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ニュースレターNo.48/2011年7月発行

第30回ICANN報告会レポート(サンフランシスコ会議報告)

2011年3月14日(月)から18日(金)にかけて、米国サンフランシスコで第40回ICANN会議が開催され、それを受けた報告会を2011年5月10日(火)に日本教育会館(東京都千代田区)にて、JPNICとIAjapanの共催で開催しました。サンフランシスコ会議の概要についても、報告会のレポートを中心にご報告します。

懐かしい顔ぶれ

今回の会議は、ICANNの本拠地である米国で開催されたこともあり、ICANNに関わりのある懐かしい顔ぶれが揃いました。

ICANNは、Bill Clinton氏が第42代米国大統領として2期目在任中の1998年に設立されました。その縁で、3月16日(水)にはBill Clinton氏本人による演説が行われました。大会議場に整然と並べられた席は聴衆で埋まり、ICANNの発表によれば約1,300人が参加していたようです。

当時の政権において政策担当の上級顧問を務め、ICANN設立の立役者とも言えるIra Magaziner氏は、3月14日(月)に行われた開会式にて冒頭の挨拶を行いました。続いて、2000年11月より7年間ICANN理事会の議長を務めたVinton Cerf氏からも、挨拶がありました。

写真:サンフランシスコ
今回の会議はサンフランシスコで開催されました

新gTLDプログラムについて

ここ数年続いていることではありますが、今回の会議でも、一番注目されたのは新gTLDに関する動向であったように思います。

詳細については報告会レポートの部分で触れますが、新gTLD導入については、カルタヘナ会議を終えてもなお、GACと理事会とのさらなる議論が必要な状況でした。そのため、今回のサンフランシスコ会議までの間に、問題解決に向けた両者の協議がブリュッセルで行われ、また本会議中においても2回の公開協議が行われました。この2回の協議と前述のClinton氏の演説を組み込むために、ICANNサンフランシスコ会議のスケジュール調整は難航したようで、直前まで予定が確定せず、支持組織等の会議時間が短縮されるといった影響も出ていました。

GACと理事会は、かなりのエネルギーと時間を割いて新gTLDプログラムについて検討や協議を行っていたように思いますが、結論から言うと、本会議でも両者が合意に至ることはできませんでした。

従って、最終日の理事会会議では、新gTLD申請者ガイドブック完成に向けたプロセスとしてスケジュール案を採択し、2011年4月15日を目処にGACの見解に対する理事会の最終回答と申請者ガイドブックへの修正内容を提出することを決議しました。また、理事会としては、次回のICANNシンガポール会議初日の2011年6月20日(月)に臨時理事会を開催して、新gTLD申請者ガイドブック案を含めた新gTLD実装計画案の検討を行う意向です。理事会チェアのPeter Dengate Thrush氏からは、シンガポールでは新gTLDプログラムの始動を記念するパーティーを行いたいとのコメントがありました。ICANN理事会全体としても、次回会議では新gTLD申請者ガイドブックを完成させて、さらに前に進めたいと強く思っている様子が感じ取れました。

写真:理事会の様子
理事会の様子

ICM Registryによる.XXXの申請の承認

ICM Registry社(以下、ICM社)による.XXXの申請は、アダルトコンテンツ向けのスポンサ付きgTLD(sTLD)として申請されたという性質上、常に批判が寄せられてきました。

.XXXの申請については、新gTLDプログラムの件と同様にGACと理事会に見解の相違があることから、ICANN付属定款にのっとりGACとの協議を経た上で、ICM社とのレジストリ契約締結をめざす、ということが前回のICANNカルタヘナ会議で決議されました。

3月17日(木)に行われたGACとの協議でも、GACからは引き続き.XXXの申請に反対する旨が明言されました。同日に行われたパブリッフォーラムでも、話題が.XXXに移ると直ちに10人程がマイクに並び、最終的には20人近くが.XXXの申請に対して異議を唱えていました。

GACからもコミュニティからも最後まで反発が示され、理事会内でも意見が割れて、賛成9票、反対3票、棄権4票という採決の結果となり満場一致には至りませんでしたが、結果的には理事会はICM社の申請を承認し、契約締結手続きを進めることを認めました。

2007年3月のICANNリスボン会議で.XXXの申請が却下された際には、コンテンツ面を考慮した上での判断が行われましたが、今回は、応募基準を満たした適切な申請であるということを承認の理由としており、プロセス面を考慮した上で承認に持っていったという印象があります。賛成を表明した理事からも、「申請をNOとしたら永遠にこのプロセスが続いてしまう」、「何が正しいかは分からないが、前に進めるためにリスクを取って賛成する」といった内容のコメントが聞かれ、難しい判断に迫られた様子が感じ取れました。


以降、当日のプログラムに沿って、報告会の内容をご紹介します。

新gTLDにおける政府諮問委員会(GAC)とICANN理事会との協議

本会議のハイライトは、新gTLD申請開始の前に解決しなければならない課題についての、GACとICANN理事会(以下、理事会)との協議であったと言えると思います。そのため、各報告において話者それぞれの立場から、本件に対する報告が行われました。

本件に関しては、2010年11月にICANNより「申請者ガイドブック最終案」が公開された後、理事会とGAC間にこれらの課題についての意見の隔たりが存在するため、それを解決すべく理事会とGAC間での協議が以下の経緯で行われました。これはICANN付属定款のARTICLE XI Section 2.1.j.※1にて、GACから提出された勧告と理事会の見解との間に相違がある場合、お互いに納得のいく解決策を探るための協議を行うようにとされているためです。

