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ニュースレターNo.32/2006年3月発行

Internet Week 2005 開催報告

1. 全体概要

2005年12月6日(火)~9日(金)の4日間、パシフィコ横浜でInternet Week 2005を開催いたしました。今年で9回目を迎えるInternet Week 2005の全体概要をご報告いたします。

開催期間は幸い好天に恵まれ、約4000名の皆様にご参加いただきました。今年は共催団体がそれぞれ開催するカンファレンスの人気が特に高く、各会場は熱気に溢れていました。「DNS DAY」「IPv6、DAY/Anti Spam DAY」、「Security DAY」、「IPMeeting/インターネットと法律DAY」というように、その日の柱となるカンファレンスをピックアップして「DAY」を設定したのも今回初の試みでした。色々な団体がセッションを開催し、テーマも多彩であることがInternet Weekの特徴の一つですが、このようにDAYを設定することで参加者の皆様にとって、内容が少しでもわかりやすくなったとしたら幸いです。

今年の開催実績は、カンファレンスが11、技術動向を中心とした3時間の講義形式であるチュートリアルが31、BoFが5、スポンサーによるソリューションセミナーが2、となります。Internet Weekの前身であるIP Meetingと懇親会を最終日に開催して最後に盛り上がりました。懇親会では横浜市の前田正子副市長から、インターネットの普及とご担当されている鳥インフルエンザについての興味深いお話などご披露いただきました。

来年は2006年12月5日~8日に開催予定です。最後になりましたが、Internet Week 2005にご参加くださった皆様、誠にありがとうございました。参加者の皆様からいただいたアンケートのご回答などを参考にさせていただき、今年、残念ながらご参加いただけなかった皆様をも魅了するプログラムを検討してまいります。

写真:正面入り口の大看板
正面入り口の大看板、今年もパシフィコ横浜にて開催

◆ Internet Week 2005開催概要

【名称】
 Internet Week 2005
【会期】
 2005年12月6日~9日
【会場】
 パシフィコ横浜会議センター
【URL】
 http://internetweek.jp/
【主催】
 社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)
【共催】
 財団法人インターネット協会(IAjapan)
 有限責任中間法人JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)
 社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)
 日本サン・ユーザ・グループ(NSUG)
 財団法人日本データ通信協会Telecom-ISAC Japan
 特定非営利活動法人日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)
 日本UNIXユーザ会(jus)
【協力】
 日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ(JANOG)
 モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)
 WIDEプロジェクト(WIDE)
【後援】
 総務省、文部科学省、経済産業省
【協賛】
 NTTコミュニケーションズ株式会社(OCN)
 株式会社日本レジストリサービス
 ネットワンシステムズ株式会社
 インターネットマルチフィード株式会社
 株式会社SRA
 株式会社創夢
 東京電力株式会社
 日本インターネットエクスチェンジ株式会社
 ネクストコム株式会社
 三菱電機情報ネットワーク株式会社

(JPNIC 広報教育部 岡部ちぐさ)

2. DNS DAY ~安全なドメイン管理~

本年度のDNS DAYはInternet Week 2005の初日となる12月6日(火)に開催され、多くのDNSサーバ管理者およびDNS関連技術者の方々にご参加いただきました。DNS DAYは2000年より毎年開催されているカンファレンスで、運用レポートとその年毎のトピックスを取り上げて解説し、参加者を交えた議論をしています。

本年度のプログラムは、前半は例年通りJP DNSサーバ、root DNSサーバの運用レポート、そしてDNSの最新動向をご紹介し、後半では「安全なドメイン管理」と題してドメイン乗っ取り問題を中心にドメイン管理の在り方について参加者の皆様と議論を行いました。

本レポートでは前後半を通じて活発な議論が行われた今回のDNS DAYの模様をご報告致します。

◆ 運用レポート

◇ JP DNSレポート
最初にJPRSの白井出氏からJP DNSの運用レポートが行われました。今年はセカンダリサーバの一つであるc.dns.jpが運用を停止するということがありましたが、それ以外は大きな障害等もなく安定したサービスの提供が行えたとのことでした。

