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ICANNにおける名前衝突問題への対処

2026年5月1日

このページでは、 名前衝突(Name Collision)問題ページで詳解した、 新gTLDプログラム2012年ラウンド時点の状況ののち、 ICANNでどのような取り組みと対策が取られたかを説明します。

NCAPによる名前衝突問題の分析

2017年11月にICANN理事会はICANN Security and Stability Advisory Committee (SSAC)に対して、 名前衝突のリスクを軽減させる行動について特定するための徹底的かつ包括的な調査を実施するよう要請しました。 これを受けて始まったのが、Name Collision Analysis Project (NCAP)です。

NCAPは当初3段階で計画されました。 Study1は、 過去の研究や取り組みを要約した入門用の報告書を作ることや、 後続のStudy2、3に必要なデータセットを作成すること、 そしてそれらの結果に基づきStudy2や3を実施すべきかを判断することを目的に実施されました。 そして、ルートDNSサーバにおけるクエリ観測などを通じてName Collisionが現実に広く発生していることを確認しました。 一方で、このクエリにどの程度のセキュリティリスクや運用上の影響があるのかについて十分に評価するフレームワークがないことが明らかになりました。 また、Study2と3は当初の設計のまま実施すべきではないと判断され、 Study2に関してはスコープの縮小、 Study3はStudy2の実施後に実施の可否を検討することとなりました。

そこで、Study1で提起された課題を踏まえ、 2021年3月にStudy2が再設計されました。 Study2では、 名前衝突のリスクを実際の影響に基づいて評価する手法の確立やリスクシナリオの整理が主な目的とし、 NCAP Study 2 Final Reportは2024年4月に完成しました。 ここでは文字列ごとに名前衝突のリスクは固有であるとされ、 従って、全文字列に適用できる汎用的な緩和策の開発をめざすというStudy3の目標は達成不可能であると判明したため、 Study3を中止すべきとしました。

このNCAP Study 2 Final Reportの内容はSAC124としてまとめられた上、理事会に提出され、 理事会は2024年9月に、 勧告4.1 (ICANNは.corp、.home、.mailを名前衝突リスク評価手順にかけるべきである)を除くすべての勧告を承認しました

新gTLDプログラム2026年ラウンドに向けた実施準備

これらの勧告に基づいて、 新gTLDプログラム2026年ラウンドの準備が進む中、 2026年1月から3月までの間に名前衝突のリスク評価の手順の検討が進みました。 次項「名前衝突リスク評価手順」で説明します。 詳細は 申請者ガイドブック の7.7 Name Collisionの章をご参照ください。

また、2026年2月には Name Collision Observatory (NCO)ツール が公開されました。 これはTLDの文字列がどれほどルートサーバなどに問い合わせされているのかが表示されるものです。 これはTLD申請者が名前衝突のリスクを評価する際に役立つものです。

名前衝突リスク評価手順

リスク評価は大きく分けると初期評価、一時的委任、 高リスクの文字列の分類、 高リスク文字列緩和計画の評価の順に行われます。 また、この評価プロセスは外部委員会が実際の評価を行い、 ICANNの技術レビューチーム(TRT: Technical Review Team)がそれをレビューするという明確な役割分担がなされており、 客観的な監督と利益相反の防止を実現しています。

初期評価

初期評価は定量的評価の後に、定性的評価が行われます。 定量的評価ではその文字列がTLDとしてどれほど多くのネットワークから参照されているかを示した DNS Maginitude などの複数の定量データを用いて評価を行います。 明確な閾値が設定されており、 これを下回るものについては「高リスクではない」と判断され、 定性的分析を行わずに初期評価が終了します。 定量的な閾値を超え、さらなる調査が必要とされた文字列については、 専門家による定性的分析が行われます。 ここでは、 地理的な要因やエネルギーや医療などの重要インフラへの影響、 委任を妨害するための意図的なものの可能性も考慮されます。 また、初期評価のレポートはパブリックコメントに公開されます。

一時的委任

初期評価の結果に関わらず、 すべての申請文字列を対象としてルートゾーンに一時的に(基本90日間)委任されます。 これは、事前のデータだけでは、 実際のルートゾーンに委任された後に何が起こるかが完全に把握できないためです。 委任期間中にはTRTがプライバシーや運用の混乱リスクを考慮しながら、 専門的判断に基づいてデータ収集・監視を行います。 委任開始から数日間はデータが特に綿密に監視されます。 もし、深刻な名前衝突が引き起こされているとTRTが判断した場合には即座に委任を取り消し、 サーバから対象を削除する緊急対応が取られます。

高リスク文字列の分類

初期評価や一時的委任のデータに基づいて、 その文字列が「高リスク」なものかどうかを専門家が判定します。 判断軸として、「公衆の安全」(医療、エネルギー、 通信などの重要インフラへの影響)と、 「公衆の信頼」(大規模な通信障害や情報漏洩などによるインターネットへの信頼低下)の二つの観点が用いられます。 いくつかの基準値はあるものの機械的な計算ではなく、 名前衝突が深刻で広範囲で持続的な影響を引き起こす可能性が高いかを基準に最終的な評価がなされます。

高リスク文字列緩和計画評価

初期評価または一時的委任の段階で高リスクだと分類された文字列は、 パブリックコメントのために公開されている「衝突文字列リスト(Collision String List)」に追加されます。 高リスク文字列に分類されないと判断されたものについてはgTLD登録に向けた後続のプロセスへ進んでいきます。 一方で申請した文字列が高リスクだと判断された場合は、 他の申請者と競合状態でなければ、 申請者が名前衝突の根本原因の分析などを含めた「高リスク文字列緩和計画(High-Risk String Mitigation Plan)」を作成し追加料金とともに申請することで、 追加のリスク評価を申請することができます。 提出された計画は専門家による外部委員会によって評価されます。 根本原因が正確に特定されているか、 そして対策が有効に機能する可能性が高いかが審査され、 外部委員会の承認された後、 パブリックコメントのために公開されます。 期間終了後、ICANNが最終的な承認を決定します。 緩和計画に事後対策が含まれる場合はレジストリ契約への法的義務組み込みが行われた段階、 事前対策がある場合はその有効性の検証基準は示され、 条件を満たした段階で当該文字列は衝突文字列リストから削除され、 gTLD登録に向けた後続のプロセスへ進んでいきます。

最後に

安全で安定したインターネット識別子システムを提供することはICANNの使命です。 名前衝突は新gTLDプログラム2012年ラウンド施行後に大きく問題視され、 一部の申請文字列の委任中止に至ったものの、 その時点でこの名前衝突の問題にどのように対処できるか、 見通しがありませんでした。 NCAPはこの問題に7年がかりで取り組んだプロジェクトで、 その結果、リスクの評価と軽減への対策を、 2026年ラウンドに間に合わせることができました。 コミュニティの協働によってインターネットの問題に対処する、 ICANNの取り組みの好例と言えるでしょう。

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