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ニュースレターNo.41/2009年3月発行

第26回APNICオープンポリシーミーティングレポート

第26回APNICミーティングは2008年8月25日(月)~29日(金)、ニュージーランドのクライストチャーチで開催されました。

東京は残暑の続いている時期でしたが、南半球ということで季節は冬、ミーティング期間中の最高気温は摂氏10度以下、最低気温が3~4度でした。そのため、街を見渡してみると、木々の葉は既に落ちてしまっていましたが、街の中心にはエイボン川も流れており、新緑の季節に訪れたらまた随分と印象が違うのではないかと思いました。

全体概要

今回のミーティングの参加者は237名と、単独開催においては過去最多であったと聞いています。このうち、約4割の103名が初めての参加者であり、地元ニュージーランドからの参加者は57名と、全体の4分の1を占めていました。

カンファレンスの構成としては、従来の各種SIG、APOPS(The Asia Pacific OperatorS Forum)、トレーニング、BoFに加え、新しい試みとして「インターネットガバナンス」、「IPv4アドレスの在庫枯渇」、「IPv6への準備」等、インターネットコミュニティにとって重要な動向にテーマを絞ったプレナリーセッションも開催されました。

また、参加者がノートPCをIPv6対応に設定し、実際にIPv6での環境を体験してもらうことを目的とした“IPv6 at your fingertips”というBoF等、実践を中心としたセッションも見受けられました。

APNIC26プログラムについては、次のURLでご確認いただけます。また各セッションへのリンクからは、発表資料とトランスクリプト(質疑/議論の生ログ)も参照できます。

http://www.apnic.net/meetings/26/

また余談ですが、参加者へ配られたグッズには、APNICロゴ入りのフリースのジャンパーと折り畳み傘(この時期は雨が多いためのようです)が入っており、参加者への配慮が感じられました。

図:開催地

ミーティングでの決定事項

○NRO(The Number Resource Organization)NC(Number Council)の選挙

現職NCのHyun-Joon Kwon氏の任期満了に伴い、アジア太平洋地域を代表するNRO NCの選挙が行われました。

NRO NCは各RIR地域から3名の代表(2名は投票による選出、1名はAPNIC ECより指名)が選出され、実質的にはICANN ASO(Address Supporting Organization)のAddress Councilとして、グローバルIPアドレスポリシーの施行にあたり、ICANN理事会に勧告を行う役割を担っています。

今回は候補者12名と候補者数の多い選挙でしたが、Naresh Ajwani氏が新NCに選出されました。

○ポリシー提案の結果:
今回は10点の提案事項のうち、6点がミーティング参加者によるコンセンサスが得られる結果となりました。

次に記述する通り、今回は2011年と予測されているIPv4アドレス在庫の枯渇と、2010年1月から2バイトと区別なく配布される、4バイトAS番号への移行に向けた議論が中心です。提案は公募されているため、主催者側が計画したものではないにも関わらず、IPアドレス、AS番号いずれにおいても現行のバージョンから次にどう進んでいくのか、というテーマが自然と取り扱われる結果となったように思います。

なお、prop-061およびprop-065については、AS番号の分配方法ではなく表記のあり方等を定義することから、APNICではなくIETFで定義すべきものとしてその後APNICスタッフからIETFへ提案を行い、RFC化されました。

その他コンセンサスの得られた提案については、2008年11月にAPNICでの施行が正式に決定し、APNIC、JPNICともに随時実装していく予定です。

※下記一覧において、IPv4アドレスの在庫枯渇に向けた提案は[IPv4]と、4バイト番号に関する提案は[4バイトAS]と記載してあります。

※1 ASDOTとは、 32ビットのAS番号を16ビットで区切って10進数で表し、 区切りを「.」(DOT)で表現する表記方法のことです。
※2 ASPLAINとは、間に区切りを設けず、 32ビットのAS番号をそのまま10進数に置き換えて表現する表記方法のことです。
コンセンサスの得られた提案
prop-055 IANAからRIRへの最後のIPv4アドレスの分配[IPv4]
(Global policy for the allocation of the remaining IPv4 address space)
prop-061 文書記述用のAS番号の定義[4バイトAS]
(Autonomous System Numbers (ASN) for documentation purposes)
その後IETFへの提案を経て、RFC5398
prop-062 APNIC在庫の最後の/8の分配方法{IPv4]
(Use of final /8)
prop-064 4バイトAS番号割り当てポリシーの変更[4バイトAS]
(Change to assignment policy for AS Numbers)
[4バイトAS]
prop-065 4バイトAS番号の表記の変更(ASDOT※1→ASPLAIN※2)[4バイトAS]
(Format for delegation and recording of 4-byte AS numbers)
その後IETFへの提案を経て、RFC5396
prop-066 歴史的経緯を持つPIアドレスの効率的な利用{IPv4]
(Ensuring efficient use of historical IPv4 resources)
継続議論となった提案
prop-063 IPv4割り振り承認期間の12ヶ月から6ヶ月への短縮[IPv4]
(Reducing timeframe of IPv4 allocations from twelve to six months)
prop-050 IPv4アドレスの移転[IPv4]
(IPv4 resource transfers)
prop-060 新規NIR設立基準の変更
(Change in the criteria for the recognition of NIRs in the APNIC region)
(提案者の意志により)取り下げとなった提案
prop-059 IRRデータ正確性向上のためのRPKIの利用
(Using the Resource Public Key Infrastructure to construct validated IRR data)

