事件番号:JP2026-0002
裁定
- 申立人:
-
氏名(名称):JIMI PTE. LTD
代表者 CHEN HE
住所:[Contact details omitted] Singapore - 代理人:
- 弁護士 染谷 隆明
- 登録者:
-
氏名(名称):長谷川 泉
住所:神奈川県鎌倉市●(省略)●
電話番号:不明
ファクシミリ番号:不明
電子メールアドレス:非公開
日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、 JPドメイン名紛争処理方針(以下、「処理方針」という。)、 JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則(以下、 「手続規則」という。)及び日本知的財産仲裁センターJP ドメイン名紛争処理方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、 申立書・答弁書・提出された証拠に基づいて審理を遂げた結果、 以下のとおり裁定する。
1 裁定主文
ドメイン名「AZURPROMILIA.JP」の登録を申立人に移転せよ。
2 ドメイン名
紛争に係るドメイン名(以下、 「本件ドメイン名」という。)は「AZURPROMILIA.JP」である。
3 手続の経緯
別記のとおりである。
4 背景となる事実
- 申立人は、シンガポールを拠点とし、 モバイルゲームの開発及びパブリッシングを事業内容とする会社である。
-
申立人は、
日本国において有効に独占的効力を有する次の国際登録商標並びに日本登録商標を所有している(以下、
当該二件の商標を包括して「本件各商標」という)。
- 国際登録商標
-
商標:Azur Promilia
商標権者:JIMI PTE. LTD.
国際登録番号:1772863号
国際登録日:2023年11月28日
国内公開日:2024年3月28日
国内登録日:2025年4月25日
存続期間満了日:2033年11月28日
指定商品・役務の登録区分:9類、38類、41類、42類 - 日本登録商標
-
商標:アズールプロミリア
商標権者:ジミ プライベート リミテッド
登録番号:6842453号
出願日:2023年12月15日
公開日:2023年12月25日
登録日:2024年9月9日
存続期間満了日:2034年9月9日
指定商品・役務の登録区分:9類、38類、41類、42類
-
登録者は、次のドメイン名を所有している。
ドメイン名:AZURPROMILIA.JP
登録日:2025年9月29日
有効期限:2026年9月30日
登録者名:長谷川泉
5 当事者の主張
a 申立人
申立人の主張は、以下のように、整理できる。
- 本件ドメイン名は、 申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似している。
- 登録者が、 本件ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していない。
- 本件ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されている。
- 本件ドメイン名は前記(1)乃至(3)の要件を充足するから、 申立人は本件ドメイン名の申立人への移転を請求する。
b 登録者
登録者の答弁は、次のように整理できる。
(一)本件ドメイン名「AZURPROMILIA.JP」のローマ字部分が申立人の保有する商標と類似しており、 混同の可能性がある点は認める。
(二)一方、 処理方針第4条 a(i)は「申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示」への類似性を問うものであり、 申立人に「当該権利または正当な利益」があることも同号の要件を構成する。
(三)しかしながら、 申立人が本件商標の名義人として単なる知財保有にとどまらず、 本件商標に係る事業実施主体として実際に機能していることの確認は、 「正当な利益」の判断上不可欠であるにも拘わらず、 十分に主張及び立証されていない。
(四)登録者のドメイン名の登録および使用における不正の目的の存在については否認する。 申立人の「正当な利益」の立証が不十分である以上、 不正の目的の存否を論じる前提自体が整っていないからである。
6 争点および事実認定
a 適用すべき判断基準
JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則(以下「JP-DRP手続規則」という)15条(a)は、 パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則について、 パネルに次のように指示する。 即ち、「パネルは、提出された陳述・書類及び審問の結果に基づき、 処理方針、本規則及び適用されうる関係法規の規定・原則、 ならびに条理に従って、裁定を下さなければならない。」
