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(社) JPNIC
JPドメイン名登録検討部会

JPドメイン名 グランドデザイン1999(叩き台)
(最終更新:1999年1月10日)

目次

前文

近年のインターネットの成長は極めて著しく、 社会の通信インフラとして定着しつつある。 そのような中で、 インターネットの利用方法は変化するとともに多様化する傾向にあり、 ドメイン名に対する要求も変化・多様化している。 要求の変化に対応できるよう登録方針やドメイン名構造を見直すとともに、 多様化する要求に答えるためには、 きめ細かなサービスと簡便なサービスの両方を用意するなどの方法でドメイン名登録サービスを多様化させ、 ユーザに選択の幅を提供していくことが必要と考えられる。

このドキュメントは、 JPドメイン名の登録方針やドメイン名構造などに関する今後2~3年の検討の方向性について、 1998年度末時点におけるJPNICの方針をまとめたものである。 このドキュメントは、あくまで検討の方向性を述べたものであり、 今後の検討の中でその内容が変更される可能性があることをお断りする。

1.登録方針

この節では、JPドメイン名の登録方針全般について議論する。 最初に1.1節では、 インターネットの利用方法やそれを取り囲む環境が変化しても変化しないと考えている基本的な要求事項を挙げる。 次に1.2節では、それらを実現するためにJPNICが現時点で採用している方針と、 その理由について述べる。 1.3節では、現行の方針を変更する方向で検討する項目と、検討の方向性について議論する。 ドメイン名構造や知的財産権に関する問題など、より詳細な議論を要する項目については、2節以降で扱う。

1.1 登録方針の前提となる考え方

ドメイン名登録規則の策定にあたっては、 以下の要求事項を満たすことを基本的な考え方とする。

(A) 必要なドメイン名が登録しやすく、将来にわたって安定して使えること

必要なドメイン名が登録しやすく、登録したドメイン名が安定して使えることは、 ドメイン名登録規則の策定にあたっての最も基本的な要求事項である。 ただし、ここでいう「必要なドメイン名が登録しやすいこと」は、 単に「ドメイン名が登録しやすいこと」を意味するものではない。 適切な対策無しに不必要なドメイン名まで登録しやすくすると、 将来のユーザが必要なドメイン名を登録することを難しくしたり、 ドメイン名登録の安定性を損なう結果につながるおそれがある。 また、ここでいう「将来にわたって安定して使えること」も、 「必要なドメイン名が将来にわたって安定して使えること」を意味している。

とりわけ、インターネットのさらなる発展のためには、 現時点でのインターネットユーザの利益だけでなく、 今後インターネットを利用し始める「将来のユーザ」の利益にも配慮することが重要である。 将来のユーザに対する配慮は、 インターネットが社会的な通信インフラへと発展しつつある現状では、 一層重要性を増しているということができる。

(B) 公平性と健全性

ドメイン名空間は、インターネットユーザ全体のための共有資源であり、 それを公平に登録管理していくことが求められている。

また、ドメイン名の健全な登録管理が、 インターネットの健全な発展につながるものと考えられる。 少なくとも、 ドメイン名の登録ないしは使用によって権利侵害が多発するような状況は健全とは考えられず、 とりわけ、 登録方針によってはそのような状況を引き起こすおそれのあるドメイン名と知的財産権の問題に関しては、 社会的な健全性を損なわないよう十分な配慮が必要である。

(C) 国内ユーザの利益の重視と国際的整合性

日本のためのトップレベルドメイン名(TLD)であるJPドメイン名は、 日本国内のユーザの利益を重視したものとすべきと考えられる。 一方で、一般TLD(gTLD)や他の国別TLD(ccTLD)の登録規則の整合性を図る動きがあれば、 それらとの整合性に配慮して登録規則を定めることも重要となる。 国際的な整合性を考慮してドメイン名登録規則を定めることで、 海外のユーザがJPドメイン名の登録規則を理解することが容易になるばかりでなく、 日本のユーザがgTLDや他のccTLDの登録規則を理解することも容易になると期待される。

(D) 迅速な登録と実行可能性

ドメイン名登録は、インターネット接続にあたって必要となる手続きであり、 インターネットの発展を促進するためには、 ドメイン名が迅速に登録できることが重要である。 また合理的なコストで実行可能であることが、 登録規則策定にあたっての大前提になることは言うまでもない。

