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ニュースレターNo.60/2015年7月発行

APRICOT-APAN 2015開催報告 ネットワークチーム活動報告

ネットワークチームがめざしたもの

APRICOT-APAN 2015では、会議や参加者をサポートする会場ネットワークを提供するため「APRICOT-APAN 2015ネットワークチーム」が結成され、会場ネットワークに関する一連の作業に従事しました。われわれは『来場者が会期中に快適に過ごせるような会場ネットワーク環境を提供する』ことを目的に、2014年1月初旬から具体的な活動を開始しました。

ネットワークチームは、APRICOT-APAN 2015日本実行委員会が谷崎、高田をチェアとして任命したことからはじまりました。チェア2人はまず、チームの方針を話し合いました。インターネットやネットワークに関する大規模な国際会議が日本で開催されることはまれであることから、日本のエンジニアが持つネットワーク構築運用技術の高品質さを、来場者にアピールする絶好の機会であると考えました。また、次の世代を担うエンジニアの育成、および地方の優れた人材を発掘する場としても、このプロジェクトは重要な役割を果たすことができると考え、これら2点をチームの目標として掲げました。

チームメンバーを集めるため、JANOGメーリングリストへの投稿や実行委員からの働きかけ、九州のインターネットコミュニティへの呼びかけなど、さまざまな形で募集を行いました。最終的にメンバーは九州在住のエンジニアや学生を含め総勢40名強となり、ご協力いただいた企業の皆さまと一体となりプロジェクトを進めました。

ネットワーク構築における課題と対応

設計構築をプロジェクトで進めるにあたって、まず課題になるのはネットワークの規模です。APRICOT-APAN 2015日本実行委員会が立てた目標は参加者1,000名、またその中の7割程度が海外からの参加者となる見込みでした。日本国内からの参加者が多い会議よりも、多くの無線LANデバイスの持ち込みがあると想定しました。最終的に参加者1人あたり2台の無線LANデバイスが持ち込まれると仮定し、端末数を2,000として無線LANネットワークの設計を行いました。設計の際には、他の会場ネットワークと異なるポイントが3点ありました。

  1. APRICOTとAPANという性格の異なる二つの国際会議が同時に行われること
  2. 前半のワークショップと後半の本会議では会場が異なるため、それぞれで設計と設営、開催期間中の運用、撤収が必要なこと
  3. 関係するスタッフは東京と九州にそれぞれに存在すること

また、APRICOTとAPAN、二つの国際会議から会場ネットワークに求められるものは異なるものでした。参加者が会期中に調べものやメールのやり取り、SNSなどのため利用する無線LANネットワークについては、同じものとさせてもらうことができましたが、APRICOTではWeb配信や会議をサポートする設備のために有線ネットワークが求められました。またAPANでは、APANネットワークを利用したさまざまなデモが行われるため、APANネットワークに高速に接続できる広帯域な環境が求められました。このため、福岡国際会議場でのネットワークでは、APRICOTで使用するネットワークとAPANで使用するネットワークを論理的に分け、2面のネットワークを構築しました。

会期は2週間ありましたが、前半の会場はJR博多シティ、後半は福岡国際会議場と異なる場所でした。二つの会場ネットワークを全く別のものとして設計すると、機材のやりくりや運用が煩雑になると考え、論理設計(VLAN番号やマネジメント用のIPアドレス、機器の設定ポリシー等)の共通化をしたり、機材を使い回せるようにしたりと配慮しました。また、会場の協力により、会場内にある既設ネットワークのUTP配線と光ケーブル配線を会期中借用することができました。これらの結果、設計と構築の工数を大幅に短縮することができました。

当初、二つの会場で設営と撤収を行う必要があるという、手間の面ばかりに注目していましたが、思わぬ効果もありました。福岡国際会議場での大規模なネットワークの構築運用を始める前に、比較的小規模なJR博多シティの構築運用を行えたことが、スタッフの貴重な経験となり、結果的には習熟度を上げそれが大きな自信につながり、福岡国際会議場での運用を助けることになったのです。