◇ root DNSレポート
続いてWIDEプロジェクトの加藤朗氏がrootDNSサーバについて報告を行いました。root DNSサーバにおけるIPv6、エニーキャストの実装状況について説明を行う中で、エニーキャストでのDNSサーバ選択方法についてはルーティングの専門家を交えてさらなる検討が必要であろうという見解を示しました。

◇ DNS最新動向
前半最後はDNS最新動向ということでインターネットイニシアティブ小林直氏より迷惑メール対策についての発表、そしてJPNIC技術部小山祐司よりDNSQC※1レポートが行われました。小林氏は迷惑メール対策の必要性、実施状況、そして対策を実施するためのリソースレコードの記述方法の解説を、小山はJPNICが2005年6月より実施している逆引きLameチェックの結果報告をそれぞれ行いました。

◆ 安全なドメイン管理

◇ ドメイン管理の不備が招く脅威
後半最初はJPRS米谷嘉朗氏よりドメイン乗っ取り問題についてのプレゼンテーションが行われました。この中で米谷氏は、ドメイン乗っ取りがどのように可能となるのかを実例を踏まえながら詳細に解説し、この問題に対してJPRSは積極的に対策を実施していく方針であるということを発表しました。

◇ レジストリとしてLameチェックの重要性
続いてJPNIC小山がレジストリがLameチェックを実施する必要性についての発表を行いました。小山はLameはなぜ是正が必要なのかを説明した上で、逆引きにおいてはRIRで既にLame是正のための施策が実施されていることから、JPNICもこの動きに同調しLame DNSサーバに対する逆引きゾーン委任の一時停止を実装したいという提案を行いました。

◇ パネルディスカッション
カンファレンスの最後にはJPCERT/CC鎌田敬介氏、NTTコミュニケーションズ吉村知夏氏、JPRS米谷嘉朗氏、JPNIC小山祐司をパネリストとしたパネルディスカッションを行いました。各パネリストが各々の立場からドメイン管理の在り方について発表した後、参加者とのディスカッションへと移行しました。例年にない程の活発な議論が行われる中で、WHOIS登録情報の表示項目についてレジストリには再度の検討をお願いしたいという要望が寄せられました。また、DNS関連技術に関して参加者がより議論に参加できる形態のミーティングの開催を熱望する声も聞かれカンファレンスは熱気あふれる中、閉幕となりました。今回いただいたご意見、ご要望はJPNICとして真摯に受けとめ前向きに検討していきたいと考えております。

◆ 資料

http://www.nic.ad.jp/ja/materials/iw/2005/main/dnsday/

(JPNIC 技術部 上野晶久)

3. インターネットガバナンス: 過去、現在、そして未来

Internet Week 2005期間中の12月7日(水)、「インターネットガバナンス:過去、現在、そして未来」を開催しました。2003年12月の世界情報社会サミット(WSIS) ジュネーブ会議に端を発し2005年11月のWSISチュニス会議にて一つの節目をむかえたインターネットガバナンスの議論に関し、文字通り、「インターネットガバナンスの過去、現在、そして未来」について約70名の参加者の皆様と共に再確認する時間となりました。

以下に、カンファレンスの概要をご紹介いたします。

(1) 「インターネットガバナンス」議論の背景(JPNIC理事 前村昌紀)

JPNIC理事の前村昌紀は、「インターネットガバナンス=インターネットを構築・運営・利用する上で必要なルールと、その制定執行のしくみ」と定義し、インターネットの歴史を踏まえたインターネットガバナンスの総論について講演しました。黎明期にはインターネットの作り手=動かし手=使い手であり、当事者間の信頼関係の上に成り立っていたインターネットですが、その後、コミュニティの拡大、爆発的広がりと技術革新を経て、社会資本として認知されるまでに至りました。インターネットにまつわる問題は、技術的側面のみならず社会的側面も持つようになり、マルチステークホルダーを意識した議論が必要となっています。認識される課題は広範に渡っており、各ステークホルダーが、課題解決に向け社会の要請に協調的に応えていこうとするさらなる姿勢が必要であると呼びかけました。

