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ニュースレターNo.82/2022年11月発行

JPNIC会員 企業紹介

「会員企業紹介」は、JPNIC会員の、 興味深い事業内容・サービス・人物などを紹介するコーナーです。

世の中の役に立つことよりさ、 毎日の仕事でワクワクすることの方が大事じゃないのかな
~くだらないセオリーよりも思い切って行動することで得られるものがある~
ロゴ:TAM
イメージ:タイトルバック

ユニタスグローバル株式会社(旧:インターナップ・ジャパン株式会社)

住所 〒101-0045 東京都千代田区神田鍛冶町3-3-12 神田鍛冶町千歳ビル7F
設立 2001年4月10日
資本金 1億円
代表者 奥野 政樹
従業員数 29名(2022年10月22日時点)
URL https://www.inap.co.jp/
事業内容 https://www.inap.co.jp/about/outline.html
■法人向けインターネット接続サービス
■クラウド接続サービス
■拠点間接続サービス
■日本語/英語ITサポートサービス

「会員企業紹介」は、JPNIC会員の、 興味深い事業内容・サービス・人物などを紹介するコーナーです。

今回は、2001年4月の創業から今年で22年目を迎えた、 ユニタスグローバル株式会社(旧INAP Japan)を取材しました。 同社は米国のベンチャー企業であるINAP社とNTTグループの合弁事業としてスタートし、 INAPが独自に開発した経路制御の最適化技術を武器に、 低遅延で高品質なネットワークサービスを提供されています。

これまではINAP Japanとして事業を行ってきた同社ですが、 2022年5月のINAP社からUnitas Global社への事業売却に伴う、 ユニタスグローバル株式会社への社名変更を直前に控えたタイミングでの取材となりました。 当日は、設立から現在に至るまでの紆余曲折を、 代表である奥野様の強い信念を交えつつ時には面白おかしく軽妙に語っていただくとともに、 ユニタスグローバルとして新しく生まれ変わった同社が提供を予定している、 新サービスなどをご紹介いただきました。

さまざまな文化の差を乗り越えてのスタート

◎まずは貴社の成り立ちについて教えてください。

奥野:当社の設立は2001年4月で、 1996年にベンチャー企業として設立された米国インターナップ・ネットワークサービス(INAP)社と、 NTTグループによる合弁事業としてスタートしました。 INAP社は米国で大成功した勢いで日本進出を考えていた時期で、 国内のパートナーとしていくつかの大手キャリアに声をかけており、 その一つがNTTグループでした。 とはいえ、 NTTの掲げる事業戦略にこういった外資ベンチャーとの合弁などはなく、 また社内政治的にも当初はあまり乗り気ではない雰囲気でした。 反対の声も多かったのですが、 それを私がいろいろと策を用いて社内をまとめあげ、 新しい会社を作るところまでこぎ着けました。 日本の大企業と米国のベンチャーなんて、 仕事のやり方も社内意識もどこをとってもミスマッチだらけです。 そういう部分を解決して事業を成功させるのはものすごく大変そうだけど、 やりがいもありそうだしぜひ自分がやってみたいと思ったんですよね。 今と違って、当時の私はそういう部署にいなかったので、 インターネット接続自体が商材として売れるなんてことはまだ理解していませんでした。

ただ、私の社内での今後のキャリアを心配する上司などの反対もあり、 すぐにこの合弁事業に関わることはできなくて、 私が出向してきたのは2003年のことです。 合弁の際に国際法務に強いということで契約関係の交渉を任されていたのですが、 その際に契約書に社外監査役の規程を入れておいたことが役に立ちました。 事業が始まると案の定お互いの文化の差に由来するトラブル続出だったので、 そこでいろいろアドバイスをしているうちに米国側から「ぜひ彼を呼んでくれ」と声がかかったんです(笑)。

◎設立にあたってはご苦労があったのですね。
奥野様が関わられてからは、 順調に事業が進むようになったのでしょうか。

奥野:いや、そんなに簡単ではなかったです。 私の上に社長がいたんですが、まずはクーデター(笑)を起こしました。 私の考えるやり方で、 社の運営を根本から変えるところからスタートしました。 その後も、しばらくの間の混乱と苦しみは尋常ではなくて、 信じられないこともたくさん起こりましたし良い勉強になりました。 採用一つとってもかなり難しくて、 NTT時代とは比べものにならない苦労がありました。 それでも試行錯誤しながら続けていってプロパーの社員をどんどん増やし、 NTTからの出向社員を減らしていきました。 比率が逆転したのは2005年か2006年頃ですね。 最後の出向者は、何と私自身だったんですよ(笑)。

人材採用と育成には自信アリ

◎人材採用にはどのようなご苦労があったのでしょうか?

