メインコンテンツへジャンプする

JPNICはインターネットの円滑な運営を支えるための組織です

ロゴ:JPNIC

WHOIS 検索 サイト内検索 WHOISとは? JPNIC WHOIS Gateway
WHOIS検索 サイト内検索

ニュースレターNo.64/2016年11月発行

第96回IETF報告

2016年7月17日(日)から22日(金)にかけて、ドイツの首都ベルリンにて、第96回IETFミーティングが開催されました。会場はインターコンチネンタル・ベルリンで、3年前の第87回IETFミーティングと同じ会場での開催となりました。本稿では、この第96回IETFミーティングの様子を、全体会議の報告を中心にお届けします。その他の動向については、P.36で概要と詳細なレポートへのURLをご紹介していますので、そちらも併せてご参照ください。

ミーティング参加人数の近況

ここ2年ほどの参加登録者の数は1,000名から1,350名くらいで推移しています。今回は1,348名と多かったのですが、日本からの参加者数は2年前と比べるとやや少ない状況にあります。

開催場所 参加登録者数(括弧内は日本から)
第91回(ホノルル) 1,080名(76名)
第92回(ダラス) 1,176名(65名)
第93回(プラハ) 1,358名(60名)
第94回(横浜) 1,198名(345名)
第95回(ブエノスアイレス) 1,002名(41名)
第96回(ベルリン) 1,348名(52名)

この推移は、横浜開催は国内出張として参加しやすかったために人数が多く、一方、ブエノスアイレス開催は旅費や旅程全体のとして時間がかかってしまうので日本からの参加者が少なかったのかもしれません。しかし、南米よりは日本から行きやすいベルリン開催でも、52名にとどまってしまったのを見ると、日本からの距離だけが原因ではないのかもしれません。

写真:会場の様子
● 全体会議(プレナリ-)の様子

IETFハッカソン

IETFミーティングの直前の土曜日と日曜日に、IETFハッカソン(IETF Hackathon)が開催されました。IETFハッカソンとは、IETFで策定されたプロトコルについて、開発者同士の議論や協調を促進すると共に、ユーティリティ開発やアイデア出し、サンプルコードの作成などが行われるイベントです。今回は5回目で、150名以上が参加し、20以上の「プロジェクト」と呼ばれる一連の作業が進められました。

IETFハッカソンでは、はじめに、提案されたプロジェクトを説明するプレゼンテーションがあります。参加者はあらかじめ、興味とスキルにあったプロジェクトに参加して、目標と達成方法を議論してから作業に入ります。

作業を行ったチームに対して、さまざまな賞が贈られました。おのおののチームにどのような賞が贈られたのかなどの詳細は報告スライドを、各チームの資料はIETF 96のハッカソンページをご覧いただければと思います。

IETF 96ハッカソンのチーム

ILA

IPv6 Identifier Locator Addressing(ILA)を実装し相互接続実験を行ったチーム。draft-herbert-nvo3-ila-02の実装を行いました。

PCE-based Central Control

ラベルDBの実装を行い、Path Computation Element Communication Protocol(PCEP)の上でTLSを動作させました。

I2RS

I2RS(Interface to Routing System)のためのYANGのデータモデルに関する実装とガイド作りに取り組みました。

YANG / NETCONF / RESTCONF

YANGモデルのカタログとレジストリのツールを作りました。

TLS 1.3

NSS、Apache、Firefox、ProtoTLS、MiTLS、BoringSSLなどで、TLS 1.3の実装の相互接続テストを行いました。

BGP-Flowspec / BGP-LS

draft-gredler-idr-bgp-ls-segment-routing-ext-02のセグメント・ルーティングの実装を行いました。

IoT Bootstrapping for Noobs

https://tools.ietf.org/html/draft-aura-eap-noob-01のnimble out-of-band 認証の実装が行われました。

DNS / DNSSEC / DPRIVE / DANE

DNSSECを応用する技術について、さまざまなオープンソースのプログラムを持ち寄った相互運用テストが行われました。

IETFハッカソンの報告スライド
https://www.ietf.org/proceedings/96/slides/slides-96-hackathon-23.pdf
IETF 96ハッカソンページ
https://www.ietf.org/registration/MeetingWiki/wiki/96hackathon

アプライド・ネットワーキング・リサーチワークショップ

技術研究の観点で活動しているIRTF(Internet Research Task Force)および学会のACM(Association for Computing Machinery)とISOCの共催で、アプライド・ネットワーキング・リサーチワークショップ(Applied Networking Research Workshop - ANRW)が開かれました。今回はIETF 96ミーティング前日である2016年7月16日(土)の開催です。研究を公募する国際会議と同じ形式で、事前に論文とポスターが募集され、査読を通じて採否が決定されます。

テーマはMultipath、SDN、Routing and Peering、Transport Quality and “Happy Eyeballs”、Measurement、Internet Mediaと多岐にわたりました。論文(フルペーパー)は17応募され、うち9が採録されました。またショートペーパーとポスターは合わせると、応募が13で、うち採録が9でした。ワークショップのWebページでは、論文の他にプレゼンテーションの動画も見ることができます。