(2) International AdHoc Committeeが残したもの(JPNIC理事 丸山直昌)

JPNIC理事の丸山直昌は、International AdHocCommittee(IAHC) の歴史を振り返り、インターネットガバナンスを考える際のキーワードとなる “bottomup” の精神について説明しました。1996年後半、インターネットコミュニティでは3つの問題(独占禁止法、トップレベルドメインを増やすことへの要求、商標権)への対応が求められるようになり、その解決の担い手としてIAHCが設立されました。その後、bottom upを基本とした検討プロセスを経て、IAHCにより諸問題が解決に至るかに見えた1998年初頭、米国主導の議論へとシフトし、結果として現在のICANNが設立されました。IAHCは解散しましたが、“Shared Registry System” はレジストリ・レジストラモデルに、“Substantive Guidelines Concerning Administrative Domain Name Challenge Panels” はUDRPの原型として姿を変え、IAHCの精神がICANNの運営に引き継がれていることが説明されました。

(3) パネルディスカッション「インターネットガバナンスの将来」b>

JPNIC理事丸山がコーディネータとなり、 6名のパネリストと共にパネルディスカッションが行われました。

〈パネリスト〉

Mohamed Sharil Tarmizi
:ICANN政府諮問委員会(GAC)議長
藤本昌彦
:総務省総合通信基盤局データ通信課インターネット戦略企画室長
加藤幹之
:富士通(株)経営執行役 法務・知的財産権本部長兼 安全保障輸出管理本部長
会津 泉
:(財)ハイパーネットワーク社会研究所副所長
堀田博文
:(株)日本レジストリサービス取締役企画本部長
前村昌紀
:JPNIC理事

(発表順)

コーディネータから提示された以下のトピックスを中心に、議論が進められました。

  • これまでのICANNをどう考えるか
  • インターネットガバナンス作業部会(WGIG) の活動をどう評価するか
  • WSISのチュニスの結論をどう考えるか
  • インターネットガバナンスフォーラム(IGF) に何を期待するか
  • 今後のICANNの役割はどうあるべきか
  • 今後のGACの役割はどうあるべきか

これまでのICANNの在り方については、「果たしてきた役割は評価できる点が多いが、改善の余地を残しており今後の改革が期待される」との内容が大方のコメントでした。WGIGの活動については、諸問題が客観的にまとめられ、今後の議論への足掛かりとなった点が加藤氏により評価されました。しかしながら、「各国の状況の違いを越えた協調関係が望まれる」と訴えるSharil氏や「GACでの意見の統一化を図りたい」との藤本氏のコメントからは、WSISやGACでの議論が着地点の見い出しづらい政治的な議論となっている現状が垣間見られ、問題解決の道程が容易ではないことを感じます。先般のWSISチュニス会合では、マルチステークホルダーアプローチでインターネットガバナンスについて議論する場として、国際連合管轄のIGFが設立されました。IGFとの関わりについては、「日本の意見を集約し積極的な取り組みが望まれるのではないか(会津氏)」や「静観する段階ではないか(掘田氏)」など異なった見解がありますが、各パネリストともIGFが個々の課題の本質とそれらに対する解決策が議論される場となるよう期待していることが感じられました。

来場者からは、時間の制約上パネルディスカッションに多く時間を割けなかったことを残念がる声や、本カンファレンスのようなオープンフォーラムを今後も期待する声を頂きました。JPNICでは、今後も皆様と共にインターネットガバナンスの議論に関わっていきたいと考えております。

写真:チュートリアルの様子
チュートリアルの様子

◆ 資料

http://www.nic.ad.jp/ja/materials/iw/2005/main/governance/

(JPNIC インターネット政策部 高山由香利)

4. 第9回JPNICオープンポリシーミーティング

Internet Week 2005の会期中、2005年12月8日(木)に、第9回JPNICオープンポリシーミーティング(以下、JPOPM9)を開催いたしました。ポリシーワーキンググループ(以下、ポリシーWG)が主催するミーティングとしては三回目となります。今回は、事前登録で150人弱、当日も100名弱と、今までに増して多くの皆様にご参加いただき、提案事項や報告事項に対して活発な議論、質疑がなされました。ご出席くださった皆様、議論に参加いただきました皆様、ありがとうございました。

