事件番号:JP2022-0008

                 裁 定

  申立人:
  (氏名/名称)日清食品ホールディングス株式会社
  (住所)大阪府大阪市淀川区西中島四丁目1番1号
  代理人:弁理士 網野友康、同 網野誠彦

  登録者:
  (氏名/名称)株式会社ドミニオン
  (住所)Whois情報公開代行サービス by お名前.com
      東京都渋谷区桜丘町 26-1 セルリアンタワー 11階

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、JPドメイン
名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理
方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・答弁書・提出された証拠に基づ
いて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定主文
 ドメイン名「CHIKINRAMEN.JP」の登録を申立人に移転せよ。

2 ドメイン名
 本件紛争の対象たるドメイン名は、「CHIKINRAMEN.JP」(以下「本件ドメイン名」という)
である。

3 手続の経緯
 別記のとおりである。

4 当事者の主張
 a 申立人
(1) 登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示
と同一または混同を引き起こすほど類似していること

①申立人について
 申立人は、1948年に設立され、日清食品株式会社や明星食品株式会社などの食品会
社を傘下に持つ持株会社であり、傘下の会社は「カップヌードル」や「チキンラーメン」
などの即席麺等の食品の製造・販売を中心とした事業を営む、日本を代表する企業の一つ
である(甲第2号証)。

②申立人が権利または正当な利益を有する商標その他の表示(以下、「申立人商標等」)に
ついて
 申立人は、「チキンラーメン」に関連する登録商標を多数保有しており(甲第3号証)、
そのうち「チキンラーメン」の文字のみからなる商標についても、防護標章登録を含めて、
以下の4件保有している。なお、登録第2685160号については、「鶏肉入りの即席中
華そばめん,鶏肉味の即席中華そばめん」における著名性が認められ商標法第3条第2項
の適用を受けて登録となっているものである。

「チキンラーメン」(登録第2685160号)(甲第4号証の1)
「チキンラーメン」(登録第2685160号防護第06号)(甲第4号証の2)
「チキンラーメン」(登録第3025985号)(甲第4号証の3)
「チキンラーメン」(登録第4937828号)(甲第4号証の4)

また、申立人は「CHICKENRAMEN.JP」のドメインを2016年に登録し
(甲第5号証)、現在も「チキンラーメン」のブランドサイトのドメインとして使用して
いる(甲第6号証)。

さらに、申立人はその商品ブランド「チキンラーメン」の発売当時、そのパッケージに
「CHIKIN RAMEN」という英語表記を使用していた(甲第7号証)。 この点、
チキンの英訳として「CHICKEN」ではなく「CHIKIN」という表示を使用する
ことは非常に特徴的であることから、この事実はいわゆるWikipediaにも記載さ
れている(甲第8号証)。なお、申立人は、「CHIKINRAMEN.COM」についても
ドメインを保有している(甲第9号証)。

③本件ドメイン名と申立人商標等が類似することについて
 登録者のドメイン名は「CHIKINRAMEN.JP」(「本件ドメイン名」)であると
ころ、「.JP」の部分はトップレベルドメインであって国別コードの日本を意味し識別力
を有しないことから、本件ドメイン名の要部は、セカンドレベルドメインである「CHI
KINRAMEN」である。そして、この「CHIKINRAMEN」は、特に辞書等に
記載されている言葉ではなく、「RAMEN」が「ラーメン」を表す英単語(甲第10号証)
であることを考慮すると、「CHIKIN」部分をローマ字読みして、全体で「チキンラー
メン」と称呼されるのが自然である、
 一方で、申立人商標等である登録商標「チキンラーメン」と、登録ドメイン名「CHI
CKENRAMEN.JP」の要部である「CHICKENRAMEN」からは、「チキン
ラーメン」の自然な称呼が生じる。
 したがって、本件ドメイン名と申立人商標等は、要部において「チキンラーメン」の称
呼が共通する。
 また、本件ドメイン名「CHIKINRAMEN.JP」と申立人の登録ドメイン名「C
HICKENRAMEN.JP」は、「CHIKIN」と「CHICKEN」の差はあるが、
その他の点では共通し外観上相紛らわしい。
 さらに、後述するように「チキンラーメン」は申立人の著名な商品ブランドであること
から、「チキンラーメン」の称呼を生じる本件ドメイン名と申立人商標等に接する需要者等
は、申立人の著名な商品ブランドである「チキンラーメン」を想起する。
 以上のとおり、本件ドメイン名と申立人商標等である登録商標「チキンラーメン」及び
登録ドメイン名「CHICKENRAMEN.JP」は、称呼及び観念が共通し、申立人
の登録ドメイン名においては外観も近似することから、両者が混同を引き起こすほど類似
していることは明らかである。
 なお、申立人が「チキンラーメン」発売当時使用していた「CHIKIN RAMEN」
の英語表記と本件ドメイン名の要部は、スペースの有無を除いて同一文字列であり、申立
人が保有する「CHIKINRAMEN.COM」と本件ドメイン名は要部が共通すること
から、これらとの関係においても本件ドメイン名と申立人商標等は混同を引き起こすほど
類似している。

