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/P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.829【臨時号】2011.3.23 ◆
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◆ News & Views vol.829 です
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2011年2月21日から25日にわたり、香港でAPNIC 31ミーティングが開催されま
した。このミーティングのレポートを、本号より3回に分けて連載でお届けし
ます。
まず[第1弾]として、本号ではアドレスポリシーの話題を中心に、ミーティン
グの報告をお届けします。
◇ ◇ ◇
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◆ APNIC 31ミーティング報告 [第1弾] アドレスポリシー動向
JPNIC IP事業部 奥谷泉
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APNIC 31ミーティングは、APRICOT-APAN 2011カンファレンスと共催の形で、
2011年2月21日(月)~25日(金)の5日間、香港で開催されました。
◆ 全体概要
今回のミーティングに参加したAPNIC会員数は例年に比べ多く、約420名でし
た。また、APRICOT全体の参加者数は、APNICミーティングおよびAPANも併せ
ての開催となったため、1,171名となり、昨年の参加者数733名と比べても非
常に多い結果となりました。
APNICの会員数を国および地域別に見ると、香港は53ヶ国・地域中、上位5位
に入りますが、APNICミーティングの開催地となったのは、今回が初めてで
す。会場となった、香港島北部、灣仔(Wan Chai)地区にある香港コンベンショ
ンセンターは、香港返還の式典が行われた会場でもあり、香港の中でも重要
なイベントや会議、式典の多くがここで行われてきました。灣仔はオフィス
ビル、市場、定食屋などの地元の飲食店がすべて混在している地域で、アク
セスもよく、参加者が香港の雰囲気を味わうにはよい立地の会場だったよう
に思います。
今回のAPNICミーティングは、IANA在庫枯渇後初めてのミーティングであり、
また、次回8月後半のAPNICミーティングまでにAPNIC在庫も枯渇している可能
性が高いことから、枯渇に向けた最後の分配方法について、必要な対策を最
終的に検討する上で、非常に重要なタイミングでのミーティングでした。
当初は提案数も多く、同じテーマで複数の提案が提出されていることから、
ミーティングでの議論では意見がまとまりきらないことも懸念されていまし
たが、最終的には6点の提案がコンセンサスに至りました。前回のミーティン
グではコンセンサスが得られた提案がなかったため、対照的な結果です。
今回コンセンサスが得られた提案は、今後4週間のメーリングリストでの議論
期間(4月26日まで)において大きな反対がなく、APNIC理事会により承認され
れば、APNICで施行されます。
また、今回は現職ECメンバーの任期満了に伴う選挙が行われ、4名のECメン
バーが選出されました。
◆ アドレスポリシー提案の結果
IANA在庫枯渇後間もないというタイミングもあり、今回は最後の/8からの分
配に関するテーマだけでも提案5点(うち1点は提案者によりその後取り下げ)
が提出され、ミーティングでは合計11点(*1)のポリシー提案について議論が
行われました。
(*1) 当初は15点を予定。このうち1点は取り下げ、1点は提案者不在、2点は
提案者の意思により、今回議論せず。
これらの提案は、下記テーマごとに分類した上で議論が行われました。
-「APNICにおける最後の/8在庫からの分配方法の変更」(3点)
-「IPv4アドレスの移転」(2点)
-「在庫枯渇後に返却されたIPv4アドレスの管理」(4点)
-「IPv6アドレスポリシーの変更」(2点)
以下に、テーマごとのポリシー提案の結果をご紹介します。
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●APNICにおける最後の/8在庫からの分配方法の変更
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<今回コンセンサスの得られた提案>
・prop-094 Removing renumbering requirement from final /8 policy
・prop-093 Reducing the minimum delegation size for the final /8
現在のポリシーでは、APNICにおける最後の/8在庫からの分配は、初回割り振
りまたは追加割り振り基準を満たしていることを前提に、1組織につき、/22
(1,024アドレス)1回限りの分配が認められています。
今回のミーティングでコンセンサスが得られた内容による変更点は、以下の
通りです。
1)分配サイズは一律/22ではなく、最小分配単位を/24とし、最大で/22まで
の分配が認められます。これにより、/22を必要としない組織にはより小
さな単位で分配を行うことが可能となります
2)/24を超える分配は、必要性を証明することで1度または複数回に分けて、
最大で/22までの分配が認められます
3)クリティカルインフラへの割り当ても、最後の/8からの分配対象に含ま
れます
- 現在のポリシーにおいて分配を認めている、クリティカルインフラ
と定義されたネットワークへのIPv4アドレス分配が、最期の/8から
の分配においても認められるようになります。
4)APNICの最後の/8在庫からの分配における、リナンバ要件が撤廃されます
- 現在の初回割り振り基準の要件では、割り振り後から1年以内に、そ
れまで上流のISPから割り当てを受けていたアドレスのリナンバを行
うことが含まれています。つまり、初回割り振りを受けた際、新た
に割り振られたアドレスをネットワークに付け替え、これまで利用
してきたアドレスを、上流へ返却することが必要です。
- 上記のリナンバ要件に基づき、これまで利用していたアドレスを上
流に返却しても、在庫枯渇前は、「これまで利用していたアドレ
ス」と「今後必要となるアドレス」を合計したアドレスの割り振り
を受けることができるため、必要アドレス数は確保できます。
- しかしながら、最後の/8からの分配においては、分配可能サイズが
/22と限定されるため、リナンバ要件により、これまで利用してい
たアドレスを返却すると、これを充当する割り振りを受けることが
できず、返却した分のアドレスが不足してしまうことになるわけで
す。こうした事態を防ぐため、今回APNICの最後の/8在庫からの分
配における、リナンバ要件が撤廃されました。
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●IPv4アドレスの移転
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<今回コンセンサスの得られた提案>
