事件番号:JP2022-0012 裁 定 申立人: (名称)Tencent Japan合同会社 (住所)東京都港区虎ノ門一丁目23番1号 代理人:弁理士 加藤 勉 弁理士 萼 経夫 (担当者) 弁理士 今井 雅夫 登録者: (氏名)川﨑 啓治 (住所)東京都渋谷区西原三丁目45番6号 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針(以下、「処 理方針」という。)、JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則(以下、「手続規則」とい う。)及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理方針のための手続規則の補則 並びに条理に則り、申立書・答弁書・提出された証拠に基づいて審理を遂げた結果、以下 のとおり裁定する。 1 裁定主文 ドメイン名「TENCENT.JP」の登録を申立人に移転せよ。 2 ドメイン名 紛争に係るドメイン名は「TENCENT.JP」である。 3 手続の経緯 別記のとおりである。 4 当事者の主張 a 申立人 申立人の主張は、以下のように整理できる。 紛争に係るドメイン名「TENCENT.JP」(以下、「本件ドメイン名」という。)は、2009年6 月18日にJPRSに登録された(甲1)。 申立人は、テンセント ホールディングス リミテッド(英語表記:Tencent Holdings Limited、中国語表記:騰訊控股有限公司(中国の簡体字に代えて、日本の漢字表記で記載 する。)。以下、「親会社」という。)の子会社であり、2011年11月8日に設立された。申 立人は、第9類、第16類、第35類、第38類、第41類、第42類及び第45類の商品役務 を指定して、2014年5月16日に登録された親会社所有の商標登録第5670778号「Tencent 騰訊」(甲2。以下、「日本商標」という。)について使用権を有している。「Tencent」また は「テンセント」は、申立人及び親会社の商号の略称でもあり(甲3)、インターネット分 野、インターネットオンラインゲーム分野、メッセンジャー通信サービス分野等において、 周知の標章である(甲11、甲12及び甲13)。 本件ドメイン名の第2レベルドメイン「TENCENT」と日本商標の要部並びに申立人及び親 会社の商号の略称「Tencent」は、欧文字の綴りが同一であり、両者の称呼及び観念は同一 であり、本件ドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同 一または混同を引き起こすほど類似している。 本件ドメイン名は、2021年10月頃には、JPRS指定事業者であるネットオウル株式会社 の名義で登録されていた(甲4)。親会社が、代理人CSCドメイン・リカバリ・チームー(以 下、「CSC」という。)を介して、ネットオウル株式会社に対して、通告書を複数回に亘って 送ったところ、ネットオウル株式会社の法務担当から、株式会社SITRUSの谷口大輔の連絡 先と現時点で本件ドメイン名は使用しておらず専ら趣味のために保有している旨の回答を 2021年11月に受け取った(甲5)。さらに、株式会社SITRUSの谷口大輔から2022年1月 に、本件ドメイン名を趣味のために保有しているに過ぎないのに不正使用と決めつけて脅 かしてくる方に無償で譲る気はなく、本件ドメイン名の移転の手続を現在進めている旨の 回答があった(甲6)。 そして、本件ドメイン名は遠藤摩耶に移転され(甲7)、親会社が、代理人CSCを介して、 遠藤摩耶に通告書(甲9)を送ったところ、遠藤摩耶から2022年2月3日に、一度も本件 ドメイン名を使用しておらず、数日前から本件ドメイン名をオークションに出品中であり、 本件ドメイン名を有償譲渡であれば譲っても良い旨の回答があった(甲8)。 申立前に、本件ドメイン名の登録者は遠藤摩耶から川﨑啓治に変更されていたが(甲1)、 両者の電話番号と電子メールは、全く同じであった。両者の電話番号及び電子メールが一 致することは、川﨑啓治への移転が形式的なものであり、両者が内通していることが推測 される。従って、川﨑啓治は、遠藤摩耶が親会社からの通告書を受けている状況なども熟 知していると推断される。登録者らが、短期間に転々とその名義を変え、かつ、通告書に 対し、本件ドメイン名の不使用及び有償譲渡を仄めかしていること等から、本件ドメイン 名は処理方針第4条c(i)~(iii)の要件を満たさない状況下に至っていることは明らかで ある。また、申立人及び親会社は、登録者らに本件ドメイン名の登録を許諾したことはな い。以上の状況からして、本件ドメイン名の登録者は、当該ドメイン名に関する権利また は正当な利益を有しない。 