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Governance Document for the Recognition, Operation, and Derecognition of Regional Internet Registries (RIR Governance Document) Version 2 (DRAFT)
翻訳文

社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター
最終更新2025年9月5日

この文書は2025年8月28日に公開された
https://www.nro.net/wp-content/uploads/RIR-Governance-Document-v2-FINAL.pdf
を翻訳したものです。
JPNICはこの翻訳を参考のために提供しますが、 その品質に責任を負いません。


地域インターネットレジストリの認定・運営・認定取り消しに関するガバナンス文書 (RIRガバナンス文書)草案バージョン2

本文書は、 2025年8月28日にNRO (Number Resource Organization)が公開した"Governance Document for the Recognition, Operation, and Derecognition of Regional Internet Registries (RIR Governance Document) Version 2 (DRAFT)"の仮訳として提供するものです

前文

本「地域インターネットレジストリの認定・運用・認定取り消しに関するガバナンス文書」(以下「RIRガバナンス文書」)は、 2001年6月4日に採択された文書Internet Coordination Policy-2: Criteria for Establishment of New Regional Internet Registries (ICP-2)の後継である。 本文書は、ASOアドレス評議会(ASO AC)の機能も兼ねるNRO番号評議会(NRO NC)が主導し、 世界の地域インターネットレジストリ(RIR)およびICANNのコミュニティからの意見聴取を基に策定されたものである。

インターネット番号資源管理のグローバルシステムは、 公平・効率的かつ安全な形で重要なインターネット資源を分配・管理するために確立された、 分散的かつ協調的な仕組みである。 対象となる資源には、 IPアドレス空間(IPv4およびIPv6)および自律システム番号(ASN)が含まれ、 いずれもインターネット運用に不可欠である。 このシステムは、 地理的に区分された地域ごとに責任を持つRIRによって構成される。 システムは、 地域的・全世界的なインターネットコミュニティのニーズに応えるため、 公開され、ボトムアップなプロセスに基づいている。

本文書は、RIRの設立から運営、 さらには認定取り消しの可能性に至るまでのライフサイクル全体を扱うとともに、 インターネット番号資源レジストリシステムがグローバルインターネットコミュニティに奉仕し続けるために必要なRIR間協調の条件を定める。 とりわけ以下を規定する:

  1. 新たなRIRを認定するための規則と基準を定め、 認定を求めるいかなる組織に対しても厳格かつ透明な評価を保証すること。
  2. RIRの運営上の義務を明確化し、 ガバナンス・説明責任・サービス提供義務に関する透明性を高めること。
  3. 既存の基準を順守できないRIRに対し認定取り消しの基準と手続きを規定し、 グローバルなインターネット番号資源の信頼性と整合性を守ること。

RIRガバナンス文書の目標

  • グローバルインターネットコミュニティへの説明責任の確保:ガバナンス上の期待と責任を明文化し、透明性・応答性・会員主導の監督を促進する。
  • システムの安定性と継続性の支援:ライフサイクルの基準と是正経路を定義することで、RIRが義務を果たせない場合にも長期的な強靱性を確保する。
  • ボトムアップ型マルチステークホルダーモデルの維持:政策策定の公開性を維持し、ガバナンスの変更がすべてのRIR地域とICANNにおける広範なコミュニティ意見を反映するようにする。
  • エコシステムにおける期待の明確化:ガバナンス・運営・エコシステムレベルの原則を明確に示す。

これらの要素を組み合わせることで、 強固で分散的かつグローバルに調整されながら地域に適応可能なガバナンス基盤が確立される。 これにより、 RIRはインターネット番号資源の効果的な管理者として機能し続け、 全インターネットエコシステムの利益のために奉仕することができる。 本文書を採択することにより、現在および将来のRIRは、 公開的・中立的・透明な方法で運営し、 公平性と包摂性を育み、 地域的かつグローバルなインターネットコミュニティに対して責任ある行動を取ることで、 インターネット技術運用の信頼できる管理者であり続けることを約束する。

