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ニュースレターNo.53/2013年3月発行

ICANNトロント会議報告および第35回ICANN報告会開催報告

2012年10月14日(日)より18日(木)まで、カナダ・オンタリオ州の州都トロントにて第45回ICANN会議が開催され、その会議の報告会を2012年11月20日(火)、東京の秋葉原にある富士ソフトアキバプラザにて、JPNICと財団法人インターネット協会(IAjapan)の共催で、第35回ICANN報告会として開催しました。本稿では、トロント会議の概要と、報告会の模様をレポートします。

ICANNトロント会議報告

トロントはオンタリオ湖岸に位置するカナダ随一の大都市で、高層ビルが多数建ち並んでいますが、会議場は湖岸にあり、隣にある公園では紅葉し始めた木々も見られました。会期中の気候は冬の東京並みに寒く、日の出後も鉛色一色の空という印象でした。参加者数は約1,400名を数え、広い会議場にはいくつも部屋がありましたが、いずれもかなりの参加者で賑わっていました。

新事務総長による新しいICANN体制

今回のICANN会議は、2012年7月1日付で退任した前任のRod Beckstrom氏に代わり、新しい事務総長としてFadi Chehadé氏が着任した直後ということもあり、注目を集めていました。Chehadé氏は、レバノン、エジプト、米国という三つの国籍を持ち、複数の言語に堪能で、前職はクラウドベースのソフトウェア企業でCEOを務めていたとのことです。Chehadé氏は予定より2週間早い、9月中旬に着任しました。着任後上級幹部を中心に体制の変更があり、ステークホルダー対応および政府対応の上級職員がそれぞれ加わりました。新体制で何を重視しているのかがうかがえます。中でも、グローバルな関与(global engagement)の強化をうたっています。オープニングセレモニー直後の事務総長によるセッションでは、始まるやいなや上着を脱いで「さあ、早速仕事にかかろう」と気合い十分のようで、ICANNの新たな組織運営体制について、熱心に説明しました。

写真:Fadi Chehadé氏
●新事務総長のFadi Chehadé氏

第45回ICANN会議は一言で言って、新体制への期待を持たせる内容でした。今まで必ずしも非常に良好とは言い難かった、政府との関係、およびグローバルな関与などについて、進歩があるのではないかという印象を筆者は持ちました。

新gTLD関連

1.優先順位付けのための抽選(Prioritization Drawing)

プラハ会議の理事会で中止が決定されたDigital Archeryの代わりに申請の優先順位付け※1を行う手段として、12月(12月4日(火)~15日(土)のいずれか1日)に米国ロサンゼルスで抽選を行う予定であることが発表されました。抽選は紙を使った手作業となり、公平を期すため第三者が監督することになっています。会場へ行くことが難しい申請者のために、代理人を立てることが可能となっています。また、代理人が複数の申請者の代理をすることや、ICANNが申請者に代理人を紹介することもできます。

そもそも、単純な抽選ではなく、Digital Archeryという特殊なしくみを導入しようとした理由は、カリフォルニア州の抽選に関する法律※2に触れないようにしようとしたためです。しかし、その法律の下でも、非営利団体が公益目的のための抽選を実施することはできる例外※3があるため、今回の新たな方法が採用されたと考えられます。

なお、優先順位付けの際、IDN文字列は最優先されることになっています。抽選について説明するために開催されたセッション※4では、「IDN gTLDではなくコミュニティベースgTLDを優先すべきではないか」という意見を述べる参加者も見受けられました。

2.新gTLD(セカンドレベル)における、国際機関の名称保護

2012年10月1日(月)に国際機関の名称保護に関する、GNSO最終課題報告書が提出されました。内容は、国際オリンピック委員会(IOC)および赤十字(RC)/赤新月(RC)を含む国際組織(政府間組織(IGO)および非政府組織(NGO)など)について、セカンドレベルでの名称保護を行う、というものです。まず新gTLDを対象とするものの、対象を既存gTLDにも広げるよう検討することなどが勧告されています。本件のポリシー策定プロセス(PDP)を開始することについて、GNSO評議会会合にて全会一致で可決されました※5

