事件番号:JP2025-0017
裁定
- 申立人:
-
(名称)トヨタ自動車株式会社
(住所)愛知県豊田市●(省略)● - 代理人:
-
弁理士 網野 友康
同 網野 誠彦 - 登録者:
-
(組織名)Megaweb
(住所)東京都新宿区●(省略)●
(代表者名)高下 誠治
(副代表者法人名)有限会社Takaエンタプライズ - 代理人:
- なし
日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、 JPドメイン名紛争処理方針(以下、「処理方針」という。)、 JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則(以下、 「手続規則」という。)及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、 申立書・提出された証拠に基づいて審理を遂げた結果、 以下のとおり裁定する。
1 裁定主文
ドメイン名「MEGAWEB.GR.JP」の登録を申立人に移転せよ。
2 ドメイン名
紛争に係るドメイン名(以下、 「本件ドメイン名」という。)は「MEGAWEB.GR.JP」である。
3 手続の経緯
別記のとおりである。
4 背景となる事実
申立人は、自動車メーカーであり、 1999年12月17日に登録された商標第4344220号, 2001年3月9日に登録された商標第4457632号, 同年4月13日に登録された商標第4466534号の商標権者であり、 1999年3月に複合商業施設「パレットタウン」内に「MEGA WEB(メガウェブ)」を開業し、 2021年12月31日に閉館するまで、 同施設の名称として「MEGA WEB(メガウェブ)」を使用していた。
本件ドメイン名は、2022年10月1日に登録された。
5 当事者の主張
a 申立人
(1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること
ア 申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示について
申立人は、世界を代表する自動車メーカーである。
(ア) 申立人は、 一部デザイン化された「MEGA WEB」の文字等からなる下記の3件の登録商標を保有している(甲2各枝番)。
(イ) 申立人は、複合商業施設「パレットタウン」内において、 「MEGA WEB(メガウェブ)」(「見て・乗って・感じる」をコンセプトとした体験型施設)を1999年3月に開業し、 2021年12月31日に閉館するまでの22年以上にわたり、 同施設の名称として「MEGA WEB(メガウェブ)」を使用していた。 開業期間中、 「MEGA WEB(メガウェブ)」への累計来場者数は1億2,700万人に達した(甲3各枝番)。
閉館から約4年が経過しているが、 ネット上には施設紹介記事やレビューが多数残されており、 「MEGA WEB(メガウェブ)」の名称は申立人が運営していたテーマパーク(以下、 「申立人テーマパーク」という。)の名称として、 現在も一定程度の周知性を維持している。
イ 登録者のドメイン名と申立人商標の類似性について
(ア) 登録者のドメイン名「MEGAWEB.GR.JP」の「.GR.JP」は、 ファーストレベルドメイン及びセカンドレベルドメインであり、 同部分は日本の個人または法人で構成された任意団体向けのドメインであることを表す部分であり識別力を有しない。
本件ドメイン名の要部はサードレベルドメインである「MEGAWEB」であり、 「メガウェブ」と称呼されるのが自然である。
(イ) 本件登録商標1及び3は、「MEGA」の文字と、 「W」を図案化してなる図形、「EB」の文字よりなるところ、 図形部分は容易に「W」を図案化したものと認識できるものであり、 全体として「MEGA WEB」と記載されていると認識され「メガウェブ」の自然な称呼が生じる。
本件登録商標2は、上段に「W」を図案化してなる図形、 下段に「MEGA WEB」の文字を配してなることから、 その下段の文字部分より「メガウェブ」の自然な称呼が生じる。
(ウ) 本件ドメイン名の要部である「MEGAWEB」と本件登録商標は、 構成する文字及び「メガウェブ」の称呼が共通することから、 両者は混同が生じるほど類似している。
ウ また、申立人テーマパークの名称としての「MEGA WEB(メガウェブ)」の表示からは「メガウェブ」の称呼が生じ、 共通する。
エ したがって、 本件ドメイン名の要部である「MEGAWEB」と上記表示についても、 混同が生じるほど類似している。
(2)登録者が、本件ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと
