2001/11/09 理事会
資料5-2
JPドメイン名登録管理業務の移管およびICANNとの契約について
社団法人 日本ネットワーク
インフォメーションセンター
目 次
1. はじめに
2. JPドメイン名登録管理業務の移管について
3. ICANN ccTLDスポンサ契約について
4. 移管完了までに必要な手続き
5. 契約文書等の概要
5.1 覚書(JPNIC <-> JPRS)
5.2 再委任および契約手続き開始要請文書(JPRS -> ICANN)
5.3 ccTLDスポンサ契約書(JPRS <-> ICANN)
5.4 JPドメイン名業務移管契約書(JPNIC <-> JPRS)
6. 移管にともなう登録者、指定事業者の位置づけの変更
7. スケジュール(予定)
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■1. はじめに
(社)日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)は、昨年12月
の第11回総会の決議を受け、JPドメイン名の登録管理を行う会社である株式会
社日本レジストリサービス(JPRS)を設立し、業務移管に向けた作業を漸次進
めてきております。
この業務移管は、JPNICとJPRS間における「JPドメイン名業務移管契約」、並
びに、JPRSとICANN間における「ccTLDスポンサ契約」の締結をもって有効とな
ります。
現在、JPNICはIANA(Internet Assigned Numbers Authority、現在はICANNの
一機能)からの委任によりJPドメイン名の登録管理業務を行っています。「JP
ドメイン名業務移管契約」は、JPNICが行っているJPドメイン名登録管理業務
をJPRSに移管するための条件を明確に規定するものです。また「ccTLDスポン
サ契約」は、この登録管理業務の責任をICANNがJPRSに対して委任することに
ついて契約をするものです。
今回の一連の契約の締結によって、JPRSへのJPドメイン名登録管理業務の移管
が完了するとともに、JPRSはICANNからJPドメインのccTLDスポンサ組織として
の承認を受けることになります。
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■2. JPドメイン名登録管理業務の移管について
2000年12月22日の第11回総会では、次の事項が決定されました。
- 汎用JPドメイン名の登録管理業務を行う新会社を設立し、汎用JPドメイン
名の登録管理業務を移管する。
- JPNICの会員制度・会費制度を改めた上、新会社に属性型・地域型ドメイ
ン名登録管理業務を移管する。
この背景には、JPドメイン名ユーザーの利便性を向上させることを大きな目標
と位置づけ、汎用JPドメイン名を導入するとともに、予測される登録者の増加
に対応できる信頼性の高い登録管理業務体制を作る必要性があったということ
になります。
JPNICは、上記の総会決議をうけ、同年12月、JPRSを設立しました。本年2月よ
り導入された汎用JPドメイン名は、その方針策定機能をJPNICに置きながらも、
登録開始当初より登録管理業務はJPRSがJPNICの代行をするという形をとって
おります。また、属性型地域型JPドメイン名についても、JPNICからJPRSへの
業務移管を見据えて、方針策定機能および登録料・維持料徴収機能を除く登録
管理業務の大きな部分をJPNICがJPRSに業務委託するという形をとっておりま
す。
この状況は、上に示した総会決議を具体的に実現するための措置と位置づけら
れますが、これを法的な観点から有効なものとするのが、JPNICとJPRS間で締
結される「JPドメイン名業務移管契約」ということになります。
「JPドメイン名業務移管契約」は、JPドメイン名登録管理業務をJPNICから
JPRSへ移管するための契約であり、移管にあたっての条件や両当事者の責任、
そして移管後の遵守事項などを規定するものです。
なお、JPNICがこれまで担ってきた「JPドメイン名紛争処理方針(JP-DRP)」
の策定、および、JPドメイン名紛争処理機関の認定の役割は、今後も引き続き
JPNICが責任をもって維持していく方針でおります。他方、JPRSは、自らが登
録管理するJPドメイン名登録者に紛争が発生した場合、JP-DRPに基づいてその
紛争処理を行うという位置づけになります。
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■3. ICANN ccTLDスポンサ契約について
現在、IANAの機能を継承しているICANNは、ルートサーバ(ルートゾーン)を
管理する機関として、ccTLDを含むすべてのTLDのオーソリティとなっています。
各ccTLDを管理するスポンサ組織は、IANAの承認によりそのccTLDの委任を受け、
ルートゾーンに必要な情報が登録される形となっています。ccTLDスポンサ組
織は、ccTLDの登録管理とそのDNS運用の責任を持ちます。
これまで、IANAのccTLD委任は、地域コミュニティの合意とそれに基づく安定
的な業務運用を基本に実現されてきましたが、ICANNはこの関係を公式な契約
という形にすることを目標としており、各ccTLDに対して、「ccTLDスポンサ契
約」の締結をすることを推進しています。この契約により、ICANNそして各
ccTLDスポンサ組織の責務と権限が明確になります。
現在JPNICは、IANAからの委任により、JPドメイン名の登録管理業務を行って
いますが、業務移管をするという総会決定に伴い、ICANNとの「ccTLDスポンサ