1.2 現行の登録方針とその理由

現行のドメイン名登録規則は、次の方針に従って策定されている。 これらの方針は、前節で述べた考え方を実現するためのものであり、 不変のものではない。

(1) 組織名とドメイン名の対応と衝突回避方法

登録するドメイン名の最も左のラベルは、登録者が自由に選択する。 同一のドメイン名の登録を希望する組織が複数ある場合には、 先願主義によってどちらが登録できるかを決定する。

ドメイン名を登録者の組織名と関連のあるものしか認めない方針を採っているccTLDもあるが、 この方針では、JPNICがドメイン名の妥当性を審査せねばならず、 公平で迅速な審査は難しいという問題が発生する。 また、登録者が必要なドメイン名を登録しやすくするためには、 登録者が自由に選択する方針が適切と考えている。 また、先願主義に関しては、これに代わる公平な手段が考えられない。

(2) ドメイン名構造と登録要件

組織種別や地域をあらわす第2レベルドメイン名(SLD)を設け、 組織種別をあらわすSLDへの登録要件は、可能な限り法律に基づいて厳格に定める。

SLDは、ドメイン名空間を広げるために不可欠なものと考えている。 またすでに登録しているドメイン名を考えると、 SLDを廃止するなどのドメイン名構造の大幅な変更は難しい。 組織種別を表すSLDへの登録要件を厳密に定めることは、 次に述べる組織あたりの登録可能ドメイン数の制限とあわせて、 将来のユーザに必要なドメイン名を登録しやすくし、 ドメイン名と知的財産権に関わる問題の発生を軽減するために必要と考えている。

地域をあらわすSLDについても、ドメイン名を登録する要件については、 組織種別をあらわすSLDと同一としている。 一方、どの地域をあらわすSLDの下にドメイン名を登録できるかについては、 比較的緩やかな基準を採用している。

(3) 組織あたりの登録可能ドメイン数

1つの組織が登録できるドメイン名の数を、原則として1つに制限する。

上に述べた通り、組織あたりの登録可能ドメイン数の制限は、 将来のユーザに必要なドメイン名を登録しやすくし、 ドメイン名と知的財産権に関わる問題の発生を軽減するために必要と考えている。 ただし、何を1つの組織とみなすかについては、組織の種別ごとに定義している。 例えば、1つの組織が複数のネットワークサービスを提供している場合には、 複数のNEドメイン名を登録することが可能である。 これは、そのような要求が大きかったためである。

(4) ローカルプレゼンス

JPドメイン名を登録できる組織を、 原則として日本に何らかの登記があるものに限定する。

JPドメイン名とgTLDの違いを明確にするために、 何らかのローカルプレゼンスを求める必要がある。 海外のユーザが多くのドメイン名を登録し、 日本のユーザが必要なドメイン名を登録しにくくなることは、 JPドメイン名の趣旨に合致しないものと考えている。 日本における登記を求めているのは、 SLDへの登録要件を日本の法律に基づいて定めていることから来ている。

(5) ドメイン名の売買・譲渡の可否

ドメイン名の売買は禁止とし、ドメイン名の譲渡も原則として禁止する。 ただし、 ドメイン名の売買が行われないことが明らかとみなせるケース(具体的には、 組織の合併の場合、親子会社間、 営業の全部または主要な一部の譲渡の場合のいずれか)に限り、 当事者間の合意により譲渡を認める。

ドメイン名の売買を許可した場合、多くのドメイン名を登録し、 それを販売するというビジネスが成立する。 このようなビジネスを許すことで、 将来のインターネットユーザに不必要な負担を強いる可能性がある。 また、知的財産権に関わる問題の発生を増すことが危惧される。 逆に、ドメイン名の売買を自由化することで、 インターネットの健全な発展に資するとは考えにくい。 商標の売買が認められていることから、 ドメイン名の売買も認めるべきという考え方もあるが、 商標では実際に問題が発生していることと、 ドメイン名の登録・維持コストが商標に比べて極めて小さいことを考えると、 ドメイン名の売買を認めた場合には問題はより深刻になると考えられる。 そもそも1つのドメイン名を使用できるのは1つの組織のみであり、 再生産できない資源であるという性質から、 ドメイン名を商品と扱うのは無理があるという考え方もある。