さて、今回のミーティングでは以下のように、三つの提案と、多くの情報提供プレゼンテーションが実施されております※2

1. 前回までのフォローアップ
-前回の宿題確認
-歴史的経緯をもつPIアドレスに関するご報告
-WHOIS WGに関するご報告
2. IPv6アドレスポリシー
-IPv6割り振りポリシーアップデート
-[提案]プロバイダ非依存なIPv6アドレス割り当てに関する提案
3. [提案]RIR情報の迅速な共有体制作りの提案
4. [提案]IPv4プライベートアドレス拡張提案
5. 日本・世界の動向
-IPv4アドレスの寿命に関するご報告
-第20回APNICオープンポリシーミーティングのご報告
-インターネットガバナンスアップデート-大規模IPv4アドレス空間実験活動状況アップデート
-JPNICアップデート
-IPアドレス検討委員会活動報告

「プロバイダ非依存なIPv6アドレス割り当てに関する提案」では、IPv6においてもIPv4と同様、プロバイダ非依存なマルチホーム用アドレス(以下、IPv6 PIアドレス)が必要であり、配布すべきだ、という提案でした。IPv6 PIアドレスについては、ARINでもその必要性について賛同が多く、配布条件についての議論が実施されています。会場からは、IPv6 PIアドレスはマルチホームだけでなく、組織がプロバイダに依存しないためのアドレスとしても需要があるなど、IPv6 PIアドレスの必要性について肯定的な意見が多かったのですが、その配布条件を同意が得られるように明確に決めることが難しいといった懸念も出されました。

結論としまして、IPv6 PIアドレスの必要性については合意が得られ、配布条件などの細かい点を検討するワーキンググループを設立すること、内容詳細についてはそのWGに一任し、2006年2月末から3月頭にかけてオーストラリアにて開催される第21回APNICミーティングでの提案を目指す、ということになりました。

二つめの、「RIR情報の迅速な共有体制作りの提案」では、先日発生したAPNIC でのDNS障害に対する情報提供が不十分であったことの指摘がなされ、インターネットレジストリとしてシステム障害等の広報チャネルを確立して欲しい、という提案がなされました。この提案についても賛同者が多く、JPNICにインターネットユーザー向けの広報チャネルを整え、障害通知などを実施する体制を整えることを要請するというコンセンサスが得られました。

三つめの「IPv4プライベートアドレス拡張提案」は、大規模なIPネットワークを構築するためには、現在規定されているIPv4プライベートアドレスでは不足であるため、/8を三つ程度、新たにプライベートアドレスとして確保すること、その際、ある程度一意性を確保する目的で、用途の限定をすべきだ、という提案でした。これに対しては、プライベートアドレスを増やすことのメリットについての疑問、用途限定の是非などが議論になり、また、残り少ないIPv4アドレスを考えると、プライベート空間を増やすことに対する理論武装をきちんとしないと、提案を通すことは難しい、などの意見が出されました。この提案はコンセンサスには至らず、引き続き検討することになりました。

今回コンセンサスが得られた二つの提案については今後、ip-users MLでの議論の後、ポリシーWGからJPNICに実装を勧告する、という流れとなります。

その他、JPOPM8での議論に基づくWHOIS WG設立に関する報告や、IPv6アドレスポリシーの世界的動向、IPv4アドレス枯渇に関するレポートなど、活発な議論が実施されました。

それぞれのプレゼンテーション資料、および議事録はJPOPM9のWebページ※2に公開しております。

ポリシーWGでは、皆様のご意見をもとに、JPNIC・APNICへのポリシー提案、提言を実施していきます。皆様のご協力、およびご意見をよろしくお願いいたします。また、ポリシーWGへのご質問・ご提案はjpopf@venus.gr.jp までお願いいたします。