契約」は、移管先であるJPRSが締結するものとの方針でいます。これを実現す
るためには、IANAに対する再委任(redelegation)の要請も合わせて行う必要
があります。
これまで、ccTLDの委任やスポンサ組織の役割については、RFC1591(ドメイン
ネームシステムの構造と権限の委任)やICP-1(インターネットドメインネー
ムシステムの構造と権限の委任)などで示されるように、その国や地域のイン
ターネット・コミュニティの合意と利益を基本に検討が行われてきました。他
方、インターネットの社会基盤としての責任が増すにしたがい、政府が担う役
割の明確化が求められています。そのような中、ICANN政府諮問委員会(GAC:
Governmental Advisory Committee)は、「政府諮問委員会(GAC)の提案によ
るccTLDの委任と管理のための原則」を2000年2月に発表しました。GACの権能
はICANN理事会への勧告ということになっていますが、その後本年9月にICANN
から公開された「モデルccTLDスポンサ契約書」は、GACの原則を基本として構
成される形となっています。
JPNICは、従来のインターネット・コミュニティの伝統を尊重しつつ、政府の
役割と位置付けを明確にした「ccTLDスポンサ契約書」の策定を進めるという
方針でいます。
この契約を締結することで、文書によって、JPドメインのccTLDスポンサ組織
としての責任と権限が明確になります。また、ルートサーバのJPドメインに関
する情報管理、安定したルートサーバの運用に努めるICANNの責務が明確にな
ります。安定的なJPドメイン名の登録管理業務のためには、このICANNとの契
約が不可欠です。
なお、「ccTLDスポンサ契約」が発効するためには、JPNICとJPRS間の「JPドメ
イン名業務移管契約」の締結が必要条件となります。
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■4. 移管完了までに必要な手続き
ここでは移管に必要な手続きの流れについてステップごとに説明します。
1) ICANNへの意思の通知(JPNIC -> ICANN)
JPRSの本格的な業務開始にあたって、JPNICはICANNに対してJPドメイン
名の主要業務をJPRSへ委託すること、並びに、JPRSとICANNとの契約を
進める意思があることを通知しました(2001年2月)。
2) 覚書の締結(JPNIC <-> JPRS)
今後の契約の基本的事項を合意するために、JPNICとJPRS間で業務移管
に関する覚書を締結します(2001年11月予定)。
3) 覚書締結の報告(JPNIC/JPRS -> 政府)
JPNICはJPRSと連名で、政府に対して、JPNICとJPRS間で前項の覚書を締
結した旨の報告をします(2001年11月予定)。
4) 再委任およびccTLDスポンサ契約締結手続き開始要請(JPRS -> ICANN)
JPRSはICANNに対して、JPNICからJPRSへのJPドメイン名登録管理業務の
再委任の承認と、ccTLDスポンサ契約締結にむけての手続き開始を要請
します(2001年11月予定)。
5) 政府への確認(ICANN -> 政府)
ICANNは前項の要請を受け、政府(ICANN政府諮問委員会(GAC)日本政府
代表)に対して、その事実確認を行います。
6) 政府のエンドースメント(政府 -> ICANN)
政府は、前項のICANNの要請を受け、事実確認をした上、JPRSへの委任
およびccTLD契約の締結のエンドースメント(支持)をICANNに対して表
明します。
7) エンドースした旨の通知(政府 -> JPNIC/JPRS)
政府は、JPNICおよびJPRSに対して、前項のエンドースをした旨の通知
を行います。
8) ccTLDスポンサ契約の締結(JPRS <-> ICANN)
JPRSとICANNとの協議に基づき、JPドメイン名に関するccTLDスポンサ契
約の締結を行います(2001年12月予定)。
9) JPドメイン名業務移管契約の締結(JPNIC <-> JPRS)
JPNICとJPRSとの協議に基づき、JPドメイン名登録管理業務に関する移
管契約の締結を行います。あわせて、JPRSは、データエスクロウ・エー
ジェントとの間でデータエスクロウ契約を締結します(2002年1月予定)。
10) 移管完了通知(JPNIC -> 政府、JPRS -> ICANN)
JPNIC、JPRSは、それぞれ政府およびICANNに対して、移管の完了を通知
することにより移管作業が終了します(2002年4月予定)。
上記手続きを図示すると次のようになります:
JPNIC JPRS ICANN 政府
│ │ │ │
├────────→│ │ 1) ICANNへの意思の通知
│ │ │ │
│←──→│ │ │ 2) 覚書の締結
│ │ │ │
├─────────────→│ 3) 覚書締結の報告
│ ├────────→│
│ │ │ │
│ ├───→│ │ 4) 再委任/契約締結手続き開始依頼
│ │ │ │
│ │ ├───→│ 5) 政府への確認
│ │ │ │
│ │ │←───┤ 6) 政府の支持
│ │ │ │
│←─────────────┤ 7) 支持した旨の通知
│ │←────────┤
│ │ │ │
│ │←──→│ │ 8) ccTLDスポンサ契約の締結
│ │ │ │
│←──→│ │ │ 9) JPドメイン名業務移管契約の締結
│ │ │ │
│ ├───→│ │ 10) 移管完了通知
├─────────────→│
│ │ │ │
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■5. 契約文書等の概要
