事件番号:JP2025-0018

裁定

申立人:
(氏名/名称)株式会社小学館
(住所)東京都千代田区●(省略)●
代理人:
弁護士 伊藤 真
同   丸田 憲和
登録者:
(氏名/名称)Your Whois Privacy Ltd
(住所)東京都Shibuya-ku ●(省略)●
代理人:
なし

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、 JPドメイン名紛争処理方針(以下、「処理方針」という。)、 JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則(以下、 「手続規則」という。)及び日本知的財産仲裁センターJPドメイン名紛争処理方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、 申立書・提出された証拠に基づいて審理を遂げた結果、 以下のとおり裁定する。

1 裁定主文

 ドメイン名「SUITS-WOMAN.JP」の登録を申立人に移転せよ。

2 ドメイン名

 紛争に係るドメイン名(以下、 「本件ドメイン名」という。)は「SUITS-WOMAN.JP」である。

3 手続の経緯

 別記のとおりである。

4 背景となる事実

 申立人は、雑誌、図書出版事業を行う会社であり、 2020年3月12日に登録された商標「Suits-woman」についての商標登録第6235343号(「以下、 本件商標」という。)の商標権者である。

 本件ドメイン名は、2025年9月1日に登録された。

5 当事者の主張

a 申立人

 申立人の主張からは、以下のように、整理できる。

 申立人は、雑誌・図書出版業等を行っており、 雑誌「DIME」を刊行していたなかで、 2015年から2016年10月までの間、 「DIME」の女性向け増刊号として「Suits WOMAN」を出版していた。

 申立人は、本件ドメイン名と同一のドメイン名を登録し、 これを用いた公式ウェブサイトを作成、運用していたものの、 その後、申立人が運営するウェブサイトの統合に伴い、 申立人は2022年9月をもって申立人ウェブサイトの運用を終了し、 本件ドメインと同一のドメイン名の保有を終了した。

 その後登録者が本件ドメイン名を取得し、申立人が、 本件ドメインと同じドメインを用いてインターネット上に掲載していたウェブサイトと内容をほぼ同じくするウェブサイトを掲載した。

 登録者の上述のウェブサイトは申立人ウェブサイトのコンテンツをほぼそのまま複製して公衆送信したもので、 トップページの下部には、申立人の名称や、 「©Shogakukan Inc.2022 All rights reserved.」という著作権表示、 申立人の100周年記念企画に用いた、 申立人の名称のロゴ画像を掲載して、 申立人の名称を冒用している。

 登録者のウェブサイトを訪問した閲覧者は、 このドメインについて申立人が申立人ウェブサイトを運営していた際のドメインと同一のドメインであること、 登録者のウェブサイトのドメインが本件商標と同一であることなどから、 登録者のウェブサイトの運営主体が申立人であると誤認混同することは明白である。

 また、登録者は申立人の名称を冒用して申立人ウェブサイトのコンテンツをほぼそのまま複製して公衆送信しており、 登録者が、申立人の事業を混乱させることを主たる目的として、 当該ドメイン名を登録していることは明らかであって、 登録者はドメイン名に関係する正当な利益を有しておらず、 ドメイン名は不正の目的で登録または使用されている。

 従って、申立人は、ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。

b 登録者

 登録者によって答弁書は提出されなかった。

6 争点および事実認定

a 適用すべき判断基準

 手続規則第15条(a)は、 パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則についてパネルに次のように指示する。 「パネルは、提出された陳述・書類及び審問の結果に基づき、 処理方針、本規則及び適用されうる関係法規の規定・原則、 ならびに条理に従って、裁定を下さなければならない。」

 処理方針第4条aは、 申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図している。

b 紛争処理パネルの判断

(1)同一又は混同を引き起こすほどの類似性

 申立人は、 本件ドメイン名と同一のドメイン名を一旦登録したと主張するが(甲7号証)、 客観的な証拠が提出されていないため、 このドメイン名を申立人が取得し、 その後放棄したかどうかは、 申立人提出の証拠だけからは明らかではない。 ただし、アルファベットが小文字ではあるが、 suits-woman.jpとの名称でウェブサイトを運営していたことは甲7号証及び甲9号証から明らかだと考える。 本件ドメイン名は、 本件商標及びsuits-woman.jpのドメイン名とアルファベットの大文字か小文字の違いはあるものの、 混同を引き起こすほどの類似性を有していると考える。