Applied Networking Research Workshop 2016
https://irtf.org/anrw/2016/

IETF 96全体会議からのトピック

IETF 96ミーティングでは、全体会議(プレナリー)は7月21日(水)に行われました。トピックとして3点報告したいと思います。

プロトコルと技術のシンプルさ

IETFで策定されたプロトコルを実装するにあたって、複雑さが増してきていることを指摘したプレゼンテーションです。類似した目的のために技術としての選択肢がたくさんあり、このことで実装の相互運用性を確保することが難しくなってきています。例えば、VPNやカプセル化のための、IP in IPやIPsec、MPLSやVXLANといったプロトコルがあるが故に、異なるプロトコルを実装した製品と相互接続できないケースが出てきていると指摘しています。

今日のインターネットは、マルチベンダーもしくはマルチサービスプロバイダーが相互に接続し、運用することによって成り立っていますので、標準化はとても重要です。その標準化活動においては、標準化された技術が実装されて製品に組み込まれていくことを踏まえて、選択肢を適切な数にとどめておくことも重要であるという指摘でした。

発表者のRoss Callon氏は、第1回IETFミーティングから参加しており、30年間にわたるIETFでの貢献に対して、会場からはスタンディングオベーションが送られていました。

Keep it Simple, The Cost of(too many) Standards, Ross Callon
https://www.ietf.org/proceedings/96/slides/slides-96-ietf-plenary-11.pdf

IETF基金

IETFの活動を長期的にサポートしていくための、基金が設立されました。ミーティングに参加するための金銭的な補助をはじめ、IETFの活動における検討課題に取り組むための、サポートのための基金とされています。現在のところ、ARINやRIPE NCC、AfriNICといったRIRの他に、企業や個人が寄付を行っています。

IETF Endowment
http://www.sustainietf.org/

IETFシスターズ

IETFの参加者は男性が多いのですが、女性同士で意見交換をしたり、助言を得たりするための場が設けられています。IETF 96ミーティング期間中の7月21日(木)には、ランチ会合が開かれていた模様です。下記のページでは、メーリングリストも紹介されています。

IETF Systers(IETFブログの記事)
https://www.ietf.org/blog/2016/07/ietf-systers/

次回のIETF 97は、2016年11月13日(日)から18日(金)にかけて、韓国のソウルで開催されます。

(JPNIC 技術部/インターネット推進部 木村泰司)

IPv6関連WGの動向

IPv6基本プロトコルの保守を行うことが目的の6man(IPv6 maintenance)WGでは、IPv6基本仕様のInternet Standard(IS)化に向けて残項目の整理が行われるなど、IPv6関連WGの標準化動向は終盤を迎えつつあると言えるようです。

この6man WGに加えて、v6ops(IPv6 operation) WGや移行技術を扱うその他のWGの動向、maprg(Proposed Measurement and Analysis for Protocols Research Group)における発表など、主な議論の概要について富士通株式会社の松平直樹氏にレポートをご執筆いただきました。

詳しい内容については、次のURLをご覧ください。

第96回IETF報告「IPv6関連WG報告 〜6man WG、v6ops WG、maprg WG〜」
https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2016/vol1427.html

DNS関連WGの動向

DNS関連のInternet-Draftについては、前回の会合から今回までの間に、RFC7901、RFC7873、RFC7871の三つがRFCとして発行されました。それに加えて、三つのInternet-DraftがIESG(Internet Engineering Steering Group) Evaluationの段階にあり、五つのInternet-DraftがWG Last Callを行う段階となっています。

今回のIETF会合に関して、dnsop(Domain Name System Operations)WGとdnssd(Extensions for Scalable DNS Service Discovery)WGの二つのWGに関する動向を中心に、ルートゾーンのDNSSEC鍵更新の話題も交えて、DNS関連の話題について東京大学の関谷勇司氏にレポートをご執筆いただきました。

詳しい内容については、次のURLをご覧ください。

第96回IETF報告「DNS関連WG報告」
https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2016/vol1428.html

セキュリティ関連の動向

IETFではセキュリティに関する議論が多岐にわたって行われており、扱う分野が広がることはあっても減ることはない状況です。そのため、すべてに関して取り上げることはできませんが、NTTコミュニケーションズ株式会社の西塚要氏と、株式会社レピダムの前田薫氏のお二人に、今回のIETF会合のレポートをご執筆いただきました。

西塚氏にはDOTS(DDoS Open Threat Signaling)WGを中心にDDoS対策技術に関する議論について、前田氏にはWebにおける認可プロトコルの仕様を扱うOAuth WGと、SSL/TLSの次バージョンである1.3策定の最終検討段階に入ったTLS WGでの議論について、ご紹介いただいています。

それぞれの詳しい内容については、次のURLをご覧ください。

第96回IETF報告「セキュリティ関連報告(1) 〜DDoS対策技術についてDOTS WGを中心に〜」
https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2016/vol1429.html
第96回IETF報告「セキュリティ関連報告(2) 〜 OAuth、TLS編 〜」
https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2016/vol1431.html

このページを評価してください

このWebページは役に立ちましたか?
よろしければ回答の理由をご記入ください

それ以外にも、ページの改良点等がございましたら自由にご記入ください。

回答が必要な場合は、お問い合わせ先をご利用ください。

ロゴ:JPNIC

Copyright© 1996-2024 Japan Network Information Center. All Rights Reserved.