登録者は、以下に示す事情から、 当該ドメイン名についての権利または正当な利益を有していない。
ア 登録者の氏名・法人名とドメイン名の不一致について
登録者の組織名は「Megaweb」で、 ドメイン登録上の組織名と本件ドメイン名の要部は一致するが、 そのような団体の存在は確認できない(甲4各枝番)。
イ ドメイン名と一致する登録者が保有する日本の登録商標の不存在について
申立人が保有する本件登録商標以外に、 本件ドメイン名と一致する日本の登録商標は存在しない(甲5)。
ウ 当該ドメイン名に関してのライセンスの不存在について
申立人は、 申立人の把握していない第三者に登録商標に係る商標の使用やドメインの登録及び使用を許諾することはないし、 「Megaweb」なる団体にライセンスをしている事実も存在しない。
(3)登録者の本件ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること
ア 本件ドメイン名の過去の登録者と使用の経緯及び事実について
本件ドメイン名は、1999年1月7日に、 申立人の関連団体である「MEGAWEB」によりドメイン登録され(甲6)、 1999年以降、 申立人テーマパークの公式サイトのドメインとして使用されていたが、 同テーマパークが閉館した2021年まで、 本件ドメイン名は同テーマパークのサイトのドメインとして利用されていた(甲8)が、 本件ドメイン名は更新されず、 2022年1月31日をもって登録が失効した。
イ その後、2022年10月1日に、 現在の登録者である「Megaweb」が本件ドメインを再登録し(甲1)、 遅くとも2023年1月23日(27日の誤記と思料される)には「Mindblown: a blog about philosophy.」と題するウェブサイトを立ち上げ、 遅くとも2023年5月5日には、 申立人が管理運営しているかのようなウェブサイトのドメインとしての使用が開始されていた(甲10)。
また、遅くとも2023年5月5日には、 申立人が本件ドメイン名を管理していた時期のウェブサイトの内容を部分的に引用・転載し、 あたかも申立人が管理運営しているかのような外観を呈するウェブサイトのドメインとして本件ドメイン名の使用を開始していた(甲11)。
その後、遅くとも2023年5月24日には、 上記ウェブサイトのコンテンツ中にオンラインカジノサイトへの誘導記事が追加されていた(甲12)。 そして、現在においても、 同様の誘導記事を含むコンテンツを掲載するウェブサイトのドメインとして本件ドメイン名が使用され続けている(甲13)。
ウ 登録者が、 申立人テーマパークのウェブサイトの内容を部分的に引用・転載する合理的な理由はない。 登録者は、 本件ドメイン名が同テーマパークのウェブサイトに使用されていたドメインであることを認識した上で、 不正の意図を持って本件ドメイン名を登録したものと推認できる。
申立人テーマパークのウェブサイトの内容を部分的に引用・転載することに加えて、 「スマホで何でもできちゃう?運転練習やオンラインカジノもプレイできる!」といった記事や、 「オンラインカジノ」の文中には、 「オンラインカジノ日本」という記載のリンクが設けられている(甲14)。 このリンクにアクセスすると、 申立人や申立人テーマパークとは全く無関係の、 Japan-101.comというオンラインギャンブルに関する総合ガイドサイトのオンラインカジノページ(甲15)に誘導される構成となっている。
(4)よって、ドメイン名は、 申立人の商標と混同を引き起こすほどに類似し、 登録者はドメイン名に関係する正当な利益を有しておらず、 ドメイン名は不正の目的で登録または使用されている。
b 登録者
登録者によって答弁書は提出されなかった。
6 争点および事実認定
a 適用すべき判断基準
手続規則第15条(a)は、 パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則についてパネルに次のように指示する。 「パネルは、提出された陳述・書類及び審問の結果に基づき、 処理方針、本規則及び適用されうる関係法規の規定・原則、 ならびに条理に従って、裁定を下さなければならない。」
処理方針第4条aは、 申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図している。
- 登録者のドメイン名が、申立人が権利又は正当な利益を有する商標その他表示と同一又は混同を引き起こすほど類似していること
- 登録者が、当該ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないこと
- 登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録又は使用されていること