ドメイン名の譲渡の原則禁止は、 ドメイン名が売買されるのを防止するための最も有効な手段と考えている。

(6) 紛争解決手段

ドメイン名登録者と第三者の間のドメイン名に関する紛争について、 JPNICでは判断を行わず、日本において法的に有効な判断が出た場合にはそれに従う。 また、ドメイン名申請者・登録者とJPNICとの間の紛争に関しては、 JPNIC内で二重に審査する制度を設ける。

第三者との紛争についてJPNICで判断を行わないのは、 とりわけ知的財産権に関する問題について、JPNICはそれを判断する立場になく、 またその能力もないと考えているためである。 また、国内ユーザの利益を考えると、 JPドメイン名に関する紛争は日本国法に基づいて解決されるのが好ましい (ただし、裁判管轄権と準拠法の問題は、JPNICで決められる問題ではない)。

(7) 形式的判断

ドメイン名の登録要件を、できる限り形式的に判断できるようにする。

登録要件を形式的に判断できるようにすることは、 裁量の余地を排除することで公平性を確保し、 登録手続きを迅速に行うために、必要な条件と考えている。

(8) ドメイン名の使い方への不干渉

JPNICは、登録されたドメイン名の使い方には関与しない。

これは、 登録されたドメイン名がどのように使われているかをJPNICとしてすべて把握しそれに関与することは困難であることに加えて、 一部の事例のみに関与した場合には公平性が問題になるためである。

(9) 登録要件の確認と登録者の認証

法人のように登記などに基づいて登録要件を確認できる組織については、 自己申告に基づいてドメイン名を登録し、 登録要件の確認と登録者の認証を省略する。 そうでないものについては、登録者を認証した上で、 書類による自己申告に基づいてドメイン名を登録する。 登録者の認証には、印鑑登録証明書を用いる。

登記などに基づいて登録要件を確認できる組織について、 登録要件の確認と登録者の認証を省略するのは、次のような理由による。

  • 登録要件を満たしているかどうかの確認を事後に行うことができる
  • 組織の法的な責任者を事後にあきらかにすることができる
  • ドメイン名登録にかかるコストを低減することができる

もし、存在しない会社の名義でドメイン名を登録した場合には、 存在しないことを確認した上でドメイン名登録を取り消すことができる。 また、他の会社の名義を使ってドメイン名を登録した場合でも、 名義会社の責任者が誰であるかを事後に確認することができ、 最終的には名義会社が登録されたドメイン名を使えるようにすることができる。

それに対して、登記などの確認手段のない組織について、 登録者を認証した上で、 書類による自己申告に基づいてドメイン名を登録する方針を採っているのは、 次のような理由による。

  • 自己申告以外に登録要件を形式的に判断できる手段がないと考えられる
  • 登録の責任者が誰であるかを明確にするために登録者の認証が必要である

例えば、架空の名義でドメイン名が登録されると、 ネットワークセキュリティ上の問題や知的財産権に関する問題などで紛争が発生した場合に、 登録の責任者が誰であるかが明確にならず、解決が困難になる。 また、組織の内部分裂があった場合に、 登録されたドメイン名を誰が使用できるようにすべきか判断できなくなる。

(10) 社会的健全性への配慮

(1)および(8)の方針に関わらず、ドメイン名を登録すること(または、 登録していること)自身が明らかに社会的許容性を欠く場合には、 ドメイン名登録申請を不承認とする(または、 ドメイン名登録を取り消す)手段を留保する。

これは、社会的健全性を配慮しての最終的な歯止めであり、 JPNICとしてこれらの手段を取らなくてよいことが望ましいのは言うまでもない。

(11) 登録規則変更時の扱い

ドメイン名を登録した後に登録規則が変更になった場合、 すでに登録済のドメイン名についても、変更後の規則に従って扱うのを原則とする。 ただし、規則の変更によってドメイン名の登録要件を欠くこととなっても、 登録済のドメイン名を取り消したり、 強制的に他の適切なドメイン名に変更させることはしない。

これは、 ドメイン名が登録された時期によって規則が異なると事務手続きが煩雑化し、 結果的にドメイン名の維持にかかるコストが上昇することが理由である。 規則の変更によってドメイン名の取り消しや変更を強制しないのは、 それによってドメイン名登録者に多額のコスト負担が必要になったり、 何らかの損害を被る可能性があるためである。 ドメイン名の取り消しや変更を強制した場合、 かかったコストの負担や被った損害の補償を、 JPNICに求められるおそれも否定できない。