(1) ICANNカルタヘナ会議(2010年12月)
GACより新gTLDの導入に当たって未解決の課題があることなどを理事会に助言

(2) GACスコアカード公開
2011年2月にGACが新gTLDの懸念点をまとめた文書(GACスコアカード)を作成し、理事会に送付するとともに公開

(3) 理事会とGACの中間会合(於ブリュッセル、2011年2月28日~3月2日)
新gTLDに関する残存課題について、理事会とGACの意見の相違点を理解し、取り得る解決策等を議論※2

(4) ICANNシリコンバレー会議
ICANN付属定款に基づいた協議が公開で2回開催されたものの合意に至らず

これらを受け、最終日の理事会では新gTLD申請者ガイドブック完成に向けた今後のスケジュール※3が承認されるに留まりました。これによると、5月20日に理事会とGAC間で電話による協議、次回シンガポール会議の初日(6月20日)に臨時理事会を開催して新gTLD実装計画案の検討を行う予定となっています。

総務省の中沢淳一氏による、「ICANNサンフランシスコ会合政府諮問委員会(GAC)報告」、JPNIC理事の丸山直昌による「ICANNシリコンバレー会議概要報告」、「ICANN At-Large諮問委員会(ALAC)議長からのメッセージ」、およびJPNICの高山由香利による、「ICANNサンフランシスコ会議における新gTLDに関する議論」がこの新gTLDにおける理事会とGAC間の協議について言及しました。

写真:JPNICの高山
JPNICの高山からは、gTLDに関する議論の動向を報告しました

ICANNを構成する各支持組織・諮問委員会・部会などについての報告

○ ccNSO関連報告
株式会社日本レジストリサービス(JPRS)の堀田博文氏より、ccNSOについてご報告いただきました。報告では、ccNSOメンバー会合で検討された主な議題として、ccNSO Council Workshop、IDN ccTLDの動向、およびDNSSECの導入状況についてお話しいただきました。IDN ccTLDの動向については、ファストトラックおよび恒久的なPDPの両方を含む形でお話しいただきました。

○ ICANNアドレス支持組織(ASO)報告
日本電信電話株式会社の藤崎智宏氏からは、アドレス支持組織(ASO)※4において、主にIPv4アドレス在庫枯渇後のグローバルポリシーに関する議論状況についてご報告いただきました。

写真:藤崎智宏氏
ASOの報告を日本電信電話株式会社の藤崎智宏氏から行っていただきました

○ ICANN政府諮問委員会(GAC)報告
中沢淳一氏によるGAC報告では、上記新gTLDの他に、.XXX gTLDについても理事会とGAC間の主張に隔たりがあったため両者で協議が行われ、相互に容認可能な解決策に至らなかったものの、ICANN付属定款に示された通り、GACの勧告に従わない理由を示した上で最終的にシリコンバレー会議での理事会で承認されたことについても言及されました。

○ ICANN At-Large諮問委員会(ALAC)議長からのメッセージ
前回に引き続き、ICANN会議の場で録画を行った、ALAC議長からのメッセージを上映しました。議長のOlivier Crepin-Leblond氏の出身母体となる地域別At-Large組織は欧州(EURALO)であることもあり、欧州の事情についてお話しいただくとともに、前述の新gTLDに関する理事会とGACとの協議、公序良俗に反する文字列、知的財産権および開発途上国などからの申請者支援などのポリシー課題、ALACの課題などについてお話しいただきました。

○ 新gTLD申請者支援合同作業部会(JAS WG)報告
新gTLDにおける、開発途上国などからの申請者支援については、そのために設立されたワーキンググループ(JAS WG)で活躍されているRafik Dammak氏より、同WGについてご報告いただきました。

○ レジストラ部会報告
最後に、株式会社アーバンブレインのJacob Williams氏より、ICANN GNSOの商用ステークホルダーグループを構成するレジストラ部会に関して、主にWHOISにおけるポリシー、ICANNレジストラ認定契約(RAA)への修正提案、新gTLDの導入についてご報告いただきました。

○ 閉会挨拶
締めくくりとなる、共催団体であるIAjapan顧問の高橋徹氏からの挨拶の中では、RALOの重要性についてなどが言及されました。


サンフランシスコで行われた理事会会議の議題は14点あり、新gTLDプログラムの件は3番目、.XXXの件は5番目でした。これら二つの議題は、これまでも多くの関心を集めてきましたが、やはり今回も同様で、 .XXXの件が済むと多くの議題が残っているにも関わらず、かなりの人数が会場から立ち去りました。相変わらず、新gTLDプログラムと.XXXに対して、多くの関心が注がれていたことを物語っていたように思います。

なお、ICANN報告会の発表資料と動画は、JPNIC Webサイトにて公開しております。ぜひそちらもご覧ください。

□ 第29回ICANN報告会(スター貸会議室 神田・大手町)
http://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20110127-ICANN/
□ 第30回ICANN報告会(日本教育会館)
http://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20110510-ICANN/

次回の第41回ICANN会議は、シンガポールにて、2011年6月19日(日)から24日(金)の日程で開催される予定です。

(JPNIC インターネット推進部 高山由香利・山崎信)


※1 “ICANN | Bylaws [ARTICLE XI: ADVISORY COMMITTEES]”
http://www.icann.org/en/general/bylaws.htm#XI
※2 “ICANN BOARD-GAC Consultation in Brussels 28 February and 1 March 2011”
http://meetings.icann.org/board-gac-spring11
※3 Draft - Final AGB Timelines Provide for final decision in Singapore
http://www.icann.org/en/minutes/draft-timeline-new-gtlds-18mar11-en.pdf
※4 アドレス支持組織(ASO;Address Supporting Organization)
ICANNのSOの一つであり、IPアドレスというインターネット資源をいかに運用するか議論し、ICANN理事会に勧告を行う役割を負っています。

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