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ニュースレターNo.15/1999年12月発行

3.最新トピックス English Page

3.3 紛争解決ポリシーに関するタスクフォース(DRP-TF)の開始について
  ~ICANN統一紛争解決ポリシーと日本へのローカライズの試み~

(JPドメイン名検討部会)

ICANNと統一紛争解決ポリシー

1998年6月に米国商務省から出されたホワイトペーパーを受けて、同年秋、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が承認されました。ホワイトペーパーはまた、WIPO(世界知的所有権機構)に対して、商標とドメイン名の紛争解決の問題に関する一連の勧告をまとめるよう求めておりましたが、WIPO はこの要請を受け、同年7月にインターネット・ドメインネーム・プロセスを開始。三度に渡るコメント要請と世界各地で開催した公聴会の結果を受けて、1999年4月、最終レポートを ICANN 理事会に提出しました。

ICANN 理事会は、5月27日に開催されたベルリン会合にて、この WIPO 最終レポートを大筋で受け入れるとともに、DNSO(ドメインネーム支持組織)に対して、同レポート「第3章:統一紛争解決手続き」の検討と勧告を求めました。また、.com、.net、.org を扱う gTLD レジストラは一つの統一された紛争解決ポリシーを採用すべきであるという原則の支持を決議するとともに、テストベッドレジストラに対して、模範となるモデル紛争解決ポリシーを作成するよう求めました。

8月26日にサンチャゴにおいて開かれた ICANN 理事会では、DNSO より出された統一紛争解決ポリシーの採用を求める勧告を受け入れるとともに、テストベッドレジストラから出されたモデル紛争解決ポリシーをスターティングポイントとして、45日以内に同ポリシーの実施ドキュメントを作成するという決議がなされました。また、合わせて ICANN 事務総長に対して、複数の「紛争解決サービスプロバイダ(administrative-dispute-resolution service provider)」を暫定的に認定する権限が与えられました。

実施ドキュメントは、ICANN 事務総長が召集したドラフティング小委員会によってとりまとめの作業がなされ、一般からのコメント受け付けのプロセスを経た上でICANN 理事会に提出されました。ICANN 理事会は、11月初めの LA 会合に先立つ10月24日の理事会にて、これを承認決議し、ICANN 事務総長に対してその実施を指示しました。

この結果、11月4日までに認定されているレジストラについては、12月1日より統一紛争解決ポリシーを採用、また、NSI については、2000年1月3日より同ポリシーを採用するというスケジュールが出されました。

また、LA会合では、紛争解決サービスプロバイダとして6組織が名乗りをあげているということが伝えられました(そのうち2つは、WIPO 仲裁調停センター、DISPUTES.ORG)。このうち幾つかは、12月1日より暫定的な認定を受けて稼働するものと考えられます。

紛争解決の「ポリシー」と「ルール」

ICANN 理事会で承認決議された実施ドキュメントは、大きく二つの文書から構成されています。一つは「統一紛争解決ポリシー(Uniform Domain Name DisputeResolution Policy)」、もう一つは「紛争解決ポリシーの手続きルール(Rulesfor Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy)」です。前者(ポリシー)は、「ICANN 認定レジストラ」の登録規則に組み込まれるものであり、後者(ルール)は、「紛争解決サービスプロバイダ」による紛争解決手続きで適用されるルールということになります(これ以外にプロバイダ毎に補完ルール(Supplemental Rules of the Provider)があります)。

gTLD の紛争解決ポリシーとしては、現状 NSI が採用しているものがありますが、同社のポリシーの特徴は、「商標登録の有無」を基準にした形式的な判断であり、商標権侵害の有無が全く考慮されないという点で問題があると言われています。また、数年前、gTLD-MoU という動きの中で検討されていた紛争解決ポリシーは、異議申立てのあったドメイン名が第三者の商標権侵害をしているかどうかを判断するというアプローチであり、その判断基準づくりに多くの時間が費やされていました。

ICANN で採用された紛争解決ポリシーは、上記二つのいずれのアプローチとも異なります。同ポリシーの大きな特徴は、「悪意による不正なドメイン名の登録・使用」に起因する紛争は、同ポリシーで規定する「義務的紛争解決手続き(Mandatory Administrative Proceeding)」による解決を図り、それ以外のドメイン名紛争(例えば、両当事者ともに正当な権利をもっている場合)は、裁判または仲裁など従来の方法で解決を図るというものです。

ドメイン名の登録・使用が悪意をもってなされているかどうかという判断は難しいところですが、同ポリシーによると、(1) 商標権者またはそのライバル会社に対して、ドメイン名登録に要した実費金額を越える対価で販売・貸与・移転することを目的に登録している場合、(2) 商標権者によるドメイン名使用を妨害するために登録している場合、(3) ライバル会社の事業を混乱させることを目的に登録している場合、(4) ドメイン名を使って商標権者の商標との混同を故意に起こし、利益を目的として、自社の Webサイトにインターネットユーザーを引き寄せるようにしている場合、などが悪意によるドメイン名の登録・使用の証拠としてあげられています。

