ICANNの組織紹介
最終更新日:
ICANN (The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)は、 インターネットの各種資源を全世界的に調整することを目的として、 1998年10月に設立された民間の非営利法人です。 本拠地は米国カリフォルニア州ロサンゼルス、 他に地域オフィスがトルコ・イスタンブール、シンガポール、ウルグアイ・モンテビデオ、 ベルギー・ブリュッセルに、エンゲージメントオフィスが北京、 ジュネーブ、ナイロビ、ワシントンDCにあります。
ICANNの役割
ICANNの主な役割は次の通りです。
- インターネットの三つの識別子の割り振り・割り当てを全世界的かつ一意に行うシステムの調整
- ドメイン名
- IPアドレスおよび自律システム(AS)番号
- プロトコルポート番号およびパラメーター番号
- DNSルートネームサーバ・システムの運用および展開の調整
- これらの技術的業務に関連するポリシー策定の調整
ICANNは、 これらの調整活動を民間主導で全世界的に行うことを目的としていることから、 その活動は全世界に開かれたものとなっており、 関心のある人は誰でも自由に参加することができます。
ICANNの組織構成
ICANNの基本構造は、理事会と三つの支持組織(Supporting Organization)、 および四つの諮問委員会によって成り立っています。 ICANNとして何らかの方針決定を行う際には、まず、 ICANNの各構成組織による議論に加えて全世界からの自由な参加による議論が行われ、 その結果を理事会に勧告するというボトムアップ型のプロセスによって進められていきます。 その後、最終的な意思決定機関である理事会が、 それらの勧告を参考にした上で決定を行います。
理事会は、広範な地域・分野からの代表によって構成され、 開かれた透明性のあるプロセスに基づいて意思決定を行います。 理事16名の内訳は、 指名委員会(Nominating Committee: NomCom)によって指名される8名、 各支持組織が2名ずつ選出する代表計6名、 At-Large諮問委員会が選出する代表1名、 そしてICANN事務総長兼CEOとなっています。 また、議決権を持つ理事の他に、 At-Large諮問委員会以外の諮問委員会およびInternet Engineering Task Force (IETF)から議決権を持たないリエゾンメンバーが各1名ずつ参加します。 理事会内には次の10の委員会が設置されており、 必要に応じて各種の臨時委員会が設置されます。
- 監査
- 報酬
- 執行
- 財務
- ガバナンス
- 組織効率化
- 危機管理
- 技術
- 説明責任機構
- 戦略計画
支持組織には、次の三つがあり、各分野に関連する方針策定について、 理事会を支援し勧告を行う役割を負っています。
- 分野別ドメイン名支持組織(Generic Names Supporting Organization: GNSO):分野別ドメイン名(gTLD)を担当
- 国コードドメイン名支持組織(Country Code Names Supporting Organization: ccNSO):国コードドメイン名(ccTLD)を担当
- アドレス支持組織(Address Supporting Organization: ASO):インターネットプロトコル(IP)アドレスおよび自律システム(AS)番号を担当
各支持組織には、必要に応じて作業部会(WG)、 作業チーム(WT)などが設けられることがあります。 これらは複数の支持組織および諮問委員会にまたがって設立されることもあります。
さらに、理事会に対し専門的立場から助言を行う機関として、 各種の諮問委員会(Advisory Committee)が存在します。 2019年12月現在は、次の四つが常設の諮問委員会となっています。
-
政府諮問委員会(Governmental Advisory Committee: GAC)
- 各国政府の代表等からなる
- 公共政策の観点からの助言を行う
-
DNSルートサーバーシステム諮問委員会(DNS Root Server System Advisory
Committee: RSSAC)
- ルートサーバー運用管理者等からなる
- ドメインネームシステム(DNS)におけるルートサーバーの運用に関する助言を行う
-
セキュリティと安定性に関する諮問委員会(Security and Stability Advisory
Committee: SSAC)
- 技術者、研究者のみならず幅広い分野からのメンバーからなる
- ドメイン名とIPアドレスおよびAS番号分配に関するセキュリティと安定性に関する助言を行う
-
At-Large諮問委員会(At-Large Advisory Committee: ALAC)
- ICANNのポリシー策定に参加する個人インターネットユーザーの代表からなる
- 個人インターネットユーザーの関心に関連した助言を行う
これらに加えて、 インターネットの技術標準を作成する「技術リエゾングループ (Technical Liaison Group: TLG)」が、 理事会に技術面の助言や情報提供を行います。 TLGは次の組織の代表からなっています。
- European Telecommunications Standards Institute (ETSI)
- International Telecommunications Union's Telecommunication Standardization Sector (ITU-T)
