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/P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.167【臨時号】2004.4.23 ◆
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◆ News & Views vol.167 です
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インターネット社会における課題を解決することのできる人材を発掘し育成し
ていくために結成された、JPNIC Next Generation Task Force。先日行われた
同Task Forceの研究会では、日本のインターネットの発展に深く関わってこら
れた方々から、日本のインターネット萌芽期の大変興味深いお話があったよう
です。
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◆ 第7回Next Generation Task Force研究会
「日本のインターネット、これまでの20年とこれから」
JPNIC Next Generation Task Force Vice-Chair
(株)日本レジストリサービス
遠藤淳
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Next Generation Task Force(以下ng-tf)は2004年4月10日に第7回研究会を
開催しました。第一部ではこの1年のng-tfの活動報告を行い、第二部では「日
本のインターネット、これまでの20年とこれから」と題して、以下の4名のパ
ネリストをお迎えして、パネルディスカッションを開催しました。
高橋徹氏 (IAjapan副理事長/RIIS代表取締役会長)
滝田誠一郎氏(ノンフィクション・ライター)
中村修氏 (慶應義塾大学環境情報学部助教授/WIDE Project)
前村昌紀氏 (JPNIC理事/JANOG運営委員)
今回、以下のようなことを目指し、このテーマの研究会を行いました。
1. 若い人やこれまでインターネットとの関わりが少なかった人が、昔のこ
とを知り、どういう経緯で現状があるかを認識することで、いろいろな
ことを考える上で参考にしてもらいたい
2. 「インターネットの歴史を編纂する」という取り組みのコンテンツを引
き出すとともに、このような取り組みに関心を持つ人の輪を広げたい
◇ ◇ ◇
まずコーディネーターの遠藤が話の前提となる組織名や事象を事前に把握する
という目的で「日本のインターネットの発展を理解するためのキーワード」と
題した基調報告を行った後に、パネルディスカッションがスタートしました。
最初のパートでは、パネリストの皆様から、自分とインターネットとの関わり
合いを交えながら自己紹介が行われました。
二つ目のパートでは、「さまざまな組織の立ち上げ」「商用プロバイダの誕生」
「日本のインターネットコミュニティの課題」などのテーマで、日本のインター
ネットのこれまでの20年を振り返りながらディスカッションを行いました。以
下、ディスカッションの模様の一部をご紹介します。
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日本のインターネットのこれまでの20年を振り返る
◆さまざまな組織の立ち上げ
WIDE(*1)プロジェクトに発足時から関わり、現在はボードメンバーである中村氏
から「インターネットの組織を作るとはどういうことか」という観点で発言があ
りました。
なぜ組織をつくるのかと言えば、きちんとしたサービスを提供するためです。
例えば、JPNICはIPアドレスのマネジメントをやるためで、性質上、国にも
ある程度関わってもらった方がよいということで、4省庁共管の社団法人に
なりました。INETクラブ(*2)は、当時KDD研究所の国際回線にJUNET(*3)が乗っ
かっている形では法律に抵触するので、その問題を解決するため任意団体と
して組織化されました。また、IIJ(*4)は商用のサービスを提供するために
作られました。だから株式会社という形態を取っています。
(編集注:現在は3省庁共管です。会員が会費を支払うに際してJPNICが法人格
を持たないと経理上の困難を生じるという点や、JPNICの業務が社会的な認
知を得るという観点から、JPNICは社団法人化されました)
また、JANOG(*5)の立ち上げに関わり、現在も運営委員として活動を牽引する
前村氏に、JANOGが始まったきっかけや組織運営の難しさなどをお話いただき
ました。
NANOG(*6)のような場が日本にはないので作ろうというのがきっかけで1997
年にスタートしました。ボランティア、非営利で運営しています。例えば、
古いマシンをチューニングしてサーバにしたり、ドメイン名維持料を飲み会
のおつりから捻出するなどしています。最初のメーリングリスト登録者は10
人くらいでしたが、現在、4,000人が参加するコミュニティになっており、
「JANOGって誰なの?」など、いろいろと課題が出てきています。そのよう
な中、運営委員の中でもJANOGに対しての思いに差があるのが現状で、いろ
いろと議論を重ねています。