3.URS(Uniform Rapid Suspension)

URS※6は新gTLDの商標保護手段の一つで、商標権を侵害するドメイン名に対して、権利者がTLDの委任開始後にドメイン名を差し止めるための手段です。従来のUDRP(統一ドメイン名紛争処理方針)に比べて、より迅速な処理が可能であることが特長です。現在の要求仕様では、予定している料金(1申請当たりUSD500程度に抑えることになっている)でのサービスが難しいとして、サービスプロバイダー候補組織がサービスの簡素化提案を行いました※7

4.Trademark Clearinghouse

Trademark Clearinghouse※8は、新gTLDの商標保護手段の一つで、実際に商標権を侵害するドメイン名が登録されてしまう前に対応するためのしくみです。権利者が自身の保護すべき文字列を、すべての新gTLDの申請において参照されるデータベースに事前に登録しておくことにより、その文字列が保護されるしくみです。実装の進捗状況を共有するセッションが開催され、実装時の技術的な要求仕様、優先登録時の適格性をどのように検証するか、および文字列の照合規則について議論されました※9。現在の予定では、2013年第1四半期~第2四半期頃の完成予定となっています。既に開発には入っているようで、プレゼンテーションには開発中の画面なども含まれていました。

5.新gTLD申請者グループ(NTAG; New TLD Applicant Group)

GNSOのレジストリ部会では、申請が認められれば新たにレジストリとなる、新gTLD申請者のグループが設立され、NTAG(New TLD Applicant Group)と名付けられました※10。トロント会議ではこのNTAGの会合が開催され、約80名の会員を擁し、900の新gTLD文字列を同グループがカバーしていることが発表されました。

会合では新gTLDプログラムに対する意見を述べるため、フロアマイクに長い行列ができるなど、活発な議論となりました。

写真:ICANN理事会の様子
●ICANN理事会の様子

WHOIS関連

プラハ会議後トロント会議に先立ち、レジストラ認定契約(RAA)の契約内容改訂について6回もの交渉会議が開かれました。交渉の対象となる契約内容の多くはWHOISが密接に関連し、登録者保護およびDNSの安定性を高めるための項目となっています。改訂に際しては、政府諮問委員会(GAC)および法執行機関(警察など)から勧告が提出されていました。

トロント会議では、RAA改訂の最新状況を共有するセッションが開かれ、主に法執行機関からの、RAA契約内容に対する以下の課題への勧告について説明がありました※11。これらの勧告はいずれもWHOISに関するものです。

  • 不正行為時の連絡先
  • 登録データの検証
  • 登録データの保持期間
  • リセラおよびプライバシー/プロキシサービスプロバイダーの義務

これらの法執行機関からの勧告については、セッション中最も重点が置かれてコミュニティからの意見収集が行われました。

他にWHOIS全般に関する状況報告セッションがあり、WHOIS代替プロトコルの規格化に向けた、IETF WEIRDS(Web Extensible Internet Registration Data Service)WGの説明、SSAC(セキュリティと安定性に関する諮問委員会)によるドメイン名WHOISの用語と構造に関する勧告(SAC 051)などが報告されました※12

その他

GACハイレベル会合

今回初めて、政府諮問委員会(GAC)のハイレベル会合が10月15日(月)ほぼ丸1日を使って開催されました※13。これはATRT(Accountability and Transparency Review Team)の勧告である、

GACプロセスへの各国政府の支持と関与を増大させるため、ICANN理事会はGACとともに公共政策に関する課題について政府高官への参加を求めることにより、プロセスの構築を検討する※14

