事件番号:JP2014-0002

                  裁 定

  申立人:
  (名称)ソフトバンク株式会社
  (住所)東京都港区東新橋1-9-1東京汐留ビルディング

  登録者:
  (氏名)Porchester Partners Inc.
  (住所)Panama Mossfon Building East 54st Street PO Box 0832-0086 WTC

 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JP ドメイン名紛争処理方針のための手続
規則15 条(a)に定められた原則に則り審理した結果、以下のとおり裁定する。

1 裁定主文
  ドメイン名「MYSOFTBANK.JP」の登録を、申立人に移転せよ。
2 ドメイン名
  紛争に係るドメイン名は「MYSOFTBANK.JP」である。
3 手続の経緯
  別記のとおりである。
 なお、手続言語は、日本語とすることをセンターが決定しており、その決定は、JP ドメ
イン名紛争処理方針のための手続規則第11 条(a)に定められている原則通りである。また、
パネリスト指名後も、本紛争処理パネルも原則通りの日本語とする旨を指示した。

4 当事者の主張
 a 申立人
  申立人の主張は、次のとおりである。すなわち、申立人は、商標「SOFTBANK」の商標
登録権者であり、子会社(旧申立人2であるソフトバンクモバイル株式会社を含む)に対
して、移動体通信事業、通信サービスやインターネット関連の分野で、上記登録商標がカ
バーする商品や役務に関して使用することを許諾し、この許諾に基づき同商標は多数使用
されている。これら現に使用されている商標には、2006 年10 月から使用を開始した商標
「My SoftBank」も含まれており、日本国内において著名性を獲得している。そして、登録
者の保有するドメイン名「MYSOFTBANK.JP」(以下、単に当該ドメイン名という)は、トッ
プレベルドメインの「JP」が使用主体の属する国を表示するものに過ぎず、「MYSOFTBANK」
の部分の前半2文字を構成する「MY」は、上記著名なサービス名「My SoftBank」と似せる
ために付加された記述的な文字列であり、識別力を有さないことを考えれば、当該ドメイ
ン名の文字列において識別力を有する「SOFTBANK」の部分は、申立人の登録商標と全く同
一の外観を有し、称呼も「ソフトバンク」と同一である。そして、申立人の登録商標
「SOFTBANK」も、「My SoftBank」の表示も、独自のものであって、使用許諾を付与した事
実がないから、登録者による当該ドメイン名の登録は、商品またはサービスの提供を正当
に行う目的をもった登録とは認められず、登録者が当該ドメイン名と同一または実質的に
同一と認められる登録商標を有しているという事実も、申立人の調査では発見されていな
い。さらに、登録者が当該ドメイン名によって運営するサイトは、他のサイトへのリンク
付きの広告のみで構成される所謂ドメインパーキングサイトであり、JP ドメイン名紛争処
理方針4 条b(iv)に規定する使用態様に該当するから、不正目的での使用といえる。また、
登録者は、2014 年6 月2 日現在、90 個を超えるドメインを保有しており、その中には第三
者の商標と類似するものも多数含まれているから、方針第4 条b(ii)に規定する妨害行為
に該当すると推認でき、本件ドメイン名登録もその一ママとして不正目的として登録された
ものである。
 以上の理由を指摘して申立人は、ドメイン名登録の申立人への移転を請求した。
 なお、当初の申立は、申立人と「申立人2(ソフトバンクモバイル株式会社)」との共同
申立てとされていた。しかし、別記の通り、「申立人2」は、申し立てを取り下げる旨の通
知を2014 年8 月22 日付にて提出し、センターに同年8 月25 日に受理された(ただし、そ
の取り下げ通知書には、申立書の記載内容を変更する旨の記載はない)。

 b 登録者
  登録者は、期限までに答弁書を提出しなかった。

5 争点とそれに対する判断
 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に拠るべき原則について、パネルに
次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・文書および審問の結果に基づき、処理
方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理に従って、裁定を
下さなければならない。」
 そして、JP ドメイン名紛争処理方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなけ
ればならないことを指図している。
 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利又は正当な利益を有する商標その他表示と
同一又は混同を引き起こすほど類似していること【第1 要件】
 (2)登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないこと【第2
要件】
 (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録又は使用されていること【第3 要件】
以下、3要件を逐次、具体的に検討する。