第1条 定義・解釈・実施

1.1 定義

本文書における用語(原文では大文字で始まる)の意味を以下の通り定義する。

関係会社等(Affiliate)
特定の組織に関して、 その組織を直接的または間接的に支配する、 あるいはその組織に支配される、 または共通の支配下にある他の組織をいう。
ASO MoU
随時修正される、 ICANNアドレス支持組織(ASO)に関する覚書をいう。
候補RIR(Candidate RIR)
RIRとなることを申請する組織をいう。
支配(Control)
直接的または間接的に、 組織の経営または方針の方向性を決定または決定させる権限、 またはRIRのガバナンスへの組織の参加を持つことをいう。 所有、契約、その他の手段による場合を含む。
認定取り消し(Derecognition)
本文書の規定に従い、 あるRIRに対するそのサービス地域でRIRサービスを提供する権限の委任を終了させる決定をいう。
反対するRIR(Dissenting RIR)
第2.3(a)(v)(D)で定義される。
緊急時継続(Emergency Continuity)
第5.1で定義される。
緊急オペレーター(Emergency Operator)
本文書で認められる場合に、 一時的にRIRサービスを提供するために選定された適格な組織をいう。
グローバルポリシー(Global Policy)
全RIRのポリシー策定プロセスとICANNの合意を得ており、 IANA機能運営者またはその他のICANN関連外部機関に特定の行動または結果を求める、 インターネット番号資源ポリシーをいう(ASO MoU第6条に定義される)。
統治機関(Governing Body)
取締役会または同等の機能を有する機関をいい、 その名称を問わず、RIRの会員によって権限が委任され、 RIRを統治する権限を持つ。
IANA機能運営者(IANA Functions Operator)
IANA機能を実行する責任を持つ組織。
IANA番号資源サービス(IANA Numbering Services)
グローバルポリシーおよび適用可能かつ合意済みの手順・指針に従ったIANA番号レジストリの管理をいう。 これには、RIRへの番号資源の割り当て、返却資源の管理、 一般的なIANA番号レジストリの維持管理、 特殊用途ドメイン「IN-ADDR.ARPA」および「IP6.ARPA」のユニキャスト部分の管理を含む。
ICANN
Internet Corporation for Assigned Names and Numbers をいう。
実施手続き(Implementation Procedures)
第1.3で定義される。
インターネット番号資源レジストリシステム(Internet Numbers Registry System)
RFC7020で定義されるシステムをいう。
会員(Member)
RIRの統治機関メンバーの選挙に投票する権利を持つ法人または自然人。
決定通知(Notice of Decision)
ICANNが発行し、 提案の承認または却下の理由を明示する公式文書。
番号資源コミュニティ(Numbering Community)
資源ホルダーおよびその他、 番号資源管理に参加する関係者(政府、市民社会、 技術コミュニティ、民間企業、学術界等を含む)をいう。
番号資源ポリシー(Number Resource Policies)
グローバルポリシーおよびリージョナルポリシーをいう。
番号資源(Number Resources)
インターネットプロトコル(IP)ユニキャストアドレス(IPv4、 IPv6)および自律システム番号(ASN)。
NRO
2003年のNRO設立覚書に基づき設立された、 RIRの調整機関であるNumber Resource Organization。
異議(Objection)
第2.3(a)(v)(A)で定義される。
ポリシー策定プロセス(Policy Development Process)
RIRが番号資源ポリシーを策定するためのプロセス。
提案(Proposal)
RIRの認定または認定取り消しに関する提案をいう。
認定(Recognition)
本文書に従い、 候補RIRにサービス地域のRIRサービス提供責任を委任し、 その地域の公式RIRとして認定する決定。
リージョナルポリシー(Regional Policy)
RIRがポリシー策定プロセスを通じて採択した、 そのサービス地域内での番号資源の割り当てや管理に関するポリシー。
資源ホルダー(Resource Holder)
RIRに登録された番号資源を保有する法人または自然人。
RIR
地域インターネットレジストリ(Regional Internet Registry)。
RIRガバナンス文書(RIR Governance Document)または単に文書(Document)
本「地域インターネットレジストリの認定・運営・認定取り消しに関するガバナンス文書」をいう。
RIRサービス(RIR Services)
番号資源の割り当てや登録・ディレクトリサービス、 関連する技術サービスを含め、 資源ホルダーが番号資源を利用でき、 番号資源コミュニティが正確な情報を得られるようにするために必要な一連のサービスをいう。
サービス地域(Service Region)
RIRサービス提供の責任を公式に委任されている地理的地域。

