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    /P▲         ◆ JPNIC News & Views vol.779【臨時号】2010.9.14 ◆
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◆ News & Views vol.779 です
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2010年8月21日にIPv6アドレスの推奨表記を記述した、RFC5952が発行されま
した。このRFC5952の詳細とRFCができるまでの道のりを、本号より前後編の
2回に分けてお届けします。

まず本号では、このRFCで記述されているIPv6アドレスの推奨表記について、
執筆者であるNECアクセステクニカ株式会社の川島正伸氏による、解説記
事をお届けします。

なお次号では、共著者であるNECビッグローブ株式会社の川村聖一氏によ
り、「~一つのRFCができるまで~」と題して、RFC5952ができるまでの経緯
についてお届けする予定です。

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◆ IPv6アドレスの推奨表記、RFC5952ができるまでの道のり [前編]
   ~IPv6アドレス表記の柔軟性が引き起こす問題とRFC5952の解説~
                               NECアクセステクニカ株式会社 川島正伸
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

IPv4アドレス在庫枯渇をきっかけとして、ISPをはじめとする多くの通信事業
者にてIPv6の導入が進められています。しかし、具体的な検討やサービス開
発を進める上で、IPv6アドレスのテキスト表記が統一されていないことによ
る諸問題が散見されるようになってきました。

このような状況を改善すべく、NECビッグローブ株式会社の川村聖一さん
と共同で、IETFに対してIPv6アドレスの推奨テキスト表記に関する提案を行
うと同時に、製品開発者やシステム開発者の方々に対して、広く情報を周知
する活動を行ってきました。

以下では、RFC5952(*1)として発行された、IPv6アドレスの推奨テキスト表記
について、要点解説を行います。


■IPv6アドレス表記の柔軟性

IPv6アドレスのテキスト表記方法は、RFC4291(*2)の2.2節にて既に仕様化さ
れているのですが、表記としての柔軟性が高いため、実装者はさまざまな表
記方法を選択することが可能になっています。

例えば、以下のIPv6アドレスはいずれもRFC4291に準拠した表記となっていま
すが、"すべて同じ"IPv6アドレスを表しています。

      2001:db8:0:0:1:0:0:1
      2001:0db8:0:0:1:0:0:1
      2001:db8::1:0:0:1
      2001:db8::0:1:0:0:1
      2001:0db8::1:0:0:1
      2001:db8:0:0:1::1
      2001:db8:0000:0:1::1
      2001:DB8:0:0:1::1

これらのIPv6アドレスを見れば、何か問題が起こるのではないかと、直感的
に理解いただけるのではないかと思います。


■顕在化する問題は?

前述したIPv6アドレス表記の柔軟性により顕在化する問題は多岐にわたりま
す。

ISPや企業の多くは、表計算ソフトやテキストエディタを使用してIPアドレス
管理を行っていますが、このようなアプリケーションの中には、正規表現を
使用した検索を行うことができないものがあります。また、正規表現を使用
できるアプリケーションであったとしても、エンジニアではない使用者の場
合、正規表現を意識した検索を行わないことが想定されます。IPv4では、ほ
とんどのケースで正規表現を使用した検索は行われていませんから、当然の
ことと言えます。

正規表現を使用した検索が行われない場合、本来存在するはずのIPv6アドレ
スを検索することができず、考えられるIPv6アドレス表記をいろいろと検索
して、"検索に一致しません"のようなメッセージを何度も目にすることにな
るかもしれません。それだけでなく、そもそも検索に一致しなかったのだか
らと、既に存在するIPv6アドレスを使用して、アドレス重複の問題を引き起
こすかもしれません。

また、トラブルシューティング等の目的で、ネットワーク図に記述されてい
るIPv6アドレスを検索することがよくあります。この場合も同様に、考えら
れるIPv6アドレス表記を手当たり次第に検索することにより、トラブル復旧
までに無駄な時間を費やすことになってしまいます。

その他、ISPのIPアドレス管理担当者はWHOISシステムを頻繁に使用しますが、
入出力の結果が同じでなかった場合や、各地域のWHOISシステムの出力結果が
統一されていないことで、混乱を招く担当者もいるでしょう。

ログ分析や設定情報の監査を行う場合にも、問題が顕在化します。複数のロ
グをクロス分析する場合や、監査目的でログを照合するような場合、モジュー
ルや機能間の差分を吸収するために正規化処理が必要となります。