 (1)第1 要件
 第1要件を認定する際には、申立人が権利を有する商標と、登録ドメイン名のTLD 識別
子を除外した部分(いわゆる要部)とを対比することが一般的である。トップレベルドメ
インを示す識別子(suffix)を除外して対比する考え方は、本件同様の汎用JP ドメイン(セ
カンドレベルに属性を含まないJP ドメイン)に関する最初の紛争処理申立て事例に対する
裁定( 日本知的財産仲裁センター2001 年8 月8 日JP2001-0008 裁定
https://www.nic.ad.jp/ja/drp/list/2001/JP2001-0008.html[htv.co.jp/htv.jp]の多数
意見裁定文争点4の部分)で採用され、gTLD にかかるドメイン名の紛争処理方針(UDRP)に
基づく裁定例でも、ごく初期の裁定例から繰り返し採用されてきた考え方である。本パネ
ルも、この考え方を妥当とし、加えて、本件当事者が、トップレベルドメインの識別子を
除いて判断することが不適切な事例(たとえば、識別子「.jp」を含む商標を使用する等の
特異な事例、参照、UDRP の事例としてWIPO 仲裁センター裁定project.me GmbH v. Alan Lin,
WIPO Case No.DME2009-0008, <project.me>)でもないことから、本件登録ドメイン名
から識別子「.JP」を除いた部分、すなわち、「MYSOFTBANK」と、申立人が権利を有する商
標とを対比することとする。
 なお、この点につき、申立人は、「登録者の保有する本件ドメインのうち、トップレベル
ドメインの『JP』は使用主体が属する国を表示させるものに過ぎない。」と、「.JP」の部分
を第1 要件認定時に除くべき理由を説明しているが、この見解は採用できないので、念の
ため一言しておく。ドメイン名の登録資格を規定している、現在のJPRS 汎用JP ドメイン
名登録等規則8条によると、日本国籍を有しない者もJPドメインの登録が可能であるから、
「.JP」は、必ずしも使用主体の所属を示すものと位置づけることができない。確かに、本
パネルの同僚パネリストが、それに近い理由を示したことがあった。すなわち、工業所有
権仲裁センター2001 年2 月5 日JP2000-0002 裁定
https://www.nic.ad.jp/ja/drp/list/2000/JP2000-0002.html[goo.co.jp]は、「登録者ド
メイン名『goo.co.jp』・・・のうち、トップレベルドメイン及びセカンドレベルドメインは
それぞれホストが属する国及び組織を表示するものであるから、登録者ドメイン名及び申
立人のgoo サイトのドメイン名において主たる識別力を有するのは『goo』の部分にあるものと
認められる。」と述べている。しかし、この裁定当時には汎用jp ドメイン登録が開始されて
おらず、一般的な属性型JP ドメインである「.co.jp」ドメインは、日本において登記した
法人に資格が限定されており、その意味では、トップレベルドメインの「.jp」はホストが
属する国と理解するのも無理からぬところがある。実際、この事案で対象となったのは属
性型ドメイン名であった。しかし、汎用JP ドメイン(当該ドメイン名は汎用JP ドメイン
名である)は、国籍条項が置かれておらず、登録を管理するJPRS も、日本国内に住所を置
くことを求めているが、通例は国籍を意味する「属する」ことや、本店の所在地を日本と
することまでは求めていない。むしろ、「.jp」を第1 要件の判断時に除いて対比する必要
性は、JP ドメイン空間についてのインターネットユーザーの利用を想定すると、日本のレ
ジストラが管理するccTLD は、日本に関連するか、日本国内を活動の中心とする個人・組
織等の情報を求める場合が主として想定されるので、そのようなユーザーがその表示から
想起する出所等について、日本にかかわるという点が、出所等を識別する役割を果たしに
くいことに起因していると思われる。
 それでは、本件事案は、第1 要件を充足すると判断すべきか。対比の対象となるのは、
当該ドメイン名の「.JP」を除いた部分、すなわち、「MYSOFTBANK」と、「申立人が権
利または正当な利益を有する商標その他の表示」すなわち、登録商標「SOFTBANK」で
ある。
 この点、申立人は、その主張の通り、商標「SOFTBANK」(標準文字)について、平成
13(2001)年1 月5 日に、指定役務を35 類に属する役務(雑誌・新聞に掲載された広告
に関する情報の提供、商品の販売実績情報の提供、電子計算機プログラムの販売に関する
情報の提供)のほか、41 類、42 類に属する役務について、日本の商標登録(登録第4444013
号)を得た。その後、同年5 月25 日には、商標「SOFTBANK」(標準文字)について、
指定役務36 類に属する役務について同様に日本の商標登録(登録第4476883 号)を、平
成17(2005)年10 月14 日には、さらに幅広い商品分類(3 類、8 類、9 類等々)において、
「SOFTBANK」(標準文字)商標につき日本の商標登録を得た(これらの点につき、申立
書に添附された資料8、10を参照)。加えて、平成23(2008)年6 月17 日には、商標
「SoftBank」(図形)を3 類、8 類、9 類、11 類以下多数の類に含まれる指定商品及び35
類、36 類以下多数の類に含まれる指定役務について日本の商標登録を得た。そして、現時
点においてもそれら商標登録を維持しているが、申立人も自認する通り、商標
「MYSOFTBANK」や「My SoftBank」等は、商標登録されていない。したがって、両
者は同一とは言えない。しかしながら、「MYSOFTBANK」と、申立人の登録商標
「SOFTBANK」等は、第1 要件に関するかぎり、混同を惹き起こすほどに類似している
というべきである。JP ドメイン自体は、外国籍であっても登録を認められているものの、
日本国内に住所を有することを登録資格として求められているので、混同を惹き起こすほ
ど類似か否かは、日本国内のインターネットユーザーを基準とすべきところ、1)
「SOFTBANK」商標は、日本国内において営業を継続する数少ない携帯電話通信会社の
登録商標であり、新製品が投入されるとネットニュースや全国放送ニュース・全国紙等で
繰り返し報じられる等の事情から、1ワードとして認識するユーザーが極めて多いと推認
される一方、登録者側表示の「MYSOFTBANK」の一部である「MY」は、「私の」とい
う意味をあらわす英単語として、大半の日本人が認識できる語であるから、ユーザーは、
「MYSOFTBANK」を2語として認識する可能性が強いと推認されること、2)主要な携
帯電話事業者である申立人会社、NTT ドコモ、AU の3社はいずれも通話料金の検索を中
心とする顧客サービスをインターネット経由で行う窓口として、それぞれ「My Softbank」
(申立書添附資料14 参照)、「my docomo」(https://www.nttdocomo.co.jp/mydocomo/)
「au マイプレミアショップ」
(http://www.au.kddi.com/support/mobile/procedure/service/myshop/)」というように、全
て「my」という語が用いられており、継続的利用を前提とし、利用会社を変更する際も変
更前会社で用いていた電話番号のポータビリティ制度等によって、複数会社のサービス内
容について知る機会が多い携帯電話サービスの特性を考えると、「MY」との語に特別な意
味を付与する可能性が低いと考えられ、そうすると、当該ドメイン名の「MYSOFTBANK」
の語の部分で、主要な印象を与えるのは「SOFTBANK」の部分であること、3)前記2)の
考え方は、登録者が当該ドメイン名を使用して運営しているウエッブサイトをみても、
「SOFTBANK 」商標と関連する商品にリンクを貼っていることからして、
「MYSOFTBANK」が1 語として認識され、登録者独自のビジネスと結びつくという主張
が仮になされたとしても説得力を欠く、と考えられる。
以上にあげた3点の理由から、申立人の登録商標「SOFTBANK」は、登録者が登録を有す
る当該ドメイン名の主要部分として対比すべき部分である「MYSOFTBANK」は、混同を惹き
起こすほどに類似し、第1 要件は充足されていると判断する。