ここでは一連の文書の概要を説明します。契約交渉過程において内容が変更と
なる可能性があります。また、契約書名も仮称です。
5.1 覚書(JPNIC <-> JPRS)
「ccTLDスポンサ契約」および「JPドメイン名業務移管契約」を締結するに
あたって、あらかじめ関係者間で基本的事項の合意内容を確認するもので、
以下のような項目が記述されています。
・移管の目的
・移管対象
・移管スケジュール
・JPRSの責任
・JPドメイン名の公共性の担保
日本のインターネット・コミュニティの健全な発展に寄与し、また、全世界
のインターネット・コミュニティの発展にも資するようにJPドメイン名の登
録管理業務を運用するという原則が明記されています。また、JPNICが政府
と協調して、JPRSの業務が適切に行われているかを確認し適切でない場合に
は改善勧告や再委任ができること、JPRSが運用不能になったり、ICANN契約
が終了した場合、新たな移管先を選択することも明記されています。
5.2 再委任および契約手続き開始要請文書(JPRS -> ICANN)
JPドメインの委任当初から今回の再委任の要請に至るまでの背景と経過を説
明し、現在JPNICに委任されているものをJPRSへ再委任することをICANNに対
して要請するとともに、あわせてJPRSとICANNとの「ccTLDスポンサ契約」の
手続きの開始を要請するための文書です。これを受けてICANNは関係者のヒ
アリングを行い再委任の妥当性を検証するとともに、政府に対して支持(エ
ンドースメント)する意思があるかどうかの確認をとることになります。こ
の要請が正当であるとICANNが判断した場合、再委任が承認されるとともに、
「ccTLDスポンサ契約」の手続きが進められることになります。
5.3 ccTLDスポンサ契約書(JPRS <-> ICANN)
JPRSとICANNとの間で取り交わすもので、JPRSとICANNそれぞれの責務と権限
が規定されます。今回の契約は、ICANNが公開している「モデルccTLDスポン
サ契約書」をベースにしつつも、先に示した方針にしたがって「JPRS-ICANN
のccTLDスポンサ契約書」を策定するものです。主なポイントは次の通りです。
・ICANNの責務
- JPRSをJPドメインのccTLDスポンサ組織として承認する
- ルートサーバシステムの安定的な運用
- ネームサーバ情報を含むJPドメインに関する情報の更新
・JPRSの責務
- JPドメインに関する安定的かつ安全なネームサービスの提供
- 登録情報の第三者機関への預託(データエスクロウ)
- ICANNポリシーの遵守
・契約終了の条件
- 契約条件に違反したとき
- JPRSの業務が適切に行われなくなった場合
5.4 JPドメイン名業務移管契約書(JPNIC <-> JPRS)
JPNICがJPRSに対してJPドメイン名の業務を移管するための契約書です。こ
の契約書には、業務移管に関する基本的な事項のほかに、覚書に記載された
遵守事項とその確認、改善勧告手順が記載されます。また紛争処理方針の策
定や紛争処理機関の認定などJPNICの役割も記載されます。
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■6. 移管にともなう登録者、指定事業者の位置づけの変更
JPNICと登録者の関係、並びに、JPNICと指定事業者の関係は、今回の移管とと
もに変更されることになります。これに伴い、これらの関係を規定している以
下の文書を見直し、必要な改訂を実施することになります。
・属性型地域型JPドメイン名登録等に関する規則
・属性型地域型JPドメイン名登録申請等の取次に関する規則
・属性型地域型JPドメイン名登録申請等の取次に関する業務委託契約書
・汎用JPドメイン名登録等に関する規則
・汎用JPドメイン名登録申請等の取次に関する規則
・汎用JPドメイン名登録申請等の取次に関する業務委託契約書
・JPドメイン名紛争処理方針
・JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則
JPドメイン名登録者は、移管後のスポンサ組織であるJPRSが制定する方針・規
則に準拠する位置づけとなります。また、申請窓口、お問い合わせ窓口および
登録料・維持料の支払口座などが、JPNICからJPRSへ変更となります。
登録申請等の取次をする指定事業者は、現在2つに分かれている契約対象(属
性型地域型JPドメイン名の取次契約はJPNIC、汎用JPドメイン名の取次契約は
JPRS)はJPRSに集約されることになります。
一連の改訂作業は、移管作業の一環として今後進められることになります。
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■7. スケジュール(予定)
一連の移管作業は次のようなスケジュールで進める計画でおります。
2001年11月15日 覚書締結
2001年11月16日 「JPドメイン名登録管理業務の移管およびICANNとの契約
について」ご意見募集開始
2001年11月30日 ご意見募集の終了
2001年12月 6日 JPNIC総会
- 覚書についての報告
- 業務移管およびccTLDスポンサ契約についての進捗報告
- 移管契約大綱の承認
2001年12月 ICANN・JPRS間のccTLDスポンサ契約締結
2002年 1月 移管契約締結
2002年 3月 JPNIC総会
- 移管契約締結についての報告
- ccTLDスポンサ契約締結と業務移管についての報告
2002年 4月 1日 業務移管の実施
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