- World Wide Web Consortium (W3C)
- Internet Architecture Board (IAB)
TLGとは別に、 IETF (Internet Engineering Task Force)よりICANN理事会に投票権のないリエゾンを1名選出することが定款で定められています。
また、 ICANNの運営において透明性やアカウンタビリティ(説明責任)を重視するための仕組みとして、 オンブズマン、 再検討プロセスおよび独立審査パネル(IRP)が存在します。
これらの組織構成は、 いわゆるICANN改革*として検討された結果、 2002年12月に改訂され現在とほぼ同じ形になっています。
ICANN理事会メンバー
2025年10月30日の年次総会時に開催された通常理事会直後より、 以下のメンバーになっています。
| 種別 | 氏名 | 選出地域 | 任期 | 所属・経歴など |
|---|---|---|---|---|
| ASO選出理事 | Alan Barrett | アフリカ | 2021年10月 ~ 2027年AGM | 南アフリカにおいて同国のインターネット接続に黎明期から関わり、 南アフリカ初の商用ISP創設やAFRINIC創設に尽力した。 CEQURUXTechnologies社勤務やソフトウェアコンサルタントを経て、 2017年から2019年にはAFRINIC CEOを務めた。 2004年から2014年までの間、AFRINICによってNRO NC (ASO AC)メンバーに選ばれる。 IANA機能監督権限移管の際はNRO代表としてIANA機能監督権限移管調整グループ(ICG)に参加した。 |
| Christian Kaufmann | 欧州 | 2022年9月 ~ 2028年AGM | Telia Sonera、Easynet、Cable & Wireless等のISPや通信事業会社で管理的な役割を務めたほか、 コーポレートガバナンスに関しても豊富な経験を有している。 15年にわたり、インターネットエクスチェンジやRIPE NCCを含む多くの組織で役員を務めてきた。 RIPE NCCの理事(現職)、Akamai Technologiesのテクノロジー担当Vice President(現職)。 | |
| GNSO選出理事 | Greg DiBiase | 北米 | 2025年10月 ~ 2028年AGM |
弁護士。2017年からAmazon.com社のシニア・コーポレート・カウンセルを務め、Amazon Web Services(AWS)のドメインレジストラ事業の立ち上げに携わるとともに、アマゾンが社内で保有するドメイン名ポートフォリオの管理を支援。それ以前は、Enduranceグループ(現Newfold Digital)のレジストラ群およびICANNにおいて、コンプライアンス・マネージャーを務めた。
2012年以降、ICANNのポリシー策定に関与、レジストラステークホルダーグループ(RrSG)内で複数の役職を歴任し、6年間にわたり、GNSO評議会のレジストラ代表を務めた。2025年はGNSO評議会議長として、ICANNのポリシー策定プロセス全体を主導した。 |
| Chris Buckridge | アジア太平洋 | 2023年10月 ~ 2026年AGM |
インターネットガバナンスやデジタル空間に関するポリシーを専門とする独立のコンサルタント。
過去RIRで勤務の後、APNICやRIPE NCCに勤務し、双方で国際電気通信連合(ITU)、
経済協力開発機構(OECD)、国際連合等との機関と連携し、
公共政策やインターネットガバナンスに取り組む。
2015年にはWSIS+10の評価作業にオーストラリア政府代表団メンバーに選任。 2016年以降EuroDIG Assocition理事を務め、 2021年には国連インターネットガバナンスフォーラムのマルチステークホルダーグループ(MAG)のメンバーに選任された(MAGメンバーとしての任期は2024年まで)。 |
|
| ccNSO選出理事 | Byron Holland | 北米 | 2025年3月から2027年AGM | 営利企業、非営利団体双方で幹部経験があり、2008年からはカナダのccTLDレジストリ、Canadian Internet Registration Authority (CIRA)のCEOを務める。ICANNではccNSO議長、副議長、評議員、IANAのドメイン名サービスに関する顧客常設委員会 (Customer Standing Committee)議長などを歴任。このほかに、ARIN (American Registry for Internet Numbers)指名委員を2019年から2022年まで務め、現在、CENTR (Council of European National Top Level Domain Registries)理事、TorIX (Toronto Internet Exchange) 理事会副議長。 |
| Patricio Poblete | ラテンアメリカ・カリブ海 | 2020年10月 ~ 2026年AGM | チリ大学教授。NIC Chile理事。 チリにおいて黎明期よりインターネットの接続に関わり、 チリの大学と海外とのメール送受やチリと海外とのネットワーク接続を成功させたほか、 NIC Chileの設立、LACTLD、ラテンアメリカおよびカリブ海地域のccTLD組織の設立にも尽力した。 ICANNの設立時にはホワイトペーパー作成にも関与、 現在のICANN GNSOの前身となるDNSOのメンバーやDNSOがGNSOとccNSOに分離した後はccNSOメンバーを務め、 ccNSOの副議長も長年務めた。 2017年には堀田博文氏と共にICANNのMultistakeholder Ethos Awardを受賞した。 | |