1.3 登録方針に関する今後の方向性

前節でも述べた通り、 現行のドメイン名登録規則の策定方針は不変のものではなく、 今後次のように変更していくことを検討する。 その際には、要求の多様化に答えるために、 複数の登録方針を併用する(例えば、 SLDの種類によって異なる登録方針を採用する)ことも検討する。

(1) 組織名とドメイン名の対応

基本的な方針に変更はないが、国際的な動向がそのようになるのであれば、 登録申請者にドメイン名選択の根拠や使用方法を明示させ、 それを公開する方法を採ることは検討する。 ドメイン名選択の根拠と使用方法を明示させることで、 知的財産権に関わる問題の発生を軽減する効果があると考えられている。

(2) ドメイン名構造と登録要件

商品やサービス、イベントのためのドメイン名など、 法律的に定義が難しい対象にドメイン名を登録したいという要求があり、 それに答えるためにドメイン名構造を拡張することを検討する。 具体的には、組織種別に関する登録要件を定めないSLDを設けるなどの方法が考えられる(詳しくは2節で述べる)。

(3) 組織あたりの登録可能ドメイン数

前項に関連して、 1つの組織が複数のドメイン名を登録したいという要求があり、 その要求を満たす方向での検討を行う。 この際に、将来のユーザが必要なドメイン名を登録しやすいという条件が満たす必要があるが、 ドメイン名空間を広げるなどの方法で、 そのような条件を満たしつつ1つの組織が登録できるドメイン数の制限を外す(ないしは緩和する)ことができると考えられる。

(4) ローカルプレゼンス

何らかのローカルプレゼンスを求める方針は変更しないが、 ローカルプレゼンスの条件については、(2)の登録要件と関連して、 登記より簡易な条件を採用する方向を検討する。

(5) ドメイン名の売買・譲渡の可否

ドメイン名の譲渡に関しても、制限緩和に対する要求がある。 当事者間の合意によりドメイン名の譲渡を可能とするには、 ドメイン名の譲渡を禁止する以外の方法で、 ドメイン名の売買を防ぐ有効な枠組みを設ける方向での検討が必要である。

ドメイン名の売買の可否については、 前節で紹介した通り両方の考え方がある。 今後、インターネットユーザの間での議論を盛り上げ、 コンセンサスを形成していくことが必要と考えられる。

(6) 紛争解決手段

JPNICで判断を行わないという方針には変更はないが、 裁判に代わる簡便な紛争解決手段がある(ないしは作れる)なら、 それを利用(ないしは導入)する方向で検討する。

(7) 形式的判断

この点に関しては、方針変更に向けての検討を考えていない。

(8) ドメイン名の使い方への不干渉

方針の変更は考えていない。 ただし、前述した通り、国際的な動向がそのようになるのであれば、 登録申請者にドメイン名選択の根拠や使用方法を明示させ、 それを公開する方法を採ることは検討する。

(9) 登録要件の確認と登録者の認証

登録者の認証を、印鑑登録証明書よりも簡易な方法を採る方向は検討する。 ただし、登録者の認証を簡易に行った場合には、 問題発生時の解決方法にも影響を与えることになる。 結果的に、 登録者の認証を簡易に行った引き換えに、 ドメイン名登録の安定性が犠牲になるものと思われる。

例えば、郵便を使って登録者を認証する方法が考えられる。 この方法を採った場合、 問題が発生した時のドメイン名登録の責任者への最終的な連絡手段は郵便になるため、 郵便が届かず連絡手段がなくなると、 問題の性質によってはドメイン名登録を取り消す場面が出てくるものと予想される。 つまり、データベースの更新を忘れていた場合などに、 ドメイン名登録が取り消される危険が高くなり、 ドメイン名登録の安定性はやや犠牲になる。

逆に、ネットワークセキュリティの観点から、 登記などに基づいて登録要件を確認できる組織についても、 登録者の認証をより厳格に行うよう社会的要請がある可能性も考えられる。

また、電子的な企業認証基盤の整備へ向けての検討が政府を中心に行われているが、 このような新しい技術の導入も検討していく必要がある。

(10) 社会的健全性への配慮

この点に関しては、方針変更に向けての検討を考えていない。

(11) 登録規則変更時の扱い

登録規則変更時に新しい規則に従って扱うことを確認するための有効な手段として、 ドメイン名登録を定期的に更新する方法が考えられる。 この方法は、 ドメイン名登録の内容を最新の状態に保つためにも有効であり、 事務手数の増大の問題はあるが、コスト負担の方法とも絡めて今後の検討対象となる。

