   社は「TikTok」の表示を使用して極めて多数の国で動画投稿アプリによ
   るSNSの運営を行ってきたこと、申立人も我が国において「Tik Tok」
   の文字よりなる商標、申立人社名及び申立人ドメイン名を使用して動画投稿ア
   プリによるSNSを広範に運営してきたこと、東京都・大阪府・広島県等の地
   方自治体の情報発信にも採用されたこと(甲6ないし9)、その結果、申立人の
   動画アプリは2018年度において我が国で最も多数回ダウンロードされた
   と報告されたこと(甲5)等から、本件商標1及び2ならびに上記表示は我が
   国において申立人及びその親会社の動画投稿アプリ及び同アプリを使用し運
   営する業務を示すものとして周知著名になったと認められる(甲3ないし9)
   と認められる。
    したがって、申立人は本件商標及び本件表示について正当な利益を有するものと
   認められる。
 (c)本件ドメイン名と本件商標1ないし3及び本件表示との混同を惹起するほどの類
   似性
    本件ドメイン名「TIKTOK.CO.JP」のトップレベル・ドメインの「JP」は日本国
   を示す国名コードであり、セカンド・レベル・ドメインの「CO」は組織の属性を
   示すコードである。したがって、本件表示及び商標と比較する場合は、ドメイン名
   「TIKTOK」が本件ドメイン名における要部ないし比較対象であると認められ
   る。
    すなわち、「TIKTOK」の部分のみが、本件ドメイン名における自他識別力
   を有する部分であり、その部分と本件商標1及び2の「Tik Tok」とを比較
   すると、本件商標1及び2が「Tik」と「Tok」の間に僅かに間隔を設けて構
   成されており、本件ドメイン名は「TIKTOK」と一連に構成されている点に相
   違があるとはいえ、両者の構成はほとんど同一であり,「ティクトック」という称
   呼も同一である。また、本件ドメインと申立人社名及び申立人ドメイン名の比較さ
   れるべき部分も、それぞれ「TikTok」及び「tiktok」であり、本件ド
   メイン名とほとんど同一であり、本件ドメイン名は本件商標1及び2、申立人社名、
   申立人ドメイン名と混同を惹起するほどに類似していると認められる。なお、この
   点について、登録者は否定をしているが、合理的な理由は示されていない。むしろ、
   登録者は答弁書において「ペット商品等のPRとしてTik TokやYoutu
   beでの動画アップロードを既にしているので、分かりやすいドメイン名を探して」
   取得したと述べており、申立人の使用する本件表示や商標を認識した上で、ほぼ同
   一の本件ドメイン名を取得したものと認められる。
 b 登録者が、ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと
   登録者が、「TIK TOK」の商標を所有あるいはその表示を現在まで使用してい
  る事実は存しないと認められる。また、登録者が、申立人またはその親会社から商標
  使用許諾契約や販売契約その他本件ドメイン名を使用することについて同意を得て
  いる事実も認められない。
   一方、世界的に周知著名な「Tik Tok」の表示と商標で営業を展開している
  申立人ないしその親会社が、営業的に関係のないと認められる登録者に対し、本件ド
  メイン名の使用を許諾することを、合理的に推測することもできない。
   むしろ、登録者は、答弁書において、自己の商品について「今後の展開としてTi
  k Tokで動画をアップロードしPRをするつもりでドメインを予め取得しており
  ました」「半年間、HP、新商品の準備をしてきました。今後も使って行きたい所存
  です」と述べて、申立人の本件表示等による営業を知りながら承諾等を得ないで登録し
  たこと及び現在は使用していないことを、事実上認めていると言える。
   よって、登録者は、本件ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していな
  いと認められる。
 c 不正の目的での登録及び使用
   上述のとおり、登録者は、「TIK TOK」の商標を所有していないし、また、商
  標その他の営業表示として使用している事実も存しない。また、登録者は、申立人と
  商標使用許諾契約や販売契約その他申立人から本件ドメイン名を使用することにつ
  いて同意を得ている事実も認められない。
   申立人は、本件ドメイン名が登録された2020年3月12日には、「Tik To
  k」の商標及び表示は、日本は勿論世界において周知著名の商標になっていたのである
  から、登録者が本件ドメイン名を保持し続けることは高額な対価での売却を企図し
  たことが窺われる、と主張している。
   この点についても登録者は答弁書において、自己の商品のPRのため「今後の展開
  としてTik Tokで動画をアップしPRをするつもり」「半年間、HP、新商品の
  準備をしてきました。今後も使って行きたい所存です」と述べている。しかし、高額
  での転売を企図していなくても、登録者が自らの商品の宣伝のために本件ドメイン名
  を使用してホームページを開設し、申立人の運営する動画投稿アプリにその宣伝をア
  ップロードすれば、登録者の当該宣伝サイトが申立人の営業の一部であるとの誤認・
  混同ないしは申立人と取引提携関係があるとの誤認・混同を招き、誤認したユーザー
  を登録者のホームページに誘導することは合理的に予測できるものであるので、むし
  ろ、登録者の登録及び将来の使用のための保持は、不正の目的に本件ドメインが使用
  されることになると認められる。
   よって、登録者による本件ドメイン名の登録及び将来の使用のための保持は、登録
  者が商業上の利得を得る目的で、申立人との取引提携関係があるような誤認混同を生
  ぜしめるものであり、また、申立人の運営する動画投稿アプリによるSNSのユーザ
  ーに登録者のホームページに誘引するために本件ドメイン名が使用されうるもので
  あるから、本件ドメイン名が登録者により不正の目的で登録・保持されているものと
  認められる。