1.2 解釈

  1. 定義された用語の分詞形、活用形、複数形その他派生形も同じ意味を持つ(例:「Recognition」と「Recognized」)。
  2. 見出しは便宜的なものであり、解釈には影響を与えない。
  3. 他の文書や合意に対する参照は、その後の改訂・補足・修正、または後継文書を含む。
  4. 本文書において「情報を公開する」とは、当該当事者の公式Webサイトに情報を掲載することを意味する。

1.3 実施

RIRとICANNは、 本文書の特定の規定を実施するために共同で実施手続きを策定・採択することができる。 実施手続きは、 本文書の該当規定を実効化するために必要な最低要件を定義し、公開されるものとする。

実施手続きは、 各RIRが遵守するための内部的な方法や運営手段を規定または制約するものではなく、 合意された実施要件を満たす限りにおいて、 各RIRは自らの方法を選択できる。

実施手続きが採択されていない場合であっても、 RIRは本文書に定める包括的な義務および原則に従う裁量を保持する。 本文書のいかなる実施手続きも、 本文書の条項と矛盾または優先してはならない。

実施手続きが存在しない場合でも、 本文書の各規定は拘束力を失うものではない。

第2条 インターネット番号資源レジストリシステム

2.1 役割と責任

インターネット番号資源レジストリシステムにおいて、 以下の組織は次の役割と責任を有する。

  1. 個々のRIR:各RIRは、自らのサービス地域に対してRIRサービスを提供する責任を負う。
  2. すべてのRIR:RIRは共同でインターネット番号資源レジストリシステムを運営する。すべてのRIRは、すべての地域が継続的にRIRサービスを受けられるよう共同で確保しなければならない。
  3. IANA機能運営者:IANA機能運営者の責任は、IANA番号資源サービスのサービス水準合意(SLA)に定義される。
  4. ICANN:ICANNは、IANA機能運営者の監督、RIRと協働したグローバルポリシー策定の促進、その他RIRとの合意による関連業務(本文書に規定される責任を含む)を含む、インターネット番号資源レジストリシステムに対する包括的調整を担う。

2.2 サービス地域

インターネット番号資源レジストリシステムの整合性を維持するために、 各サービス地域は多数の国を持つ広い地域とし、 他のRIRのサービス地域と重複してはならない。

2.3 RIRステータスの変更

RIRの認定または認定取り消しは、 以下の手続きに従ってのみ行うことができる。

(a) 認定

  1. 提案

    候補RIRは、 認定を求める提案を文書でRIRおよびICANNに提出することができる。

  2. 審査

    インターネット番号資源レジストリシステムの整合性を維持するため、 各RIRは提案を独自に審査し、 賛成または反対の勧告を独自に行い、 その理由とともに公開しなければならない。 RIRは、必要に応じて候補RIRに照会を行うことができ、 候補RIRは合理的努力をもって回答し、 その回答をすべてのRIRに共有しなければならない。

    審査にあたって各RIRは、 その他関連と判断する事項に加えて、以下を考慮する:

    1. 候補RIRおよびその統治機関のメンバーが健全な品格と誠実さを有すること(例:不正行為や詐欺、虚偽表示等の罪で有罪判決を受けていない)。
    2. 認定された場合に、他のRIRが候補RIRと法的かつ実効的に協力できること。
    3. 候補RIRを認定することが、他のRIRが本文書を遵守する能力を阻害しないこと。
    4. 候補RIRを認定することが、インターネット番号資源レジストリシステムの運営に積極的に寄与するか、または少なくとも阻害しないこと。
  3. 承認

    RIRが全会一致で認定を勧告した場合、 その提案は第2.3(c)に従いICANNに付託される。

  4. 却下

    RIRが全会一致で認定を勧告しない場合、 提案は却下されたものとみなされる。

  5. 認定審査

    候補RIRが、 いずれかのRIRの不認定勧告が誤りまたは根拠に欠けると合理的に考える場合、 以下の手続きにより認定審査を請求できる。

    1. 異議申立

      候補RIRは、 理由と証拠を詳細に記載した異議をICANNに提出できる。 ICANNはこれを公開し、 独立した第三者を指名して認定審査を行わせる。

    2. 審査の実施

      第三者は提案、各RIRの勧告、異議を考慮し、 必要と判断する調査を行う。 審査完了後、第三者は報告書を作成し、ICANN、 各RIR、候補RIRに提出し、ICANNが公開する。