b 紛争処理パネルの判断
(1)同一又は混同を引き起こすほどの類似性
ア 申立人は、世界を代表する自動車メーカーであり、 前記一部デザイン化された「MEGA WEB」の文字からなる3件の登録商標の保有者であり、 複合商業施設「パレットタウン」内において、 「見て乗って感じるモビリティの体験型テーマパーク」「MEGA WEB(メガウェブ)」を1999年3月に開業し、 2021年12月31日に閉館するまでの22年以上にわたり、 同施設の名称として「MEGA WEB(メガウェブ)」を使用していた。 開業期間中、同施設への累計来場者は1億2,700万人に達した(甲3各枝番)。 そして現在においてもネット上には施設紹介記事やレビューが多数残されており、 「MEGA WEB(メガウェブ)」の名称は申立人が運営していたテーマパーク(以下、 「申立人テーマパーク」という。)の名称として、 周知性を維持していることが認められる(なお処理方針第4条a(ⅰ)において「商標その他表示」が周知著名であることは要件としては明示されていない)。
イ 登録者の本件ドメイン名「MEGAWEB.GR.JP」は、 国別コードで日本を意味するトップレベルドメインである「.JP」と日本において法人格を持たない任意団体用の属性型ドメインである「.GR」のセカンドレベルドメインを除くと、 「MEGAWEB」の文字構成からなる。
上記の本件ドメイン名において、識別力を有する部分は、 サードレベルドメイン、「MEGAWEB」の部分であると認められる。
したがって、 その構成要素につき独立して識別機能を果たしうる部分は「MEGAWEB」の部分と考えられ、 「MEGAWEB」がその要部である。
そうすると申立人の3件の各登録商標及び申立人が前記体験型テーマパークの名称として使用していた「MEGA WEB(メガウェブ)」の表示と、 本件ドメイン名「MEGAWEB.GR.JP」の要部は、その称呼を共通にし、 これら両者は混同を惹き起こすほど類似していることは明らかである。
ウ 以上のとおりであり、本パネルは、本件ドメイン名については、 (1)の要件は満たされていると判断する。
(2)権利または正当な利益
登録者の組織名は「Megaweb」であり、その名称は、 本件ドメイン名の「MEGAWEB」の要部は一致するが、 そのような団体は確認できず、また、登録者は、 申立人と何の関係性も有さない。
権利または正当な利益については、 その存在について登録者による主張が予定されているところ(処理方針第4条c(ⅰ)乃至(ⅲ)参照)、 登録者はその存在について何ら実質的な主張を行わない。
したがって、 本件登録者がドメイン名について権利または正当の利益を有しているとは認められない。
(3)不正の目的での登録または使用
登録者は、 本件ドメイン名「MEGAWEB.GR.JP」を使用した「登録者サイト」において、 申立人が運営するウェブサイトであるかのような外観を作出し、 登録者サイトでは、「スマホで何でもできちゃう?運転練習やオンラインカジノもプレイできる!」などとの記事が記載され、 「オンラインカジノ」の文中には、 「オンラインカジノ日本」という記載のリンクが設置されており、 当該リンクから遷移したウェブページにおいては、 Japan-101 オンラインカジノというオンラインギャンブルに関する総合ガイドサイトのオンラインカジノページの紹介記事が掲載されているとして、 申立人は、これらに沿う証拠を提出する(甲14、15)。
かかる主張に対し、登録者は答弁を行っていない。
ところで、処理方針第4条bによれば、 「(ⅳ)登録者が、商業上の利得を得る目的で、 そのウェブサイトもしくはその他のオンラインロケーション、 またはそれらに登場する商品及びサービスの出所、 スポンサーシップ、取引提携関係、 推奨関係などについて誤認混同を生ぜしめることを意図して、 インターネット上のユーザーを、 そのウェブサイトまたはその他のオンラインロケーションに誘引するために、 当該ドメイン名を使用しているとき」との事情がある場合には、 当該ドメイン名の登録または使用は、 不正の目的であると認めなければならないと定めている。
そして、登録者は、 上記の遷移したJapan-101 オンラインカジノというオンラインギャンブルに関する総合ガイドサイトのオンラインカジノページ(甲15)において広告・宣伝されているオンラインカジノについて、 申立人が運営・提供し、又は、少なくともスポンサーシップ、 取引提携関係、 推奨関係等の関係性があるかのように消費者の誤認混同を生ぜしめる意図をもって、 商業上の利得を得る目的で、インターネット上のユーザーを、 上記オンラインカジノサービス等に誘引するために、 ドメイン名「MEGAWEB.GR.JP」を使用してサイトを運営しており、 その登録及び使用は、不正の目的によるものであると認められる。