6 結論
  以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録された本件ドメイン名
 「TIKTOK.CO.JP」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者が、本件ドメ
 イン名について権利または正当な利益を有していない、登録者の本件ドメイン名が不正
 の目的で登録されかつ保持されているものと裁定する。
  よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「TIKTOK.CO.JP」の登録を申立人に移転
 するものとし、主文のとおり裁定する。

    2020年8月31日

   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
                            パネリスト 熊倉 禎男
              単独パネリスト

別記  手続の経緯
(1)申立書受領日
      2020年6月15日(電子メール)及び6月18日(書面)
(2)手数料受領日
      2020年6月19日  申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
      2020年6月22日  JPRSへ照会
      2020年6月22日  JPRSから登録情報の回答
      回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、JPRSに登
                録されている登録者の電子メールアドレス及び住所等
(4)適式性
      日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2020年6月25
    日に補正(補正書)が必要と判断してその旨を申立人に通知し、2020年6月30
    日に補正書類を受領し、申立書が処理方針と規則に照らし適合していることを確認した。
(5)登録者への通知日及び内容
      1) 申立書送付日(手続開始日) 2020年7月1日(電子メール及び郵送)
      2) 申立書及び証拠等一式
      3) 答弁書提出期限  2020年7月31日
(6)手続開始日  2020年7月1日
      センターは、2020年7月1日に申立人及び登録者には電子メール及び郵送で、
    JPRS及びJPNICには電子メールで、手続開始日を通知した。
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
      センターは、2020年7月16日に答弁書を受領し、2020年7月27日に答
    弁書の写し及びテキストファイルの提出についての不備を登録者に通知した。センタ
    ーは、2020年7月28日にテキストファイルを受領し、2020年8月3日に答
    弁書の写しを受領し、処理方針と規則に照らし答弁書が適合していることを確認し、
    2020年8月4日に、電子メール及び郵送で申立人に送付した。
(8)パネリストの指名 2020年8月11日
      申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
      言明書の受領日:2020年8月14日
      パネリスト:弁護士 熊倉 禎男
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
      2020年8月11日  JPNIC及びJPRSへ電子メールで通知
                            申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知
      裁定予定日:2020年8月31日
(10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し
      2020年8月11日(電子メール及び郵送)
(11)パネルによる審理・裁定
      2020年8月31日  審理終了、裁定。