親会社から通告書を受取った状況下における、本件ドメイン名の使用目的を持たない短 期間の移転そのものが、悪意かつ不正の目的に基づいて行われたものと言わねばならない。 親会社からの通告書を受取ることで、日本商標並びに親会社の名称及び略称の存在を知っ たのであるから、悪意かつ不正の目的をもって、本件ドメイン名の移転登録が行われたの である。 遠藤摩耶または川﨑啓治と思われる者が、ネットオークション・フリーマーケットであ る「ヤフオク!」を通じて、本件ドメイン名を2022年2月25日から同年3月3日までオ ークションにかけ、開始価格は177,764,463円であった。開始価格はドメイン名の登録費 用を大きく上回る額であることから、図利の行為があったことは明らかで、本件ドメイン 名が不正の目的で登録されていると言える。 b 登録者 登録者の主張は、以下のように整理できる。 tencentという文字列が申立人の名称や日本商標等と同一のものであることは認識して いる。ただし、申立人の日本法人の登記や日本商標の登録よりも前に本件ドメイン名が登 録されたものであることをWHOISで確認してから、本件ドメイン名を取得した。JPドメイ ン名は基本的に先登録主義だと承知している。 事実上の登録者である遠藤摩耶は有名な文字列のドメイン名を蒐集することを趣味とし て、例えば、「mcd.jp」、「hoop.jp」、「gendai.jp」、「momokuro.jp」、「peacock.jp」、「jigen.jp」 等を所有しており、お名前.comで毎月行われている期限切れドメイン名のバックオーダー やオークションを欠かさずチェックしている。2021年8月頃に、お名前.comのオークショ ンで本件ドメイン名を見付け入札したものの、その際は最高値の更新を見逃してしまい、 他者に落札されてしまったが、2021年12月頃、discordのオープンチャットにて本件ドメ イン名が0.3ビットコインにて売りに出ていたため購入した。遠藤摩耶はドメイン名の所 有そのものを趣味としており、その収集欲を満たすための取得であるため、取得の経緯に 問題はない。遠藤摩耶に不正使用の意図はなく正当にドメインを取得している。 短期間でなぜ登録者の名義の変更を行ったかということを説明する。真の登録者である 遠藤摩耶は、2021年12月23日に前登録者から本件ドメイン名を譲り受けた後、2022年2 月3日に申立人の代理人から「tencent.jp - ドメイン名の不正使用および登録」という 件名の電子メールを受領した。その際に、悪意のない登録者に対してとても高圧的な電子 メールを送ってきたと感じ、多少感情的な返信を行ってしまったものの、そもそも申立人 のような巨大企業と争うことは不可能だとも考えており、コレクションの中でも特に希少 なドメイン名で手放すのは惜しいが、取得費用を負担してもらえるならば譲渡するのもや むなしと考え、その旨も記載して返信した。ただ、その後数ヶ月にわたり返信が無く段々 と恐怖を感じた遠藤摩耶に相談されたため、登録者を便宜上川﨑啓治に変更した。電話番 号と電子メールアドレスについては、申立人から連絡が来るかもしれないと考えたため変 更しなかったが、住所に関しては訴状が来るかもしれないと考えたため変更した(その後 変更した住所の事務所は閉鎖したが、本件ドメイン名の登録住所にしていることを失念し ていたため更新しておらず、今回の申立てによりお名前.comの管理画面で変更できなくな ってしまっていた)。 次に、オークションへの出品が高値であったことを説明する。遠藤摩耶は0.3ビットコ インで本件ドメイン名を取得したが、遠藤摩耶はビットコインで物品の支払いを行った場 合、その時の時価で売却益を得たとして課税されることを知らず、その旨を税理士に指摘 を受けたが、納税資金を準備していなかったため急遽売却を行うことにした。その際に、 5,451,443.53円(2021年12月23日の支払時のビットコインの時価)×0.3/0.92= 1,777,644.63円という、ビットコインでの支払額の時価相当額をヤフーオークションの出 品手数料8%を控除した数で除した計算式で出品価格を決めた。オークションでは即決価 格で出品しており、利益を得る意図がないことは明らかである。ただし、出品の際に貼り 付けた価格の小数点以下が整数と扱われてしまったことに気付かずに、そのまま出品する 単純なミスをしてしまった。その後納税資金の目処がついたため出品は取り下げている。 5 争点及び事実認定 a 適用すべき判断基準 手続規則第15条(a)は、「パネルは、提出された陳述・書類及び審問の結果に基づき、 処理方針、本規則及び適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理に従って、裁定 を下さなければならない。」