    3. 認定審査の判断

      第三者が、いずれかのRIRが重大な事実誤認をした、 または根拠が不十分であると判断した場合、 提案は再考のためRIRに差し戻される。 各RIRは第三者の報告を考慮して再審査を行うが、 必ずしも勧告を変更する義務はない。 結果は第2.3(a)(iii)に従う。

    4. 反対意見の差し止め

      第2.3(a)(v)(C)に基づく再審査において、 一つのRIRのみが候補RIRの認定を勧告しない場合(これを『反対するRIR』という)において、 候補RIRが、その反対するRIRの勧告が誤り、 または十分な根拠に基づかないと合理的に考えるときは、 候補RIRはICANNに最終的な異議を申し立てることができる。 ICANNはこれを公開し、同一の第三者に最終審査を委託する。 第三者が以下を判断した場合:

      1. 反対するRIRが重大な事実誤認または根拠不足の勧告を行ったこと。
      2. 候補RIRがすべての認定要件を満たしていること。

      反対するRIRの勧告は無視され、提案は第2.3(c)に従いICANNに付託される。

(b) 認定取り消し

  1. 提案
    認定取り消しの提案は、 以下が文書でRIRおよびICANNに提出できる:
    1. いずれかのRIRまたは複数のRIR。
    2. 該当RIRの会員の25%または2,000名のいずれか少ない方。
    3. ICANN。
  2. 内容
    有効な提案には、認定取り消しの理由と、 本文書のどの条項に違反しているかが記載されなければならない。
  3. 提出と回答
    提案が提出された場合、他のRIRまたはICANNはそれを公開し、 対象RIRに合理的な期間を与えて書面で回答させ、 その回答も公開しなければならない。 その後、他のRIRが第2.3(b)(iv)に従い審査する。
  4. 審査
    各RIRは提案を独立して審査し、 賛成または反対の勧告と理由を公開する。
  5. 承認
    対象RIRを除くすべてのRIRが全会一致で取り消しを勧告した場合、 提案はICANNに付託され、ICANNが最終決定を行う。 それ以外の場合、提案は却下されたものとみなされる。

(c) ICANNの決定

  1. 協議と決定
    ICANNは付託された提案について最終決定を行う。 ただしその前に、 対象となるRIRまたは候補RIRを含むすべてのRIRと協議しなければならない。 ICANNは決定と理由を公開する。
  2. 再審査
    ICANNの決定に影響を受けるRIRまたは候補RIRは、 ICANNの当時の手続きに従い、決定の再審査を請求できる。
  3. ICANNの権限制限
    1. RIRによる承認済み提案がない限り、 ICANNはRIRの認定または取り消しを行う権限を持たない。
    2. ICANNの承認は、RIRおよび候補RIRが同意しない限り、 提案を修正することはできない。

(d) 決定手続き

本条に基づく各組織の決定は、その組織の意思決定手続きに従って行う。

2.4 臨時監査

以下の場合、ICANNはRIRが本文書に準拠しているか臨時監査を行う。

  1. 他のRIRの過半数(対象RIRを除く)が要請した場合。
  2. 対象RIRの会員の25%または2,000名のいずれか少ない方が要請した場合。
  3. ICANNが開始した場合。

2.5 協調のための制限

インターネット番号資源レジストリシステムの目的は、 番号資源コミュニティに安定かつ信頼できるサービスを提供することである。 そのためRIRの数は技術的・運営上の必要性に応じて少数にとどまることが想定される。 RIR間の協調は、安定・信頼・安全なサービス提供に必要な事項に限定される。

2.6 下位地域レジストリ

本文書のいかなる規定も:

  1. IANA機能運営者から直接番号資源を受け取らない国別インターネットレジストリ(NIR)、 ローカルインターネットレジストリ(ISP)、 その他下位地域レジストリ(総称して「下位地域レジストリ」)に直接適用されるものではない。
  2. RIRが以下を決定する権限を制限しない:
    1. 下位地域レジストリを認めるか否か。
    2. 下位地域レジストリに番号資源を再委任するか否か。
    3. 上記(i)または(ii)を行う条件や状況。

ただし、再委任した場合でもRIRは本文書に基づく義務を免れない。

2.7 言語

英語はインターネット番号資源レジストリシステムの公式言語である。 RIRは内部業務においては適切な言語を使用できる。

2.8 誠実性

ICANNおよびすべてのRIRは、 本文書に基づくすべての事項において誠実かつ公平に行動しなければならない。 本文書に基づき求められるすべての行動は、速やかに、 かつ合理的な期間内に実施し、 手続きが不当に遅延しないようにしなければならない。