提案の原文と和訳は、次のURLからご覧いただくことが可能です。
 http://venus.gr.jp/opf-jp/apnic/apnic26.html

今回の提案事項の主な結果について

今回の提案事項のうち、JPNICとして特に注目していたものは、prop-055、prop-062、そしてprop-050の3点です。

prop-055はIANAの、そしてprop-062はAPNICの、未割り振りIPv4アドレスを最後にどう分配するのか定義したものです。そしてprop-050は、「利用していないIPアドレスはレジストリへ返却する」というこれまでのIPアドレス管理のあり方から、LIR間でのIPv4アドレスの移転を認めようとする提案です。

最後のIPv4アドレスの分配方法の提案
「最後のIPv4アドレスの分配方法の提案」-JPNIC IP事業部奥谷泉の「APNIC26アップデート」資料より抜粋
prop-055: IANAからRIRへの最後のIPv4アドレスの分配
prop-055は、 在庫枯渇期における混乱を避けるためにRIR間で最後のIPv4アドレスをどう分け合うのか、 あらかじめ定義しておくことが重要であると考え、 JPNICがLACNIC/AfriNIC地域の関係者と一緒に提案を行ってきているものです。 過去3回のAPNICミーティングで提案を続け、 今回コンセンサスに至りました。 本提案は、 自らの地域のRIRが分配を受けるアドレスサイズを定義することから、 LIRをはじめとするISPにとって間接的な影響はありますが、 直接的な影響はありません。
prop-062: APNIC在庫の最後の/8の分配方法
prop-062は、APNICがLIR、 すなわち国内でいうところのIPアドレス管理指定事業者へ、 最後の/8の在庫をどう分配するのか定義した提案です。 事業者の皆さんにとっての直接的な影響が大きいことから、 JPNICとしても注目していました。 今回コンセンサスが得られたことにより、 APNICにおける最後の/8の在庫から分配されるアドレスは、 1組織(LIR)一律/22ということになりました。 また、予期せぬ事態に備えて、 当該/8空間から/16がリザーブされます。
prop-050: IPv4アドレスの移転
prop-050は、 現在のアドレスポリシーで禁止されているIPv4アドレスの移転を、 IPv4アドレス在庫枯渇後の状況に備えて認めるとする提案です。 提案者であるAPNICのGeoff Huston氏は、 IPv4アドレス在庫枯渇後、 RIRから新たなIPv4アドレスの供給を受けられなくなったISPは、 IPv4ベースのサービスの需要が継続すれば、 それを埋めるために分配済みのIPv4アドレスを取り引きするようになると仮定しています。 そして、そのような事態となった場合、 データベース登録上の分配先と実際の利用者に乖離が生じ、 APNICデータベースの信頼性低下、 ひいてはアドレス管理に混乱をきたすことを避けるために、 公式にAPNICで移転を認めることを目的としています。

また、提案の目的としてあげられてはいませんが、 他の組織へアドレスを移転する経済的なインセンティブが提供されることにより、 分配済みIPアドレスの流動化という効果もあると考えられます。

APNIC26では提案の趣旨に賛同し、 一刻も早く本提案を施行するべきとの意見も表明された一方、 移転条件の定義や規制に対するAPNICの関わり方を検討する必要があるとの意見も表明され、 継続議論となりました。

その後、本提案について国内では、 2008年11月に開催した第15回JPNICオープンポリシーミーティングにて、 提案者のGeoff Huston氏も交えて議論を行いました。

これまでのアドレス管理方法からの大きな変更となることから、 2009年2月に開催される次回のAPNICミーティングに向けて、 ip-usersメーリングリストを含め、 できるだけ多くの議論の場を引き続き設けた上で国内のポリシーフォーラム、 そしてJPNICとしての姿勢を固めていく予定です。

APNIC26での結論に伴う影響

APNIC26でコンセンサスが得られた提案に伴い、JPNICへの申請者/ISP等が受ける主な影響は次の通りです。

prop-062:APNIC在庫の最後の/8の分配方法
APNIC在庫の最後の/8からIPアドレス管理指定事業者が分配を受けられるサイズは、ネットワークの規模に関わらず、1事業者につき一律/22(1,024ホストアドレス)となります。

prop-064:4バイトAS番号割り当てポリシーの変更
2009年7月~2010年1月の間にAS番号を申請し、2バイトのAS番号の割り当てを希望する場合は、4バイトAS番号では対応できない技術的な理由を提示することが求められます。

prop-065:4バイトAS番号の表記の変更(ASDOT→ASPLAIN)
資源管理においては、APNICも含めた全RIRおよびJPNICによる4バイトAS番号の表記は、ASPLAIN方式に統一されます。

prop-066:歴史的経緯を持つPIアドレスの効率的な利用
歴史的経緯を持つPIアドレスの割り当てを受けているIPアドレス管理指定事業者は、IPv4アドレスの追加割り振り申請時に、当該アドレスも含めて、管理下のIPv4アドレスを適切に利用していることを示すことが求められます。

また、「prop-061:文書記述用のAS番号の定義」はIETFへの再提案を経てRFC化されたことにより、文書上、例として記述できるAS番号空間が次の通り定義されました。

2バイトAS:64496 - 64511
4バイトAS:65536 - 65551

次回のミーティング

次回のAPNICミーティングは、APRICOT2009カンファレンスの一部として、2009年2月にフィリピンのマニラで開催される予定です。

□APRICOT2009
http://www.apricot2009.net/

(JPNIC IP事業部 奥谷泉)

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