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    /P▲         ◆ JPNIC News & Views vol.556【臨時号】2008.7.7 ◆
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◆ News & Views vol.556 です
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2008年6月に開催されたICANNパリ会議と、それに関連したICANNのアナウンス
を受けて、TLDの新設について各所でさまざまな報道がされています。

本号では、今回のTLD新設に関する内容とその背景について解説するととも
に、gTLDの日本語訳の変遷についてもお伝えします。

なお、ICANNパリ会議の報告会を、7月24日(木)に東京のアルカディア市ヶ谷で
開催いたします。参加登録受け付けを開始し次第、またあらためてお知らせい
たしますので、みなさまぜひご参加ください。

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◆ TLDの新設についての誤解
              JPNIC インターネットガバナンス・DRP分野担当理事 丸山直昌
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■ TLDの新設についての誤解

ここ1週間ほど、トップレベルドメイン(TLD)新設の話題が、いくつかのニュー
ス媒体でかなりセンセーショナルに取り上げられました。中には「.ibm」とか
「.love」、あるいは「.berlin」、果ては「.maruyama」のような個人名を付
けたTLDまで、誰でも申請できて好きなドメイン名を登録できる、というよう
な書きぶりのニュースまで見られました。発端はICANNパリ会議(2008年6月22
日~26日開催)における議論と、それに関するICANN側の報道発表(6月26日)
(*1)にあると思われますが、多くの報道にはかなりの誤解があると言わざるを
得ません。どのような誤解があるのか、本稿で述べてみたいと思います。

(*1) "Biggest Expansion in gTLDs Approved for Implementation"
http://www.icann.org/en/announcements/announcement-4-26jun08-en.htm(原文)
http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/2008/20080626.html(日本語訳)


ご存知の方も多いと思いますが、ICANNの設立(1998年10月)は、1996年頃から
高まったTLDの新設を要求する声に応える必要があった、という事情が深く関
係しています。そのため、TLDの新設は、設立以来ずっとICANNの最重要課題で
した。これまで2000年開始の第一ラウンド、2003年開始の第二ラウンドで合計
13個のTLDが新設されました。ここで言うTLDはgTLD(Generic Top Level 
Domain:別項「gTLDの訳語について」参照)と呼ばれるものですが、2回のラウ
ンドとも、新しいgTLDの登録事業(レジストリ)の運用を希望する組織が、申請
書をICANNに提出して審査が行われ、適切と認められれば申請した文字列のTLD
が新設されて申請者に運用が許可される、というプロセスでした。そして今、
これまでの経験を踏まえて、第三ラウンド以後に適用される申請プロセス、具
体的には申請の仕方とか申請書類の審査方法、の検討が行われています。

誤解の第一は、多くの報道がICANNがTLD新設のための規則改正を「承認した」
と言っている部分です。事実は申請プロセスの検討が一歩進んだ、というに過
ぎません。申請の仕方とか書類審査の判断基準は、言わばgTLD新設のルールで
すから、これまでとは違う申請プロセスがもし決定されれば、それを「gTLD新
設の規則を改正」と呼ぶことは言葉として適切ですが、事実はまだ検討中で
あって決定してはいません。

では、この点についてICANNパリ会議最終日の理事会決定はどのようなもの
だったのでしょうか。申請プロセスの検討は、2007年9月7日付で出されたGNSO
評議会から理事会へのポリシー勧告に基づいて、ICANNスタッフ(事務局)が
行ってきました。理事会決議ではまずこの勧告に関して、

決議[2008.06.26.02]
  新gTLDコミュニティの支持と、新gTLDの追加は実現可能であるとするスタッ
  フの助言に基づき、理事会はGNSO評議会のポリシー勧告を受け入れる。

とし、さらに

決議[2008.06.26.03]
  理事会はICANNスタッフに対して、申請プロセスの詳細実現計画の策定作業
  を継続・完成し、作業に関してコミュニティとの対話を継続しつつ、gTLD新
  設プロセス開始に向けて、実現計画の最終版を理事会とコミュニティ対して
  提示することを命ずる。