第3条 認定(Recognition)

3.1 認定の基準

候補RIRは、以下の要件をその認定提案において示し、 既存RIRおよびICANNを納得させなければ認定されない。

  1. 地域資格:候補RIRが提案するサービス地域は、 第2.2の要件を満たさなければならない。 候補RIRの提案には、 既存の一つまたは複数のRIRのサービス地域を変更して、 新たに重複のないサービス地域を形成することが含まれてもよい。
  2. 資源ホルダーによる支持:候補RIRの提案するサービス地域における資源ホルダーが広く、 候補RIRをその地域にRIRサービスを提供する責任主体として認定することを支持し、 かつ候補RIRを財政的に支援し、 そのガバナンスに積極的に参加する意思を有していること。
  3. コミュニティによる支持:候補RIRの提案するサービス地域における番号資源コミュニティが、 候補RIRを支援する意思を持ち、 特にそのポリシー策定プロセスに積極的に参加すること。
  4. 能力:候補RIRが、 第4.1で定めるRIRの運営要件を実質的に満たすことができること。
  5. 影響:候補RIRを認定することが、 インターネット番号資源レジストリシステムに悪影響を与えず、 既存のRIRが本文書に基づく遵守義務を満たせなくなることを引き起こさないこと。
  6. 改善:候補RIRを認定することが、 当時の現状と比較してインターネット番号資源レジストリシステムの機能に実質的な改善をもたらすこと。

3.2 認定による責務

第2.3に従い候補RIRを認定する決定が下され、 決定通知に定められた期限や条件が満たされた場合、 その効果は以下の通りとする。

  1. RIRサービス責任:認定されたRIRは、 決定通知に指定されたサービス地域においてRIRサービスを提供する責任を負い、 その地域のRIRとなる。
  2. NROへの参加:認定されたRIRはNROのメンバーとなり、 そのために必要な手続きを行い、必要な文書を締結する。
  3. RIRガバナンス文書の適用:認定されたRIRは本RIRガバナンス文書の適用を受け、 そのために必要な手続きを行い、必要な文書を締結する。

第4条 継続的な義務(Ongoing Commitments)