(2) 登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと

①本件ドメイン名に関係する権利または正当な利益について
 申立人は、本件ドメイン名の登録者である株式会社ドミニオンに、申立人の登録商標に
かかる商標の使用や、ドメインの登録及び使用を許諾していない。
 また、申立人の調べる限り、日本において「チキンラーメン」の称呼を生じる登録商標
は申立人しか保有しておらず(甲第11号証)、「CHIKINRAMEN」の文字列を有
する登録商標も存在しない(甲第12号証)。
 したがって、申立人以外の者が「チキンラーメン」に関連する権利または正当な利益を
有している事実は存在せず、登録者が本件ドメイン名に関係する権利または正当な利益を
有していることもあり得ない。

②「JPドメイン名紛争処理方針」第4条C.(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)について
 「JPドメイン名紛争処理方針」第4条Cに、「特に以下のような事情がある場合には、
登録者は当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していると認めなければな
らない。」とあるが、これらについても該当しないことについて、念の為、以下のとおり言
及する。

(ⅰ)第4条C.(ⅰ)について
 登録者は、2020年6月11日に「復縁の神様」と題するウェブサイトを開設してお
り、本件申立時において、本件ドメイン名を使用して当該ウェブサイトを公開している(第
13号証)。
 しかし、本ウェブサイト上において、本件ドメイン名の要部である「CHIKINRA
MEN」や「チキンラーメン」に関係するような名称やコンテンツは一切見受けられない。
また、登録者と思われる会社のウェブサイト上においても、これらの使用は見受けられな
い(甲第14号証)。
 また、本ウェブサイト開設後、2020年6月15日に「九州の復縁神社おすすめ12選!
恋愛・縁結びで有名な神社」という記事が掲載されたのみで、その後、本件申立時に至る
まで特にウェブサイトが更新されておらず、本件ドメイン名を使用して正当な目的でサー
ビスの提供を行う意図は見受けられない。
 これらを考慮すると、登録者は、商品またはサービスの提供を正当な目的をもって行う
ために、当該ドメイン名またはこれに対応する名称を使用しているとは到底考えられない。

(ⅱ)第4条C.(ⅱ)について
 登録者の名称は「株式会社ドミニオン」であり、申立人の調べでは、この登録者が「C
HIKINRAMEN(チキンラーメン)」の名称で一般に認識されているような事実は存
在しない。

(ⅲ)第4条C.(ⅲ)について
 申立人は、2008年4月5日頃から2017年3月13日頃まで、「チキンラーメン」
の公式サイトのドメイン名として「CHIKINRAMEN.JP」を使用していた(甲
第15号証)。そして、2017年3月14日頃から2019年6月13日頃までは、別ド
メインへ転送するためのドメインとして、「CHIKINRAMEN.JP」を使用してい
た(甲第16号証)。その後、2019年8月31日に申立人による「CHIKINRAM
EN.JP」の登録が切れると(甲第17号証)、2019年9月1日にバックオーダーサ
ービスにより「CHIKINRAMEN.JP」が登録され(甲第18号証)、2019年
9月18日には現在の登録者に移転されている(甲第19号証)。なお、登録者はバックオ
ーダーサービスにより本件ドメインを取得していることから、移転前の登録者と現在の登
録者は同視できるものであり、申立人においてもこれを区別せずに、現在の登録者を「登
録者」として話を進める。
 後述するように、本件ドメイン名の登録時である2019年9月1日及び現登録者への
移転時である2019年9月18日時点において、申立人の商品「チキンラーメン」の著
名性は極めて高いものとなっていたことや、上述のように申立人が「チキンラーメン」の
公式サイトに「CHIKINRAMEN.JP」を長年使用していたこと、申立人による
「CHIKINRAMEN.JP」の登録が切れるとすぐに登録者がこれを登録したこと
を考慮すると、登録者が「申立人の商標その他表示を利用して消費者の誤認を惹き起こす
ことにより商業上の利得を得る意図、または、申立人の商標その他表示の価値を毀損する
意図」を有していることは強く推認することができ、将来的にも消費者の誤認や申立人商
標の価値の毀損が生じる蓋然性は非常に高いものと言える。