また、手続き的な面における特徴をあげるならば、レジストラの非関与(手続きへの不参加、結果に対する免責)、義務的(同ポリシーを採用しているレジストラ経由でドメイン名を登録した者は、第三者から申立てがあった場合、紛争解決サービスプロバイダによる紛争解決手続きに必ず付託しなければならない)、非拘束的(紛争解決サービスプロバイダによる手続きの最中、あるいは、終了後、裁判所に不服を訴え出ることができる)、迅速(紛争解決のプロセスは原則としてすべてオンラインで行なわれ、手続き開始から結果が DNS に反映されるまでの所要日数は55日程度)、低コスト(パネリストが1名の場合、費用は US$1,000程度)、などがあります。

紛争解決サービスプロバイダは、1名ないし3名のパネリストによる紛争解決パネル(Administrative Panel)を構成して紛争解決の手続きを進めますが、その流れは次のようになります。(以下、「*日以内」という表記は、一つ前の項目が完了してからの日数を表します。)

  1. 申立人は、ICANN 認定プロバイダ一覧からプロバイダを選択し、そのプロバイダに申立書を送付(当該ドメイン名が悪意による不正な登録・使用であるとの申立て)、合わせて料金を支払う
  2. プロバイダは、3日以内にその申立書をドメイン名登録者に送付
  3. ドメイン名登録者は、20日以内に答弁書をプロバイダに返信(当該ドメイン名の登録・使用は正当なものであるとの答弁)
  4. プロバイダは、5日以内にパネリストを決定(原則1名で、プロバイダが選定。なお、いずれかの当事者の希望で3名にすることも可能だが、この場合、申立人側、並びに、ドメイン名登録者側それぞれが3名の候補者を出し、プロバイダがそれぞれの側から1名ずつ選定。残りの1名については、プロバイダが5名の候補を出し、両当事者の意見のバランスをとって1名を選定。)
  5. パネルは、14日以内に審理の結果を出し、それをプロバイダに伝える
  6. プロバイダは、3日以内に両当事者、レジストラ、ICANN に結果を伝える
  7. レジストラは、10日(営業日ベース)待ってその結果を DNS に反映させる(ただし、結果が「ドメイン名の取消または移転」となり、ドメイン名登録者が裁判所に不服を訴え出た場合、レジストラによる DNS への反映は、当事者間の合意、または、裁判所からの結果が出るまで行なわない形になる。)

なお、紛争解決サービスプロバイダにかかる費用は原則申立人負担ですが、ドメイン名登録者側の希望でパネリストを3名にした場合、その費用は、両当事者の折半となります。また、手続きで使用する言語は、原則レジストラとドメイン名登録者間の登録契約で使われている言語となっています。

日本へのローカライズとDRP-TF

さて、翻って日本の状況を見ると、一部商標に抵触するドメイン名の存在も指摘されてはいますが、裁判によってその解決を求めるという動きは少なく、JPNICの観点からは問題が顕在化しているとはいえない状況にあります。日本で紛争が少ないのは、「一組織一ドメイン名」「ドメイン名の移転禁止」などの JPNICが持つ原則によるところが大きいと考えられますが、日本社会におけるインターネットの急速な拡大とともに、これらの原則を廃止し、もっと自由にドメイン名の登録ができるようになることを求める声も大きくなってきています。

JPNIC としては、ドメイン名移転の自由化、並びに、一組織が複数ドメインを登録できる汎用SLD(第2レベルドメイン)の導入を検討していますが、その実施にあたっては、ドメイン名と知的財産権(特に商標)との紛争の未然の防止、並びに、紛争が発生した場合の解決手続きを策定する必要があると考えております。

同時に、国境を越えたメディアであるインターネットの特性を考慮に入れるならば、JPドメインだからという理由で常に日本という国の枠組みに固執することは困難であり、現在、ICANN で進められている紛争解決ポリシー策定の動きとのハーモナイゼーションを十分にとる必要があると考えております。

このような状況を受けて、JPNICのJPドメイン名検討部会では、知的財産権や不正競争などの法律の専門家、また、既存の調停・仲裁機関の関係者を中心として「紛争解決ポリシーに関するタスクフォース(DRP-TF)」を結成することに致しました。

このタスクフォースは、日本の法制度や調停・仲裁のシステムを十分配慮した上で、ICANN で策定された「統一紛争解決ポリシー」並びに「統一紛争解決ポリシーのための手続きルール」をローカライズするということを主たる目的として作業を進めていきたいと考えております。タスクフォースの結論は、JPNIC 運営委員会に対して勧告として提出され、その後、一般からのコメントを求めるために公開される予定です。

おわりに:DRP-TF以降の課題

ICANN では、現在、「ドメイン名登録における著名商標の除外」をどうするかという点に議論が移っています。議論の大きなポイントは、(1)著名商標の除外は必要か、(2)著名商標の定義は何か、(3)著名商標を一部(サブストリング)として含むドメイン名も除外の対象となるか、などです。.com、.net、.org に続く新しい gTLD の導入は、この著名商標の問題をクリアにすることが前提条件となっております。日本においても同様、汎用SLD の導入にあたってはこの問題をクリアにする必要があると考えています。

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