ネットワークワーキンググループ
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更新: 2409
分類: スタンダードトラック
P. Hoffman
VPN Consortium
2005年5月

English

IKEv1用アルゴリズム
(Algorithms for Internet Key Exchange version 1 (IKEv1))

このメモの位置づけ

この文書は、 インターネットコミュニティに対してインターネットスタンダードトラックのプロトコルを定義するとともに、 それを改良するための議論や提言を求めるものである。 このプロトコルの標準化状態およびステータスについては、 「Internet Official Protocol Standards」(STD 1) の最新版を参照すること。 このメモの配布に制限はない。

著作権表記

Copyright (C) The Internet Society (2005).

要旨

オリジナルのIKEv1(Internet Key Exchange version 1)の仕様で要求され、提案されたアルゴリズムは、 現在のIPsec市場の要求の現実を反映していない。 オリジナルの仕様は、弱いセキュリティを許容し、 弱く実装されたアルゴリズムを提案している。 本書は、オリジナルの仕様書であるRFC2409 を更新するものであり、 今日、利用されているすべてのIKEv1実装を対象としている。

1. はじめに English

オリジナルのIKEv1の定義 [RFC2409] では、 IPsecユーザのニーズにマッチしないMUSTレベルおよびSHOULDレベルの要求事項のセットについて記述している。 本書は、 そこで定義されているアルゴリズムに関する要求事項を変更することにより、 RFC 2409を更新するものである。

本書において、しなければならない(MUST)、 してはならない(MUST NOT)、 要求される(REQUIRED)、 することになる(SHALL)、 することはない(SHALL NOT)、 する必要がある(SHOULD)、 しないほうがよい(SHOULD NOT)、 推奨される(RECOMMENDED)、 してもよい(MAY)、 選択できる(OPTIONAL)のキーワードが使用された場合は、 [RFC2119] における定義に沿って解釈されるものとする。

2. アルゴリズムに関する古い要求事項 English

RFC 2409には、 次のMUSTレベルおよびSHOULDレベルの要求事項が記載されている。

RFC 2409には、 楕円暗号を使用したDiffie-Hellman MODPグループに対する2つの矛盾する要求レベルが記述されている。 その仕様の4章では、 「IKE実装は、 ...(中略)... ECPおよびEC2Nグループをサポートしても良い(MAY)」と記述されているが、 6.3節では、EC2Nグループに関するMODPグループ3および4をサポートする必要がある(SHOULD)と記述されている。

3. アルゴリズムに関する新たな要求事項 English

ここでは、IKEv1に対する新たな要求事項をリストアップする。 いくつかの要求事項は、RFC 2409と同じであるが、 その他は変更されていることに注意すること。

将来、IKEv1に対して追加の更新が行われた場合には、 暗号化用にCBCモードのAES-128の実装が必須となる可能性が高い。

RFC 2409でMUSTレベルおよびSHOULDレベルとしてリストアップされていたその他のアルゴリズムは、 現在は、MAYレベルとなっている。 これには、暗号化用のDES、ハッシュ用のMD5およびTiger、 Diffie-Hellman MODPグループ1、 楕円暗号を使用したDiffie-Hellman MODPグループ、 署名を使用した認証用のDSA、 暗号化を使用した認証用のRSAが含まれる。

暗号化用のDES、ハッシュ用のMD5、 Diffie-Hellman MODPグループ1は、 暗号的な脆弱性によりMAYに落とされている。

ハッシュ用のTiger、 楕円暗号を使用したDiffie-Hellman MODPグループ、 署名を使用した認証用のDSA、 暗号化を使用した認証用のRSAは、 あまり利用されていないことや、 相互接続性が欠如していることから落とされた。

4. まとめ English

Algorithm                     RFC 2409    本書
------------------------------------------------------------------
DES for encryption            MUST        MAY(暗号的に脆弱なため)
TripleDES for encryption      SHOULD      MUST
AES-128 for encryption        N/A         SHOULD
MD5 for hashing and HMAC      MUST        MAY(暗号的に脆弱なため)
SHA1 for hashing and HMAC     MUST        MUST
Tiger for hashing             SHOULD      MAY(利用されてないため)
AES-XCBC-MAC-96 for PRF       N/A         SHOULD
Pre-shared secrets            MUST        MUST
RSA with signatures           SHOULD      SHOULD
DSA with signatures           SHOULD      MAY(利用されていないため)
RSA with encryption           SHOULD      MAY(利用されてないため)
D-H Group 1 (768)             MUST        MAY(暗号的に脆弱なため)
D-H Group 2 (1024)            SHOULD      MUST
D-H Group 14 (2048)           N/A         SHOULD
D-H elliptic curves           SHOULD      MAY(利用されてないため)
    

5. セキュリティに関する考慮事項 English

本書のすべてにおいてセキュリティについて記述している。 本書の「アルゴリズムに関する新たな要求事項」の節でMUSTレベルまたはSHOULDレベルとなっているすべてのアルゴリズムは、 本書執筆時点において、堅牢で安全であると信じられている。

6. 規範的参考文献

[RFC2119] Bradner, S.,
「RFCにおいて要請の程度を示すために用いるキーワード
(Key words for use in RFCs to Indicate Requirement Levels)」,
BCP 14, RFC 2119, 1997年3月.
[RFC2409] Harkins, D. and D. Carrel,
「インターネット鍵交換
(IKE: The Internet Key Exchange)」,
RFC 2409, 1998年11月.
[RFC3526] Kivinen, T. and M. Kojo,
「インターネット鍵交換プロトコル(IKE)のための追加Modular Exponential (MODP) Diffie-Hellman グループ
(More Modular Exponential (MODP) Diffie-Hellman groups for Internet Key Exchange (IKE))」,
RFC 3526, 2003年5月.
[RFC3566] Frankel, S. and H. Herbert,
"The AES-XCBC-MAC-96 Algorithm and Its Use With IPsec",
RFC 3566, 2003年9月.
[RFC3602] Frankel, S., Glenn, R., and S. Kelly,
「AES-CBC暗号アルゴリズムとIPsecでのその使用法
(The AES-CBC Cipher Algorithm and Its Use with IPsec)」,
RFC 3602, 2003年9月.
[RFC3664] Hoffman, P.,
「インターネット鍵交換プロトコル(IKE)のためのAES-XCBC-PRF-128アルゴリズム
(The AES-XCBC-PRF-128 Algorithm for the Internet Key Exchange Protocol (IKE))」,
RFC 3664, 2004年1月.

著者のアドレス

Paul Hoffman
VPN Consortium
127 Segre Place
Santa Cruz, CA 95060
US

EMail: paul.hoffman@vpnc.org

翻訳者のアドレス

東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー
株式会社 NTTデータ
技術開発本部
馬場 達也

EMail: babatt@nttdata.co.jp

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