また、JPドメイン名紛争処理方針(以下「JP-DRP」という)4条aは、 申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図している。
- 登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること
- 登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと
- 登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること
b 紛争処理パネルの判断
(1)JP-DRP4条a(i):登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること
①本件ドメイン名は「AZURPROMILIA.JP」である。 一方、申立人は前記の本件各商標を所有している。 よって、 本件ドメイン名「AZURPROMILIA.JP」が含む「AZURPROMILIA」は本件各商標のうち、 商標:Azur Promilia(国際登録番号1772863号)と文字表記を客観的に評価した場合、称呼が同一である。 また、本件ドメイン名「AZURPROMILIA.JP」は「.JP」を含む点において商標:Azur Promilia(国際登録番号1772863号)と外観が相違する。 しかしながら、 需要者は「.JP」をインターネット上の住所にあたるドメイン名のうち、 日本を表す「国別トップレベルドメイン」と容易に認識する結果、 「.JP」の表記から本件ドメイン名の所有者を特定する表示と認識しないことは火を見るより明らかである。 よって、本件ドメイン名「AZURPROMILIA.JP」は、 商標:Azur Promilia(国際登録番号1772863号)と混同を引き起こすほど類似している。
そして、 本件ドメイン名「AZURPROMILIA.JP」が含む「AZURPROMILIA」は、 本件各商標のうち、 商標:アズールプロミリア(登録番号 6842453)と称呼が類似である。 本件ドメイン名「AZURPROMILIA.JP」は「.JP」を含むため、 その称呼である「アズールプロミリア ドット ジェーピー」であるため商標:アズールプロミリア(登録番号 6842453)とは称呼が相違する。 しかしながら、需要者は「.JP」をインターネット上の住所にあたるドメイン名のうち、 日本を表す「国別トップレベルドメイン」と容易に認識する結果、 「.JP」の表記から本件ドメイン名の所有者を特定する表示とは特段認識しないため、 「AZURPROMILIA.JP」の「AZURPROMILIA」をドメイン名の所有者の独自性を示す部分と認識し、 「アズールプロミリア」なる称呼を容易に認識するものである。 よって、本件ドメイン名「AZURPROMILIA.JP」は、 商標:アズールプロミリア(登録番号6842453)と称呼が類似する。
従って、登録者の本件ドメイン名が、 申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似しているため、 本件ドメイン名は JP-DRP 4条a(i)の要件を充足する。
②なお、 登録者は「本件ドメイン名『AZURPROMILIA.JP』」のローマ字部分が申立人の保有する商標と類似しており、 混同の可能性がある点は認める一方、 申立人が本件各商標の名義人として単なる知財保有にとどまらず、 本件各商標に係る事業実施主体として実際に機能していることの確認は正当な利益の判断上不可欠であるにも拘わらず、 当該正当な理由が十分に主張及び立証されていない」と答弁書において主張する。
しかしながら、かかる主張は次の理由から失当であり、 採用することはできない。
あ)申立人は、 申立人が提出した【証拠番号3】及び【証拠番号5】の書証が示す通り、 本件ドメイン名が含むAZURPROMILIAの片仮名表記である「アズールプロミリア」(登録6842453号)及び「Azur Promilia」(国際登録1772863号)の商標登録を取得している。
個々の商標の出願日は、 「アズールプロミリア」(登録6842453号)は2023年12月15日、 「Azur Promilia」(国際登録1772863 号)は2023年11月28日(国際登録日に相当する)である。 そして、当パネルがシンガポール知的財産庁が提供するIPOS DIGITAL HUBを用い調査したところ、 「Azur Promilia」(国際登録1772863号)の基礎登録である申立人のシンガポールにおける同国国内登録商標は、 2023年11月15日に同国で出願されている事実も確認した。 一方、本件ドメイン名の登録日は2025年9月29日である。