◆ 資料

http://venus.gr.jp/opf-jp/opm9/opm9-program.html

(ポリシーワーキンググループチェア/NTT 情報流通プラットフォーム研究所 藤崎智宏)

5. IP Meeting 2005

IP Meetingは、もともとInternet Weekの前身となった会合です。「インフラとしてのインターネットの開発・構築・運営に関わる人が一堂に集まり知識・課題を共有し、インターネットの発展のための議論を行う」場として、1990年から継続しています。

16回目を迎える今回は、Internet Week 2005の最終日である12月9日(金)に開催し、約350名という大勢の方にご参加いただきました。

ここ数年は、午前中に【今年のインターネット基盤技術を総括するトピックスレポート】、午後は【最新動向を伝える講演とパネルディスカッション】という二部でプログラムを構成しています。今年の午後の最新動向テーマは「IPとNGN -NGNは次世代統合インフラになりえるか?-」でした。本日はその概略をレポートします。

◆午前の部「2005年トピックスレポート」

(1)2005年のレジストリとインターネットコーディネーション
JPNIC IPアドレス担当理事の前村が司会となり、「ドメイン名」や「IPアドレス」などのインターネット資源の観点から、今年のレジストリ回りのインターネットコーディネーションを語るという形式で本セッションは進められました。

まず、総括として、WSIS/WGIGとICANNの動きについての話が前村理事からありました。2005年は、行政が「公共政策としてのインターネット」を本格的に考え始めた記念すべき年であり、まだまだ問題の解決には時間がかかるだろうが、2006年はインターネットガバナンスフォーラム(IGF)※3の動きに注目しておく必要があるということでした。

その後、「ドメイン名」全般の動向についてJPRS大橋由美氏からお話しいただきました。gTLDの動きや、新しいsTLDの申請状況、その後JPドメイン名の今年の動向などについて話がありましたが、今年の大きな話題の一つとして、IDN (国際化ドメイン名)がフィッシング詐欺に利用された事実と、その危険回避策としてのICANNが用意しているIDN実装ガイドラインの紹介や、ブラウザなどのサービスのIDN対応についても紹介されました。

「IP アドレス」についてはJPNIC の穂坂俊之から話がありました。今年の一番大きなトピックスは、なんといっても「IPv4 アドレスの余命予測」であるとのことです。ここ近年のIPv4 アドレス消費増加要因について触れ、そのため世界中の関係者が予測の見直しをしているが、以前の予測よりも早く枯渇しそうだという展望が述べられました。その他のトピックスとしては、RIRとしてAfriNIC が正式承認されたこと、JPNIC ではPI アドレスの管理体制強化や個人情報保護対応を行った報告などがありました。

その後、「DNS & レジストリ」と題し、IPエニーキャストの最新動向と、レジストリとしてのIANAの組織の運営状況について、JPRSの森下泰宏氏から紹介がありました。ルートサーバへのDDoS攻撃対策が契機となりルートサーバ・TLDをはじめとする多くのDNSサーバでIPエニーキャストが多く導入されているが、IPエニーキャストはBGPに依存してるということでした。IANAの組織の運営は依然として人的リソースが不足しており、関係者が一致団結した協力体制を作れるかどうかが、今後のインターネット全体の安定運用に非常に重要であると述べられました。

(2)ルーティング・トポロジ動向
JPNICのIPアドレス検討委員で、NTTコミュニケーションズ(株)の吉田友哉氏から、最近のインターネットにおけるトラフィックの動向などを中心に、インターネットバックボーンの状況についての報告がありました。今年の傾向として、経路・AS数の伸びは昨年同様の伸び傾向であるが、トラフィック数は国内・国際ともに2004年より増加傾向であること、10Gbpsが本格化したこと、PrivatePeerが促進されたこと、セキュリティ攻撃が複雑化し大規模化したこと、そのため、新たなDDoS対策サービスもでてきたとの話がありました。ネットワーク・トポロジの視点で見ると、相変わらず東京への一極集中傾向は見られ、また大手ISPが大阪へ分散化する傾向はひとまず落ち着いたとのことです。また、海外とのトラフィックはアジア・USからのトラフィックの増加が顕著ということです。