に基づくものです。プログラムではICANNの各組織が順を追って取り上げられ、最後に理事会との対話という順序で行われました。その後開催されたレセプションは、出席した政府関係者とICANN理事やSO(支持組織)、AC(諮問委員会)の代表者が一堂に会し、盛んな意見交換がなされたようです。具体的にどのようなメンバが会合に参加したのかについては、後半のICANN会議報告にて総務省の中西氏が紹介されています。

第35回ICANN報告会

ICANNトロント会議を受けた報告会を、2012年11月20日(火)にIAjapanとの共催で開催しました。この時期恒例のInternet Weekとの共催イベントとして、東京の富士ソフトアキバプラザでの開催です。合計31名の方にご参加いただきました。

プログラム

(講師敬称略)

  1. ICANNトロント会議概要報告
    社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター
    前村 昌紀
  2. ICANN国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告
    株式会社日本レジストリサービス
    堀田 博文
  3. ICANN政府諮問委員会(GAC)報告
    総務省総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課
    中西 悦子
  4. ICANN GNSOレジストラ部会の最新動向
    株式会社インターリンク
    Jacob Williams
  5. ICANN GNSO知的財産部会の最新動向
    株式会社ブライツコンサルティング
    村上 嘉隆
  6. 新gTLDプログラムにおける課題
    社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター
    山崎 信
写真:ICANN報告会
●ICANN報告会の様子

新体制下での初めてのICANN会議

JPNICの前村昌紀によるICANNトロント会議の概要報告では、前半のICANNトロント会議報告の部分でも触れましたが、Chehade氏による2日目の基調講演後に開催されたセッションにおいて説明がなされた、新体制およびICANNの課題などについて取り上げました。

新gTLD関連

新gTLD関連のトピックのうち、前村から報告した次のものについては、前半のICANNトロント会議報告部分で詳しく触れていますので、ここでは割愛します。

  • 申請数が増えたことにより申請の優先順位付けのための抽選を2012年12月に実施すること
  • 国際オリンピック委員会や赤十字/赤新月関連の第2レベルドメイン名の保護
  • 新gTLD申請者グループ(NTAG;New TLD Applicant Group)の会合開催

上記以外の新gTLD関連の話題として、総務省の中西悦子氏からは、新gTLDで申請されている文字列に対する、GAC早期警告(Early Warning)については、GACからICANN理事会に対して懸念点(消費者保護、地名の保護、一般名詞の排他的利用、防衛登録の必要性が発生するものなど)が示されたとの報告が行われました。それの中には、日本からの申請に対する早期警告はないとのことでした。一方、他国からの申請文字列が日本の地名に該当する例(.date-北海道伊達市/福島県伊達市などに相当)があるため、早期警告がなされるであろうことの説明がありました。早期警告の公開日は本報告会開催日と同日の11月20日とアナウンスされていましたが、時差の関係でGAC早期警告が公開されたのはICANN報告会後(日本時間で同日夜より翌朝にかけて)となりました。他に政府間組織(IGO)について、トップレベルおよびセカンドレベルにおける当該名称の保護を図ること、次の申請ラウンド以降も同様の保護措置を図ることが助言されたとのことです。

次に、株式会社ブライツコンサルティングの村上嘉隆氏からは、主に権利保護機構(Rights Protection Mechanism;RPM)についてのお話となり、商標を登録するデータベースである、Trademark Clearninghouseおよびそれに付随するTrademark(TM) Claims、さらにはURS(Uniform Rapid Suspension)についてご説明いただきました。知的財産部会(IPC)およびビジネス部会(BC)よりICANNに対して、優先登録、TM Claimsおよび関連するRPMについての、8点からなる要求がICANNあてになされたことに対し、レジストラステークホルダーグループ(RrSG)、NTAG、非商用ステークホルダーグループ(NCSG)が「ポリシー変更に相当する変更であるのに、ポリシー策定プロセスに従った手続きが進められていない」などの理由で反対している旨説明がありました。さらに、報告会の直前の週末にICANNで行われた電話会議についての補足があり、ICANNより提出された両者の溝を埋める折衷案について説明がありました。

