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    /P▲        ◆ JPNIC News & Views vol.2189【臨時号】2025.9.19 ◆
  _/NIC
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◆ News & Views vol.2189 です
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第123回IETFミーティング(IETF123)が、2025年7月下旬にスペイン・マドリー
ドで開催されました。本号では、IETF123でJPNICが主催した、RPKIに関する
ハッカソンの模様をご紹介します。

本号の内容は、JPNICブログでもお読みいただけます。写真なども加え、リン
クも辿りやすくなっておりますので、ぜひブログでもご覧ください。

  JPNICブログ:IETF国際動向
  第123回IETFミーティング ハッカソン参加記
  https://blog.nic.ad.jp/2025/11071/

IETF 123の概要とBOFの模様については、先日公開した下記の記事で取り上げ
ています。

  JPNICブログ:IETF国際動向 - 第123回IETFミーティング概要とBOFより -
  https://blog.nic.ad.jp/2025/11018/

また、2025年10月23日(木) 15:00~17:00には「IETF 情報交換会・座談会 
-IETF123より -」を開催いたします。JPNIC会議室およびオンラインでのハイ
ブリッド開催で、参加費は無料となっています。本稿を読んでIETFで行われ
ている活動に興味を持たれた方は、ぜひお気軽にご参加ください。

  「IETF 情報交換会・座談会 - IETF123より -」 開催のお知らせ
  https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2025/20250929-01.html

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◆ IETF国際動向 - 第123回IETFミーティング ハッカソン参加記
                             JPNIC インターネット推進部/技術部 大谷亘
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2025年7月、スペイン・マドリードで開催されたIETF123に参加してきました。
IETF (Internet Engineering Task Force)は、インターネットを支える基盤
技術の標準化を進めるグローバルな組織です。普段はRFCと呼ばれる文書を策
定するために議論を重ねる場として知られていますが、その裏側には「標準
化を机上の議論で終わらせない」ための仕組みが存在します。

それがIETFハッカソンです。

私は今回、このハッカソンでRPKIに関するテーマを掲げ、JPNICとしてテーブ
ルを主催しました。この記事では、IETFハッカソンの概要から、実際に取り
組んだ内容、得られた成果や課題、そして参加してみて感じた魅力を、でき
る限り具体的にお伝えしたいと思います。


■ IETFとハッカソンの位置づけ

IETFの役割は、インターネット全体に関わる標準仕様を議論し、合意形成を
行うことです。しかし、文書の議論だけでは「本当にその技術が動作するの
か」「他の実装と相互運用できるのか」という重要な要素が見えにくいとい
う課題があります。

そこでIETFでは、本会議が始まる直前の週末に「ハッカソン」を設けていま
す。ハッカソンは、議論中のプロトコルを実際に実装・検証し、課題を洗い
出すための場です。新しいアイデアを試す人もいれば、既存のプロトコルを
性能測定する人もいます。いわば「標準化に向けた実験室」であり、提案を
実装して実際に動かすことで、標準の説得力を高めることができます。

一般的なハッカソンと違い、IETFハッカソンでは順位や賞がつくことはあり
ません。ゴールは競争ではなく「標準を前に進めること」です。この点が大
きな特徴であり、技術者にとって非常にユニークな学びの場となっています。


■ 誰でも参加できるオープンな場

ハッカソンというと高度なスキルを持った人だけが参加できるイメージを持
たれるかもしれませんが、IETFハッカソンはオープンな場です。

・新しいアイデアを持ち込み、自らテーブルを立ち上げる人
・他の参加者のテーマに加わり、データ収集や実装を手伝う人
・プロトコルの挙動を測定したり、既存技術の改善点を探る人

さまざまなスタイルの参加が認められています。さらに、近年はハイブリッ
ド開催が主流となり、現地に行けなくてもリモートで参加できるのも大きな
利点です。実際に私たちのテーブルにも、日本の学生がリモートで参加し、
海外の研究者や運用者と同じ時間に作業を進めることができました。

重要なのは「自分の関心領域を持っていること」であり、参加者のスキルレ
ベルは問いません。データを整理したり成果をスライドにまとめたりと、プ
ログラミング以外の役割も多く存在します。多様な参加スタイルが許容され
ていることが、このハッカソンの懐の深さです。


■ RPKIレポジトリのパフォーマンス測定

私は今回、JPNICが運用しているようなRPKIレポジトリに関するテーマを掲げ
ました。テーマは 「Improving RPKI Repository Efficiency and 
Practices」です。

RPKIは、インターネットの経路情報(BGP)に正当性を与えるための仕組みであ
り、その信頼性は各地に分散したレポジトリサーバの安定運用に支えられて
います。日々の運用の中で、サーバが高負荷で停止する可能性や、クライア
ントの予期せぬ挙動に直面することがあります。

こうした課題をグローバルに共有し、最適な設定や改善策を検討するために、
ハッカソンの場に持ち込みました。クラウド上にヨーロッパ地域のサーバを
準備し、現地の参加者がすぐに計測を始められる環境を用意ました。