と規定する。 処理方針第4条aは、申立人が次の事項すべてを立証しなければならないと規定する。 (i)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と 同一または混同を引き起こすほど類似していること (ii)登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと (iii)登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること b 紛争処理パネルの判断 (1)本件ドメイン名の登録者の変遷 申立人の主張によれば、本件ドメイン名は、2021年10月頃には、ネットオウル株式会 社の名義で登録されていたが(甲4)、ネットオウル株式会社に対し、申立人の代理人が通 告書を送ったところ、ネットオウル株式会社から、株式会社SITRUSの谷口大輔からの回答 とその連絡先を2021年11月に受け取っている(甲5)。ネットオウル株式会社はJPRS指 定事業者であるところ、登録者情報をネットオウル株式会社の情報で代理公開することを 認めており、当時の本件ドメイン名の実質的な保有者が株式会社SITRUSないし谷口大輔 であったことを窺わせる。申立人及び登録者の主張によれば、2021年12月下旬から2022 年1月上旬までの間に、本件ドメイン名は遠藤摩耶に移転され(甲7)、2022年2月3日 に申立人の代理人から通告書を受け取った遠藤摩耶は、同日に申立人の代理人に返信をし た。その後数ヶ月にわたり返信が無く段々と恐怖を感じた遠藤摩耶に相談されたため、登 録者を便宜上川﨑啓治に変更したと登録者は主張する。 遠藤摩耶と川﨑啓治の両者の内心の意思(真意といってもよい)はともかく、登録名義 の移転を意図して、その移転登録を行ったものであり、川﨑啓治名義の登録は有効に成立 しているということができる。川﨑啓治は、少なくとも自らの意思で名義上の登録者とし て手続に参加している以上、川﨑啓治を登録者として裁定を下すことが妥当である。JPド メイン名紛争処理では、登録者情報をJPRS指定事業者の情報で代理公開していて、実質的 な保有者が公開されていない場合も含めて、WHOISに登録者として登録されている者を紛 争当事者と扱うのが現在の実務となっている(阪急電鉄株式会社対GMOインターネット 株式会社事件裁定JP2012-0003 <HANKYU-JUTAKU.JP>参照)。 但し、名義上の登録者である川﨑啓治は、遠藤摩耶と電話番号や電子メールアドレスを 共有する関係にあり、「事実上の登録者」ないし「真の登録者」としての遠藤摩耶の事情を 答弁書において主張しているから、登録者側の言い分として川﨑啓治と利害が共通する者 として遠藤摩耶の事情を考慮することは許されると考えられる。他方で、申立人から主張 された、現時点で本件ドメイン名は使用しておらず専ら趣味のために保有している旨の株 式会社SITRUSの谷口大輔の回答については、答弁書では触れられておらず、株式会社 SITRUSの谷口大輔が、名義上の登録者である川﨑啓治と利害が共通する者であるとまでは 判断できない。それゆえ、株式会社SITRUSの谷口大輔の回答を、登録者側の言い分として 含めるのは避けることとする。 (2)同一または混同を引き起こすほどの類似性 本件ドメイン名は「TENCENT」と「.JP」からなり、「.JP」の部分は日本の国コードトッ プレベルドメインであって、常に登録で必要となるものであるから、「同一または混同を引 き起こすほどの類似性」の要件(処理方針第4条a(i))を判断するに当たって考慮しない のが通常である(WIPO Overview of WIPO Panel Views on Selected UDRP Questions, Third Edition 第1.11.1項参照)。それゆえ、本件ドメイン名「TENCENT」の部分と「申立 人が権利または正当な利益を有する商標その他表示」を対比して、「同一または混同を引き 起こすほど類似している」かを判断すべきである。 申立人が使用権を有する日本商標(2014年5月16日登録)の「Tencent騰訊」は、申立 人及び親会社の商号の略称の英語表記と簡体字表記を横書きで併記してなる商標である。 英字の「TENCENT」のみでも、2つの表記が併記された商標と社会通念上同一と認めること ができるから(欧文字、片仮名及びハングル文字を併記した商標の裁判例として、知的財 産高等裁判所平成23年1月25日判決・平成22年(行ケ)第10336号[YUJARON/ユジャ ロン/유자론]参照)、本件ドメイン名「TENCENT」の部分と日本商標は、「同一または混同 を引き起こすほど類似している」と言える。 