その後筆者より、新gTLD申請者ガイドブックに沿って主な各項目の進捗状況を報告しました。その中でも、RPMを中心に実装が固まっていないもの(Trademark Clearinghouse、URS)が残っていることが、最大の懸念点として挙げられます。

各支持組織(SO)/諮問委員会(AC)関連

株式会社日本レジストリサービスの堀田博文氏による、ICANN国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告では、IDN ccTLDの動向、中でも現行のファストトラックではない、恒久的ルール作りにおいて議論が収束し、文書化の段階に進んだこと、IDNを世界でユニバーサルに使用するための議論が、ccNSOとGNSOとの共同検討グループにてなされたことなどが報告されました。

中西氏より行われたGAC報告のうち、先ほど紹介した新gTLD以外ではトロント会議で初めて開催された、GACハイレベル会合についてお話ししていただきました。同会合には、米国電気通信情報庁(NTIA)長官のLawrence E. Strickling氏をはじめとする50ヵ国3オブザーバが参加し、日本からは総務省顧問の山川鉄郎氏が参加されました。会議では、多くの参加国がマルチステークホルダーモデルの重要性を認識していることが確認されたとのことです。

Jacob Williams氏による、レジストラ部会の最新動向では、主にレジストラ認定契約(RAA)改定についての進捗状況、レジストラのコンプライアンス(ICANNとの契約順守)について、および認定解除されたレジストラからの移転手順(DARTP)の改善案についてご報告いただきました。

これまでに開催したICANN報告会の発表資料と動画は、JPNIC Webサイトにて公開しています。

http://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/

次回の第46回ICANN会議は、2013年4月7日(日)~11日(木)にかけて、中国の首都北京にて、CNNIC(China Internet Network Information Center)のホストにより開催されます。

写真:山崎信
●筆者からは新gTLDプログラムに残る課題について説明しました

(JPNICインターネット推進部 山崎信)

※1 申請の優先順位付けが必要な理由について
以下のレポートのP.4「4.申請処理の進め方」をご参照ください。 ドメイン名を中心としたインターネットポリシーレポート10月号
http://www.nic.ad.jp/ja/in-policy/policy-report-201210.pdf
※2 California Penal Code section 319-329
http://www.leginfo.ca.gov/cgi-bin/displaycode?section=pen&group=00001-01000&file=319-329
※3 CALIFORNIA CONSTITUTION ARTICLE 4 SEC. 19.(f)
http://www.leginfo.ca.gov/.const/.article_4
※4 Prioritization Drawing
http://toronto45.icann.org/node/34401
※5 GNSO評議会決議 20121017-2
http://gnso.icann.org/en/resolutions#201210
※6 URS(Uniform Rapid Suspension)の詳細なしくみ
以下のレポートのP.5「5.2 Uniform Rapid Suspension」をご参照ください。
ドメイン名を中心としたインターネットポリシーレポート10月号
http://www.nic.ad.jp/ja/in-policy/policy-report-201210.pdf
※7 Uniform Rapid Suspension(URS)
http://toronto45.icann.org/node/34325
※8 Trademark Clearinghouseの詳細なしくみ
以下のレポートのP.5「5.1 Trademark Clearinghouse」をご参照ください。
ドメイン名を中心としたインターネットポリシーレポート10月号
http://www.nic.ad.jp/ja/in-policy/policy-report-201210.pdf
※9 Trademark Clearinghouse Implementation
http://toronto45.icann.org/node/34395
※10 New TLD Applicant Group(NTAG)
http://toronto45.icann.org/node/34193
※11 Update on the RAA Negotiations
http://toronto45.icann.org/node/34197
※12 WHOIS Update
http://toronto45.icann.org/node/34409
※13 GAC High Level Meeting
http://toronto45.icann.org/gac-hlm
※14 ATRT Draft Report( Recommendation 16.)
http://www.icann.org/en/about/aoc-review/atrt/proposedrecommendations-20oct10-en.pdf

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