設計構築を進めるにあたり、綿密なコミュニケーションを取ることはとても重要です。しかし、スタッフは東京と九州に分かれており、また各個人を取り巻く状況はさまざまです。このような環境でも密にコミュニケーションを行うために、メーリングリストのみならず、FacebookやGoogleドライブを利用しました。Facebookでは非公開のグループを作成し、掲示板やメッセンジャーでコミュニケーションを取りました。また、設計構築に関わるさまざまな資料はGoogleドライブに保存し、多様な環境から閲覧と編集を可能にしました。

次世代の育成

会期が始まる前の1週間、使用するすべての機材を九州産業大学に集め、本番で使用する環境を実際に構築して確認する事前作業を行いました。この期間のことを「ホットステージ」と呼んでいます。借用した機材の動作チェック、管理のためのラベル貼り、機器の設定、UTPや光ケーブルでのつなぎ込み、提供するすべての環境がきちんと動作しているかどうかの確認試験、また設計に関する議論とドキュメントのアップデートを、会期中に構築運用に関わるスタッフで行いました。ホットステージを進めるにあたってのポイントは、学生の育成です。東京や九州のエンジニアと、九州産業大学や九州工業大学の学生が1:1または1:2程度のチームとなり、一緒に設定したり確認したりする作業にあたってもらいました。実際に自分で手を動かして設定をし、エンジニアと共に確認しトラブルシュートすることで、一つ一つの設定内容や今回のネットワーク設計についての理解が深まり、会期中の運用にスムーズに入ることができました。このようなエンジニアと学生のコラボレーションは、会期中も続きました。ネットワークチームに参加した学生たちは、日頃の大学生活では触れることのできない多数の機器に最初は戸惑いもあったようですが、エンジニアの助けもあり、会期終了時には一人前のエンジニアに成長しました。

ネットワークチームによる万全の体制が会議の成功に貢献

両会場での設営と運用、撤収はネットワークチームスタッフ全員で行いました。JR博多シティでは、ワークショップごとに異なる有線/無線LANネットワーク、各種サービスを提供するサーバー群を構築しました。福岡国際会議場では、来場者の生活用無線LANネットワーク、および会期中に行われるさまざまなデモやWeb配信、出展社ブースのための有線LANネットワーク、各種サービスを提供するサーバー群を構築しました。特に福岡国際会議場は会場規模が大きいため、使用する機材が多く設置そのものには時間はかかりましたが、綿密な準備とスタッフの頑張りのおかげで、初日の朝から会場ネットワークが必要な場所においても、無事に運用を開始することができました。

会期中は各種ツールを用いたネットワークの監視と観測を行い、運用状況の確認を行うとともに、不測の事態に備えました。また、来場者のために会場ネットワークに関するサポートを行うネットワークヘルプデスクを開設し、学生を中心に専任のスタッフを配置しました。観測や申告をもとに、両会場とも会期中に無線LANネットワークの細かなチューニングも複数回行いました。特に福岡国際会議場でのオープニングとクロージングでは、多数の人が一つのホールに集うことから、ホール内を複数箇所に分け、それぞれの場所で利用状況を確認するなど監視体制を強化し、安定運用できるように努めました。その結果、両会場のネットワークとも大きなトラブルはなく、無事に会期を終えることができました。

終わりに

会期が終了しても、プロジェクトは終わりません。借用した物品の返却、APRICOT-APAN 2015会場ネットワークの運営に伴い、会場外のさまざまな場所で変更されたさまざまな設定の後片付けなど、会期終了後も作業は続きました。

最後に、このプロジェクトは、多くの人々の協力や助言なくして遂行することができませんでした。APRICOT-APAN 2015会場ネットワークに関わったすべての人々に、厚く感謝申し上げます。ありがとうございました。

写真: ネットワークチームの集合写真(高田氏提供)
● ネットワークチームの集合写真(高田氏提供)

(APRICOT-APAN 2015 ネットワークチーム チェア谷崎文義/高田美紀)