登録規則の変更によって規則に合致しなくなったドメイン名については、 強制的に適切なドメイン名に変更させるべきという意見もあるが、 それに対する強い反対意見も多く、検討の可能性まで否定するものではないが、 インターネットユーザのコンセンサスを得て方針変更することは極めて難しいと考えられる。

2.ドメイン名構造

現行のJP TLD下の第2レベルドメイン名(SLD)は、 組織種別SLD(技術細則では属性型と呼んでいる) と地域別SLD(技術細則では地域型と呼んでいる) の2つに分類される。 JPNICでは今後、これらに加えて、 汎用SLD(仮称)と呼ばれる新しいSLDの種類を導入する方向で検討する。 また、個人用のドメイン名の導入も、優先度の高い検討課題であると考えている。 さらに、前節でも述べた通り、 SLDの種類によって異なる登録方針を採用することも検討する。

SLDの種類の意味付けと、それぞれに関する今後の検討の方向性は次の通り。

(1) 組織種別SLD

組織種別SLDは、どのようなユーザが用いるかという視点から、 組織の種類別に設けたSLDである。 現状では、AC, AD, CO, ED, GO, GR, NE, ORがこれに該当する。

それぞれのSLDの意味付けを以下に説明する。 以下で説明する意味付けは、 あくまでもドメイン名空間設計の背景となっている考え方であり、 これを元にそれぞれのSLDの登録要件を定めてはいるが、 形式的判断を可能とするために完全には一致していない部分がある。 また前節でも述べた通り、 登録されたドメイン名を実際にどのように使うかは登録者に任されており、 JPNICはそれに関与しない。

CO 日本に登記のある会社(営利を目的とする法人)がドメイン名を登録できるSLD。
OR 日本に登記のある非営利目的の法人がドメイン名を登録できるSLD。
GO 日本国政府機関がドメイン名を登録できるSLD。 今後、GOドメイン名の管理を、日本国政府の適切な機関に委譲する可能性を検討する。
GR 任意団体がドメイン名を登録できるSLD。
AC 高等教育を受ける者が用いることを一義的に想定したSLD。このため、 高等教育を行う組織は、ACドメイン名を用いることになる。 ここでいう高等教育とは、主に18歳以上の人を対象とした教育とする。 すなわち、現状では生涯教育もここに含まれるが、 生涯教育については別に扱うべきであるという意見もあり、 今後再検討する可能性もある。
ED 初中等教育を受ける者が用いることを一義的に想定したSLD。 このため、初中等教育を行う組織は、EDドメイン名を用いることになる。 ここでいう初中等教育とは、主に18歳未満の人を対象とした教育とする。
NE ネットワークサービスを受ける者が用いることを想定したSLD。 ネットワークサービス提供者が、ユーザに使わせることを条件に、 NEドメイン名を登録できる。
AD ネットワーク機器のホスト名に用いることを一義的に想定したSLD。 付随して、ネットワークサービスを提供する者が、 ADドメイン名を用いることもある。 現行では、JPNIC会員がADドメイン名を登録できることとしている。

(2) 地域別SLD

地域別SLDは、 地域に密着した組織が登録することを想定して設けたドメイン名であるが、 現状では十分に活用されていないと考えている。 今後、より魅力的なドメイン名となるよう次のような方向で検討する (以下には互いに両立しない項目も含まれている)。

  • 地域に実体のあるものすべてを登録対象とする。例えば駅や郵便局など、 地域に密着しているが、 組織的には地域に限定されないものを登録対象に含める。
  • 地域別SLDを、地方公共団体のためのドメイン名という考え方に転換する。
  • 地域名(都道府県名など)に短縮コードを導入し、ドメイン名の短縮を図る。
  • 地域別SLDの下の第3レベルドメイン名を自由に登録可能とする。
  • 地域別SLDの下に、組織の種類別の第3レベルドメイン名を導入する。
  • 各地域の特性を反映したドメイン名構造を検討する。
  • 地域別SLDの登録管理を各地域の適切な機関に委譲する。