 以上のとおりであるから、登録者は、本件ドメイン名に関係する権利または正当な利益
を有していないことは明らかである。

(3) 登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること
 申立人の製造・販売するインスタントラーメン「チキンラーメン」は極めて著名な商品
ブランドであり、この「チキンラーメン」のローマ字表記の一つである「CHIKINR
AMEN.JP」を申立人とは無関係の登録者が登録することは、申立人の商品ブランド
の著名性にフリーライドして商業上の利得を得るなどの、登録者の不正の目的が強く推認
できる行為である。このことについて、以下詳述する。

①申立人の商品ブランド「チキンラーメン」の著名性について
「チキンラーメン」は、申立人の創業者である安藤百福が開発した世界初のインスタン
トラーメンであり、1958年8月25日に発売が開始されて以来、申立人の主力商品と
して時代の波に乗って急成長を遂げて販売数を伸ばし(甲第20号証、甲第21号証)、現
在に至るまで日本全国で継続して販売されることにより、我が国の需要者において極めて
著名な商標として認識されている。
 「チキンラーメン」の具体的な販売数や売上は非公表だが、「チキンラーメン」発売45
周年目にあたる2004年には累計販売数が45億食となり、この当時において史上最高
の年間売上げである580万ケース(1ケース30食入り)の販売を達成している(甲第
21号証)。また、「チキンラーメン」発売60周年目にあたる2018年度には史上最高
の売上高を更新している(甲第22号証)。
 これらの公表されている数字のみからしても、「チキンラーメン」が60年以上の長年に
わたり我が国の需要者に愛され、年間1億食以上を売り上げる商品として我が国において
浸透していることが理解できる。
 また、商標登録第2685160号は、「鶏肉入りの即席中華そばめん,鶏肉味の即席中
華そばめん」における「チキンラーメン」の著名性が認められ商標法第3条第2項の適用
を受けて1994年に登録となっており(甲第4号証の1)、2006年にはその著名性の
高さから防護標章登録も認められている(甲第4号証の2)。さらに、「チキンラーメン」
のパッケージの配色からなる「色彩のみからなる商標」も、商標法第3条第2項の適用を
受けて、2022年3月25日に登録を認められている(甲第23号証)。
 このように、遅くとも1994年から現在に至るまで、「チキンラーメン」が我が国の需
要者間において著名であることは、特許庁も認めるところである。

 以上のとおりであるから、本件ドメイン名の登録時である2019年9月1日及び現登
録者への移転時である2019年9月18日時点において、申立人の登録商標及び商品ブ
ランドである「チキンラーメン」は極めて高い著名性を有しており、また、現在において
もその著名性が維持されていることは明らかである。

②登録者による他のドメインの登録について
本件ドメイン名の登録者である「株式会社ドミニオン」は、本件ドメイン名だけでなく、
他者の以前使用していたドメイン名や、他者の商標を含むドメイン名を複数登録している
事実も見受けられる(甲第24号証)。

③本件ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていることについて
 以上のとおり、申立人の登録商標及び商品ブランドである「チキンラーメン」は極めて
高い著名性を有している。
 そして、登録者が本件ドメイン名の登録時に申立人の商品ブランドとして著名な「チキ
ンラーメン」を知らなかったはずはなく、本件ドメイン名の登録時期を考慮すると、申立
人が「チキンラーメン」の公式サイトに長年使用していたドメイン名の登録が切れたこと
を奇貨として、登録者が本件ドメイン名を登録したものと考えられる。
 さらに、登録者は、他者の以前使用していたドメインや他者の商標を含むドメイン名を
複数登録している事実も確認できる。
 これらの事情を鑑みると、登録者は著名な「チキンラーメン」ブランドの有する社会的
価値や名声などがもたらす顧客吸引力等の経済的価値に着目し、商業上の利得を得る目的
で、登録者があたかも申立人の「チキンラーメン」ブランドに関係しているかのように消
費者の誤認混同を生ぜしめることを意図して本件ドメイン名を登録したことは容易に推認
することができる。

