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ニュースレターNo.86/2024年3月発行

企業ITインフラにおける変革の波

NTTコミュニケーションズ株式会社 執行役員クラウド&ネットワークサービス部長 金井 俊夫

令和6年能登半島地震により、 お亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げます。 また、被災された方々にお見舞い申し上げるとともに、 早期の被災地復興が進み、 通常の生活が一日も早く戻ることを心よりお祈り申し上げます。

私は、普段、企業向けのITインフラ(ネットワーク、データセンター、 クラウド等)のサービス開発に携わっていますが、 企業向けITインフラの世界では数々の変革が起きており、 またそのスピードはどんどん加速していると痛感しています。 そこで、今回は、それらの企業ITインフラの大きな変革のうち、 私が注目している二つの点について記してみたいと思います。

1点目は、ゼロトラスト化の拡がりです。 ゼロトラストとは、 従来のVPNを中心とした境界防御だけではセキュリティが守りきれないということで、 「何も信頼しない」ことを前提に対策を講じるセキュリティの考え方のことです。 そして、既に、 日本の大企業ではほぼ何らかのゼロトラスト化に向けた対策が施されていると認識しています。

ところが、 このゼロトラストの考えを企業ITインフラのすべてに適用するというのは容易ではなく、 大企業であったとしても相当の期間を要するものと思われます。 いわんや中小企業においては、コストの観点、 また人材不足の観点等からなかなか対策を打ち切れていないというのが実情でしょう。 さらに、IoT機器においては、EDR (EndpointDetection and Response)等のエンドポイントセキュリティ対策が技術的に難しいケースもあります。 これらは企業のサプライチェーンセキュリティマネジメントの観点、 さらには経済安全保障の観点からも、 すべての企業層においてより大きな課題となってくるものと想定しています。

2点目は、GPU (Graphics Processing Unit)をはじめとした高発熱コンピューティング拡大の波です。 昨年から主要メディアにおいて日々何かしらの記事が掲載されている生成AIへの対応というだけでなく、 企業OT (Operational Technology)におけるGPUコンピューティングの利用拡大という観点からも注目すべきポイントと理解しています。

例えば、企業OTの観点で言えば、企業は、 最新のGPUコンピューティングを使って自社の製品やサービスの競争力を上げていきたいと考えるのは当然です。 一方で、一概には言えませんが、 日本企業のOTにおけるパブリッククラウド利用ニーズは限定的で、 オンプレミスニーズが強い傾向にもあるように思います。 ところが、最新のGPUチップが搭載されたサーバーはあまりにも高発熱なため、 冷却する場所(データセンター)が無いという課題が今後顕在化すると想定しています。

弊社試算によれば、 1ラックあたり約15kW以上の電力を利用する場合は、 空冷式設備の従来のデータセンターでは十分な冷却効果が出せません。 しかし、例えば、NVIDIA社の最新GPUを搭載したサーバーを1ラックあたり2台設置した場合は、 既に20kW必要になっています。 また、この高発熱化の流れはGPUにとどまらず、 インテル社等の上位CPUも同様になってきているのです。

故に、 このような超高発熱サーバーに対応した水冷式設備を具備したデータセンターを企業は必要としますが、 そのような設備を有するデータセンターの数は当面限られていることが課題となってくるでしょう。

また、CO2等の温室効果ガス削減という観点からも、 高発熱サーバーを利用する場合は水冷式データセンターを利用するニーズが出てきます。 例えば、液冷式の一つである水冷方式に対応したデータセンターは、 空冷式に比べ30%以上の電力削減効果を有します。

なお、日本ではあまり話題にされていませんが、海外においては、 ハイパースケーラーが利用するデータセンターが大量の水を消費することが社会環境問題となっています。 今後、 生成AIや自動運転をはじめとしたGPUコンピューティング利用拡大期にあたっては、 単に電力消費量だけにとどまらず、 水使用量をいかに削減していくかも重要なテーマとなっていくでしょう。

上述したこれらの変化の波に合わせた「企業のIT (OT)インフラ戦略」は、 企業自身の競争力に影響を及ぼすのと同時に、 消費者をはじめとする社会がその動向に着目するようになってくるのではと考えています。


執筆者近影
プロフィール●金井 俊夫(かない としお)
NTTコミュニケーションズ株式会社 執行役員クラウド&ネットワークサービス部長。 1989年早稲田大学法学部卒業。 同年、日本電信電話株式会社入社。 2005年NTTコミュニケーションズに移り、 IP電話等のサービス開発に従事。 その後、London Business School留学を経て、 2019年同社取締役ICTコンサルティング本部長、 経営企画部長等を歴任。 2022年より現職。

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