(3) 個人ドメイン名

今後、 日本人または日本国内に在住する個人が登録できる地域によらないドメイン名を新設する方向で検討を行う。 具体的なドメイン名構造については、 今後の検討の中で決定する。今後の検討により変わる可能性はあるが、 組織種別SLDに分類されるものとするのが妥当であろう。 ただし、潜在的な登録対象が極めて多いことから、 既存の組織種別SLDとは異なるドメイン名構造が必要となる可能性が高い。

(4) 汎用SLD

先に述べた通り、 商品やサービスなどのためにドメイン名を登録したいという要求がある。 このような要求に答えるためにJPNICでは、 1996年度にブランドドメイン名(仮称)の導入を検討したが、 知的財産権に関する問題が深刻化するという指摘があり、導入できなかった経緯がある。

汎用SLD(仮称)は、 組織種別に関する登録要件を定めないSLDとして今後検討を計画しているものである。 現時点では、次のような方法が叩き台になると考えている。

  • JP TLDの下に複数の汎用SLDを新設する。 例えば、 新設が計画されているgTLDと同様のラベル名を第2レベルのレベルに使う方法が考えられる(例:WEB.JP, REC.JP)。 また、汎用SLDは必要に応じて増設する。
  • 汎用SLDについては、組織種別に関する登録要件を定めない。 ただし、ドメイン名登録の責任者が明らかになっていることや、 何らかのローカルプレゼンスは必要であるため、 登録者に関する要件は必要である。 登録者の認証方法やローカルプレゼンスに関しては、 現状より簡易な方法・条件を採用する方向で検討する。
  • 汎用SLDについては、 1つの組織が登録できるドメイン名の数に制限を設けない。 組織あたりの登録可能ドメイン数を制限している大きな理由である将来のユーザに対する配慮に関しては、 必要に応じて汎用SLDを増設することで満たされると考えられる。
  • ドメイン名の無償(または妥当な価格)での譲渡を可能とする。 必要に応じて汎用SLDを増設することで、 多くのドメイン名を登録しそれを販売するというビジネスは成立しにくくなる。

残る大きな問題として、知的財産権に関する問題がある。 前述のブランドドメイン名が導入できなかった大きな理由が知的財産権に関する問題であったことから、 この問題に対する答えなしに汎用SLDを導入することは難しい。 この問題に関しては、3節で詳しく述べる。

3.知的財産権に関する問題

知的財産権、特に商標権に関する問題は、 ドメイン名登録規則を策定するにあたって避けることのできない課題となっている。 知的財産権に関する問題でドメイン名登録規則が制約されるのは望ましくないという考え方も一部にあるが、 商標という「名前」に対して大きな投資がなされてきたことを考えると、 インターネット上での「名前」であるドメイン名の登録方針をそれを無視して議論することは妥当でない。

このドキュメントの目的は、 ドメイン名登録が商標権に抵触するかどうかを議論することではない。 ドメイン名の登録ないしは使用が商標権に抵触するかどうか、 抵触するとすればどのような時に抵触するのかは、 最終的には法律に照らして裁判所で判断されるべきことである。 国内での判例がないために正確な判断は困難であるが、 海外での判例からは、 ドメイン名の登録ないしは使用が商標権と無関係でないことは確かに思われる。 ドメイン名に関する知的財産権を商標権とは独立のものとして定義すべきという議論も一部にあるが、 ほとんど支持を得られていないものと思われる。

ドメイン名と知的財産権の問題に関するJPNICの立場は、 JPNICでは判断を行わないが、 法的に有効な判断が出た場合にはそれに従うというものである。 ここで指摘されている問題は、 裁判による紛争解決は費用的にも時間的も負担が大きく、 また訴訟を嫌う日本の慣習の下では、 裁判による紛争解決は効果が期待できないというものである。 実際、日本においてはドメイン名と知的財産権に関する判例が1つもなく、 この問題を複雑にしている(もしドメイン名の登録または使用が商標権に抵触するという明確な判例が出れば、 この問題をかなり軽減することが期待できる)。 その結果、現行のドメイン名登録規則では、 商標権者側にやや不利な規則となっているといえるだろう。

一方、COM, ORG, NETなどのgTLDの登録機関である Network Solutions Inc. (NSI)のこの問題に対するアプローチは、 最終的に裁判に従う点は同じであるが、 NSIとして機械的に判断できる紛争解決方針を定めている点で、 JPNICの方針とは異なる。 NSIの紛争解決方針では、商標権者からクレームがあった場合には、 ドメイン名登録者も商標権を持っていない限りは、 商標と同一のドメイン名の使用が無条件に停止される(実際には、 ドメイン名登録が商標登録よりも古い場合には停止されないなど、 より複雑な規則となっている)。 すなわちNSIは、実際に商標権侵害があったかどうかを判定するのではなく、 商標登録があるかないかだけで判断を下す方針を採っているということができる。 これは、 NSIが商標権侵害の有無を判断することが難しいことを考えるとやむをえない面もあるが、 商標権を持っている者が過度に有利になっているということができる。