即ち、申立人が「アズールプロミリア」及び「Azur Promilia」なる商標の採択を決定し商標出願に至った行為は、 本件ドメイン名の登録日である2025年9月29日より、 いずれも先行し存在していた。 一方、後述の通り、登録者が本件ドメイン名を含む「AZURPROMILIA」を、 本件各商標並びに前記シンガポール商標の出願日以前に商標出願若しくは登録した事実は確認できない。
かかる事実から、「アズールプロミリア」及び「Azur Promilia」は、 申立人が権利または正当な利益を有する商標であることは明らかである。
い)また、登録者は答弁書において「申立人が本件各商標の名義人として単なる知財保有にとどまらず、 本件各商標に係る事業実施主体として実際に機能していることの確認は正当な利益の判断上不可欠であるにも拘わらず、 当該『正当な理由』が十分に主張及び立証されていない」と主張する。 登録者は申立人による次の主張に依拠し、 当該「正当な理由」が申立人により主張及び立証されていないと断定する。
- 申立人はシンガポールを拠点とし、 モバイルゲームの開発及びパブリッシングを事業内容とする会社である。 株式会社Manjuu及び株式会社Yostarという会社とともにアズールプロミリア(Azur Promilia)というソーシャルゲームを開発している。
- 株式会社Manjuu及び株式会社Yostarが日本における共同パブリッシング等を担う。
- 当該体制は、 現在サービス運営中のソーシャルゲーム『アズールレーン(Azur Lane)』 と同一である一方、 ソーシャルゲーム「アズールプロミリア」の開発事業は2021年5月頃に企画、 開始され、2024年3月20日には開発中であることが発表されており、 既に申立人らを中心として広報活動が行われている。
かかる事実は、 本件各商標を呼称するソーシャルゲームの開発体制を説明するに過ぎず、 紛争処理ルール「(1)JP-DRP4 条 a(i):登録者のドメイン名が、 申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似しているか」における「申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示」である要件の評価判断に牽連するものではない。
畢竟、 申立人が本件各商標を本件ドメイン名「AZURPROMILIA.JP」の登録日である2025年9月29日に先行して「アズールプロミリア」及び「Azur Promilia」の商標を採択し、 商標登録を取得している事実が「正当な利益」を有する商標であることに他ならない。
登録者による「申立人が本件各商標の名義人として単なる知財保有にとどまらず、 本件各商標に係る事業実施主体として実際に機能していることの確認は正当な利益の判断上不可欠である」との主張の意図は、 「正当な利益」は商標登録等の先行事実の存在のみならず、 当該登録商標等が関係する事業の存在等の事業実態の存在を要求するものである。
JP-DRP4 条 a(i)の条文及びその趣旨から、 「申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示」の要件に、 商標等の使用事実の背景となる事業実施の存在を要求するかの判断は、 同要件における「正当な利益」の解釈が争点となる。
まず、「正当な利益」に「商標等の使用事実の背景となる事業実施の存在を要求」することは、 「不正な目的によるJPドメイン名の登録や使用に関して迅速にトラブルを解決する」というJPドメイン名の紛争処理方針の趣旨に馴染まないものである。 即ち、申立人が本件各商標を登録し商標権を有する事実をもって「申立人が権利または正当な利益を有する商標」であると認定することに何ら支障はない。
仮に「正当な利益」に「商標等の使用事実の背景となる事業実施の存在を要求」することとなれば、 申立人に対し商標権等の取得に加え、 その商標に基づく実施行為がなければ不正目的によるドメイン名の取消及び移転の請求ができないこととなり、 極めて限定的な救済となってしまう。
また、申立人の商標による特定の実施事業の存在を「正当な利益を有する商標その他の表示」に求めるとした場合、 将来使用予定の商標の対象となる実施事業が諸般の事情により未だ具体化されない事案においては、 申立人の商標等を含む第三者の不正目的によるドメイン名を放置せざるを得ない結果となり、 JPドメイン名の紛争処理方針の趣旨に著しく反するものである。
よって、JP-DRP4条a(i)が定める「正当な利益」は「申立人による商標登録の取得若しくは存在」をもって存在するものと理解することが妥当である。
従って、 「申立人における正当な利益が本件各商標の名義人として単なる知財保有にとどまらず、 本件各商標に係る事業実施主体として実際に機能していることの確認は正当な利益の判断上不可欠であるにも拘わらず、 当該正当な理由が十分に主張及び立証されていない」との登録者の主張は理由がなく、 採用することはできない。
