事件番号:JP2026-0012

裁定

申立人:
(氏名/名称)コベルコ・コンプレッサ株式会社
(住所)東京都港区●(省略)●
代理人:
弁護士 矢部 耕三
弁護士 野尻 悠菜
登録者:
(氏名/名称)神戸レコ合同会社
(住所)兵庫県神戸市●(省略)●

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、 JPドメイン名紛争処理方針(以下、「処理方針」という。)、 JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則(以下、 「手続規則」という 。) 及び日本知的財産仲裁センターJP ドメイン名紛争処理方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、 申立書・提出された証拠に基づいて審理を遂げた結果、 以下のとおり裁定する。

1 裁定主文

 ドメイン名「KOBELCO-COMP.CO.JP」の登録を申立人に移転せよ。

2 ドメイン名

 紛争に係るドメイン名(以下、 「本件ドメイン名」という。)は「KOBELCO-COMP.CO.JP」である。

3 手続の経緯

別記のとおりである。

4 背景となる事実

 申立人は、 株式会社神戸製鋼所を中心としたKOBELCOグループの一員として、 圧縮機(コンプレッサ)の国内外での製造・販売並びにサービス事業を行う会社(英文社名:KOBELCO COMPRESSORS CORPORATION)であり、 2022年5月頃まで本件ドメインを所有・使用しており、 株式会社神戸製鋼所が所有する登録第1535778号、第4619332号、 第6137290号に係る商標「KOBELCO」及び「コベルコ」について、 登録者による本件ドメイン名の登録日以前より、 同社から使用許諾を受けている。

 本件ドメイン名は、2026年2月1日に登録された。

5 当事者の主張

a 申立人

 申立人の主張は以下のように整理できる。

(1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること

(i) 申立人は、株式会社神戸製鋼所の連結子会社として、 圧縮機(コンプレッサ)の国内外での製造・販売並びにサービスを行う会社である。 株式会社神戸製鋼所を中心としたKOBELCOグループは、 海外拠点数23カ国、関係会社数243社を有する巨大グループであり、 KOBELCOブランドは、国内外において著名である。 株式会社神戸製鋼所は、欧文字「KOBELCO」や ロゴ化したもの、 そのカタカナ表記「コベルコ」からなる商標登録第1535778号、 第4619332号、第6137290号(以下、 これらを個別に又は総称して「本件商標」という)を、 遅くとも2019年4月12日以前から所有している。 申立人は、2021年に株式会社神戸製鋼所から本件登録商標の使用許諾を受け、 給油式コンプレッサ、オイルフリー式コンプレッサ、 コンプレッサ周辺機器、ヒートポンプチラー、 スクリュ式小型蒸気圧縮機等に本件登録商標を使用している。 加えて、申立人は、「kobelco-comp」という語を抽出、創作し、 2022年6月30日頃まで、申立人ウェブサイトのURLとして、 本件ドメイン名を登録及び使用していた。

(ii) 本件ドメイン名のうち、 「KOBELCO」の部分の綴りは本件商標と共通している。 他方、「-COMP」の部分は日本語としては意味をなさないので、 本件ドメイン名の要部は「KOBELCO」の部分である。 本件ドメイン名の要部と本件商標は社会通念上同一であるため、 本件ドメイン名は、本件商標と混同を引き起こすほど類似している。

(2)登録者が、本件ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと

(i) 株式会社神戸製鋼所及び申立人は、本件商標の使用、及び、 本件ドメイン名の登録及び使用について、 登録者に対して何ら許諾していない。

(ii) 登録者名義の登録商標は存在せず、 「KOBELCO-COMP」及び「KOBELCOCOMP」に関する登録商標も存在しない。

(3)登録者の本件ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること

(i) 本件ドメイン名を利用したURL「https://www.kobelco-comp.co.jp」を表示したウェブサイト(以下、「本件サイト」という)には、 申立人を名乗る記載や、 事実とは異なる申立人の代表者名・住所・従業員数等の会社情報が記載されていた(なお、申立人が、 本件サイトのサーバー管理会社に権利侵害情報の削除を申し立てたところ、 本件サイトはその後削除された)。 したがって、登録者は、本件ドメインの登録当初から、 申立人になりすます不正の目的で本件ドメイン名を取得したことが強く推認される。

(ii) 現在、インターネット検索エンジンに、 「https://www.kobelco-comp.co.jp」を入力すると、 自動的に「shinymarkets.com」というサイトに転送されるよう仕組まれている。 当該サイトは、申立人事業とは何ら関係のない海外FXに関するもので、 当該サイトの運営者(外国法人)は、 株式会社神戸製鋼所のグループ企業ではなく、申立人とも何らの関係も有していない。