この問題を解決する有力なアプローチとして、 裁判に代わる簡便な紛争解決手段(ADR)を設け、 商標権侵害の有無を実体的に判断しようとする方法が注目されている。 国際的には、世界知的所有権機構(WIPO)がgTLDを対象としてADRを設ける検討を続けている。 日本においても、 工業所有権仲裁センターにおいてドメイン名に関する紛争の仲裁が可能となっている。 ただし、仲裁が成立するためには紛争の両当事者の合意が必要で、 現状では有効に活用されていない。 JPNICにおいても、工業所有権仲裁センターの研究会に委員を送るなど、 実効性を持ったADRを設ける方向での検討を行っているが、 JPNICだけの能力では難しく、まだ時間がかかるものと考えている。 また、国際的にも議論の途中であり、国際的な整合性を保つためには、 今しばらく経過を見守ることが必要である。

一方、商品やサービスなどのためにドメイン名を登録したいという要求は増してきており、 それに答える枠組みの導入を急ぐ必要がある。 そこで、新たに導入するSLDと従来のSLDで、 紛争解決方針を一時的に別々にするアプローチが有力になる。 具体的には、新たに導入するSLDにおいては商標権者側が有利になるような方針を採用し、 現行の商標権者側がやや不利となる方針とバランスをとる。 将来、実効的なADRの仕組みができた時点で、両者における紛争解決方針を統一する。

今後、このような多様化導入のアプローチに対して、 各方面の支持を得られるかを見極めることが必要と考えられる。

4.登録管理と規則策定の体制

ドメイン名の登録管理体制については、 当初のJPNICですべてを行う体制から、 業務委任会員(または指定業者)に業務の一部を委託し、 JPNICの仕事量の増大を防ぐ方向で検討してきた。 インターネットの技術発展を考えると、 ドメイン名の登録管理業務の将来に関しての見通しは確かでなく、 ドメイン名登録業務のためにJPNICを大きな組織とすることは妥当でない。 言い換えると、JPNICの肥大化は避けなければならない。

JPNICの肥大化を避けるという方針と、 ドメイン名登録・管理の業務量が増えている現状を考えると、 これまで以上に外部に業務の一部を委託していく方向をとらざるをえない。 国際的に議論されているレジストリ/レジストラのモデルに当てはめると、 JPNICはレジストリの業務に注力し、 現行の業務委任会員(または指定業者)をレジストラとしていく方向になる。 この方向性がうまく機能するのであれば、 JPNICは徐々にレジストラ業務から撤退していくことも考えられる。

ドメイン名登録規則の策定体制については、 JPNIC運営委員会の下に設置されたJPドメイン名登録検討部会(DOM WG)が中心になって行っている。 具体的には、登録規則を変更する場合には、 DOM WGのメンバまたは外部からの提案を元にDOM WGが改訂規則の起案を行い、 それに対して一般からの意見を募集・反映させ、最終的にDOM WGで最終案を作成する。 DOM WGで作成された最終案は、JPNIC運営委員会の承認を経て実施に移される。 JPNIC運営委員会は、JPNIC理事会からドメイン名登録規則の策定を任されている。 さらにJPNIC理事会は、 JPNIC会員の総意の場であるJPNIC総会によって選出され、 JPNICの運営に関して責任を持っている。

この枠組みでは、ドメイン名登録規則策定の最終的な権限はJPNIC会員、 すなわち、インターネットに関わるサービスの提供者側にある。 これに対して、 ドメイン名の登録規則はインターネットユーザの総意を反映する形で策定すべきとの意見も多い。 これを実現するための1つの方法としては、 DOM WGメンバの選出方法をJPNIC理事会・運営委員会から切り離し、 独立して権限を持たせる方法が考えられる。 DOM WGの位置付けやメンバの選出方法については、 今後議論を要する課題である。