写真:神田本社

奥野:プロパー採用を始めた当初は、 何と受けに来た人を全部採用していたんですよ(笑)。 NTT時代の経験があるので、 応募者の差などあまりなく短時間の面接では何もわからない、 入社後のマネジメントでどうにでもできると思ってたんです。 でも実際はそんなことはなく、とんでもない人が来てしまうことがありました。 そこで反省をして、採用スキルを磨いていきました。 今では我々は採用のプロだと自負していますが、 長年の経験からきた結論としては、 真面目で一生懸命やるかどうかを見抜くのが面接の肝です。 ポイントは応募者がきちんと面接の準備をしてきているかですね。 Webサイトを見ているか、 経営理念なども含めて当社のことを調べて理解しているか、 言葉にするとそんなことかと思われるかもしれませんが、 ここをよく見ていけば人材採用で外れはほぼありません。

吉川:当社は学歴や職歴を不問にしていますが、 この会社のために何ができるかや、仕事に対するやる気、 またNOC(Network Operation Center)という仕事、 24時間安定したインターネットを守るという意味がきちんと理解できているかを見ています。 また、世の中にはインターネットやPCが好きで、 趣味でPCを自作したりネットワークを組んだり、 サーバを立てたりしている人がいますが、 こういう人は他社では未経験として門前払いでしょう。 でも、その中には単に学校を出て資格を持ってるだけの人よりも、 用語を知らないだけでよほど肌感覚でネットワークを正しく理解できる人がいるんです。 そういう、職歴はないけれども経験をうちで活かしてくれそうな人は、 一貫して採用してきています。 未経験から入っても、そういう人は数ヶ月で上級レベルになれます。

奥野:「成長を続ける社員の行動により、 世の中に付加価値をもたらす」と経営理念に掲げているように、 仕事を通じて成長し続けること、 そして世の中の役に立つことを考えるより毎日仕事でワクワクできることをとても重視しています。 その方が、結果的には世の中のためになるんじゃないですかね。 だって、ワクワクしてる人は周囲もワクワクさせますからね。 あと、うちは採用するとまずNOCに入ってもらいます。 そこから営業や技術、 また経理などのバックヤード部門に行ったりして活躍というパターンです。 他社、特に外資はこういうことはやりませんね。 まずはNOCでコアとなる人材を確保し、 NOCにいる間に社内のオペレーションを見つつ、 いろいろと学んでスキルを身につけて、 他部署に行くなりNOCで極めるなりという流れです。

◎NOCが貴社の人材環流の中心になっているわけですね。 以前は、NOC業務は外注されていたと聞きましたが、 どういった経緯で内製化されたんでしょうか?

奥野:2008年にお客様を日本語・英語で24時間サポートするNOCを自前で作ったんですが、 これは当社自身が大きく変わるターニングポイントになりました。 当時はNTT系の企業にアウトソースをしていたんですが、 契約更新時に先方から値上げの打診があったんです。 こちらの足下を見る内容で、 ちょっと応じられないとなったんですよね。 ただ、そうなると契約が切れるまでもう1ヶ月しかありません。 それまでに大急ぎでNOCを立ち上げる必要が出てきました。 そのためにはシフト勤務でバイリンガルサポートができる要員を最低でも7人集める必要があり、 急いで採用に取りかかったんですが、 2週間経っても1人も集まらず途方に暮れてしまいました。 その後は何とか7人集めたんですが、 なかなか強者揃いで採用後も手がかかって大変で、 一時期おばけ屋敷状態になりましたが、 どうにかNOCをスタートさせることができました。 後に、契約を切ってきた相手から「そう言えばどうなりました?」と聞かれ、 「ああ、NOC、自社に作りましたよ」と返事をした際は、 相手はぽかんとしてましたね(笑)。

中村:このNOC設置をきっかけに、 当社の体制は大きく強化されていったわけですが、 当時はやはり社内で相当議論がありました。 できるわけがないとか、 フィリピンにある外部のグローバルサポートセンターを使えなどという声もあり、 米国本社などはそういう意向でした。 ただ、それだと長期にわたってまともなサポートはできないですし、 顧客とネットワークの話もできません。 それを良しとするのか、 それとも自分達でそれができる人材を育てて高品質なサービスを提供していくのか、 そういう議論をしたんです。 結果、最後は奥野が後者の道を歩むんだと本社を説得したんです。