③前述の理由から、 本件ドメイン名は「(1)JP-DRP4条a(i):登録者のドメイン名が、 申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似している」ものと判断する。
(2)JP-DRP4 条 a(ii):登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと
①申立人は本件要件に関して、次の通り主張する。
あ) 本件ドメイン名は、 2025年9月29日付で長谷川泉名義により登録されているが、 同名の従業員はアズールプロミリアの開発等関係者には存在せず、 申立人らとも無関係である。 登録者が何の業務を行っているかは不明であり、 登録者の住所も申立人らとは無関係である。
い)申立人らが登録者に、 本件各商標権の利用や本件ドメイン名の登録を許諾したことはない。
う)本件ドメイン名の登録は、本件各商標の登録日より後である。 また、アズールプロミリアの事業企画は前述のとおり2024年3月20日にその開発が発表され、 2025年9月25日から同月28日までに実施された東京ゲームショウ2025にも出展された。 一方、本件ドメイン名の登録日は、 東京ゲームショウ2025の終了翌日であり、 東京ゲームショウ2025でアズールプロミリアの存在を知った後、 その.jpドメインが取得されていないことを奇貨として取得されたことが強く窺われる。
②前記①の申立人の主張に基づき、本件ドメイン名の登録者が、 当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益の有無について検討する。
まず、登録者名である「長谷川泉」と本件ドメイン名である「AZURPROMILIA.JP」は一致しない。 よって、登録者名と本件ドメイン名との不一致から、 「本件ドメイン名の登録者が、 当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益」は無いと判断する。
また、登録者である「長谷川泉」は、 当パネルが日本国特許庁の提供する特許情報プラットフォームを用いて調査したところ、 同人名義の商標出願及び登録を日本国特許庁にした事実は確認できない。 そして、日本特許庁における商標「Azur Promilia」及び「アズールプロミリア」の商標出願及び登録は、 全て申立人名義のものであった。
よって、申立人の前記主張、あ)及び、い)から、 登録者と申立人との間の人的関係、並びに、 ドメイン名登録及び使用に関するライセンス許諾も存在しないと推測される。
一方、登録者はその答弁において、 登録者名である「長谷川泉」名義の日本特許庁における商標出願及び登録の事実、 登録者と申立人との間の人的関係、並びに、 ドメイン名登録及び使用に関するライセンス許諾が存在する事実等の主張及び立証をしていない。
③また、申立人の主張並びに登録者の答弁の内容と、 これらの全趣旨を再度精査し考慮しても、次の事実は確認できない。
A:登録者が、当該ドメイン名に係わる紛争に関し、 第三者または紛争処理機関から通知を受ける前に、 商品またはサービスの提供を正当な目的をもって行うために、 当該ドメイン名またはこれに対応する名称を使用していたこと、 または、明らかにその使用の準備をしていたこと
B:登録者が、商標その他表示の登録等をしているか否かにかかわらず、 当該ドメイン名の名称で一般に認識されていたこと
C:登録者が、 申立人の商標その他表示を利用して消費者の誤認を惹き起こすことにより商業上の利得を得る意図、 または、申立人の商標その他表示の価値を毀損する意図を有することなく、 当該ドメイン名を非商業的目的に使用し、または公正に使用していること
④以上の理由から、登録者は、 登録者が当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していると判断することは認定できない。 よって、本件ドメイン名は、登録者が、 当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有しているものではないと判断する。
(3)JP-DRP4 条 a(iii):登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること
①申立人は本件要件に関して、次の通り主張する。
あ)前記(1)(iii)記載のとおり、 本件ドメイン名に使用されているAZURPROMILIAとの欧文字部分については、 英語その他の外国語に存在しない造語であって、 他の意味を有しない。 実際に、Googleを用いて「AZURPROMILIA」と検索しても、 申立人らによって開発中のゲームであるアズールプロミリア以外の意味で「AZURPROMILIA」が用いられている例は見当たらない。 以上からすると、AZURPROMILIAとの文字列は、 本件各商標と同一のものを指すと広く世間に周知されているものであり、 登録者においても同様の認識を有していたものといえる。 本件ドメイン名のURLは、現在、 アズールレーンの公式サイト(azurlane.jp)にリダイレクトされる設定となっており、 このことからも登録者において申立人らが開発するゲームの名称を意図してドメインを取得したことが明らかである。