・prop-095 Inter-RIR IPv4 address transfer proposal
・prop-088 Distribution of IPv4 address once the final /8 period
IPv4アドレスの移転をAPNIC地域内に限定せず、APNIC地域との移転を認める
RIRとの移転が、以下の条件で認められることになります。
移転元:移転元RIRが定義する移転要件に従う
移転先:移転先RIRが定義する移転要件に従う
当初に提案されていた要件は、移転元、移転先どちらも、移転元RIRの移転要
件に従うとしていましたが、「移転先で定義している移転要件とのすみ分け
が難しい(*2)」「結果として移転元、移転先の両RIRの移転要件を適用するこ
とになる」等の理由から支持されず、上記要件でコンセンサスが得られまし
た。
またこの議論では、APNICでは移転を認めても、他のRIRがAPNICとの移転を認
めるのか、という点の確認も行われました。現時点でARIN地域で提案されて
いるRIR間の移転を認めるポリシーでは、移転時にアドレスを効率的に利用し
ているかどうかの確認を実施していることが条件として定義されています。
この条件を前提に、ARIN地域でのRIR間の移転を認めるポリシー提案が通った
場合、APNIC地域では移転時の効率的利用の確認を実施していないため、実質
的には、ARIN地域とAPNIC地域間の移転は認められないことになります。
こうしたARIN地域における議論も考慮し、ARIN地域との移転が実質的に認め
られるよう、RIR間での移転を認める提案と併せて、APNIC地域での移転時に
おけるアドレス効率の確認を、APNIC在庫枯渇前と同様に在庫枯渇後も継続す
る提案も行われました。しかし、移転時の利用確認を条件とすることが正式
な手続きを経ない移転につながり、移転結果もデータベースに反映されなく
なるのではとの懸念が強かったことから支持されず、結果的には継続議論と
なりました。
(*2) 移転元の要件を適用するとしながらも、実質的には移転先組織は、移転
先で定義している移転要件も適用されることが想定され、その場合移転
元、移転先それぞれで定義している要件のすみ分けが難しい。
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●在庫枯渇後に返却されたIPv4アドレスからの分配
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<今回コンセンサスの得られた提案>
・prop-097 Global Policy for post exhaustion IPv4 allocation
mechanisms by the IANA
在庫枯渇後にIANAへ返却されたIPv4アドレスと、APNICへ返却されたIPv4アド
レスの分配ポリシーについて、それぞれ提案が行われました。どちらの提案
においても、再分配するのに十分なサイズのIPv4アドレスが実際に返却され
ることを期待しているというよりも、紛争を避けるために再分配方法をあら
かじめ定義しておくことを主な目的としています。
IANAへ返却されたIPv4アドレスの分配:
- 最小単位を/24として各RIRへ分配される提案が、APNIC地域ではコンセン
サスに至りました
- この提案はIANAからの分配に関わるグローバルポリシーに該当するため、
施行にあたっては今後、全RIR地域におけるコンセンサスと、ICANN理事
会による承認が必要となります
APNICへ返却されたIPv4アドレスの分配:
- 最後の/8在庫からの分配ポリシーを適用している段階で返却されたIPv4
アドレスは、最後の/8ポリシーを適用することになります。その結果、
APNICのIPv4アドレス在庫が/8を超えたとしても、本提案での分配ポリ
シーを適用するとしています
- 返却されたIPv4アドレスは、最後の/8在庫とは別に管理し、APNIC事務
局で今後再分配方法を定義することを求める提案も行われました。しか
し、再分配方法が定義されていないことで紛争が生じることを避けるた
めにも、APNICでの在庫枯渇前に、再分配方法が明確に定義されている
ことの方が重視され、棄却されました。
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●IPv6アドレスポリシーの変更
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<今回コンセンサスの得られた提案>
・prop-083 Alternative criteria for subsequent IPv6 allocations
1組織で複数のネットワークを運用している場合、初回割り振りで分配を受け
た最小割り振りサイズ(/32)を分割して、複数のネットワークで利用すると、
フィルタリングされてしまうという問題があります。また、6rd技術を利用し
たIPv6ネットワークの運用を行う場合、実際のユーザーへのIPv6アドレス分
配としてではなく、パケットに埋め込むために必要なIPv6空間を確保する必
要があります。
これらのケースにおいては、現在のIPv6アドレスポリシーで定義されている
分配基準を満たしていなくとも、別に定義される要件を満たしている前提で、
IPv6の割り振りも認めることになりました。
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なお、今回のミーティング内容、およびポリシー提案の結果については、下
記URLもご参考になさってください。
□APNIC 31ミーティング
http://meetings.apnic.net/31/
□ポリシー提案の結果
http://www.apnic.net/community/policy/proposals/
◆ APNIC EC選挙
今回は7名の候補者の中から、以下の4名がAPNIC ECとして選出されました。
なお、残り3名のECに変更はなく、現在のAPNIC ECは合計7名の、会員により
選出したメンバーとAPNIC事務局長Paul Wilson氏により構成されています。
Gaurab Raj Upadhaya氏(Limelight Networks社)
James Spenceley氏(Vocus Communications Limited社)(再選)
Kenny Huang氏(TWNIC)
Wei Zhao氏(CNNIC)
候補者のプロフィールも含めた詳細は、以下のURLよりご確認ください。
http://meetings.apnic.net/31/elections/
◆ 次回のAPNICミーティング
次回のAPNICミーティングは、2011年8月29日~9月2日に韓国・プサンで開催
される予定です。
□APNIC 32
http://meetings.apnic.net/32/
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わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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