APANサイドから見たAPRICOT-APAN

APAN(http://www.apan.net)とは

APANは、年2回大会を開催し、ネットワーク技術から広範囲なアプリケーション技術に至るまで、学術ネットワーク利用を中心にした研究活動に関しての会議を行っています。

APRICOTおよびAPANの様子

APRICOT-APAN 2011では、APAN開催階とAPRICOT開催階が完全に分かれてしまったため、「間違った会議場に入場する」ということはありませんでした。今回は、階を厳格には分けない方針にしたため、APANセッションにもAPRICOT参加者の方の参加が多く見られました。

APRICOTは、アジア太平洋地域の会議でありながら、アメリカ的な討論型なのに対して、APANは典型的なアジア型の、あまり質問の出ない会議型でありますが、混ざったことにより、従来と雰囲気の違ったものになりました。

特に、今、注目されている技術、SDN(Software Defined Network)については、APRICOT側ではパネルセッション、APAN側で作業部会のワークショップとしてそれぞれ行われ、二つのセッションに双方からの参加者が見られ、積極的な討論が行われました。

今回の会合では、APRICOT-APANにおいては、研究ネットワーク系会議以外にもNANOGなどでもサービスが行われるようになったeduroam(http://www.eduroam.jp)のサービスが提供されました。eduroamはその名の通り、教育機関関係者が世界中どこにいっても、自分の組織で発行されたIDとパスワードを用いてワイヤレスネットワークにアクセスできるサービスです。

APANでは、前回のAPAN南投会合で、「Task Force(時限作業部会)」という枠組みを設置することが決定され、今回、ID・認証連携に関するTask Force会合が行われました。また「地球観測」では、このところ積極的に行われている地球上の明かり、あるいは、炎などをその位置がわかる高解像度画像による撮影およびフィルター処理により、地球上の経済状態、あるいは、紛争状態が把握できることなどが発表されました。

医療作業部会は、日本開催でもあることから、日本の医療機関に積極的に参加していただき、産婦人科系の活動などの発表が行われました。また、インドネシア離島間を接続しての口腔外科医療の活動も紹介されました。農業作業部会では、農産物育成・収穫に関して必要な気象データ、農地環境データ、市場データなどの伝送を的確な手法で行うこと、特に、インフラの未整備地域に関しての手法などが話し合われました。

APRICOTの目玉セッションであるPeering Forumでは、学術ネットワーク参加者が、peeringの意味を学ぶ良い機会となりました。現在、APANでは、学術ネットワーク構造設計を積極的に話し合うセッションはありません。このため、APAN関係者は「peering対象機関は、もはやISPだけではなく、コンテンツ関係サービスも含まれる」ことを学ぶことができたと思います。また、それにより、利用者へのサービス効率が変化することを知ることができたのではないかと思います。

APRICOT-APAN 2011での会議終了後のアンケートでは、「想定もしない古い友人、あるいは、インターネット関係者と会う機会となった」と評価されていましたが、今回も、多くの方が、自国の意外な関係者と福岡で会い、その場で打ち合わせが行えていたようで、運営側からは、してやったりと言える場の設定ができました。

APRICOTワークショップへのAPAN地域からの参加

なお3月1日から始まった会議の前の週には、APRICOTワークショップが行われていました。この内容が通常の人材育成コースを大幅に超える高度なものであることから、APANの協力団体の一つTEIN(Trans Eurasia Information Network, http://www.tein4.net)の東南アジア、南アジア、中央アジアの接続機関からも参加者があり、その内容に感銘を受けていました。

次のAPRICOT-APANに向けて

会議期間中、APIA(Asia Pacific Internet Association)、APNIC、APANの理事クラスメンバーによる合同会議も行われ、今後も積極的にAPRICOT-APANあるいはAPNIC-APANを共同開催しましょうということが合意されました。

今回のAPANは、従来のAPAN会合とは異なり、商用側の持つ高度な運用技術を目の当たりにする良い機会となりました。また、APAN側からも、インターネット利用の将来像の一部を示せたのではないかと思っています。次のAPRICOT-APANがいつ、どこで行われるかわかりませんが、今回の経験を伝え、さらに、双方のコミュニティの刺激になるような会議にしてほしいと思います。