| At-Large選出理事 | León Felipe Sánchez Ambía | ラテンアメリカ・カリブ海 | 2017年11月 ~ 2026年AGM | メキシコシティのFulton & Fulton法律事務所にて知的財産権および情報技術関連の業務に携わる弁護士。 2008年まではメキシコ国立自治大学(UNAM)にて知的財産権を教える教授であった。 政府のアドバイザーや非営利団体の役員も務めた。 ICANNではALACの副議長およびCCWG-Accountabilityの共同議長も務めた。 |
| 指名委員会選出理事 | Miriam Sapiro | 北米 | 2024年11月~2027年AGM | 米国戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies, CSIS)の非常勤上席顧問。国家安全保障会議(NSC)、国務省、通商代表部などの米国政府の要職を歴任した外交官で、NSC時代にはホワイトハウス駐在で南東ヨーロッパ安定化に関する大統領顧問などを務めた。2001年以降ICANNへの関与も顕著で、ccTLDの再委任の問題やGTLDの拡大に取り組むとともに、2006年初回IGFアテネ会合におけるICANN独立性維持への支持、また2016年のIANA監督権限移管にも、米国政府の立場で関与した。 |
| Amitabh Singhal | アジア太平洋 | 2024年11月~2027年AGM | GTL社の管理部門担当上席副社長を務めた1990年代半ばから、30年ほど電気通信業界で要職を歴任する。同時期にインドISP協会を創設するとともに会長を務めるなど、インド国内でインターネットアクセスを拡げ公共政策を整備することに専心、更に2003年の National Internet Exchange of India (NIXI)社の設立を創設者兼CEOとして先導し、.IN ccTLDの再起動に貢献した。また、2010年から2016年、2019年から2021年には、Public Interest Registry社 (PIR)の理事を務めた。 | |
| Sarah Deutsch | 北米 | 2017年11月 ~ 2026年AGM | Winterfeldt IP Groupに勤務。 Verizon Communicationsに23年間勤務し、 法務部門およびプライバシーオフィスに所属。 米国のデジタルミレニアム著作権法の立法の際の交渉に貢献。 | |
| Sajid Rahman (副議長) |
アジア太平洋 | 2022年9月 ~ 2028年AGM | 金融サービス、ヘルスケア、再生可能エネルギー、テクノロジー等が専門。 過去、アジアおよびアフリカ地域で再生可能エネルギープロジェクトの創設に関与し、 また、農村部における起業家や専門家を対象とするアクセラレーター・プログラムの設計者でもある。 Standard Chartered Bankでのマネージングディレクターや政府系金融機関の監査委員会にて委員長なども務めたほか、 多くの新興企業の顧問を務めてきた。 ベンチャーキャピタル会社であるMyAsiaVCのマネージングパートナー(現職)。 | |
| Constance de Leusse | 欧州 | 2025年10月 ~ 2028年AGM |
現在、パリ高等師範学校・科学文学大学の AI and Society Institute および Sciences Po University の Technology and Global Affairs Innovation Hub に所属し、技術政策に関する研究およびエンゲージメント・プログラムを主導。
2003年から2006年にかけてフランス首相府において情報社会分野を担当。その後、2006年に Internet Society に参画し、2022年まで在籍した。同組織では、Vice President of Institutional Relations and Empowerment として、ステークホルダー横断の国際パートナーシップおよび政策活動を統括した。世界経済フォーラムの Internet for All Steering Committee、国連IGFのマルチステークホルダー諮問グループ(MAG)など委員を歴任。 |
|
| Raúl Echeberría | ラテンアメリカ・カリブ海 | 2025年10月 ~ 2028年AGM |
1990年代初頭には、ウルグアイにおけるインターネットの先駆者の一人として活動を開始し、それ以降、ローカル、リージョナル、グローバルの各レベルにおいて、数多くの要職を歴任してきた。2003年、Latin American and Caribbean Internet Addresses Registry(LACNIC)の設立に関与し、CEO を12年間務めた。その後Internet Society勤務を経て、2020年から、Latin American Internet Association(ALAI)の Executive Director を務める。