 (2)第2 要件
 登録者は、指定期日までに答弁書を提出していないため、本件紛争処理パネルは、当該
ドメイン名に類似する商標につき、登録者が自ら商標登録し、またはその商標を使用して
いることを確認する手段は、当該ドメイン名を使用したウエッブサイト以外にない。また、
MYSOFTBANK などの商標について、登録者が主宰するビジネス等が一定の関係を有すると本
件紛争処理パネルが判断すべき特段の事情も見当たらない。登録者が住所を有していると
みられるパナマにおいて用いられることがある検索エンジン等を用いても、登録者の営業
実態は検索結果にあらわれてこず、申立人は、SOFTBANK 商標ならびにMYSOFTBANK 商標を、
登録者に使用許諾したことはないと述べており(申立書4 頁(3)①)、登録者が申立人に対
して権利を有しているということを認定する理由はない。
 また、登録者は、当該ドメイン名「MYSOFTBANK.JP」を使用してポータルサイトを運営し
ており、同サイトに関連リンクとして掲載されているリンク先は、ソフトバンク携帯を販
売する他社サイトや電話料金比較の他社サイトであることから(申立書添附資料35、なら
びに紛争処理パネルが2014 年8 月31 日迄に実施した、www.mysoftbank.jp の検索結果に
よる)、いわゆるドメイン名パーキングサイトの可能性が高い。すなわち、申立人の有する
登録商標の周知性を利用してポータルサイトにスポンサーリンクを多数登録して、インタ
ーネットユーザーを誘引し、そのクリック数に応じた収入を得ようとしているとみられる。
この点に関する申立人主張は大筋で妥当であり、このような当該ドメイン名の使用方法(パ
ーキング、ないしランディング)は、申立人の表示を利用して消費者の誤認を惹き起こす
ことによって、商業上の利得を得ることを意図した行為か、またはそれに準ずる行為であ
り、非商業目的の使用でも公正な使用でもないと認められる(方針4 条c(iii))。この考
え方は、日本知的財産仲裁センター2008 年2 月29 日JP2007-0010 裁定[GUCCI.JP]
https://www.nic.ad.jp/ja/drp/list/2007/JP2007-0010.pdf で採用され、また、gTLD の紛
争処理に関するUDRP について、WIPO 仲裁センターが公表する「パネリスト共通見解」で
も同様の立場が採用されている(WIPO Overview of WIPO Panel Views on Selected UDRP
Questions, 2nd ed.,2.6, http://www.wipo.int/amc/en/domains/search/overview2.0/#26)。
本件事案においても同様に、第2 要件の成立(登録者は、当該ドメイン名登録に正当な利
益がないこと)を認めるべきと考える。
 さらにいえば、パーキングサイトに掲載されたスポンサーリンクを見れば、申立人また
はその関連会社が、SOFTBANK 商標のもとに携帯電話通信とその関連ビジネスを展開してい
ることを登録者が知らなかったはずはない。かような状況下で、方針4 条c に規定される
登録者側の正当化事由を登録者が有しているという主張、すなわち、方針4条c(i)に規定
される正当な目的や、同(iii)に規定されるような、申立人商標を利用して商業上の利得を
得る意図等がない公正な利用を登録者自身が行っているのだという主張が、説得力あるも
のと認定することは、登録者の具体的な立証がない限り、極めて難しいといえよう。(同旨、
日本知的財産仲裁センター2010 年2 月18 日2009-0009 裁定[TOSHIBADIRECT.JP etc.]
https://www.nic.ad.jp/ja/drp/list/2009/JP2009-0009.html)。パーキングサイトは、ビ
ジネスの実体がない場合に用いられるのが一般的であり、登録者の名称である「porchester
partners」も、当該ドメイン名の要部である「MYSOFTBANK」とも関連性が認められない。
 以上の理由から、登録者は、当該ドメイン名に関連する権利または正当な利益を有さな
いと認定することができる。