4.1 運営要件

各RIRは、本文書を継続的に遵守し、 かつ以下の運営要件を監査可能な形で満たさなければならない。

  1. 財務的独立:RIRは財務的に安定していなければならず、 政府や民間主体に財政的に依存してはならない。 ただし、 会員や資源ホルダーから公平に徴収される中立的な手数料に依存する場合は除く。
  2. 運営上の独立:いかなる政府や民間主体も、 RIRが提供するサービスに対して不当な支配や不当な影響を及ぼしてはならない。
  3. 非営利性:RIRは非営利の原則に基づいて運営されなければならない。
  4. 法人化:RIRは法人格を持ち、 かつ本部を自らのサービス地域内に置かなければならない。
  5. コーポレート・ガバナンス:RIRは良好なコーポレート・ガバナンスの手続きを遵守しなければならない。
  6. オープンメンバーシップ:RIRは、 自らに登録された番号資源を保持するすべての法人または自然人に対し、 会員となることを認めなければならない。
  7. ガバナンス:RIRの統治機関の多数は会員によって選出されなければならず、 統治機関はRIRに対して実効的な支配権を維持しなければならない。
  8. ポリシー策定プロセス:RIRは、 そのポリシー策定プロセスに関して明確に文書化された手続きを維持し、 遵守しなければならない。 プロセスは公開され、透明で、ボトムアップで、公平で、 公開文書化され、番号資源コミュニティ主導であり、 すべての利害関係者が公開アーカイブされたメーリングリストその他の適切な議論の場を通じて番号資源ポリシーの議論に参加できる仕組みを備えていなければならない。
  9. ポリシー遵守:RIRは、 自らに適用されるすべての番号資源ポリシーを遵守しなければならない。 ただし、ポリシーの遵守が適用法令に違反する義務を生じさせる場合を除く。
  10. 公平性:RIRは、自らの番号資源ポリシーを、 公平かつ一貫した方法で運用・適用しなければならない。
  11. 透明性:RIRは、そのガバナンス・活動・財務について、 包括的な記録を適時かつアクセス可能な方法で維持・公開しなければならない。 統治機関は、会員が質問や意見を提示し、 正当な質問に対して適時かつ意味のある回答を受けられる仕組みを提供しなければならない。
  12. パフォーマンス:RIRは、 NROによって採択される標準プロトコルおよび仕様に従い、 安定的・信頼性が高く・安全で・正確かつ説明責任あるRIRサービスを提供しなければならない。
  13. 継続性:RIRは、自らのサービスを継続的に利用可能とするため、 継続性および冗長性の手続きを維持し、遵守しなければならない。 また、適切なエスクローまたはデータ保護の管理下で、 記録・データ・リージョナルポリシーの実施手順・システムを定期的に緊急オペレーターと共有し、 必要に応じて緊急オペレーターがRIRサービスを提供できるようにしなければならない。
  14. 会合:RIRは、 番号資源ポリシーに関するコミュニティ討議を促進するため、 少なくとも年1回のコミュニティ会合を開催しなければならない。 また、ポリシー策定プロセスの一環として、 コミュニティ討議を促進する公開チャンネルを維持しなければならない。
  15. 過度の支配の防止:RIRは、 いかなる個人・組織・関係会社グループもRIRを実質的に支配できないようにするため、 ガバナンス規則および統制を維持しなければならない。
  16. 機密保持:RIRは、 資源ホルダーまたは申請者から登録サービスの提供過程で収集した非公開の登録情報について、 その機密性を保持しなければならない。 ただし、適用法に従う場合や、本文書で要求される場合は除く。
  17. 紛争解決:RIRは、 会員がRIRに対する権利を実効的に行使できる、 公正かつ効果的な裁定手段を提供しなければならない。 その制度は以下を満たすこと:
    1. 独立性と公平性を保障すること。
    2. 執行可能な結論(判決または裁定)を適時に提供し、 必要に応じて有権裁判所による承認・執行が可能であること(または第一審から裁判所で判断されること)。
    3. 暫定的措置に対する裁判所監督および、 裁定後・判決後に法定事由に基づく限定的な再審査が可能であること。
  18. エコシステムの安定性:RIRは、 他のRIRと協力してインターネット番号資源レジストリシステムの継続的な運営と安定を確保しなければならず、 またその安定を脅かす方法で運営してはならない。

4.2 監査

RIRは、 ICANNが任命する外部かつ独立した監査人による定期監査または臨時監査に参加し、 協力しなければならない。 監査の目的は、 本文書に引き続き準拠していることを確認することである。 各監査の要約報告はICANNによって公開される。

第2.4に従って実施される臨時監査に加え、 各RIRは少なくとも3年に1度は定期監査を受けなければならない。

第5条 緊急時継続(Emergency Continuity)

5.1 緊急時継続

RIRが、 そのサービス地域に対して自らのRIRサービスのすべてまたは一部を十分に提供できなくなった場合、 当該事象(以下「緊急時継続」)に対処するために、 一時的な取り決めを開始して影響を受けるサービス地域へのRIRサービスの継続を確保することができる。

緊急時継続の期間中、他のRIRおよびICANNは、 緊急オペレーターを承認し、 影響を受けたRIRサービスを一時的に提供させることができる。 緊急オペレーターは、 本文書および適用される実施手続きの要件に従って行動しなければならない。

緊急時継続は、以下の条件に従う。

  1. 緊急時継続は、 影響を受けたRIRおよびそのコミュニティと可能な限り協議を行ったうえで、 他のすべてのRIRおよびICANNの全会一致によってのみ開始できる。
  2. 緊急時継続を開始する決定は、その理由および範囲を含め、 ICANNによって速やかに公開されなければならない。 また、透明性を確保し、 緊急時継続期間中にフィードバックを可能とするため、 すべてのRIRコミュニティおよびICANNコミュニティとできるだけ早期にコミュニティ関与プロセスを開始しなければならない。
  3. 影響を受けたRIRは、第4.1(m)に従って、 影響を受けたRIRサービスの一時的な引き渡しに協力しなければならない。 また、運用能力が回復し、ICANNによって検証された後は、 当該RIRは自らのサービスを再開する権利を保持する。
  4. 緊急時継続は90日を超えてはならない。 ただし、本条の条件に従って更新される場合を除く。