また、Working Group on Internet Governance (WGIG)メンバー(2004–2005)、World Summit on the Information Society(WSIS)ウルグアイ政府代表団、国連IGFマルチステークホルダー諮問グループ(MAG)、NETmundial の Executive Multistakeholder Committee (EMC) の共同議長、NETmundial+10 の共同議長などを歴任。 |
|
| Catherine Adeya | アフリカ | 2023年10月 ~ 2026年AGM |
大学、大学院で情報テクノロジーや開発を専攻した後、
オランダの国連大学新技術研究所にて研究員としてキャリアを開始し、
インターネットアクセス、プライバシーとデータに関する権利、
オンライン上の女性の権利等の分野の研究に従事。
その後、世界的不均衡の問題に取り組むためにアフリカに戻り、
アフリカで通信情報技術による貧困解消のための研究に従事した。
2005年以降は研究から離れケニアにおける通信ネットワーク構築の草分けとなったKenya
ICT Action Networkを通じてケニアにおける情報通信技術政策に関与。
2007年にはケニア情報通信技術委員会(現ケニア情報通信技術庁)の初代理事を務め、
その後も行政関連組織や大学で責任ある役職を歴任。
2022年11月まではWorld Wide Web Foundationで研究責任者を務めていた。
現在はStandard Chartered Bank KenyaおよびOld Mutual East Africa Holdingsの社外取締役を務めており、 Old Mutual East Africa HoldingsではTechnology and Innovation Committees(サイバーセキュリティの監視を主たる目的とする)の議長も務めている。 |
|
| Tripti Sinha (議長) |
北米 | 2018年10月 ~ 2024年AGM | メリーランド大学情報科学部のAssistant Vice PresidentおよびCTOを務める。 Advanced Cyber Infrastructure and Internet Global Services (ACIGS)およびMid-Atlantic Crossroads (MAX)の両プロジェクトを率いている。 | |
| リエゾン | Nico Caballero (GAC) | ラテンアメリカ・カリブ海 | 2023年10月~ |
データアナリストであり、またERPソフトウェアおよびDNSを専門とする。
パラグアイを拠点としパラグアイの通信行政に広く関わってきた。
パラグアイにおけるインターネットサービスの独占化解消やテレビのISDB-Tb規格の導入等にも尽力。
また、ISOCパラグアイ支部を創設し初代会長を務めた他、
パラグアイからGACへの最初の代表メンバーに選任され、
パラグアイにおけるIGFを率いて2014年にはパラグアイで初のIGFを主催。
パラグアイ情報通信技術省(MITIC)ICTアドバイザー、CEILAC DNSセンター会長(いずれも現職)。 ICANN76でGAC議長に選出され、 ラテン・アメリカ地域からは初の選出となるGAC議長を務めている。 |
| James Galvin (SSAC) | 北米 | 2021年10月 ~ | ネットワーク運用等に30年以上の経験を有し、IETFやISOCに早期から関与、 IETFにおいてはインターネット標準を開発した。 その後もIETFに深く関与し、 現在はIETFのインターネット標準作業部会であるRegistration Extensions Protocols WorkingGroupの共同議長を務める。 ISOCの運営に創設期から関与。 ICANNにおいてはSSACに早期から関与し、 2021年にはSSACからICANN理事会へのリエゾンを務めた。 他にICANN内で複数のPDPに関与。 現在はRySGのDNS Abuse Working Group等にも関与している。 | |
| David Lawrence (IETF) | 北米 | 2024年11月~ | 1980年代からインターネットに関わる。Usenetの運営やガバナンスに関与し、Taleというニックネームで知られている。UUNET社などを経て1997年にInternet Software Consortium (ISC) に移り、BINDの開発に携わった後、Nominum社でIDN関連の開発、Akamai社で同社CDNの機能の中核を担う独自ネームサーバ機能の開発を担当した。 | |
| Wes Hardaker (RSSAC) | 北米 | 2022年9月 ~ | 南カリフォルニア大学情報科学研究所(ISI)のシニアコンピュータサイエンティストであり、 研究開発実行チームを監督する立場にある。 DNS、ネットワーク管理、不正アクセス等が専門。 現在Internet Architecture Board (IAB)の役員であり、 過去約25年にわたってIETFに積極的に参加してきた。 現在、b.root-servers.netからRSSACへの代表者に任命されている。 | |
| ICANN事務総長兼CEO | Kurtis Lindqvist | 欧州 | 職権任用 | 2024年12月に事務総長兼CEOに就任。2005年から2009年にIABメンバーを務めたことを筆頭に、長らくIETFやRIPEなど技術コミュニティで活躍。2002年から2015までスウェーデンでルートサーバ運営などを行うNetnord社のCEO、2019年から2024年までLondon Internet Exchange (LINX)のCEOを務めるなど、経営経験も豊富である。 |