■ 会場の様子と進め方

ハッカソンの会場には、いくつものテーブルが並びます。それぞれに立て看
板が置かれ、主催者が自分のテーマを書き込みます。私たちは「RRDP」と書
き込み、興味を持った人が立ち寄れるようにしました。

当日は、事前に連絡をくれていた参加者に加えて、ふらりと立ち寄った方も
加わり、多様な顔ぶれとなりました。APNICの運用担当者、中国の大学研究
者、日本の学生など、まさにグローバルなチームが形成されました。

ハッカソンは、土曜日の午後から始まり、日曜日の夕方まで続きます。約1.5
日という短い時間の中でテーマを深めるため、事前準備が大きな鍵となりま
す。データセットを持ち込み、その場では分析に専念する人もいれば、即興
でコードを書き換えて実験する人もいます。私たちも事前にクラウド環境を
整えていたため、スムーズに測定を開始することができました。


■ 成果と技術的な発見

今回の最終的なゴールは「より良いRPKIのパフォーマンスを世界的に実現す
るための設定値を導き出すこと」でした。しかし、限られた時間の中でそこ
まで到達するのは難しく、目標には届きませんでした。

とはいえ、複数の重要な発見がありました。

 1. 世界中には、サーバーの想定を外れる挙動を示すクライアントが少なく
    ないこと。

 2. オプジェクトの性質によって、同じプロトコルでも性能が大きく異なる
    こと。

 3. RPKIで現在使われているRRDPが、必ずしも常に最適ではないこと。

これらの知見は、単なる一時的な実験成果にとどまらず、IETFのSIDROPSワー
キンググループに共有されました。今後策定されるベストプラクティス文書
や、新たに設計中のプロトコルに反映される可能性があります。まさに「現
場の知見が標準に生かされる」というIETFらしいダイナミズムを実感するこ
とができました。


■ グローバルな協働の楽しさ

個人的に最も大きな収穫は、国籍もバックグラウンドも異なる参加者と協働
できたことです。APNICの運用担当者と同じ画面を見ながら議論し、中国の研
究者とコードの挙動を確認し合い、日本の学生とリモートでやりとりしなが
らデータを分析する。こうした交流は、業務の枠を超えた学びをもたらして
くれました。

また、成果発表に向けたスライド作成や、データの整理・要約といった作業
も重要な役割でした。ハッカソンでは、必ずしもプログラムを書くことだけ
が貢献ではありません。それぞれが自分の得意分野を活かして成果に結びつ
けるという、多様性を前提にした活動スタイルが特徴的でした。


■ 参加に向けたヒント

これからハッカソンに参加してみたいと考える方に、いくつかのアドバイス
をまとめます。

○興味分野を決める:

  まずは自分の関心領域を明確にし、その分野のテーブルを探すのが一番入
  りやすいです。

○Wikiやメーリングリストを活用: 

  毎回、ハッカソン専用のWikiやメーリングリストが立ち上がるので、事前
  に目を通しておくとスムーズです。

○リモート参加も選択肢: 

  時差の調整は必要ですが、遠隔からでも十分に参加できます。

○語学力について: 

  日常会話程度の英語があれば問題ありません。初心者でも声をかければ多
  くの人が丁寧に教えてくれます。

○準備の重要性: 

  短い時間で成果を出すため、事前に環境やデータを用意しておくと効果的
  です。

ハッカソンは、教わるだけの「勉強会」ではなく、自分から手を動かして作
る場です。その主体性が体験の質を大きく左右します。

IETFハッカソンは、標準化の議論を実装と検証で裏付けるための重要な仕組
みです。同時に、世界中のエンジニアが集まり協働する「技術の交差点」で
もあります。今回のRPKIハッカソンを通じて得られた知見は、今後の標準化
に反映される可能性が高く、また個人的な学びやネットワークも大きな財産
となりました。

もしIETFに参加される機会があれば、ぜひハッカソンにも足を運んでみてく
ださい。短い時間であっても、グローバルな協働の中で新しい発見や刺激を
得られることは間違いありません。

「標準化を支える実証の場」としてのハッカソンは、IETFにおける最も実践
的で魅力的な活動の一つだと感じました。

          ◇                     ◇                     ◇

2025年10月23日(木) 15:00~17:00開催の「IETF 情報交換会・座談会 -IETF
123より -」では、IETFハッカソン参加者によるパネルディスカッションが行
われます。

  「IETF 情報交換会・座談会 - IETF123より -」 開催のお知らせ
  https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2025/20250929-01.html

JPNIC会議室およびオンラインでのハイブリッド開催で、参加費は無料となっ
ています。本稿を読んでIETFで行われている活動に興味を持たれた方は、ぜ
ひお気軽にご参加ください。


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      わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
             https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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 JPNIC News & Views vol.2189 【臨時号】

 @ 発行  一般社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター
          101-0047 東京都千代田区内神田2-12-6 内神田OSビル4階
 @ 配信先変更・停止  https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/#regist
 @ 問い合わせ先 jpnic-news@nic.ad.jp
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