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ニュースレターNo.55/2013年11月発行

第87回IETF報告 全体会議報告

第87回IETF Meetingは2013年7月28日(日)から8月2日(金)の間、ドイツのベルリンにて開催されました。

夏の欧州は湿度も低く、気温もそれほど高くないのでベルリンはきっと過ごしやすいはずだと出かけたのですが、IETF Meetingの期間中は50年に1度とも言われる異常気象のため、連日30度以上で35度を超えた日もありました。いつものベルリンは、暑いのは夏の間のほんの数日ということで、普通の家だけでなくレストランもエアコンがありません。また、ホテルにはエアコンがあるのですが、効きがよくありません。そのため、どこに居ても暑いという状態でした。蒸し暑くても日本の方がちゃんとエアコンが効くだけましかもしれない、と帰国して感じました。

さて、ここでは7月31日(水)に開かれた「IETF Operation and Administration Plenary」と、7月29日(月)の「Technical Plenary」の様子について、感想を交えて報告します。

IETF Operation and Administration Plenary

31日(水)の「IETF Operation and Administration Plenary」では、今回のスポンサーであるDENIC(ドイツのccTLDレジストリ)の挨拶があり、それからスポンサーに対して感謝する表彰が行われました。

続いてIETF ChairのJari Arkko氏より、参加者の内訳や新しい取り組みの報告がありました。今回の参加者は、62の国と地域から1,407人が参加しました。初めての参加者は316人でした。前回のフロリダでは全参加者が1,071人でしたので、大幅に増加しています。地域ごとの集計では、地元ドイツからの参加者が多く、米国に続いて2番になりました。それに続いて、中国、日本という順番でした。ドイツ以外の欧州からの参加者も多かったと思います。

次に、IESG(Internet Engineering Steering Group)メンバーの変更が発表されました。TSV(転送プロトコル技術)エリアのディレクターに、Spencer Dawkins氏が加わりました。それから、IESG note takerにSue Hares氏、John Leslie氏、Carlos Pignatoro氏が就任しました。

IETF ChairがJari Arkko氏に交代して、いろいろと新しい試みを始めています。その一つとして、最終プロセスステージでのWGの役割を強化することについて話されました。これは、各WGでドキュメントをまとめる最終段階で、IESGや専門家が協力して問題を解決し、WGでの多くの努力がRFCにつながるものにしようという試みです。

もう一つの新たな試みとして、今回のIETF Meetingからメンタープログラムが導入されました。これは、初めての参加者がIETFの流儀や生活を、何度も参加しているメンターに付いて学ぶことで、円滑にコミュニティに馴染むようにするというものです。多くの参加者がメンターとして登録をし、50組以上の師弟関係が生まれたそうです。初めての試みで、コーディネーションも大変だったようでした。

それから、前回のIETFから話題になっていたダイバーシティの問題についても取り上げられました。IETFの参加者は、ベンダー/オペレーター、いろいろな地域からの参加者、ジェンダー、文化など、さまざまな違いがありますが、IETFをよりスマートに、よりグローバルな組織にしていくための、取り組みを始めようという話でした。ISOCポリシー/フェロープログラム、新たな地域でのミーティングの開催、各地域のローカルイベント、ダイバーシティデザインチームの組織、メンタープログラムの導入などが、最初の取り組みとしてすでに始まっています。

また、IETFではrunning codeを重視すると昔から言われてきましたが、これに関してもさらに重視していこうということで、IETF 87期間中に行われている活動が紹介されました。6LoWPAN Plugtests、Code Sprint for IETF tools、IETFネットワークにおけるietf-nat64 SSIDでの実験、XMPPのHackfest、Bits-N-BitesイベントでのHOMENETのデモンストレーションといったものが開催されていたようです。

これまで、Chairからの報告では、前回のミーティングからのI-D、RFCの発行数などの発表がありましたが、今回はそれぞれのレポートはWebに資料を置いたので、そちらを見てくださいということでした。

写真:Bits-N-Bitesの様子
● 協賛企業の展示のあるBits-N-Bitesも盛況でした

次に、IETF Administrative Oversight Committee(IAOC) Chairと、IETF Administrative Director(IAD)の報告が行われました。IAOC ChairのBob Hinden氏から、7月28日(日)13時からIAOCの報告会が開催され、ビデオアーカイブがあることが紹介されました。それから、運営費のサマリーについて報告がありました。今回は、1,373人が参加費を払っての参加で、これは予算での想定より223人多かったそうです。しかし今回、EUの法律により参加費にVAT(税金)がかかることがわかり、その分が減収となりました。前回のオーランドのまとめとしては、参加者は67人ほど予算での想定より少なかったのですが、ホスト/スポンサーがたくさん付いたこともあり、若干の黒字となったそうです。地域別に見たIETF参加者の移り変わりでは、アジア、オセアニア、南米、アフリカからの参加者が増えていると報告がありました。これに関連して、南米でのIETF Meetingの開催をIAOCは検討していて、アルゼンチンのブエノスアイレスが候補地に挙がっているそうです。