となっています。かなりもってまわった言い方ですが、要するに後の方の決議
で言うところの「実現計画の最終版」はまだできておらず、できたとしてもそ
の承認はおそらく次回(2008年11月)のICANN会議以降になると思われます。紛
らわしいのは初めの決議にある「ポリシー勧告を受け入れる」の部分で、この
部分だけ取って「承認した」という言い方が一人歩きしているようにも思えま
す。

誤解の第二は、「誰でも好きなTLDが取れて好きなドメイン名を登録できる」
の部分にあります。これのどこが誤解なのかを理解していただくために、現在
のgTLDで採用されている「レジストリ-レジストラ モデル」という仕組みを
まず説明します。
 
レジストリ-レジストラ モデルは、元々アメリカの独占禁止法に対する対策
として考えられた仕組みで、gTLDの登録機関(レジストリ)は一般顧客から直接
ドメイン名登録の申請を受けることができず、必ずICANN認定のレジストラを
通さなくてはいけない、という制度です。レジストラ経由で来た申請を拒絶す
ることも許されず、また特定のレジストラを他のレジストラに対して優遇する
ことも許されていません。今話題となっている「gTLDの新設」は、新しいレジ
ストリの募集であり、確かにこれまで2回のラウンドに比べて大幅に審査基準
が緩和されることが期待されていますが、レジストリ-レジストラ モデルは
厳格に堅持されることが予想されています。このため、例えばIBMが「.ibm」
というTLDを申請することはできますが、それが承認されたとしても、IBMが
「xxxx.ibm」というタイプのドメイン名を自分の好き勝手に登録できるわけで
はありません。レジストラ経由で「anti.ibm」というドメイン名登録申請が来
ても拒否できないのです。次回ラウンドの応募者はあくまでも、レジストリと
しての事業展開のために自由にTLD文字列を選べる、という話であって、応募
者が自社用に使うTLDを申請できるという話ではありません。また一般の登録
者が好きなドメイン名を登録できるか、という問題とも次元が違う話です。

さて、以上が今回の報道に見られる主要な誤解ですが、どうもこれらの誤解
が、必ずしも報道機関の怠惰によって起こったとは言い切れない面があるよう
な気がしてなりません。6月26日のICANN理事会決議は、上記のように注意深く
書かれており、誤解の余地はありませんが、同日付のICANN報道発表は、理事
会で決まったことを正確に説明しようというよりは、むしろICANNにおいてこ
の件について大きな前進があったということを世間に示すためのプロパガンダ
の色合いを強く感じます。このように感じるのは私だけでしょうか?

さらに踏み込んで言いますと、今回のICANNパリ会議でこの件について大きな
前進があったのかと言えば、それにも多くの疑問の声が上がっています。実
際、GNSOのポリシー勧告の実現には多くの困難があることが既に前回2008年2
月のICANNニューデリー会議で指摘されており、これらの困難な点が克服され
たという明確な根拠は、私の理解する限りでは、今回のパリ会議で示されてい
ません。理事会決議[2008.06.26.03] で、実現計画最終版の提示期限が明示さ
れていないのも非常に奇異です。多くのパリ会議参加者の感想は「今回の理事
会決議には新鮮味が無い」というものであり、理事の多くが困難克服にいまだ
に疑問を持っていることが、6月26日の理事会での討論からうかがえます。こ
の理事会の速記録は既に公開されていますので(*2)、興味がある方はご覧くだ
さい。

今後の本件の展開には、まだ多くの紆余曲折があるものと思われます。

(*2) Meeting of the ICANN Board
     http://par.icann.org/en/node/64


■ gTLD(Generic Top Level Domain)の訳語について

良い機会ですので、少し話題を変えて、gTLDの訳語についても話をしたいと思
います。

JPNICは長い間、「Generic Top Level Domain」の訳語として「分野別トップ
レベルドメイン」を使ってきました。しかし、1997年頃までは「一般トップレ
ベルドメイン」という訳語を使っていました。当時gTLDの代表格であった 
「.com」「.org」「.net」では既に登録者に対する審査は無く、実質上誰で
も、いくつでも登録できたので、"generic"に当初何の疑問も感じずに「一
般」の訳語を当てたわけです。実際、"generic"は"general"の派生語でもある
ので、自然な訳語にも思えました。