(2)権利または正当な利益

 登録者は、申立人とは、何らの権利関係がなく、 また本件ドメイン名を利用する正当な利益を有する資料は登録者が答弁書を提出していないため明らかでなく、 登録者には正当な利益がないと考える。

(3)不正の目的での登録または使用

 登録者は、suits-woman.jpのウェブサイトアドレスにて、 申立人が運営していたウェブサイトとほぼ同様でありながら、 一部の写真を削除したり、 Writerの部分を改変するなどしたウェブページをインターネット上に掲載している(甲12号証)。 まったく同じものであれば、著作権侵害の問題はともかく、 申立人の事業を混乱させると言えるかは検討を要するが、 一部改変されていることによって、申立人自体が、 このウェブサイトに掲載を許可した内容物の著者やWriterから、 かような利用を許諾していないとの主張を受ける可能性があり、 かような改変を加えながら、 ウェブサイトに申立人の名称を表示したり、 本件商標部分はそのままに掲載していることは、 本件商標にフリーライドして、 申立人の信用性を害しようとするものと考えられ、 登録者は、申立人の事業を混乱させることを主な目的として、 本件ドメインを登録したものと考える。 よって、登録者は、 不正の目的で本件ドメインの登録をしたものと考える。

7 結論

 以上に照らして、紛争処理パネルは、 登録者によって登録されたドメイン名「SUITS-WOMAN.JP」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、 登録者が、ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有しておらず、 登録者のドメイン名が不正の目的で登録または使用されているものと判断する。

 よって、処理方針第4条iに従って、 ドメイン名「SUITS-WOMAN.JP」の登録を申立人に移転するものとし、 主文のとおり裁定する。

2026年3月2日
日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
       単独パネリスト    苗村 博子

別記

(1)申立書の受領

 日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、 2025年12月18日に申立書(添付する関係書類を含む。)を申立人から電子的送信により受領した。

(2)申立手数料の受領

 センターは、 2025年12月19日に申立人より申立手数料を受領した。

(3)ドメイン名及び登録者の確認

 センターは、 2025年12月22日にJPRSに登録情報を照会し、 2025年12月22日にJPRSから申立書に記載された登録者が対象ドメイン名の登録者であることを確認する回答並びにJPRSに登録されている登録者の電子メールアドレス及び住所等を受領した。

(4)適式性

 センターは、 2025年12月24日に申立書が処理方針と手続規則に照らし適合していることを確認した。

(5)手続開始

 センターは、2025年12月25日に申立人、 JPNIC及びJPRSに対し電子的送信により、 手続開始を通知した。 センターは、 2025年12月25日に登録者に対し郵送及び電子メールにより、 開始通知を送付した。 開始通知により、登録者に対し、 手続開始日(2025年12月25日)、 答弁書提出期限(2026年1月30日)並びに書面の受領及び提出のための手段について通知した。

(6)答弁書の提出

 センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、 2026年2月2日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知書を、 電子的送信により申立人及び登録者に送付した。

(7)パネルの指名及び裁定予定日の通知

 申立人は、 1名のパネルによって審理・裁定されることを選択し、 センターは、 2026年2月6日に弁護士 苗村 博子を単独パネリストとして指名し、 一件書類を電子的送信によりパネルに送付した。 センターは、2026年2月6日に申立人、登録者、 JPNIC及びJPRSに対し電子的送信により、 指名したパネリスト及び裁定予定日(2026年3月2日)を通知した。 パネルは、 2026年2月6日に公正性・独立性・中立性に関する言明書をセンターに提出した。

(8)パネルによる審理・裁定

 パネルは、2026年3月2日に審理を終了し、裁定を行った。