IP Meetingの参加者は運用管理(ネットワーク管理)者が、参加者の半数以上という状況のため、本セッションは、昨年度と同様、アンケートでも関心が大変高い項目でした。

(3)セキュリティトピックス
JPCERT/CCの伊藤友里恵氏から、セキュリティに関する2005年のトピックスとして、インシデントの動向、CSIRTコミュニティにおける動きなどの紹介がありました。今年の特徴として、攻撃側の組織化・巧妙化・複雑化が顕著にあるのに加え、ユーザー環境も複雑化している状況があるため、もはやインターネットの保全にはすべてのプレイヤーが責任をもって行動していかないといけないという話がありました。各自が自身の責任とミッションを認識し重要インフラを防護していくことが重要であると述べられました。

(4)VoIPの動向
VoIP/SIP相互接続検証タスクフォース・WIDEプロジェクトの大江将史氏から、VoIP/SIP相互接続検証タスクフォースの活動を通じて浮き彫りになった、異なるキャリア間におけるVoIP接続の問題点等の報告がありました。試験の結果、ISPISP間の発着信は基本的にはできるものの、高度なサービス(保留・着信拒否等)になると、問題が多くなるとのことです。発信番号のフォーマットやパラメータの定義、セッションの保留、着信拒否、番号通知・非通知などもISP/ベンダーによって解釈の定義が異なるところであり、技術的な問題点の解決を図るまでには継続的な活動が不可欠であるとの話がありました。

写真:IP Meeting 2005の様子
IP Meeting 2005 の様子
江崎氏は米国・ワシントンDCからネットワーク経由での参加となりました。

◆午後の部

IPとNGN -NGNは次世代統合インフラになりえるか?-

次世代ネットワーク(NGN:Next Generation Network) の標準化が、ITU-Tを中心に推進されています。NGNとはIP技術を基盤のプロトコルとして、インターネットとVoIPサービスを統合したり、また、有線網と無線網のインフラ統合なども可能にすると言われているアーキテクチャです。NGNの標準化は、IPの領域を担当するIETFや携帯電話を担当する3GPP/3GPP2とも協調して推進はされているものの、「現在のインターネットシステム」の相互接続と移行部分等について実践的にかつ現実的に行うためには、考慮するべきことが多々あるのではないかという観点から、今回のIP Meetingのテーマとして取り上げるに至りました。

まず、NGNについての理解を深めるために、「NGNの標準化と各国の動き」についてNTT(株)の村上龍郎氏にお話しいただき、その後、総務省の鈴木茂樹氏により、現在活動を行っている「IPインフラ研究会のNGNに関する活動のご紹介」をいただきました。

その後、パネリストの紹介がなされました。モデレータはJPNIC理事長である後藤滋樹が務め、パネリストとして、総務省の鈴木氏、アジア・ネットコム・ジャパン(株)の石井秀雄氏、ソフトバンクBB(株)の牧園啓市氏、NTT(株)の村上氏、KDDI(株)の村上仁己氏、東京大学の江崎浩氏(ワシントンDCからのネットワーク経由)に参加していただき、具体的なディスカッションに入りました。まず、石井氏と牧園氏により「NGNへの期待」が語られました。また、無線系の話としてKDDI(株)の村上氏からも「3G・FMC・NGN(の関係)」のお話をいただきました。

詳細な内容は紙面の関係上ご紹介できませんが、パネリストからの最後の意見として、江崎氏からは、「インターネットは、上下のトラフィックがますます対称型になる傾向がある。特にFMCは、その対称傾向が強くなるだろう。そのようにたくさんのコンテンツが流通するアーキテクチャにきちんとNGNがなっていけるよう、一緒に議論していきたい」という話がありました。

NTT (株)の村上氏からは「NGNのキーワードは【シームレス】【オープン】ということ。NGNは未完成ながら「次世代ネットワーク」と言ってしまったが、これこそが議論するきっかけではないか。これからの通信事業者は、放送・家電・医療等の業界を越えて議論できないと将来はないと思う。先ほど【オープン】と言ったのは、オープンディスカッションで議論していくということであり、それこそがNGNだと思う」と述べられていました。