(*1) WIDE:http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-kz.html#03-WIDE
(*2) INETクラブ:「国際科学技術通信網利用クラブ」。日本のネットワーク
を効率よく国際接続するために1987年に作られた非営利の
会員組織。1994年に解散。
(*3) JUNET:http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-ij.html#02-JUNET
(*4) IIJ:(株)インターネットイニシアティブ。1992年12月にインターネット
イニシアティブ企画として設立。国内初のプロバイダ事業会社。
(*5) JANOG:JApan Network Operators' Group
http://www.janog.gr.jp/
(*6) NANOG:The North American Network Operators' Group
http://www.nanog.org/
◆商用プロバイダの誕生
日本では1993年にインターネットの接続を行う商用サービスがスタートしまし
た。当時の雰囲気について、東京インターネット(*7)で社長としてプロバイダ
事業に携わった高橋氏に発言いただきました。
神戸で開かれたINET92(*8)で「これからのインターネットで何が面白い?」
とロータスの創業者のMitchell Kaporに尋ねたところ、「商用インターネッ
トのプロバイダは20世紀に残された最大のビジネス。絶対間違いない」と言
われました。さらに、この発言にInteropの創始者であるDan Lynchも同意し
たのです。1992年頃、新日鉄と電力中央研究所から「マルチクライアント調
査」を委託されました。テーマは商用インターネット(プロバイダ事業)で
す。アメリカ中を回り、Vint Cerf、Rick Adamsらインターネットを作って
きた方々と会い、プロバイダ事業の可能性についての調査をし、報告を行い
ました。
また、中村氏からはIIJ設立に至る経緯についての発言がありました。
WIDEも最初は一生懸命プロモーションを行い「ぜひ、共同研究しましょう」
と言って、ボランティアで接続先を増やしていきました。そのうちに「うち
でもつなぎたい」と皆が言ってくる事態になり、「研究」という名の元では
手に負えなくなってきました。「このままでは自分達がつぶされる」という
危機感もあって商用のインターネットを立ち上げようという認識を持つよう
になりました。郵政省での研究会では大手が商用インターネットに参入する
「夢」は描くことができませんでした。仕方がないので、WIDEのメンバーが
金を出しあって、IIJを設立するための資本金を集めたのです。
(*7) 東京インターネット:東京インターネット(株)。1994年12月に設立され、
翌年4月にサービス開始。
(*8) INET92:1991年から始まったインターネットに関する国際学会。ISOC
(Internet Society)が主催しています。
◆日本のインターネットコミュニティの課題
2002年に出版された『電網創世記 ・インターネットにかけた男たちの軌跡』
の取材などを通じて、コミュニティを外から見てきた滝田氏に、「インターネッ
トコミュニティの課題」ということで発言いただきました。
日本のインターネットの普及発展は、WIDEに代表されるようなネットワーク
型組織の力で広がりを見せてきたと思います。一方で、結果としてみると、
ある一つのネットワークの中に関係者が固まってしまっているのではないか、
という感じが外から見るとあります。WIDEプロジェクトの功績がそれだけ大
きいということですが、裏返しとして、WIDEの中ににいろいろな人が集まっ
て、WIDEの中を見てやっている部分があるのかなと感じを受けることが時々
あります。ネットの問題をネットの中だけで考えるのではなく、ネットの外
との関係性の中でいろいろ物事を考えていくことが大事で、そういうことの
橋渡しをできる人がもっとたくさん出てくるとよいのかなと思っています。
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最後のパートでは、「Next Generation(若い人材)に期待すること。これか
らインターネットコミュニティで自分が取り組んでいきたいこと」というテー
マで、研究会参加者とng-tfのメンバーへのメッセージと抱負をパネリストの
皆様に語っていただきました。
「もっと時間があれば」というところでパネルは終了となりました。参加いた
だいた方にはさまざまなことに携わった方々から直接当時の様子を聞く良い機
会になったのではないでしょうか。
また、JANOGにおける前村氏の苦労話や中村氏からのng-tfに対する率直な叱咤
激励など、ng-tfのメンバにとって、いろいろと自分たちの活動の参考となる
話を聞く機会ともなりました。
「日本のインターネットの発展を牽引してきた方々から学ぶ」という取り組み
そのものについては、今回のパネルディスカッション一度限りとはぜず、その
手法などについて多くの方のご助言をいただきながら、今後も続けていきたい
と思っています。
当日の資料やパネルディスカッションの詳しい模様については、後日JPNICの
Webにて公開する予定です。どうぞご期待ください。
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