い)登録者は申立人らと何ら関係を有さず、業務内容も不明である上、 申立人らが登録者に本件ドメイン名の登録を許諾したことはないため、 登録者が本件ドメイン名を使用する正当な理由は存在しない。 登録者において、 自らと無関係なゲームのタイトルのドメイン名を取得することによって、 その名声や人気を利用した不当な利益を得ようとしている、 あるいは申立人らによるドメインの利用を妨害しようとしていることは明らかである。
う)本件ドメイン名についてWhois検索を実施したところ、 登録者名は登録者からの申請により非表示とされていた(登録者については、 申立人代理人名義で登録者開示請求を行った結果、 判明したものである。)。 広く配信予定のゲームの名称を使用したドメイン名について、 正当な利益を有する登録者であれば、 その氏名等を非表示とする理由はなく、 このように登録者が自らの素性を隠そうとしていることは、 登録者の不正の目的を強く推知させる。
②一方、登録者は、登録者の当該ドメイン名が、 不正の目的で登録または使用されていないことに関する主張及び立証をしていない。
③次に、申立人の主張、並びに、 パネリストが独自に実施した調査結果に基づき、 本件ドメイン名が不正の目的で登録または使用されているか検討する。
あ)本件ドメイン名「AZURPROMILIA.JP」が含む「AZURPROMILIA」は申立人が創作及び採択した造語である。 一方、「AZURPROMILIA」はソーシャルゲームとの関係において当該ゲームの内容等を指し示す記述的解説的な表示ではなく、 自他商品・役務の識別機能を発揮する表示である。 このことは、本件各商標が、ソーシャルゲームとの関係、 具体的には次の指定商品・役務について特許庁審査官による自他商品・役務の識別力が認められ、 商標登録がなされている事実から明らかである。
- 9類:
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- 国際登録1772863号:コンピュータゲームプレイ用のダウンロード可能な双方向娯楽用ソフトウエア, ビデオゲームプレイ用のダウンロード可能な双方向娯楽用ソフトウエア, ダウンロード可能なビデオゲーム用プログラム, ダウンロード可能なビデオゲームソフトウエア, 電子ゲーム用プログラム,携帯電話機用電子ゲームソフトウエア等
- 登録6842453号:コンピュータ用ゲームソフトウェア(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの), コンピュータソフトウェア(記憶されたもの)等
- 41類:
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- 国際登録1772863号:電子ゲームの提供, グローバル通信ネットワークの手段により提供される電子ゲームの提供, インターネットによる電子ゲームの提供,娯楽の提供, オンラインによるゲームの提供, コンピュータ端末又は携帯電話機の通信手段により提供されるゲームの提供, コンピュータ端末又は移動電話に係る通信手段により提供されるゲームの提供, コンピュータ端末又は携帯電話機による通信手段によるゲームの提供等
- 登録6842453号:コンピュータネットワークによるゲームの提供等
- 42類:
-
- 国際登録1772863号:コンピュータ用ゲームソフトウェア及び仮想現実用ソフトウエアの設計及び開発, コンピュータのハードウェア及びソフトウェアの設計及び開発, コンピュータ用ゲームソフトウェアの設計, コンピュータゲームソフトウェア及びビデオゲームソフトウェアの設計等
- 登録6842453号:電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守, コンピュータウェブサイトのホスティング, コンピュータソフトウェアの貸与, コンピュータソフトウェアのバージョンアップ, コンピュータソフトウェアの設計,コンピュータデータの回復, データ又は文書の物理媒体から電子媒体への変換, コンピュータプログラムのインストール
い)一方、本件ドメイン名は「AZURPROMILIA.JP」であるところ、 当該ドメイン名が含む「AZURPROMILIA」は極めて独自性の高いいわゆる「造語」的名称であるから、 登録者が同ドメイン名に含む表示「AZURPROMILIA」を独自に創作した後本件ドメイン名に採用し、その結果、 本件ドメイン名が含む「AZURPROMILIA」が、 申立人が所有し造語からなる国際登録商標「Azur Promilia」及び登録商標「アズールプロミリア」と「偶発的」に共通する結果に至ったとは、到底考えることはできない。