5.2 緊急時継続終了後のレビュー

いかなる緊急時継続期間の終了後も、 RIRとICANNは共同で事後レビューを実施し、 緊急時継続の取り決めの有効性、妥当性、 影響を評価しなければならない。 このレビューには以下を含む。

  1. 緊急時継続に至った状況、提供されたRIRサービス、取り決めの期間、 影響を受けたRIRへのサービス返還手続きを詳細に記した公開報告。
  2. 緊急オペレーターの実績評価(本文書および適用される実施手続きに定められた範囲と制限を順守したかどうかを含む)。
  3. 影響を受けたRIRのコミュニティ、他のRIRコミュニティ、 ICANNコミュニティからの意見を募集するコミュニティフィードバックプロセス。
  4. 緊急時継続手続きを改善するための提言(本文書または関連する実施手続きの修正案を含む)。
  5. ICANNによる最終レビュー報告の公開。

第6条 認定取り消し(Derecognition)

6.1 認定取り消しの可能性

RIRが本文書に定められたすべての要件を継続的に満たさない場合、 第2.3に定められた手続きに従い、 そのRIRは認定取り消しされることがある。

6.2 改善(リハビリテーション)

RIRが本文書に違反している場合、原則として、 その他の対応策よりも当該RIRの是正を支援することが優先される。 当該RIRは、違反を是正する合理的な機会を与えられなければならない。 そのため、ICANNおよび他のすべてのRIRは、 要請があれば合理的な支援を提供し、 違反を是正することを助けなければならない。

RIRの認定取り消しは最後の手段としてのみ行われるべきであり、 当該RIRの不遵守を容認し続けることによる不利益が、 番号資源コミュニティやインターネット番号資源レジストリシステムに対する利益を上回ると合理的に判断される場合に限られる。

6.3 認定取り消し後の責務

第2.3に従ってRIRを認定取り消しする決定が下された場合、 その効果は以下の通りとする。

  1. 引き渡し:認定取り消しされたRIRは、 ICANNの指示に従って、 後継組織または暫定組織(緊急オペレーターなど)へのRIRサービスおよび業務の円滑な移管を確実に行わなければならない。 この義務には、 移管を妨げたり遅延させたりする可能性のある行為を避け、 移管を実現するために必要なあらゆる行為を取ることが含まれる。
  2. RIRサービス責任:認定取り消しされたRIRは、 決定通知に記載されたサービス地域に対してRIRサービスを提供する責任を負わなくなり、 その地域のRIRとして認められなくなり、 またRIRサービスを提供または提供を装うことを中止しなければならない。 後継組織または暫定組織、およびICANN、IANA機能運営者、他のRIRは、 当該サービスを移行させるために合理的に必要な行為を行う権利を有する。
  3. 会員資格:認定取り消しされたRIRは、NROのメンバーではなくなる。
  4. 実施タイムライン:上記にかかわらず、決定通知において、 特定の効果が発効または公式化するまでに満たされるべきタイムラインや条件が定められる場合がある。

6.4 移行準備

RIRおよびICANNは、必要に応じて、 合理的な期間内にRIRサービスを後継組織または暫定組織(緊急オペレーターなど)へ移管できるよう、 共同で準備と体制を整えておかなければならない。 これは、緊急時継続や認定取り消し後の移管を含む。

第7条 改定(Amendment)

7.1 承認

本文書は、 ICANNおよびすべてのRIRの全会一致の合意によって改定することができる。 ただし、改定にあたっては、 それぞれのコミュニティとの協議を経なければならない。

7.2 整合性

本文書またはその改定が、RIRの実務と矛盾する場合、 本文書が優先される。 影響を受けるRIRは、自らの実務を本文書に整合させなければならない。 そのために、 影響を受けるRIRには合理的で具体的な猶予期間が与えられる。 この猶予期間を過ぎた場合、当該RIRは不遵守とみなされる。

いかなる改定においても、 その猶予期間は明確に規定されなければならない。 ICP-2に明示的または暗黙的に含まれていなかった新たな義務が本文書によって導入される場合、 各RIRには、本文書発効後3年間の猶予期間が与えられる。

7.3 定期的レビュー

NROおよびICANNは、 本文書が見直しを要するかどうかを少なくとも5年ごとに評価しなければならない。 誤解を避けるために明記すると、この評価の結果として、 見直しが不要と判断される場合もある。

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