(iii) よって、登録者は、当初、 本件商標の著名性・周知性にフリーライドする目的で本件ドメイン名を登録し、 その後、本件ドメイン名のウェブサイトにアクセスする者をして海外FXに関するサイトに誘導することで、 商業上の利益を得るという不正な意図を持っていることが推認される。

 よって、ドメイン名は、申立人の商標と混同を引き起こすほどに類似し、 登録者はドメイン名に関係する正当な利益を有しておらず、 ドメイン名は不正の目的で登録または使用されている。

従って、申立人は、ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。

b 登録者

登録者によって答弁書は提出されなかった。

6 争点および事実認定

a 適用すべき判断基準

 手続規則第15条(a)は、 パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則についてパネルに次のように指示する。 「パネルは、提出された陳述・書類及び審問の結果に基づき、処理方針、 本規則及び適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理に従って、 裁定を下さなければならない。」

 処理方針第4条aは、 申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを指図している。

  1. 登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること
  2. 登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと
  3. 登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること

b 紛争処理パネルの判断

(1)同一または混同を引き起こすほどの類似性

 甲第2号証乃至第4号証からは、株式会社神戸製鋼所が、 我が国において、欧文字「KOBELCO」やロゴ化したもの、 その読み方「コベルコ」からなる本件商標を、 第7類(風水力機械器具及び圧縮機を含む)等において、 1982年8月27日(商標登録第1535778号)、 2002年11月8日(商標登録第4619332号)、及び、 2019年4月12日(商標登録第6137290号)に、それぞれ商標登録し、 これらが現在も有効に存在すること、甲第5号証からは、 申立人が、 2021年に株式会社神戸製鋼所から本件商標の使用について許諾を受けたこと(なお、当該使用許諾契約書の契約期間は2022年3月31日と第11条(1)に規定されており、 一方当事者から反対意思が表明されない限り1年間自動延長されることから、 現在も有効に存続するものとみなす。 また、同契約書に記載の申立人住所が上記と異なっており、 申立人の履歴事項全部証明書の記載とも一致しないが、 当パネルが調べたところ、「https://metoree.com/companies/17141/」に掲載された本社住所と一致することから、 申立人に相違ないものと推認する)、甲第6号証からは、 本件商標の指定商品(コンプレッサ・圧縮機,ヒートポンプ,冷凍機)に、 本件商標と同一又は類似する商標を現在も使用していること、 甲第7号証からは、申立人が、2022年5月頃まで、 申立人ウェブサイトのURLとして、 本件ドメイン名を登録及び使用していたことが認められる。

 上記事実より、 申立人は「KOBELCO」について権利及び正当な利益を有している(少なくとも主張し得る)と認めることができる。

 本件ドメイン名のトップレベルドメイン「.JP」は国別コードを表す部分、 第2レベルドメイン「.CO」は組織の種類(属性)を表す部分に過ぎないから、 本件ドメイン名が商標や役務の出所表示として機能を果たす要部は、 第3レベルドメインである「KOBELCO-COMP」であることは明白である。 そこで本件ドメイン名の第3レベルドメイン「KOBELCO-COMP」と、 本件商標の欧文字部分を対比すると、まず、 前半の欧文字部分「KOBELCO」は一致している。 後半の「-COMP」の有無において本件商標と相違するものの、 URLにおけるハイフン(-)は、URL内の単語を区切るために用いられること、 当パネルがJ-PlatPatで調べたところ、 「KOBELCO」は日本国周知・著名商標として掲載されていたのに対し、 「COMPY」は、例えば、以下のウェブサイトで入手可能なトヨタ自動車「MARK X」の取扱書、三菱電機設備用パッケージエアコンの総合カタログ(年間冷房中温用)で確認できるように、 コンプレッサーの略記として「COMP」が使用されており、 圧縮機(コンプレッサ:compressors)を取り扱う業界においては同商品の略語と認識され得ることから、 前半の文字部分が、本件ドメイン名の要部といえる。
https://dl.mitsubishielectric.co.jp/dl/ldg/wink/wink_doc/contents/doc/WEB_CATA/S1769C8355H/index.html#target/page_no=49
https://manual.toyota.jp/pdf/markx/markx_201208.pdf

 したがって、本件ドメイン名「KOBELCO-COMP.CO.JP」は、 申立人が権利及び正当な利益を有している(少なく主張し得る)本件商標と混同を引き起こすほど類似するものと認められる。

(2)権利または正当な利益

 本件ドメイン名は2026年2月1日に登録されたところ、 当パネルが調べたところ、 登録者が本件ドメイン名と同一又は類似の文字列を含む(又はその読み方に相当する)日本の商標登録を有する事実はうかがえない。