加えて、 日本知的財産仲裁センターへの2025年12月12日付「ドメイン名登録照会に対する通知」によれば登録者が本件ドメイン名を登録したのは2022年10月1日である。 したがって、 申立人の各登録商標の登録以降であり(甲2の1、2、3)、 また申立人テーマパークの名称としての「MEGA WEB(メガウェブ)」の表示を使用する以降であり、 さらに申立人がドメイン名「MEGAWEB.GR.JP」を2021年まで使用していた以降である。
本件においては、上記の客観的な使用実態の状況を総合考慮して、 登録者が商業上の利得を得る目的で、そのウェブサイトもしくは、 その他のオンラインロケーション、 またはそれらに登場する商品及びサービスの出所などについて誤認混同を生ぜしめることを意図してインターネット上のユーザーを、 そのウェブサイトまたはその他のオンラインロケーションに誘導するために、 当該ドメイン名を使用していると推認できる。 登録者は、答弁書を提出せず、 特段の反論をしていないことは既述のとおりであり、また、 一件記録を検討しても、 不正の目的での登録又は使用を否定する例外的な事情は認められない。
以上のとおり、 オンラインカジノのサイトへと誘引するために使用されている本件ドメイン名は登録者によって不正の目的で登録され、 使用されていることが明らかである。
7 結論
以上に照らして、紛争処理パネルは、 登録者によって登録されたドメイン名「MEGAWEB.GR.JP」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、 登録者が、ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有しておらず、 登録者のドメイン名が不正の目的で登録または使用されているものと判断する。
よって、処理方針第4条iに従って、 ドメイン名「MEGAWEB.GR.JP」の登録を申立人に移転するものとし、 主文のとおり裁定する。
2026年2月13日
日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
単独パネリスト 三山 峻司
別記
(1)申立書の受領
日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、 2025年12月11日に申立書(添付する関係書類を含む。)を申立人から電子的送信により受領した。
(2)申立手数料の受領
センターは、 2025年12月10日に申立人より申立手数料を受領した。
(3)ドメイン名及び登録者の確認
センターは、 2025年12月11日にJPRSに登録情報を照会し、 2025年12月12日にJPRSから申立書に記載された登録者が対象ドメイン名の登録者であることを確認する回答並びにJPRSに登録されている登録者の電子メールアドレス及び住所等を受領した。
(4)適式性
センターは、 2025年12月12日に申立書が処理方針と手続規則に照らし適合していることを確認した。
(5)手続開始
センターは、2025年12月18日に申立人、 JPNIC及びJPRSに対し電子的送信により、 手続開始を通知した。 センターは、 2025年12月18日に登録者に対し郵送及び電子メールにより、 開始通知を送付した。 開始通知により、登録者に対し、 手続開始日(2025年12月18日)、 答弁書提出期限(2026年1月23日)並びに書面の受領及び提出のための手段について通知した。
(6)答弁書の提出
センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、 2026年1月26日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知書を、 電子的送信により申立人及び登録者に送付した。
(7)パネルの指名及び裁定予定日の通知
申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択し、 センターは、 2026年1月30日に弁護士 三山 峻司を単独パネリストとして指名し、 一件書類を電子的送信によりパネルに送付した。 センターは、2026年1月30日に申立人、登録者、 JPNIC及びJPRSに対し電子的送信により、 指名したパネリスト及び裁定予定日(2026年2月20日)を通知した。 パネルは、 2026年1月30日に公正性・独立性・中立性に関する言明書をセンターに提出した。
(8)パネルによる審理・裁定
パネルは、2026年2月13日に審理を終了し、裁定を行った。