世間の“常識”にこだわらずベストな道を探る

◎貴社のお客様についてお尋ねしたいのですが、 貴社サービスの強みからやはり金融機関や外資系企業の方が多いのでしょうか。

奥野:外資系企業は多いですが、日本のお客様もたくさんいます。 イメージだと日英サポートで回線品質が高いから、 金融やオンラインゲーム、 動画配信系の顧客が大半かと思われるかもしれませんが、 実際はそういう顧客ばかりではありません。 今はオフィス用インターネットの需要が旺盛です。 従来は食い込めなかった分野ですが、 ここのところのリモートワークの流行でネットワークの帯域や品質に対する要求が高まっています。 ただ、そういった商品はOCNやKDDIも持っていて、 我々の品質はそれらよりも高いと自負していますが、 それを評価してもらうためには営業力とマーケティング力が重要かなと思っています。

イメージ:公式MV

マーケティングでは、教科書的なものは重視していません。 当社が作成したミュージックビデオにもありますが、 世間で言われるセオリーなんてものを信じちゃいけません(笑)。 「決裁者の許可を取る」方法を重視しろと言われますが、 あれは日本じゃダメです。 決裁者が決裁をするんじゃないんですよ。 NTT時代に当社を作った時、 私は決裁権限なんてない一課長でしたしね(笑)。 大事なのは社内でこれをやるんだと決めて動く人達で、 具体的には面白いことを見つけてきて社内にどんどん火を点けて回る人とそれを止めようとする人で、 そこを押さえることが重要です。 私は「放火魔と警察官」と言っていますが(笑)、 これを重視するのが当社のマーケティングです。 相手が大きい会社だと、 基本的には決まったところとしか取り引きしないので、 どうしようか検討させてしまったら負けです。 話は聞いてくれた、面白いね、検討します、じゃダメ。 何かよくわからないけど気が付いたら買っていた、 これを目指しています。 Unitas Globalの一員になることで新しいサービスも増えますし、 当社のマーケティングも、もう1ランク上に行きたいと思っています。

◎貴社はUnitas Globalグループに入られて社名変更を控えていらっしゃるタイミングですが、 今後はどのようなサービスに力を入れていく予定なのでしょうか。

奥野:Unitas Globalグループの一員として、 今後はこれから話す2本柱を軸に事業を進めていくことになります。

まず一つ目が、「Unitas MIRO Donuts Net」です。 Unitasが得意なドーナツピアリングと、 当社が独自に磨き上げてきた最適経路通信の技術であるMIRO(Managed Internet Route Optimizer)を組み合わせたものです。 Unitasは高品質通信の世界を作って、 そこに世界中のローカル/コンテンツ/サービスプロバイダーを繋いでネットワークを広げてきました。 その巨大なリングネットワークはドーナツピアリングと呼ばれ、 他社のTier1ネットワークを回避して世界中と通信できるというメリットがあります。 そこにMIROの技術を乗せることで、 さらに他社よりも優れた通信プラットフォームとなります。

二つ目は「Unitas Reach」で、 現在米国でNaaS(Network as a Service)として展開されている同サービスを日本にも展開します。 世界中にSD-WAN(Software Defined-Wide Area Network)が張り巡らされていて、 edge-to-edgeで日本と海外の拠点を接続できます。 将来的には、Unitas Reachに繋がれば世界中にリーチできるようになります。

吉川:UnitasのAS1828は世界の隅々までピアリングしていて、 まさにドーナツの名にふさわしく世界を1周しています。 INAP時代のMIROはピアリングとかあまり関係のない世界でしたが、 今後はピアをたくさん張っていき、 そこでも通用する最適化技術にMIROをブラッシュアップしていくのが今後の目標です。

あと余談ですが、 エンジニアとして個人的にはUnitasになることでAS番号が4桁になるのが密かに嬉しいです(笑)。 今はAS17675ですが、 AS1828になると国内の古参事業者やJPNICよりも若くなります、 これは強く主張したいですね(笑)。

インターネットは人類における技術の大衆化の最高傑作

◎貴社には普段からJPNICのメディアに会員広告などを出稿していただいていますが、 AS2515のJPNICに対して(笑)、 何かご意見やご要望などはありますでしょうか。

