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ニュースレターNo.51/2012年8月発行

APRICOT 2012/APNIC 33カンファレンス報告
アドレスポリシーおよびレジストリ動向報告

本稿では、アドレスポリシーSIGやAPNIC総会での様子を中心に、APNIC 33におけるIPアドレスの管理やレジストリの運営・活動に関わる動向をレポートします。

アドレスポリシーSIG

APNIC 33カンファレンス(以下、APNIC 33)でのアドレスポリシーSIGは、「IPv4アドレス」に関する提案が1点もない初めてのセッションだったことが、特徴と言えそうです。提出された4点の提案すべてが「IPv6アドレスポリシーの見直し」に関するものでした。

APNIC地域でのIPv4アドレス在庫の枯渇から約1年を迎え、アドレスポリシーも自然と「IPv6の具体的な運用準備に向けて、IPv6アドレスポリシーでの課題を解決していく」という流れになってきているということではないかと思います。

特に注目されていたのは、インドや中国のようなインターネット新興国から、長期的な需要に備えてIPv6の割り振りを受けようとした場合、現在の基準ではそれに対応することができないという点です。これは前回のAPNIC 32から挙げられていた課題であり、2点の提案(prop-099、prop-102)が、その流れを汲んで議論されました。

<提案の結果>

今回は4点の提案のうち、「prop-102:IPv6の割り振りにおけるスパースアロケーションのガイドライン」の1点がコンセンサスに至りました。その他、2点の提案が継続議論となり、1点の提案は棄却という結果です。

コンセンサスが得られた提案
prop-102:IPv6の割り振りにおけるスパースアロケーションのガイドライン
継続議論となった提案
prop-099:大規模ネットワークのためのIPv6アドレスの予約
prop-101:IPv6 PIアドレス割り当てにおけるマルチホーム要件の撤廃
棄却された提案
prop-098:IPv6アドレス割り振り方法の最適化

参考:http://www.apnic.net/community/policy/proposals/

コンセンサスとなったprop-102は、「スパースアロケーション」※1と呼ばれる、RIR在庫からの割り振り時に適用しているアドレス選定方式について、その文書化を求めたものです。RIPE地域では既に文書化しており、APNICでも運用上はこれまでも実施してきましたが、文書化することで透明性向上につながるとして、提案への支持が得られました。

これは当初の提案目的であった「長期的な需要に対応したIPv6アドレスの確保」からは変更されていますが、その経緯についてご説明します。

<結果に向けた議論について>

prop-102は当初、別の提案(prop-099)の代案として提案されていました。

現在の基準(2年分の需要を満たすアドレスサイズの分配)では、長期的な需要へのIPv6アドレスが確保できないとして、「5年分のアドレスの予約」と「2年分のアドレスの分配」を求めている提案がprop-099です。

これに対して、問題解決として予約を求めるのではなく、既存のAPNICの運用で実施している「スパースアロケーション」を使って、レジストリが一定の間隔を空けて在庫配分を行うことを基準化しておけば対応できるのではないか、というのがprop-102の提案者の考えでした。

しかし、スパースアロケーションの基準化に対しては「経路集約のための運用をアドレス確保の手段にするべきではない」、「基準化することでAPNICの運用の柔軟性を失わせる」などの懸念が挙げられました。

一方、スパースアロケーションの仕組みを、すべての申請者が認知しているわけではないことから、文書に明記することには支持する意見が複数表明され、これを反映して提案を修正の上、最終的には支持が得られた結果となりました。

<結果に伴う影響>

スパースアロケーションは、現在もAPNICで割り振り時に実施しているものが明文化されるようになるというだけであり、今後のアドレス申請上の影響はありません。

むしろ、APNICでの現在の運用方式が文書化されることにより、割り振られるIPv6アドレスレンジがAPNICで選定される仕組みを、申請者が確認できるようになります。

prop-102は、その後8週間のコメント期間を経てコンセンサスが成立し、ECの承認を得てAPNICでの施行が決定しました。今後、JPNIC もAPNICの在庫を共有しているNIRとして、同様の対応を行うことが求められます。

一方、スパースアロケーションの提案が当初の意図から変更となり、予約を求めたprop-099も継続議論となったため、長期的なIPv6アドレス需要への対応は引き続き課題として残されています。

APNIC総会(AMM;APNIC Member Meeting)

「全体および技術関連動向報告」でも既にお伝えした通り、今回のAPNIC総会の特筆点は、「新設NIRの発表」とAPNIC理事会(EC)のメンバーを選出する「EC選挙」でした。発表後、新設NIRであるIRINN関係者は壇上で抱擁し合い、APNICスタッフの氏名を挙げながら感謝を述べるなど、大きな喜びを表していました。 IRINNの設立により、APNIC地域におけるNIRは、JPNICも含めて7組織となります。(その他NIRは、CNNIC、IDNNIC、KRNIC、TWNIC、VNNIC)

その他、セッション中に報告されたAPNICの主なサービス・活動や収支決算に関する情報等も含め、APNIC総会の詳細は、APNIC総会のページ※2から発表資料をご確認いただくことが可能です。

その他アドレス管理に関わるセッション

その他、アドレス管理に関わる内容を取り扱うセッションとして、次の三つが開かれました。興味がありましたら、APNIC 33プログラムページからご覧になってみてください。

まとめ

現在約440組織のAPNIC会員を抱えるインドにおいて、IRINNがそれらの会員を代表するNIRとして、今後どうコミュニティと関わっていくのか、注目されるところです。

アドレスポリシー提案としては、prop-102がコンセンサスを得られたことで、今後はスパースアロケーションの仕組みが文書化されることが見込まれます。これにより、申請者にとっては、割り振りを受けるアドレスレンジがAPNIC在庫から選定される仕組みについて分かりやすくなることが期待されます。

一方、prop-099が継続議論となったため、今後、中国やインドなど、成長し続けている経済圏における長期的なIPv6の需要にどう対応していくのかは、次回のカンファレンスでも議論の対象となると予測されます。

また、継続議論となったもう1点の提案、prop-101※3は「IPv6におけるPI割り当ての基準緩和」には大筋で賛成が得られたものの、要件の細部で折り合いがつかない点があり、現在もメーリングリストで議論が行われています。

これらのアドレスポリシーの見直しは、現在日本国内の事業者が強く必要とするものではおそらくありませんが、IPv6アドレス空間全体の消費や、グローバルな経路数の面から、長い目で見た時のインターネットの運用へは影響を及ぼすものだろうと思います。今後ともみなさんのご意見もお聞かせください。

(JPNIC IP事業部 奥谷泉)


※1 スパースアロケーション
同じ申請者がアドレスを複数回申請した場合に、連続したアドレス空間から追加の割り振りが行えるよう、レジストリが一定の間隔を空けて在庫からの分配を行う方式です。これにより、複数回の申請でアドレスの分配を受けても、それらをひとつの連続したプリフィクスに集約して経路広告をすることが可能になり、経路集成につなると考えられています。
※2 APNIC Member Meeting(AMM)
http://meetings.apnic.net/33/program/amm/
※3 prop-101:IPv6 PIアドレス割り当てにおけるマルチホーム要件の撤廃
PIの割り当て先拡張の必要性はあるとして大筋で支持されたものの、要件撤廃が経路増加に繋がるという懸念への対処について、現在の提案で十分なのかが争点となり、継続議論となりました。


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