 なお、登録者が運営するウェブサイト「復縁の神様」のために、登録者の名称とも事業
とも全く関係のない本件ドメイン名を登録する合理的な理由は存在しないことからも、登
録者が本件ドメイン名を登録・使用することは、申立人の商標を利用して需要者の誤認を
引き起こしたり、申立人の商標の価値を毀損したりする意図を有しているものと考えられ
る。

 以上のとおりであるから、本件ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されている
ことは明らかである。

 b 登録者
 登録者は、答弁書において、「申立書の通り、該当ドメインを返却いたします。」と述べ
た。

5 争点および事実認定
 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則に
ついてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・書類及び審問の結果に
基づき、処理方針、本規則及び適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理に従っ
て、裁定を下さなければならない。」
 方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図してい
る。
 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示
と同一または混同を引き起こすほど類似していること
 (2)登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと
 (3)登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること

 そこで、紛争処理パネルは、前記(1)、(2)及び(3)について検討する。
 (1)申立人が権利または正当な利益を有する表示との同一性・類似性
 申立人は、「チキンラーメン」という名称の即席麺を販売する日清食品株式会社等を傘下
に持つ持ち株会社である。
 申立人の前身たる企業が1958年に「チキンラーメン」を発売した際のパッケージに
は、「CHIKIN RAMEN」との表示があり、少なくとも1967年のパッケージまで当該表示が
記載されていた(甲第7号証)。
 申立人は、「CHIKINRAMEN.COM」なるドメイン名を保有している。また、申立人は、20
08年4月5日頃から2017年3月13日頃までは、「チキンラーメン」の公式サイトの
ドメイン名として、2017年3月14日頃から2019年6月13日頃までは、別ドメ
インへ転送するためのドメインとして、それぞれ本件ドメイン名を使用していた。
 加えて、申立人は、「チキンラーメン」の文字のみからなる商標を、防護商標登録を含め
て4件保有しているところ、「チキンラーメン」と「CHIKINRAMEN」は、少なくとも称呼が
一致する。
 よって、申立人は、「CHIKINRAMEN」との表示について、権利及び正当な利益を有すると
認められる。
 他方で、本件ドメイン名「CHIKINRAMEN.JP」のうち「.JP」の部分は国別コードの日本を
意味し識別力を有しないことから、本件ドメイン名の要部は「CHIKINRAMEN」の部分である
ところ、当該部分は、申立人が権利及び正当な利益を有する「CHIKINRAMEN」との表示と同
一である。
 したがって、要件(1)の充足が認められる。

 (2)登録者の権利または正当な利益の欠如
 登録者は、「申立書の通り、該当ドメインを返却いたします」と述べるだけで、要件(2)
について何ら具体的な主張をしない。
 申立人は、登録者に、申立人の登録商標に関する商標の使用や、ドメインの登録及び使
用を許諾していないと主張する。その他、登録者が本件ドメイン名に関係する権利または
正当な利益を有することをうかがわせる事情は、一切存在しない。
 したがって、要件(2)の充足が認められる。