 (3)第3要件
 第3要件は、登録者による当該ドメイン名の登録または使用の少なくともいずれかが、
不正の目的であることの立証が求められる要件である。
 本紛争処理パネルは、登録者は、当該ドメイン名の使用時に、不正目的を有している(い
た)と認定する。現在、実際に当該ドメイン名をドメイン名パーキングサイトに使用して
いる以上、登録者は、申立人のビジネスを全く知らずにしようしていたということはでき
ない。上記(2)で見たとおり、パーキングサイトのスポンサーリンクの項目に、申立人
商標と関連するビジネスへのリンクが貼られているからである。そして、パーキングサイ
トによる当該ドメイン名の使用は、裁定当日も継続されている。加えて、登録者は、当該
ドメイン名が登録された2011 年3 月20 日に相前後して、ドメイン名パーキングサイトに
よるドメイン名使用について、WIPO 仲裁センターの移転裁定を受けており、その裁定日か
ら見ても、当該ドメイン名のパーキングサイトへの使用が、不正目的での使用であると自
認しているものと推認される(たとえば、WIPO Case, Europeenne de Traitement de
L'Information “Euro Information” v. Janice Liburd Porchester Partners, Inc., No.
D2010-0751[cybermu.com]、(2010 年7 月14 日裁定、このJanice Liburd は、この事案
と他の数件で登録者の登録担当者としてWhois に記載されていた者の氏名である), WIPO
Case, Tecnocom Telecomunicaciones y Energia S.A. v. Porchester Partners Inc., Janice
Liburd, Caso No. DES2011-0040[mitecnocom.es](2011 年10 月29 日裁定)。そのほ
か、本件登録者によって登録されたドメイン名のうちで、金融機関の名称を含むドメイン
名について、パーキングサイトによる使用が不正目的と認定された裁定が数件ある)。
 また、登録が不正目的だったかという点について、それが推認される事情が認められる。
すなわち、上記5(1)において認定したとおり、申立人の商標登録は2001 年になされて
おり、申立人の携帯電話ビジネス参入にあわせた「SoftBank」商標の登録が2008 年、いず
れも登録者の当該ドメイン名が登録された2011 年3 月20 日よりも以前に登録が完了して
いる。すなわち、当該ドメイン名が登録された時期は、申立人の携帯電話事業が軌道にの
り、携帯電話回線の累計契約者が2,500 万人を突破した時期にあたる(申立書添附資料6、
2 頁最下段参照)。日本国内の携帯電話事業が免許制であり、事業者数が極めて少数である
ことを考えると、登録商標「SOFTBANK」は、携帯電話事業について少なくとも周知になっ
ており、登録者は当該ドメイン名を使用すれば、インターネットユーザーは申立人の登録
商標と誤認混同が生じることを認識していたと考えられる。もちろん、当事者が外国に連
絡先を設定したことを考慮すれば、登録時点において知らなかったと主張する余地は残さ
れるが、繰り返しパーキングサイトを使用していた実績があることを考えると、登録者か
ら具体的な反論、主張立証がない限り、これと反する認定をすることは難しいものと考え
られる。以上の理由から、登録者は当該ドメイン名を不正目的で登録したものと推認され
る。
 なお、申立人は、登録者が他人の登録商標を用いたドメイン名を多数登録していること
を指摘して、4 条b(ii)にあたると主張する(申立書5 頁第2 段落)。しかし、登録者が使
用許諾を得ていたり、申立人が想定していない国等における商標登録の可能性が排除でき
ないことを考えると、上記に指摘したWIPO 裁定を挙げつつ複数回の妨害行為が繰り返され
たと主張するならばともかく、申立人が指摘する点のみを捉えて第3要件該当を論ずるの
は躊躇される。ただ、この点は、上記不正目的の認定を左右するものではない。