寧ろ、 申立人による「アズールプロミリア」事業の公表が2024年3月20日に行われ、 本件各商標の情報公開日が2024年3月28日(国際登録1772863号)及び2023年12月25日(登録商標6842453号)であることから、 登録者は申立人によるかかる事実を本件ドメイン名の登録日である2025年9月29日以前に察知し、 申立人が本件ドメイン名及び本件ドメイン名に類似するドメイン名の取得がなされていないことを奇貨として、 本件ドメイン名の取得に至ったものであると推測するには合理的な理由がある。
う)また、登録者は申立人と何ら人的及び事業的関係を有さず、 業務内容も不明である。 また、登録者において、 自ら「アズールプロミリア」なるソーシャルゲームを提供している事実は確認できず、 登録者とは無関係なゲームのタイトルのドメイン名を取得することによって、 その名声や人気を利用した不当な利益を得ようとしていると推測される。
え)登録者名は登録者からの申請により非表示とされていた。 広く配信予定のゲームの名称を使用したドメイン名について、 正当な利益を有する登録者であれば、その氏名等を非表示とする理由はなく、 このように登録者が自らの素性を隠そうとしていることは、 登録者の不正の目的を強く推知させる。 かかる事実関係から、登録者は、 不正の目的をもって本件ドメイン名の取得に至ったものと推測するには合理的な理由がある。
お)かかる事実関係並びに経緯から、登録者は不正の目的をもって、 本件ドメイン名の取得に至ったものと判断する。
7 結論
以上に照らして、紛争処理パネルは、 申立人は本件ドメイン名「AZURPROMILIA.JP」がJP-DRP 4条aに規定する条件、 即ち、 本件ドメイン名が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し(同条(i))、 登録者がドメイン名に関係する権利または正当な利益を有しておらず(同条(ii))、 且つ、登録者のドメイン名が不正の目的で登録または使用されていること(同条(iii))を証明したもの判断する。 よって、JP-DRP 4条iに従って、 ドメイン名「AZURPROMILIA.JP」の登録を申立人に移転するものとし、 主文のとおり裁定する。
2026年4月22日
日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
単独パネリスト 弁理士 中村知公
別記 手続の経緯
(1)申立書の受領
日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、 2026年2月20日に申立書(添付する関係書類を含む。)を申立人から電子的送信により受領した。
(2)申立手数料の受領
センターは、2026年2月20日に申立人より申立手数料を受領した。
(3)ドメイン名及び登録者の確認
センターは、2026年2月24日にJPRSに登録情報を照会し、 2026年2月24日にJPRSから申立書に記載された登録者が対象ドメイン名の登録者であることを確認する回答並びにJPRSに登録されている登録者の電子メールアドレス及び住所等を受領した。
(4)適式性
センターは、 2026年2月24日に補正(申立書の記載事項の修正等)が必要と判断してその旨を申立人に通知し、 2026年2月24日に補正書類を受領し、 2026年2月24日に申立書が処理方針と手続規則に照らし適合していることを確認した。
(5)手続開始
センターは、2026年3月3日に申立人、 JPNIC及びJPRSに対し電子的送信により、手続開始を通知した。 センターは、 2026年3月3日に登録者に対し郵送及び電子メールにより、 開始通知を送付した。 開始通知により、登録者に対し、手続開始日(2026年3月3日)、 答弁書提出期限(2026年4月1日)並びに書面の受領及び提出のための手段について通知した。 但し登録者の住所に送付した通知は「あて所に尋ねあたりありません」として返送された。
(6)答弁書の提出
センターは、 2026年4月1日に答弁書を登録者から電子的送信により受領した。 センターは、 2026年4月2日に答弁書が処理方針と手続規則に照らし適合していることを確認し、 2026年4月2日に申立人に対し電子的送信により送付した。
(7)パネルの指名及び裁定予定日の通知
申立人、登録者とも1名のパネルによって審理・裁定されることを選択し、 センターは、 2026年4月9日に弁理士 中村 知公を単独パネリストとして指名し、 一件書類を電子的送信によりパネルに送付した。 センターは、2026年4月9日に申立人、登録者、 JPNIC及びJPRSに対し電子的送信により、 指名したパネリスト及び裁定予定日(2026年4月28日)を通知した。 パネルは、2026年4月13日に公正性・独立性・中立性に関する言明書をセンターに提出した。
(8)パネルによる審理・裁定
パネルは、2026年4月22日に審理を終了し、裁定を行った。