また、「商標その他表示」は、日本の登録商標に限らず、法人の商号も含まれると解され ているし(JP-DRP研究会「JP-DRP解説」(2008年3月)17頁参照)、外国の登録商標も考 慮した裁定例がある(ヤング・ネイルズ・インク対株式会社ピーシーシー事件裁定JP2006- 0003 <YOUNGNAILS.JP>)。申立人(2011年11月8日設立)及び親会社(1998年11月11日 設立)の商号の略称の英語表記は「TENCENT」であるし、親会社の通告書(甲9)に記載さ れていたように、親会社は中国商標登録第1752676号「Tencent」(2002年4月21日登録 公告)や欧州連合商標登録第006033773号「TENCENT」(2008年11月18日登録)等も登録 しており、子会社である申立人にも使用権が認められていると推測される。よって、本件 ドメイン名「TENCENT」の部分と申立人及び親会社の商号の略称や中国や欧州連合の登録商 標も、「同一または混同を引き起こすほど類似している」と言える。 したがって、紛争処理パネルは、本件で「同一または混同を引き起こすほどの類似性」 の要件(処理方針第4条a(i))は満たされると考える。 (3)登録者の権利または正当な利益の不存在 本件ドメイン名は、親会社の設立や中国や欧州連合商標の登録よりは後であるが、日本 商標の2014年5月16日の登録に先行して、2009年6月18日に登録された。しかし、そ のことをもって登録者が本件ドメイン名の登録を維持できる「権利または正当な利益」を 有することになるわけではない(株式会社エヌ・ティ・ティ エックス対有限会社ポップ コーン事件裁定JP2000-0002 <GOO.CO.JP>参照)。 登録者の名義が遠藤摩耶または川﨑啓治であった申立前の段階において、本件ドメイン 名は使用されておらず、「商品またはサービスの提供を正当な目的をもって行うために、」 「使用の準備をしていた」事情も主張されていない(処理方針第4条c(i))。また、登録 者であった遠藤摩耶は、有名な文字列のドメイン名を蒐集することを趣味として様々なド メイン名を所有していたが、本件ドメイン名の名称で一般に認識されていたわけではない し(処理方針第4条c(ii))、申立人及び親会社が登録者らに本件ドメイン名の登録を許諾 したこともなかった。遠藤摩耶は、本件ドメイン名のネットオークションを行っており、 「商業上の利得を得る意図」がなかったとは言えない(処理方針第4条c(iii))。 したがって、紛争処理パネルは、本件で「登録者の権利または正当な利益の不存在」の 要件(処理方針第4条a(ii))は満たされると考える。 (4)不正の目的での登録または使用 本件ドメイン名の登録された2009年当時において既に、申立人及び親会社の商号の略 称である「TENCENT」が、オンラインゲームをはじめとするインターネット関連事業におい て世界的に著名であったことは申立人提出の証拠(甲4、甲10ないし甲13)から明ら かであるし、遠藤摩耶や川﨑啓治が本件ドメイン名を譲り受けた2022年の時点において も、世界的に著名であることは変わらない(Tencent Holdings Limited, Tencent Technology (Shenzhen) Co., Ltd. v. Domain Administrator, See PrivacyGuardian.org / chenghao chen, WIPO Case No. D2021-3605 <tencentmetaverse.com>参照)。遠藤摩耶 は、有名な文字列のドメイン名を蒐集することを趣味として本件ドメイン名を取得したの であるから、「TENCENT」について認識していたと言えるし、申立人からの通告を受けて紛 争が顕在化した後に登録者の名義を移転した川﨑啓治も、tencentという文字列が申立人 の名称や日本商標等と同一のものであることは認識していると認めており、英語で10セ ントという意味しかないと思っていたわけではない。それゆえ、申立人が権利を有する商 品その他表示である「TENCENT」を登録者はドメイン名として使用できないように妨害して いると評価できる。その上、遠藤摩耶が所有している「mcd.jp」、「hoop.jp」、「gendai.jp」、 「momokuro.jp」、「peacock.jp」、「jigen.jp」等のドメイン名も、他の者の商標または商号 もしくはその略称から成るものであるから、商標その他表示をドメイン名として使用でき ないようにする妨害行為を複数回行っていることも裏付けられる(処理方針第4条b(ii))。 本件ドメイン名は2022年2月25日から3月3日まで開始価格を177,764,463円として 「ヤフオク!」