6 結論
 以上に照らして、本紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン名
「MYSFOTBANK.JP」が申立人の登録商標「SOFTBANK」と混同を引き起こすほどに類似し、登
録者が、ドメイン名について権利又は正当な利益を有さず、登録者のドメイン名が不正の
目的で、少なくとも使用されているものと判断する。
 よって、方針第4条iに基づき、ドメイン名「MYSOFTBANK.JP」の登録を、申立人に移転
するものとし、主文のとおり裁定する。

   2014年9月2日
   日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
              佐藤 恵太
              単独パネリスト


別記 手続の経緯

(1)申立書受領日
   2014年6月16日(電子メール及び書面)
(2)手数料受領日
   2014年6月20日 申立手数料の受領確認
(3)ドメイン名及び登録者の確認
   2014年6月20日 JPRS へ照会
   2014年6月20日 JPRS から登録情報の回答
   回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、JPRS
        に登録されている登録者の電子メールアドレス及び住所等
(4)適式性
   日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2014年6月
  25日に、申立書の補正が必要と判断してその旨を申立人に通知し、補正した申
  立書を6月26日に受領した。センターは、同日に、申立書が処理方針と規則に
  照らし申立書が適合していることを確認した。
(5)登録者への通知日及び内容
   センターは、2014年6月25日に、電子メール及び郵便により、登録者の
  日本国内の住所に、申立書及び証拠等一式を送付し、2014年7月25日が答
  弁書提出期限であることを通知したところ、宛て所に尋ねあたりませんとして不
  達であったので、7月1日、EMSにより、公開連絡窓口であるパナマ国住所に
  送付した。
(6)手続開始日 2014年6月26日
   センターは、2014年6月26日に申立人及び登録者には電子メール及び郵
  送で、JPRS 及びJPNIC には電子メールで、手続開始日を通知した。
(7)答弁書の提出の有無及び提出日
   センターは、提出期限日までに答弁書を受領しなかったので、2014年7月
  28日に「答弁書の提出はなかったものと見做す」旨の答弁書不提出通知書を、
  電子メールと郵送にて申立人及び登録者に送付した。
(8)パネリストの選任 2014年8月1日
   申立人は、1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。
   中立宣言書の受領日:2014年8月13日
   パネリスト:佐藤 恵太
(9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知
   2014年8月1日 JPNIC 及びJPRS へ電子メールで通知
             申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知
   裁定予定日:2014年8月21日
(10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し
   2014年8月1日(電子メール及び郵送)
(11)裁定期限の変更(延期)の通知
   2014年8月21日 JPNIC 及びJPRS へ電子メールで通知
             申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知
   変更(延期)後の裁定予定日:2014年9月2日
(12)申立の取り下げ
   2014年8月25日 申立人2(ソフトバンクモバイル株式会社)から取下
              通知書を郵送にて受領
              JPNIC 及びJPRS へ電子メールで通知
              登録者へ電子メール及び郵送で通知
(13)パネルによる審理・裁定
   2014年9月2日 審理終了、裁定。