メインコンテンツへジャンプする

JPNICはインターネットの円滑な運営を支えるための組織です

ロゴ:JPNIC

WHOIS 検索 サイト内検索 WHOISとは? JPNIC WHOIS Gateway
WHOIS検索 サイト内検索

ニュースレターNo.34/2006年11月発行

巻頭言:スタートレック考

JPNIC理事/西郷英敏

宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である。そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。これは人類初の試みとして5年間の調査旅行に飛び立った宇宙船U.S.S.エンタープライズ号の驚異に満ちた物語である。

というナレーションで始まるSFテレビドラマシリーズを、皆さんは覚えておられるでしょうか。1966年から1969年にテレビ放映された時の邦題は「宇宙大作戦」ですが、その後続編が作られるとともに、映画化もされましたので、その時のタイトル「スタートレック」と言ったほうが、馴染み深いかもしれません。

このシリーズの制作にジーン・ロッデンベリーがとりかかったのは、1964年の東京オリンピックの年で、ARPANet※1が稼動する5年前のことです。この時代に描いていた未来に、現実の世界がどのくらい近づいているのか、少し興味があったものですから、冒頭に引用してみたという次第です。

初めてという方のために、物語の設定だけお話ししますと、舞台は宇宙暦2264年~2269年(西暦と同義とすれば、約300年未来ということになります)、銀河系の探査、学術調査などを任務として旅立った、カーク船長以下のクルーが遭遇する冒険を描いたものです。既に惑星連邦が設立されて国家間の隔たりがなくなっていることを反映して、クルーにはアジア、アフリカ、ロシアなど各国から加わっているばかりでなく、副長兼科学士官であるミスター・スポックはヴァルカン星人という設定でした。このあたり、各国が協調して進めているインターネットと少し近い世界のような気がします。

さて、お話のほうは、毎回困難な事件に遭遇しつつも不屈の精神力とチームワークで乗り越え、希望的な未来感に包まれたエンディングを迎えるという作りになっており、極めて心躍らせるものがありました。中でも、魅力的な登場人物やエイリアンに加えて、随所で使われる未来の科学技術の数々、宇宙船、ワープ航法、スーパーコンピュータ、小型通話装置、瞬間物質転送装置、フェイザー銃……など、子供心には大変魅力的に映ったものです。

当時は、こんな機器やシステムが実現可能なのかどうか見当もつきませんでしたが、今日振り返ってみると、かなりのものが現実となっていることに気がつきます。例えば、小型通話装置です。お話の中では、宇宙船と惑星に降り立った乗組員との交信用として、小型の装置を使用していましたが、大きさ、形とも日常私達が利用している折畳式の携帯電話にそっくりです。

もう一例をあげましょう。副長のミスター・スポックは科学士官としてスーパーコンピュータを駆使して、巨大なデータベースからいとも簡単に、正確、適切な情報を引き出し、分析してみせていました。現実の世界でも、コンピュータ技術が格段のスピードで進んだことは言うまでもないのですが、船長の質問にたちどころに答えを出すデータベースも今思えばインターネット上に蓄積された膨大な知識、情報のようなものでしょう。しかも、科学士官ではない普通の人達でも自由に情報を引き出すことができる、という点においては、現実はもっと先を行っているのかもしれません。

やはり夢は叶うものであり、常に想像の翼を広げなければいけないという思いがしてきますが、このような夢を実現する基礎になっているものの一つがインターネットであるということは、何とも素晴らしいことではないでしょうか。

第34号ニュースレターの巻頭言を執筆することになり、既刊の各号を改めて読み返してみました。JPNIC文書ライブラリはもちろんのこと、最新動向、インターネット10分講座、インターネットトピックス、インターネット歴史の一幕等々、インターネットの歴史を刻んだ貴重なデータベースになっています。これからも、この中に新しい1ページが加えられるたびに、インターネットは進化し続けることでしょう。そして、未来の人達はこのデータベースを見て、これまでの歩みを確かめつつ、さらに前進させていくことができるものと思います。

私も、この6月からJPNICの一員に加えていただきました。皆さんとともに夢を膨らませ、その夢を実現するために、歴史の1ページとはいかなくても、1行あるいは1語でもお役に立てたら、と願う次第です。

さあ、夢を現実にするために、最新号の新たなページを開きましょう。


補足:今回は少しマニアックなテーマから入って恐縮でしたが、ホーキング博士をはじめとする著名人に支持されるとともに、スペースシャトルの1号機の名前がわざわざ「エンタープライズ」に変更されたほどのエピソードを持ち、インターネットの歴史と同世代のお話でもあることから、比較考とさせていただきました。物語の中身をご紹介できなくて残念ですが、文字通りのデータベースをご活用いただければ幸いです。

※1 ARPANet (Advanced Research Projects Agency Network)
ARPANetは、1969年にアメリカ国防総省高等研究計画局(ARPA)が開始した、コンピュータのネットワークです。この研究から生まれた「コンピュータ同士をTCP/IPで相互接続する」という形態は現在のインターネットの原型となりました。

執筆者近影 プロフィール●西郷 英敏 (さいごう ひでとし)
NTTコミュニケーションズ株式会社 ブロードバンドIP事業部長。1977年東京大学工学部機械工学科卒業、同年日本電信電話公社入社。デジタル交換、高速パケット交換などの技術開発を経て、96年よりNTTのインターネット接続サービス「OCN」の技術開発に従事。2004年6月より現職。JPNIC理事の他、学校インターネット教育推進協会理事も務める。著作に「パケット通信絵とき読本」、「やさしいOCN」、「やさしいIPネットワーク」(オーム社)等がある。

このページを評価してください

このWebページは役に立ちましたか?
よろしければ回答の理由をご記入ください

それ以外にも、ページの改良点等がございましたら自由にご記入ください。

回答が必要な場合は、お問い合わせ先をご利用ください。

ロゴ:JPNIC

Copyright© 1996-2024 Japan Network Information Center. All Rights Reserved.