総務省の鈴木氏は「【ISDN網から光の国へ】と言っていたのが、いつの間にかNGNに変わってきている。今後、どのような変革が起こるのか予想がつかない。通信の容量が増えその上に産業が花開いていろいろなサービスが生まれてくると思うが、その目指すところは国民の幸せであり、その方向性については誰もが合意していると思う。行政としては足元の動きを阻害しないように、関係者のコンセンサスに向けて調整するのが役割だと思う」とおっしゃっていました。

石井氏からは「サービス提供側としては、今のデフレを打破したいというのが本心。新しいプラットフォームが出た段階でおもしろいサービスを考えて展開していくことを考えなくてはいけないと思った。しかし、NGNのオペレーションについてはもう少し機能のところを考えてもらいたい。たとえば、トラブルシュートの時間が半分になるといった利点があるとコストをかけやすくなるのではないか。NGNはおもしろい技術や考え方だと思っています」とのコメントがありました。

牧園氏からは、「我々インターネット世代はオープンなプラットフォームさえあればそこで何でもできると思っているが、そういう感覚でやるといつかサービスが売れなくなる時期が来ることが見えてきた。年輩の方々も安心して使えるような、ある意味保守的なプラットフォームを提供するのがNGNなんだな、と感じた」との話がありました。

KDDI (株)の村上氏からは「就職して30年経過したが、通信業界は本当に変化する業界で、音声でお金がとれなくなってきている。そういう技術の変化がサービスの変化になってきていてこれからもどんどん変わっていくし、改めて、それを認識した。だからこういう場での意見交換は大変重要だと思う。本日はその記念すべき第一歩だったのではないか」との嬉しいお言葉をいただきました。

最後にモデレータの後藤理事長は、経営学者ピーター・ドラッカーを引用して「未来は既に始まっている」と述べていました。ある日突然未来が始まるのではなく、日常の中で未来が始まっているものであり、本日のパネルの参加者はその中にいることを如実に感じたのではないか、また、本日のパネリストはその観点でお話をいただいたと思うと感謝の意を表していました。「NGN」という言葉で名乗って最終日に開催された懇親会で乾杯をする後藤理事長しまったのは偉い、言葉をつければ議論の対象になり、こんなものという人もいれば、建設的に考える人もいる。すべての人に未来が見えているわけでもないが、我々の英知をあわせて、日本においてこういう検討が進むのは大変意味のあることだったと思うと述べ、午後の部は終了致しました。

写真:最終日に開催された懇談会で乾杯をする後藤理事長
最終日に開催された懇談会で乾杯をする後藤理事長

今回のディスカッションは、NGNという未だ現在進行形のアーキテクチャに対し、明確な何かの評価を与えたという性質のものではなかったですが、参加者に「今後のIP技術は、どうなって行くのか」という思いを喚起できたこと、考えるきっかけになったことに対して、大きな意味があったと考えています。

アンケートでは「もっと明日すぐに役立つ内容を望む」「経営層が聞くような内容」等のコメントもありましたが、IP Meetingは、すぐには役に立たないかもしれませんが、皆様にとっての【明日を考えるきっかけとなるもの】であるのが、IP MeetingのIPMeetingたるゆえんであり、そうあり続けたいというのが主催者の願いです。

IP Meetingの資料は、以下Webページでご覧いただけます。ご興味のある方は是非ご覧ください。

◆ 資料

http://www.nic.ad.jp/ja/materials/iw/2005/main/ipmeeting/

(JPNIC インターネット基盤企画部 根津智子)


※1 DNSQC:
正式名称「DNS運用健全化タスクフォース」不適切に設定されているDNSサーバの是正を目的に組織されたチーム
※2 JPOPM9のWebページ
http://www.venus.gr.jp/opf-jp/opm9/
※3 インターネットガバナンスフォーラム(IGF):
2015年12月のWSISチュニス会合の決議で発足したマルチステークホルダーの政策対話を行う国際連合管轄のフォーラム

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