ところがある日突然、この場合の"generic"は"genre"(ジャンル、種類)の形容
詞形として使われているのではないのか?という考えが頭に浮かびました。例
えば、インターネットの父と言われるJon Postel氏が1994年に書いたRFC1591
を見てみますと、

  Each of the generic TLDs was created for a general category of
  organizations.                                     ^^^^^^^^

という記述があり、また、各TLDについて記述した部分では、「COM/EDU/NET/
ORG/INT」に続いて、

  United States Only Generic Domains:
                     ^^^^^^^

として、「GOV/MIL」について説明が行われています。「.gov」や「.mil」は
「一般向け」のTLDではなく、一部の特別な種類の組織を登録対象にしていま
すので、ここの"generic"を「一般」と訳すのは変で、むしろ「種類別」の方
が意味としては合っています。そう考え直してみると、RFC1591の全文を通し
てJon Postel氏が"generic Top Level Domain"の"generic"を"genre"の形容詞
形の意味で使っていたことは間違いないように思えてきました。

1997年頃、JPNICはIAHC(International AdHoc Committee)の最終報告書や、
gTLD MoUの日本語訳を手掛けましたが、"genre"に気が付いたのは翻訳が一段
落した後で、あらためてこれらの文書の原文を読み直してみると、著者達がこ
の場合の"generic"を"genre"の形容詞形として使っているという思いを一層強
く持ちました。実際これら著者達の多くはJon Postel氏と親交があったので、
共通の語感はごく自然なことだったと思います。そのようなわけで、この頃か
らJPNICは、それまでの翻訳文書で「一般トップレベルドメイン」を使ったの
は誤訳であったとの立場を取り、「分野別トップレベルドメイン」という用語
に切り替えました。ただし、過去の文書の訂正までは徹底し切れず、また一度
世の中に広がった「一般トップレベルドメイン」という用語も、無くなりませ
んでした。

その後 ICANNができて、gTLD新設の2回のラウンドがありましたが、その時も
新gTLDのレジストリ事業申請者は当該TLDの運用方針を説明した文書
(Description of TLD Policies)を申請書に添付することになっており、それ
が審査の対象にされましたから、これまでに作られたgTLDについてはそれぞれ
特定の利用目的が、少なくとも概念的にはある、というのがICANNの建前で
あったと思います。その意味で、JPNICがここ10年ほど「分野別トップレベル
ドメイン」という言葉を訳語として使ってきたことは、妥当であったと考えま
す(ただし、ICANNの建前と、それぞれのTLDにおいて第二レベルドメイン名登
録者に対する資格審査があるかないか、という話は、現状ではあまり関連付け
られていません)。


しかし、言葉は生き物です。全ての人が一つの言葉を同じ気持ちで使っている
とは限りません。時代とともに、また使用する状況により、違った使われ方を
される場合があります。最近の傾向として、「誰でも審査無しで登録できるか
らgeneric」という感覚でgeneric Top Level Domainという言葉を使っている
人達が多くなっていることも、また事実と思われます。それどころかICANNに
おいてすら、この用語の使い方に不統一が見られるように思います。通常の
ICANN会議の議論では「.com」「.biz」「.info」はいずれもgTLDですが、IANA
のRoot Zone Database(*)を見ると、「.com」と「.info」は"Generic 
top-level domain"と"Purpose"の欄に書かれているのに対して、「.biz」は
"Restricted for Business"と書かれていて、明らかに不統一が見られます。
さらに言えば、現在検討されている次回ラウンドのgTLD新設では、
"Description of TLD Policies"という添付書類も廃止される可能性もあり、
「誰でも自由に登録できる」TLDが名実ともにgTLDの主流になることが予想さ
れます。そうなった時は、JPNICは再び訳語を変更し、「一般トップレベルド
メイン」を使うべき時かもしれません。

(*3) IANA Root Zone Database
     http://www.iana.org/domains/root/db/


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            http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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