(APAN/独立行政法人 情報通信研究機構 北村泰一)

今後の予定

次回のAPRICOT、APNICカンファレンス、APAN会合はそれぞれ次の日程で開催されます。

[APRICOT 2016] 2016年2月16日〜26日、オークランド(ニュージーランド)
[APNIC 40] 2015年9月3日〜10日、ジャカルタ(インドネシア)
[APAN 40] 2015年8月10日〜14日、クアラルンプール(マレーシア)

APRICOT-APAN 2015 開催概要

日程 2015年2月24日(火)から3月6日(金)まで
会場 [ワークショップ(2月28日(土)まで)]
JR博多シティ
http://www.jrhakatacity-eventspace.jp/access/
[カンファレンス(3月2日(月)から)]
福岡国際会議場
http://www.marinemesse.or.jp/congress/access/
対象者 ネットワーク運用に携わる技術者
アジア各国のインターネットインフラに興味をお持ちの方
アドレスポリシー策定・資源管理に興味を持つ方
内容 ワークショップ、チュートリアル、カンファレンス、ワーキンググループセッション、併設展示・デモ、レセプション、ソーシャルイベント
主催 APRICOT-APAN 2015 日本実行委員会
共催 国立情報学研究所(NII)
後援 済産業省/総務省/農林水産省/文部科学省/福岡県/福岡市/IPv6普及・高度化推進協議会(v6pc)/一般財団法人インターネット協会(IAjapan)/Internet Society Japan Chapter(ISOC-JP)/HD-PLC アライアンス/仮想化インフラストラクチャ・オペレーターズグループ(VIOPS)/九州インターネットプロジェクト(QBP)/九州ギガポッププロジェクト(QGPOP)/九州産業大学/九州大学 情報基盤研究開発センター/一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA)/Cyber Kansai Project(CKP)/一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)/情報処理学会 インターネット運用研究会(IOT研究会)/電子情報通信学会インターネットアーキテクチャ研究専門委員会(IEICE IA研究専門委員会)/一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)/日本学術振興会産学協力研究委員会インターネット技術第163委員会(ITRC)/日本シーサート協議会(NCA)/一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)/日本DNSオペレーターズグループ(DNSOPS.JP)/日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ(JANOG)/特定非営利活動法人日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)/日本UNIXユーザ会(jus)/WIDEプロジェクト(WIDE)
協賛 株式会社インターネットイニシアティブ/インターネットマルチフィード株式会社/NTTコミュニケーションズ株式会社/ソフトバンクBB株式会社/日本インターネットエクスチェンジ株式会社/Microsoft Corporation/株式会社日本レジストリサービス/アーバーネットワークス/IPv4 Market Group/アラクサラネットワークス株式会社/Alcatel-Lucent/A10ネットワークス株式会社/NECプラットフォームズ株式会社/NTTアドバンステクノロジ株式会社/Curvature Solutions Pte Ltd./KDDI株式会社/独立行政法人情報通信研究機構/セイコーソリューションズ株式会社/Digital Japan Investment Management G.K./TeliaSonera/TOPCON CORPORATION/株式会社デンソー/日商エレクトロニクス株式会社/日本電信電話株式会社/NETKA SYSTEM.COM/Nominum/BTI Systems/Vidyo Japan.Inc./Hong Kong Broadband Network Ltd./三井情報株式会社/九州通信ネットワーク株式会社/独立行政法人産業技術総合研究所/ジュニパーネットワークス株式会社/株式会社DMM.comラボ/日本ラドウェア株式会社/ブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社/楽天株式会社/Google/ICANN/TEIN/DotAsia/Equinix/Internet Society/NSRC/一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター
URL http://jp.apricot-apan.asia/ (日本語)
https://2015.apricot.net/ (英語)
写真: RPKIの展示を中心としたJPNICのブース
● RPKIの展示を中心としたJPNICのブースにも、たくさんの方に足を運んでいただきました

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