 (3)不正の目的での登録または使用
 登録者は、要件(3)についても何ら具体的な主張をしない。
 2019年8月31日に申立人による「CHIKINRAMEN.JP」の登録が切れると、2019
年9月1日にバックオーダー(事前予約)サービスにより「CHIKINRAMEN.JP」が登録され、
その直後の2019年9月18日には現在の登録者に移転された。このように、登録者は、
申立人が「チキンラーメン」の公式サイトに長年使用していたドメイン名の登録が切れた
ことに乗じて、本件ドメイン名を登録したものと認められる。
 申立人の登録商標及び商品ブランドである「チキンラーメン」は、本件ドメイン名の登
録時から本裁定時に至るまで、高い著名性を有し続けていると認められる。したがって、
本件ドメイン名がバックオーダーサービスにより登録され、登録者がこれを取得した時点
において、登録者は、申立人の商品ブランドとして著名な「チキンラーメン」を知ってい
たことが優に推認される。この事実に、登録者が、他者の以前使用していたドメインや他
者の商標を含むドメイン名を複数登録していることも合わせて考慮すると、登録者は、著
名な「チキンラーメン」ブランドの有する社会的価値や名声などがもたらす顧客吸引力等
の経済的価値に着目し、登録者があたかも申立人の「チキンラーメン」ブランドに関係し
ているかのように消費者の誤認混同を生ぜしめ、商業上の利得を得ることを意図して本件
ドメイン名を登録したものと認められる。
 また、登録者は、自己が運営するウェブサイト「復縁の神様」のために本件ドメイン名
を使用しているところ、法人である登録者の名称とも事業とも全く関係のない本件ドメイ
ン名を登録する合理的な理由は存在しないことからも、登録者が本件ドメイン名を登録・
使用することは、申立人の商標を利用して需要者の誤認を引き起こしたり、申立人の商標
の価値を毀損したりする意図を有しているものと考えられる。
 したがって、要件(3)の充足が認められる。

6 結論
 以上のとおり、紛争処理パネルは、登録者によって登録された本件ドメイン名が申立人
の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者が、ドメイン名に関係する権利または正当
な利益を有しておらず、登録者のドメイン名が不正の目的で登録または使用されているも
のと判断する。
 よって、方針第4条iに従って、本件ドメイン名の登録を申立人に移転するものとし、
主文のとおり裁定する。

   2022年8月26日
   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
          単独パネリスト    山内貴博


別記 手続の経緯
(1)申立書の受領
   日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2022年6月17
  日に申立書(添付する関係書類を含む。)を申立人から電子的送信により受領した。
(2)申立手数料の受領
   センターは、2022年6月16日に申立人より申立手数料を受領した。
(3)ドメイン名及び登録者の確認
   センターは、2022年6月17日にJPRSに登録情報を照会し、2022年6
  月17日にJPRSから申立書に記載された登録者が対象ドメイン名の登録者である
  ことを確認する回答並びにJPRSに登録されている登録者の電子メールアドレス及
  び住所等を受領した。
(4)適式性
   センターは、2022年6月17日に申立書が処理方針と手続規則に照らし適合し
  ていることを確認した。
(5)手続開始
   センターは、2022年6月23日に申立人、JPNIC及びJPRSに対し電子
  的送信により、手続開始を通知した。センターは、2022年6月23日に登録者に
  対し郵送及び電子メールにより、開始通知を送付した。開始通知により、登録者に対
  し、手続開始日(2022年6月23日)、答弁書提出期限(2022年7月22日)
  並びに書面の受領及び提出のための手段について通知した。但し登録者宛電子メール
  送信分については一部が送信不能であった。
(6)答弁書の提出
   センターは、2022年7月18日に「答弁書」と題する書面を受信したものの、
  Wordファイル及びPDFファイルの形式で提出されず、書面の内容を確認できな
  かったため、2022年7月25日に不備を登録者に通知した。センターは、202
  2年7月26日にPDFファイルを受領したものの、提出された書面に登録者の答弁
  が記載されておらず、また、登録者の電子的な署名または記名捺印がなかったため、
  2022年7月29日に、二度目の不備を登録者に通知した。センターは、2022
  年8月5日にPDFファイルによる「答弁書」を登録者から電子的送信により受領し
  た。センターは、答弁書が処理方針と手続規則に照らし一応適合していることを確認
  し、2022年8月8日に申立人に対し電子的送信により送付した。
(7)パネルの指名及び裁定予定日の通知
   申立人、登録者とも1名のパネルによって審理・裁定されることを選択し、センタ
  ーは、2022年8月10日に弁護士 山内 貴博 を単独パネリストとして指名し、
  一件書類を電子的送信によりパネルに送付した。センターは、2022年8月10日
  に申立人、登録者、JPNIC及びJPRSに対し電子的送信により、指名したパネ
  リスト及び裁定予定日(2022年8月31日)を通知した。パネルは、2022年
  8月10日に公正性・独立性・中立性に関する言明書をセンターに提出した。
(8)パネルによる審理・裁定
   パネルは、2022年8月26日に審理を終了し、裁定を行った。