以上で議論したJPドメイン名の登録管理と規則策定の体制の将来像を、 gTLD-MoUにおいて提案されたモデルに当てはめると、 次のような対応が考えられる。

レジストリ JPNIC事務局
レジストラ 指定業者
CORE ?[指定業者の協議機関]
POC JPNIC JPドメイン名登録検討部会(DOM WG)
PAB ?[インターネットユーザによる監視機関]

現行では、COREとPABに対応する枠組みはなく、 それらの必要性も含めて今後の課題となる。

5.コスト負担

ドメイン名の登録・維持にかかるコストの負担モデルに関しては、 JPNICの会費制度との関連で、見直す方向で検討を始めている。 特に、現行のJPNICのコスト負担モデルは、 海外においてドメイン名の登録・維持にかかるコスト負担をユーザに求める以前に策定されたものであり、 その後gTLDや他のccTLDにおいて導入されたコスト負担モデルとは一致していない。 見直しに際しては、 gTLDや他のccTLDのコスト負担モデルとの整合性にも配慮すべきと考えられる。

見直しの1つの方向性として、 それぞれの作業に実際にかかるコストの負担を求めるという現在の考え方を、 ドメイン名システム全体から得ている利益に応じてその管理・維持にかかるコストを負担するという考え方に転換するというものがある。 このように考え方を転換することで、例えば、 地域別SLDの下のように第4レベルドメイン名を登録する場合にはコスト負担を小さくする、 1つの組織が複数のドメイン名を登録する場合にはコスト負担を大きくするなど、 ドメイン名登録方針策定の自由度を増すことが可能になる。

ただし、JPNICのコスト負担モデルは、 JPNICの業務全体の整合性を考慮して定めるべきであり、 ドメイン名登録の事情だけで議論することは難しい。

6.その他の検討事項

この節では、ここまでの議論の流れに含められなかった項目について述べる。

6.1 登録規則のわかりやすさの問題

現行のドメイン名登録規則は難解であるという指摘が多い。 難解である1つの理由に、 登録規則が契約約款と同等の位置付けになる法律的文書であるために、 法律的な用語で記述されていることが挙げられる。 これについては、基本的にはやむを得ないと考えられるが、 なるべく平易な言葉で規則を記述する、 規則の解説文書を作るなどの方向で、問題を軽減していきたい。

もう1つの理由として、 実施ルールの細目がすべては文書化できていないことが挙げられる。 文書化できていない最大の理由は、 実施ルールの細目がかなり複雑であることが挙げられる。 これについても、文書化作業を継続するとともに、実施ルールの簡素化に努める。

ただし、ここにもある種のトレードオフが存在する。 ドメイン名登録原簿記載事項変更届けにより登録担当者を変更する場合と会社名を変更する場合のそれぞれに必要となる添付書類を例にとって説明する。 まず登録担当者を変更する場合、会社の代表者の意志が確認できれば、 登録担当者とは直接関係のない会社の登記簿の提出は求める必要がない。 一方、会社名が変更になった場合には、 その事実を確認するために登記簿の提出は必須となる。 このように、ドメイン名登録原簿記載事項変更届けに添付が必要な書類は、 どの情報を変更するかによってそれぞれ異なり、 文書化できたとしてもかなり複雑なルールになる。 逆に、一律にすべての書類の提出を求める方向でルールを簡素化すると、 本来は不必要な書類まで提出しなければならなくなる。

また、過去の規則に基づいて登録された組織の扱いも、 実施ルールを複雑化している理由の1つである。 例えば、GRドメイン名導入以前の「権利能力なき社団」の考え方に基づいてドメイン名を登録した任意団体が多数残っているが、 これらの団体が団体名を変更する場合に問題が発生する。 このような場合にJPNICでは、 GRドメイン名導入後の規則に準拠した任意団体への移行をお願いしてはいるが、 それを強制はしていない。 そのため、権利能力なき社団の要件によりドメイン名を登録した団体が団体名を変更する場合の手続きも、 必要とされる頻度は低いとは言え、定めておく必要がある。

6.2 個人情報保護への配慮

現行では、ドメイン名登録者に関する情報は一律公開される。 これは、問題発生時の連絡先を明らかにすることが目的で、 国際的にも公開が必要と考えられている。 ところが、ドメイン名登録者が個人である場合などには、 情報公開は個人情報保護と矛盾する。 この点に関しては、国際的なコンセンサス形成も必要と考えられ、 JPNICではタスクフォースを設けてこの問題に取り組んでいる。

以上

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