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ニュースレターNo.75/2020年8月発行

新型コロナウイルスとICT

早稲田大学基幹理工学部教授 内田 真人

この原稿を執筆している2020年4月26日現在、 新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、 さまざまな社会・経済活動に深刻な影響を与えています。 2月27日には、政府の要請により、全国の小学校、中学校、 高等学校、特別支援学校等が臨時休校になりました。 また、新学期の開始を先送りした大学も多くあります。 筆者が勤める早稲田大学においても、 5月の大型連休明けに新学期が開始されることとなり、 2020年度春学期の授業は、 原則としてインターネットを利用してオンラインで行われることになりました。 さらに、各キャンパス内への立ち入りが禁止されたため、 教職員はテレワークによる勤務に移行しております。 一方で、参加者が会場に集まり開催される学会やイベントが、 オンラインでの開催に代替される動きも加速しています。 JPNICに関わりのあるところでは、 2020年3月7日から12日にかけてメキシコ・カンクンで開催予定であった第67回ICANN会合が、 史上初の遠隔参加のみの会議として開催されました※1。 このように、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、 これまでは一部に限られていたオンラインでの社会・経済活動が、 期せずして一般に広まってきたように思われます。

テレワークによるビデオ会議や、 オンラインでの各種イベントの開催等が増えたことで、 特に平日日中におけるインターネットのトラフィックが増えているとの分析結果が報告されています。 例えば、NTTコミュニケーションズ社によると、 3月23日の週の平日日中のデータ通信量は2月上旬と比較して最大4割増え、 アカマイ・テクノロジーズ社によると、 世界のデータ通信量は1~3月に前年同期の2倍以上となる毎秒160テラビットを記録したとのことです (日本経済新聞4月4日朝刊より)。 実際、JPIXが公開するインターネットエクスチェンジにおけるトラフィック状況※2を確認すると、 3月以降のトラフィック量は増加しているように見えます。 ただし、国内のブロードバンドトラフィック量はもともと急増していることから、 その傾向と区別することは 、 このグラフを目視しただけでは難しそうです。 このように、国内のデータ通信の品質維持が心配されるところではありますが、 インターネット全体としては、 少なくとも現時点ではその影響は限定的であるようです。 今後の動向を注視しつつ、 このような状況においても安定した通信を提供し続ける通信事業者の方々に感謝したいと思います。

一方で、新型コロナウイルス対策にICTを活用する動きが活発化しています。 アップル社とグーグル社は、 新型コロナウイルスに感染した患者と濃厚接触した疑いのある利用者に対してスマートフォンで通知する仕組みである「Exposure Notification」を共同で発表しました。 これは、Bluetoothを用いた通信プロトコルであり、 暗号技術等を活用することによって、 プライバシー侵害にあたらないように追跡情報を扱うことができるとされています。 また、データ分析のコンペティションを企画・運営するKaggleでは、 新型コロナウイルスに関連する膨大なデータセットを提供し、 世界中のデータサイエンティストに対し、 予測モデル開発への参加を呼びかけています※3。 同様の取り組みは、日本版のKaggleとも呼ばれるSIGNATEにおいても行われており、 日本国内における感染状況のデータ分析による把握や感染者数予測モデルの開発が進められています※4。 このように、セキュリティ・プライバシー・データサイエンス等の先端技術が、 今回の難局において有効に活用されていくことは、 大変に頼もしいことであると感じます。

2011年に発生した東日本大震災の時も、 インターネットやICTは必要不可欠なライフラインとしての役割を果たしました。 それから9年が経過した現在、新たな困難に直面していますが、 奇しくもこのような状況であるからこそ、 インターネットやICTの重要性が再認識されていくものと思います。 JPNIC Newsletter 75号は8月中旬に発行されると聞いています。 その頃には新型コロナウイルスの感染拡大が収まり、 元の生活に少しでも戻れていることを願いたいと思います。

※1 ICANN to Hold First-Ever Remote Public Meeting
https://www.icann.org/news/announcement-2020-02-19-en
※2 JPIXテクニカル情報トラヒック(首都圏・大阪)
https://www.jpix.ad.jp/jp/technical_traffic.php
※3 COVID-19 Open Research Dataset Challenge (CORD-19)
https://www.kaggle.com/allen-institute-for-ai/CORD-19-research-challenge
※4 COVID-19 Challenge
https://signate.jp/covid-19-challenge

執筆者近影
プロフィール●内田 真人(うちだ まさと)
早稲田大学基幹理工学部教授。 博士(工学)。 データサイエンスやサイバーセキュリティに関する研究に従事。 北海道大学大学院修士課程修了後、NTT研究所に勤務。 2016年6月よりJPNIC評議委員会副委員長。 その他、総務省情報通信審議会専門委員、 同省電気通信事故検証会議座長代理、 株式会社SIGNATE技術顧問などを務めている。

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