 また、申立人及び株式会社神戸製鋼所は、 本件ドメイン名の登録を登録者に許諾したことはないと主張しているところ、 これと矛盾する事情は認められないから、 申立人及び株式会社神戸製鋼所は登録者に本件ドメイン名の登録を許諾していないものと認められる。

 さらに、申立人の主張に対して、登録者は答弁書を提出しておらず、 本件ドメイン名を採用するに至った理由その他の権利又は正当な利益を明らかにしていない。

 以上のことから、 処理方針第4条c項各号所定の事実はいずれも認められず、 登録者は本件ドメイン名に関して何らの権利または正当な利益を有するものでないと言うほかない。

(3)不正の目的での登録または使用

 甲第8号証からは、 登録者が本件ドメイン名を登録した後の2026年5月22日頃、本件サイトに、 本件商標や申立人を名乗る記載、 事実とは異なる申立人の代表者名・住所・従業員数等の会社情報が記載されていたこと、 甲第9号証及び同第10号証からは、申立人が、 本件サイトのサーバー管理会社に権利侵害情報の削除を申し立てた結果、 本件サイトはその後削除されたことが認められる。

 そうすると、登録者は、本件商標や申立人、 株式会社神戸製鋼所のことを知っており、 申立人等になりすます目的を有していた可能性が否定できず、また、 答弁書を提出していないことから、 正当な目的で本件ドメイン名を登録した事情は認められない。

 また、甲第11号証及び同第12号証からは、 本件サイトが削除された後においても、 外国法人と思しき事業者が運営する海外FXに関するウェブサイト「shinymarkets.com」にリダイレクト又は誘引等のために使用されており、申立人は、 申立人事業と海外FXとは何ら関係なく、 当該サイトの運営者は株式会社神戸製鋼所のグループ企業でなく、 申立人とも何らの関係も有していないと主張しているところ、 これと矛盾する事情は認められない。

 以上から、登録者は、本件商標を知って、 当該商標に化体した申立人の信用、名声、 顧客吸引力等を毀損させる意図において、 本件ドメイン名を登録および使用としたものと推認される。

7 結論

 以上に照らして、紛争処理パネルは、 登録者によって登録されたドメイン名「KOBELCO-COMP.CO.JP」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、 登録者が、ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有しておらず、 登録者のドメイン名が不正の目的で登録または使用されているものと判断する。

 よって、処理方針第4条iに従って、 ドメイン名「KOBELCO-COMP.CO.JP」の登録を申立人に移転するものとし、 主文のとおり裁定する。

2026年9月24日
 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
        単独パネリスト    三上 真毅

別記 手続の経緯

(1)申立書の受領

 日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、 2026年7月8日に申立書(添付する関係書類を含む。)を申立人から電子的送信により受領した。

(2)申立手数料の受領

 センターは、2026年7月15日に申立人より申立手数料を受領した。

(3)ドメイン名及び登録者の確認

 センターは、2026年7月15日にJPRSに登録情報を照会し、 2026年7月15日にJPRSから申立書に記載された登録者が対象ドメイン名の登録者であることを確認する回答並びにJPRSに登録されている登録者の電子メールアドレス及び住所等を受領した。

(4)適式性

 センターは、 2026年7月17日に補正(申立書の記載事項の修正等)が必要と判断してその旨を申立人に通知し、 2026年7月17日に補正書類を受領し、 2026年7月17日に申立書が処理方針と手続規則に照らし適合していることを確認した。

(5)手続開始

 センターは、2026年7月27日に申立人、 JPNIC及びJPRSに対し電子的送信により、手続開始を通知した。 センターは、 2026年7月27日に登録者に対し郵送及び電子メールにより、 開始通知を送付した。 開始通知により、登録者に対し、手続開始日(2026年7月27日)、 答弁書提出期限(2026年8月25日)並びに書面の受領及び提出のための手段について通知した。 但し登録者宛電子メール送信分については一部が送信不能であった。

(6)答弁書の提出

 センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、 2026年8月26日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知書を、 電子的送信により申立人及び登録者に送付した。

(7)パネルの指名及び裁定予定日の通知

 申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択し、 センターは、2026年9月1日に三上 真毅を単独パネリストとして指名し、 一件書類を電子的送信によりパネルに送付した。 センターは、2026年9月1日に申立人、登録者、 JPNIC及びJPRSに対し電子的送信により、 指名したパネリスト及び裁定予定日(2026年9月24日)を通知した。 パネルは、2026年9月3日に公正性・独立性・中立性に関する言明書をセンターに提出した。

(8)パネルによる審理・裁定

 パネルは、2026年9月24日に審理を終了し、裁定を行った。