顧客からの問い合わせや、Abuse対応等の運用面でも問題が顕在化します。顧
客は必ずしもエンジニアではありませんし、IPv6技術に詳しくない可能性も
ありますので、顧客から伝えられたIPv6アドレスを正規化して把握する必要
があります。同様にAbuse対応においても、IPv6アドレスの柔軟性を意識した
対応が求められます。万が一、報告されたIPv6アドレス等を間違って認識し
てしまった場合には正常な通信を止めてしまうなど、想定外の深刻な状況に
陥るかもしれません。

その他の問題として、OSやネットワーク機器を変更する場合に、IPv6アドレ
ス表記の柔軟性を吸収するためのコード修正や、余分な作業が発生する可能
性があります。

また、一つの文書を複数の著者にて執筆するような場合、IPv6アドレス表記
に一貫性のない文書となってしまう可能性があります。

さらに、誤読の例として、大文字"D"と数字の"0"や、大文字"B"と数字の"8"
が挙げられます。


■IPv6アドレスの推奨テキスト表記

IPv6アドレスのテキスト表記を統一することにより、前述した問題の発生を
低減することが期待できます。

以下に、RFC5952で仕様化された推奨テキスト表記のルールを示します。

  (1) 16-Bit Field 内の先頭の"0"は省略すること。
      ※ "0000"の場合は、"0"にします。

          例.2001:0db8::0001 → NG
              2001:db8::1     → OK

  (2) "::"を使用して可能な限り省略すること。

          例.2001:db8:0:0:0:0:2:1 → NG
              2001:db8::0:2:1      → NG
              2001:db8::2:1        → OK

          例.2001:db8:1:1:1::0 → NG
              2001:db8:1:1:1::  → OK

  (3) 16-Bit 0 Field(="0000")が一つだけの場合、"::"を使用して省略し
      てはならない。

          例.2001:db8::1:1:1:1:1  → NG
              2001:db8:0:1:1:1:1:1 → OK

  (4) "::"を使用して省略可能なFieldが複数ある場合、最も多くの16-Bit 
      0 Fieldが省略できるFieldを省略すること。また、省略できるフィー
      ルド数が同じ場合は前方を省略すること。

          例.2001:0:0:1:0:0:0:1 の場合、
              2001::1:0:0:0:1 → NG
              2001:0:0:1::1   → OK

          例.2001:db8:0:0:1:0:0:1 の場合、
              2001:db8:0:0:1::1 → NG
              2001:db8::1:0:0:1 → OK

  (5) "a"~"f"は小文字を使用すること。

          例.2001:DB8::ABCD:EF12  → NG
              2001:db8::abcd:ef12  → OK

  [参考]
    IPv6 Addressing Architecture は、RFC1884 → RFC2373 → RFC3513 
    → RFC4291と過去3度にわたり改訂が行われてきましたが、RFC3513への
    改訂時点で上述の(3)の扱いが、"multiple groups"から"one or more 
    groups"に修正されているため、IPv6対応製品の中でも準拠しているRFC
    番号により、IPv6アドレス表記が異なっています。つまり、RFC3513また
    はRFC4291に準拠した製品やシステムの場合は、RFC5952 に準拠するため
    の修正が必要となります。

なお、inet_ntop()やWSAAddressToString()のような、プログラミング言語に
おけるライブラリ関数の大半のバージョンでは、上記の推奨表記で出力する
実装が行われています。

その他にRC5952では、IPv4-Mapped IPv6 Address(IPv4射影アドレス)のよう
な特別なIPv6アドレスの扱いや、IPv6アドレスとポートを併記する場合につ
いても言及していますので、ご参照いただければ幸いです。


■最後に

IPv6アドレスの推奨テキスト表記をRFCとして標準化できたことには大きな意
味がありますが、この仕様に準拠した製品やシステムが増えることにより諸
問題の発生を無くすことこそが、我々の本来の目的と考えていますので、引
き続き広く情報の周知を行っていきたいと思います。

この記事を読んでいただき、IPv6アドレス表記に関して思い当たる点があり
ましたら、さっそく推奨表記の検討を開始いただければ幸いです。

最後に、RFC発行に至るまで多くのご支援をいただきました関係者の皆さま
に、この場をお借りしてお礼申し上げます。


(*1) [RFC5952] A Recommendation for IPv6 Address Text Representation
     http://tools.ietf.org/html/rfc5952

(*2) [RFC4291] IP Version 6 Addressing Architecture
     http://tools.ietf.org/html/rfc4291


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       わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
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