奥野:他社のエンジニアと意見交換できるような、 交流会などの機会を作ってくれると嬉しいですね。 社内に閉じこもっているのは良くないので、 当社では社員をJANOGやACCJ(在日米国商工会議所)のイベントなど、 いろいろなところに参加させています。 業務命令にしないと、自分からはなかなか行きませんから。 2022年7月に函館で開催されたJANOG50 Meetingは若い社員4名だけで参加させましたが、 せっかく行く以上はつまらないことはするなと言って、 自分達をどうアピールするかディスカッションさせました。 こういったイベントや展示会に参加する時は結構本気ですよ。 イベント出展はエンターテインメントです。 つまらない商品説明をしても意味がなくて、来ていただく方、 見ていただく方、ブースに来ていただく方を楽しませないといけません。 キャラを立たせて信念を持って、 目立つユニフォームやオリジナル曲を作ったりして、気合いを入れています。 こういう経験をしていくと、 OJTや社内資格の勉強なんかよりもよほど成長します。

吉川:外部のイベントは営業担当は行きますが、 うちのエンジニアは伝統的に外にあまり出てこなかったんですよ。 でも、今後はピアリングなどが増えていくと思うので、 国内のコミュニティに顔を出す機会が増えていくかなと思っています。

中村:JPNICは日本を代表する資源管理の団体なので、 日本のインターネットがイケているということをどんどん発信していって欲しいですね。 アジアのハブは香港、シンガポール、日本で、 そこを急成長している中国が狙っています。 そういった中で、 JPNICの払い出すIPアドレスを使うことにどれだけの価値があるのか。 日本の通信事業者は総じて事故が少なく、低遅延で通信できます。 そういう障害率が低い環境でビジネスできること、 そういったバリューがあると世界に発信してもらえると、 日本の事業者は競争上有難いと思います。 当社も、日本に高品質なネットワークサービスがあることを世界中の企業に知ってもらうために日々頑張ってますので。

吉川:APNICが最近のインターネットトレンドなどを映像付きで配信していますけど、 JPNICも海外向けに日本の情報を発信してもらえると嬉しいです。 米国では、「日本のIPアドレスなんてAPNICからもらえばいいんだろう?」ぐらいの認識の人も多いですから。

◎本日は業務の話に留まらず、 いろいろと貴重なご意見などもいただきましてありがとうございます。 最後に伺いたいのですが、 皆さまにとって「インターネット」とは何でしょうか?

吉川:答えに困る質問ですね(笑)。 「インフラです」としか答えようがないです。 私にとっては水道や電気、ガスと同じレベルのインフラの一つで、 お金を稼ぐための大事な基盤です。 もう2000年ぐらいから、私にとってはそういうものです。

中村:元々は、インターネットは善意の塊で、 お互いがASを繋ぎ合って良い通信を作っていくものでした。 最近は悪用する話の方が大きくなってしまった印象がありますが、 一方で良い話もあります。 その時代ごとの良し悪しが、インターネットの良い使われ方、 悪い使われ方など状態に表れていると思います。 インターネットに対してはポジティブ、 ネガティブとそれぞれ見方がありますが、 それらには世の人々のインターネットに対する見方が反映されているんじゃないでしょうか。

奥野:電話時代は、 相互接続のルールが難しくセキュリティも厳しくて、 手間暇がかかるため通信は値段が高いものでした。 それが、 インターネットは相互接続のルールもセキュリティも電話に比べると緩やかで、 その結果値段も安くなり爆発的に広がりました。 そういう意味で、インターネットは決して技術革新ではなく、 いろいろなルールや手続きを廃止して手を抜いた仕組みなんですよ。 簡素化と手抜きにより実現された、 人類における技術の大衆化の最高傑作だと思っています。

これまで通信は、のろしから飛脚、郵便、 電話と技術革新を経てきましたが、 そろそろ次の技術革新がくるんじゃないでしょうか。 脳波を使って、他人と直接通信できたりするようになるかもしれません。 それがきた時に、インターネットははたしてどうなるのか。 電話はほぼ役割を終えましたが、郵便は今も残っています。 なので、今後コミュニケーションにおける革命が起きても、 インターネットもレガシーとして残るのかもしれません。 ただ、インターネットが次のステージに進むためには、 元々の設計思想を思い出して、 セキュリティだのルールだのでガチガチに縛るような、 インターネットの良さをスポイルするような考えは改めていく必要がありそうです。

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