でオークションにかけられていた(甲14)。登録者の主張によれば、遠藤 摩耶がビットコインで支払って取得した額の時価相当額を出品手数料8%を控除した数で 除して、出品価格を1,777,644.63円としたところ、出品の際に貼り付けた価格の小数点以 下が整数と扱われてしまったということである。しかし、「ヤフオク!」でドメイン名はい ずれも整数の日本円でオークションに出されており、小数第2位までの価格をつけてドメ イン名を出品することは通常考えられないし、遠藤摩耶は、2022年2月3日に「ヤフオ ク!」の出品ページのウェブリンクを申立人の代理人に送信するなど、出品ページを開い て見ているはずであるから、出品価格が出品を意図した額の100倍になっているのに気が 付かないということは想定しがたい。それゆえ、遠藤摩耶は、本件ドメイン名に直接かか った金額を超える対価を得るために本件ドメイン名を販売する目的があって、本件ドメイ ン名を取得したというべきである(処理方針第4条b(i))。 したがって、紛争処理パネルは、本件で「不正の目的での登録または使用」の要件(処 理方針第4条a(ii))は満たされると考える。 6 結論 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン名「TENCENT.JP」 が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、登録者が、ドメイン名に関係する権利ま たは正当な利益を有しておらず、登録者のドメイン名が不正の目的で登録または使用され ているものと判断する。 よって、処理方針第4条iに従って、ドメイン名「TENCENT.JP」の登録を申立人に移転 するものとし、主文のとおり裁定する。 2022年10月31日 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル 主任パネリスト 山口 裕司 パネリスト 町村 泰貴 パネリスト 筒井 章子 別記 手続の経緯 (1)申立書の受領 日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2022年8月23 日に申立書(添付する関係書類を含む。)を申立人から電子的送信により受領した。 (2)申立手数料の受領 センターは、2022年8月18日に申立人より申立手数料を受領した。 (3)ドメイン名及び登録者の確認 センターは、2022年8月23日にJPRSに登録情報を照会し、2022年8 月23日にJPRSから申立書に記載された登録者が対象ドメイン名の登録者である ことを確認する回答並びにJPRSに登録されている登録者の電子メールアドレス及 び住所等を受領した。 (4)適式性 センターは、2022年8月24日に申立書が処理方針と手続規則に照らし適合し ていることを確認した。 (5)手続開始 センターは、2022年8月30日に申立人、JPNIC及びJPRSに対し電子 的送信により、手続開始を通知した。センターは、2022年8月30日に登録者に 対し郵送及び電子メールにより、開始通知を送付した。開始通知により、登録者に対 し、手続開始日(2022年8月30日)、答弁書提出期限(2022年9月29日) 並びに書面の受領及び提出のための手段について通知した。但し登録者の住所に送付 した通知は「宛名不完全で配達できません」として返送された。 (6)答弁書の提出 センターは、2022年9月29日に答弁書を登録者から電子的送信により受領し た。センターは、2022年9月30日に答弁書が処理方針と手続規則に照らし適合 していることを確認し、2022年9月30日に申立人に対し電子的送信により送付 した。 (7)パネルの指名及び裁定予定日の通知 申立人は1名のパネルによって審理・裁定されることを選択し、登録者は3名パネ ルによって審理・裁定されることを選択し、センターは、2022年10月13日に 成城大学教授 町村 泰貴(申立人が提示した候補者から指名)、弁理士 筒井 章 子(登録者が候補者を提示しなかったため、センターのパネリスト名簿登載者全員の 中から指名)、弁護士 山口 裕司(「三番目のパネリスト」として指名)をパネリ ストとして指名し、一件書類を電子的送信によりパネルに送付した。センターは、2 022年10月13日に申立人、登録者、JPNIC及びJPRSに対し電子的送信 により、指名したパネリスト及び裁定予定日(2022年11月2日)を通知した。 パネルは、2022年10月13日に公正性・独立性・中立性に関する言明書をセン ターに提出した。 (8)パネルによる審理・裁定 パネルは、2022年10月31日に審理を終了し、裁定を行った。