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ニュースレターNo.55/2013年11月発行

青年期の終わり:インターネット成人宣言

JPNIC理事 三膳 孝通

インターネットは二十歳になった。人間で言えば成人になった。モラトリアムを終え、社会的責任を果たすべき時が来た。

もちろんインターネット自身はもっと以前からあったし、インターネットが社会的責任を全く担ってこなかったというわけでもない。ただ日本でインターネットが商用化されてから20年を経て、なんというか「まぁインターネットだから」というようなことでなんとなく諸々猶予されていたような時期を終え、重要な情報インフラとしての社会的責任を果たしていくべき時期が来たなと切実に感じる。これはすなわちインターネットがやっと成人として認められたということではないかと思う。

既にインターネットは情報インフラとして確実に定着した。以前であれば「インターネットを繋いで、ブラウザを立ち上げて……」と、まず目的のアプリを使う前にインターネットを意識する段階があった。今ではパソコンやスマホはインターネットが繋がっていて当たり前であり、繋がっていることを意識せずに利用している。

インフラの定着・浸透の目安として、ある目的を達成するために行う一連の行為において、どの程度そのインフラを利用することを意識しないか、ということがあると思う。例えば、テレビや冷蔵庫を使う時に「電気をこれから使う」という意識をせずに使っているエネルギーインフラである電気、自動車やバス等に乗る時に「道路を使う」という意識をせずに使っている交通インフラである道路等、そのインフラが当然であるため、意識せずに透明化していく。インターネットも既にかなり透明化した。当たり前の情報インフラとなった。

今後のインターネットの社会的責任の果たし方について、二つの方向があると考える。

一つは、インフラとしての責任のあり方。今インターネットを取り巻く議論の一つにインターネットの機能強化の話がある。インフラとしてのあり方としては、ある特定の利用目的のための機能強化ではなく、今考えられている以外の多様な利用目的も受け止められる、強靭、しなやかな、柔軟性を備えたインフラとしての方向が目指すべきものに思う。

もう一つは、インターネットの普及によって起きるさまざまな社会的変化に対しての方向性を示すこと。セキュリティ、プライバシー、著作権、コミュニティ、ガバナンス等、いろいろな分野でインターネットによる変化が起きている。その変化の大きな原因の一つは、前堤としていた物理的制約が大きく変化したことだろう。例えば、数に比例した複製コスト、距離に比例した伝達コスト等が、情報のデジタル化とネットワークのグローバル展開によってほぼゼロになった。前提条件変化による概念の再整理が必要になった今こそ、インターネットとして何らかの方向性を、インターネットらしく実際に実装して提示していくことが重要だと考えている。

いずれにせよ、インターネットはまだまだ成人の仲間入りをしたばかり。情報通信技術としては、通信や放送といった成熟した諸先輩方と同様な責任はまだ全然果たせていないだろう。しかし、然るべき責任を果たしていくべく、責任ある成人として成長していくことが重要と思う。諸先輩方ももう子ども扱いせず対等な大人同士としてその存在を認めていただき、ともに情報通信社会を発展させていくよう協力いただけたらと願う。

技術の発見はなかったことにはできない。エレクトロニクス、メカトロニクス、原子力、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、そして、情報通信技術。また技術自身に正悪を求めるのも違う。技術は変化を生み、変化は良い方向も悪い方向も必ず併せ持つ。またその時代背景によってその意味も変化する。インターネットに関わった人間として、この情報通信技術が、いろいろと迷惑をかけながらかもしれないけれど、一人前に社会的責任を果たしていけるよう成長するのを、微力ながらでも頑張っていきたい。

これからがスタートだ。


執筆者近影 プロフィール●三膳 孝通(みよし たかみち)
株式会社インターネットイニシアティブ 常務取締役 技術戦略担当。東京工業大学大学院時代にJUNETに触れ、インターネットの運用等にも関わる。1993年に入社(当時の社名は株式会社インターネットイニシアティブ企画)、インターネットの商用サービスの立ち上げを行う。その後、運用、開発、企画等を経て、2002年より同社取締役。2012年よりJPNIC理事。

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