IADのRay Pelletier氏から、Henrik Levkowetz氏に対する表彰がありました。Levkowetz氏は2010年2月から2013年3月まで、IETFのドキュメントやWGの議事録などをさかのぼって閲覧できる、Datatrackerのプログラムマネージャーをしていました。また、他にも29のプロジェクトをマネージしていました。また、スウェーデンのNetnod社が、インターネットエクスチェンジポイント(IXP)の管理と、DNSのルートサーバ(Iサーバ)やDNS管理への貢献のために表彰されました。

IETF Trust ChairのChris Griffiths氏からは、権利関連の報告がされました。それに続き、NomCom ChairのAllison Mankin氏より、NomComプロセスの説明がありました。NomComはIETFの選挙にあたるもので、IAB(Internet Architecture Board)、IESGを選ぶプロセスです。ボランティアとして手を挙げた人たちの中からランダムに何名かが選ばれ、その人たちがインタビューを行い、投票により決まります。2013年度のNomComメンバーの1人に、NTTの藤崎智宏氏が選ばれていました。

それから、Jonathan B. Postel Service Awardの発表がありました。今回の受賞者は、Elizabeth Feinler氏でした。彼女はインターネットの初期にARPANET(Advanced Research Projects Agency Network)のNICとして、アドレスおよびホストネームレジストリの管理を行い、.com、.edu、.gov、.mil、.org、.netのスキームを作った貢献が認められました。80歳を過ぎているそうですが、まだまだお元気そうでした。

写真:Jon Postel Award受賞式の様子
● Jon Postel Award受賞式の様子

次のRecognitionでは、DNSSECに貢献したHugh Daniel氏と、伝説的UNIXシステム管理者のEvi Nemeth氏が亡くなったことが報告されました。

次に追加報告として、Katelyn Moriaty氏からDiversity teamの報告がありました。ダイバーシティに関しては、マイナーなコミュニティに属する人の数を増やすことよりもイニシアティブの改善に注目していくこと、コストの問題や新たなコミュニティからの参加者をどのように取り込んでいくかといった問題があると、話がありました。Diversity teamではこれらの問題に取り組み、IETFのコミュニティを広げていく試みをしていくそうです。

Technical Plenary

29日(月)「Technical Plenary」では、IAB Chair、IRTF(Internet Research Task Force) Chair、RSE(RFC Series Editor) and RSOC(RFC Series Oversight Committee) Chairの報告と、「Technical Topic: Opus Codec」の発表がありました。

はじめにIAB ChairのRuss Housley氏より、IABメンバーの入れ替えの発表がありました。Spencer Dawkins氏の任期が終了し、新たにErik Nordmark氏が加わりました。それからIABの活動の発表があり、IABではWorkshop on Internet Technology Adoption and Transition(ITAT)の開催を、2013年12月に計画しているそうです。

次にIRTF ChairのLars Eggert氏より、この週のIRTFの活動予定について紹介がありました。欧州の研究者が多数参加しているため、いつものIETFに比べて活発に活動していたように感じました。続いて、IETF/IRTFがISOCと連携して作った、Applied Networking Research Prizeの紹介がありました。今回は36のノミネートの中から4件が受賞となりました。受賞者は、Gonca Gursun氏、Te-Yuan Huang氏、Laurent Vanbever氏で、もう1人は次回のIETF Meetingで紹介されるそうです。

それから、RSE and RSOC Chair Reportでは、RFC formatの改訂作業が現在作業中で、次のIETF Meetingでレビューできる予定であると報告がありました。RSOCメンバーの入れ替えに伴い、これまで貢献したFred Baker氏、Ole Jacobsen氏が表彰されました。

Technical Topic: Opus Codecでは、RFC 6716として発行されている「Definition of the Opus Audio Codec」の紹介がありました。OpusはWeb RTCのために作られたコーデックで、リアルタイムかつナローバンドなSpeech codecとしても、広帯域を利用した高品質なAudio codecとしても使えます。IETFは一つのコーデックで両方を満足するものが欲しかったとのことで、そのため複数の技術をマージして、ハイブリッドなコーデックを作り上げました。このOpusコーデックは、Webブラウザなどいろいろなところで使われ始めているそうです。

次回のIETF Meetingは、2013年11月3日(日)から11月8日(金)にかけて、カナダのバンクーバーにて開催されます。

写真:レセプションの様子
● レセプションの様子

(アラクサラネットワークス株式会社 新善文)

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