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/P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.898【臨時号】2011.10.25 ◆
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◆ News & Views vol.898 です
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JPNICは、IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースの一員として、IPv4アドレス
在庫枯渇の状況やその対応策についての周知を行っています。
最近の活動を通して知り得たことなどを、本号と次号の2回に分けてお届けし
ます。
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◆ 新たな層に向けたIPv4アドレス枯渇の周知活動から得られたもの [前編]
JPNIC IP事業部 佐藤晋/インターネット推進部 根津智子
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◆はじめに
JPNICではこれまで、IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース(以下IPv4枯渇TF)
において、主に広報という役割を担い、IPv4アドレス在庫枯渇の状況やその
対応策について、さまざまなステークホルダーに周知していく活動を推進し
てきました。
こうした活動によって、ISPなどのインターネット接続事業者、データセン
ター、ホスティング事業者など、インターネットのサービスを直接的に提供
する事業者の方々においては、IPv4アドレス在庫枯渇についての認知と理解
は当然ながら、IPv4アドレス在庫枯渇に向けた事業者としての対応策の検討、
実施も推進できてきていると考えています。
しかしその一方で、アプリケーションやサービス開発などネットワークレイ
ヤの上位に携わる人たちや、企業におけるシステム担当者、利用者へのアプ
ローチが十分ではないという認識があり、こういった分野の方々に対する働
きかけをどうするか、という点がこれまでIPv4枯渇TFの活動において課題と
して挙げられていました。
そこで、IPv4枯渇TFおよびJPNICでは、オープンソースの祭典である「オープ
ンソースカンファレンス」および日経BP社主催の「IT Pro Expo 2011」といっ
たイベントの機会を通じて、問題の周知に努めることにしました。今回は、
前後半に分けて、これらのイベントを通じて得られた知見を、共有します。
◆ オープンソースコミュニティへの働きかけ
オープンソースソフトウェアや、プログラム言語の各コミュニティや団体が
連携して、情報交換を行うため「オープンソースカンファレンス」というイ
ベントが、月に1~2回のペースで、全国各地で開催されています。
http://www.ospn.jp/
IPv4枯渇TFにもメンバーとして参加している日本UNIXユーザー会(jus)が本イ
ベントを後援している関係もあり、各地での開催機会を利用し、我々もその
場に参加して、IPv4アドレス在庫枯渇についての展示や講演をすることにし
ました。直近で参加した大会と講演名は以下の通りです。
○大会名:2011年5月21日 オープンソースカンファレンス2011 Sendai
講演名:jus研究会仙台大会「IPv4アドレス枯渇とその対応」
○大会名:2011年6月11日 オープンソースカンファレンス2011 Hokkaido
講演名:jus研究会札幌大会「今そこにある危機!IPアドレス枯渇問題」
○大会名:2011年9月10日 オープンソースカンファレンス2011 Okinawa
講演名:jus研究会沖縄大会「今そこにある危機!IPアドレス枯渇問題」
○大会名:2011年10月1日 オープンソースカンファレンス2011 Hiroshima
講演名:jus研究会広島大会「どうなる?IPv4アドレス枯渇後のインター
ネット」
仙台では、JPNICインターネット推進部長の前村昌紀とjusの波田野裕一氏が
講演を行い、札幌と沖縄では、JPNICインターネット推進部の根津智子がjus
の法林浩之氏とともに、IPv4アドレス在庫枯渇の状況を解説しました。また、
広島ではJPNIC IP事業部の佐藤晋が、在庫枯渇後のインターネットの変化に
関する展望を説明しました。
◆ 沖縄と広島のオープンソースカンファレンスにおけるアンケート結果
「オープンソースカンファレンス」は、主にオープンソースソフトウェア、
OSの開発者やプログラマ、または利用者などが多く参加しています。今回、
沖縄と広島の出展ブースにてアンケートを取ったところ、業種としてはソフ
トウェア製造業が約3割、次いで学生の参加が多く、職種としてはソフトウェ
ア開発者、営業、システムエンジニア、ネットワークエンジニアが多いこと
が分かりました。
これらの参加者の多くは、IPv4アドレスの在庫枯渇状況については、さまざ
まなメディアの情報などによって認識はしていました。なんと我々の予想に
反して、95%が、レジストリレベルでの在庫枯渇をご存知でした。
しかし、それではIPv6対応に着手はしているか、という肝心の点になると、
「特に何もしてない」「情報収集中」「IPv4の延命を考えている」という消
極派がやはり圧倒的に多く、「IPv6をreadyとしている」という層は全体で
10%前半に留まりました。また、IPv4枯渇TFそのものについても、半分の方が
「初めて名前を聞いた」という状況でした。
具体的には、「IPv6が実際に利用できるとして提供されているサービスがな
い」「IPv6を利用するための実験環境もない」「IPv6対応を考えたいがどこ
から着手すればいいのか、参考になる情報がない」といった声が多く聞かれ
ました。
2011年4月からはKDDI社が「auひかり」において、追加申し込みも費用も不要
でIPv6アドレスの割り当てを開始し、またホスティングサービスなどでもIPv6
対応している事業者もいくつか出てきています。さらには2011年7月には、
「NTTフレッツ光ネクスト」というアクセスラインにおいても、IPoE、PPoEと
いうの二つの方式でIPv6インターネット接続が可能になっています。しかし
こうしたアクセスサービスが提供されても、その上にいるISPによってはサ
ポートがまだ開始されていない状況であるため、その辺りの周知が行き届い
ておらず分かりにくいようです。
開発者やプログラマなどは「まずはいじってみて」ということから始められ
る方も多いと思いますので、こういった状況を周知し、またサーバやアプリ
ケーションにおける「IPv6入門」というようなプログラムを提供し、「とり
あえず使ってみる」ことを推奨していく必要があるのではないかと感じまし
た。
◆ 生き残るアプリケーション開発のために
IPv4枯渇TFでも活躍している株式会社インテックの廣海緑里氏によると、IPv4
アドレスの在庫枯渇によって、今後しばらく続く、以下のような「ネット環
境が日々変化していること」を意識して、問題点にも留意をしないと、知ら
ない間に自分のアプリケーションが動かなくなる羽目に陥ることがあるそう
です。
要因(1):IPv4アドレスの在庫枯渇による、CGN(キャリア・グレードNAT)を
はじめとするNATの多段化
問題点
→ アプリケーションが動かなくなる
→ コンテンツの表示が不完全になる
→ コンテンツの表示が遅くなる
→ 送信元IPアドレスによる利用者特定ができなくなる
→ UPnPによるNAT越えを行う場合、P2Pがつながらなくなる
要因(2):IPv4・IPv6の混在環境
問題点
→ 端末からつながらなくなる
→ サーバにつながらなくなる
→ 環境によりレスポンスがまちまちになる
要因(3):アプリケーションのIPv6対応
問題点
→ ミドルウェアなどのIPv6対応版への更新が必要になる
→ IPv4依存コードの修正が必要になる
→ IPv6アドレスへのデータ形式への対応が必要となる
→ OSにより挙動が異なる場合、アプリケーションの移植性が低下する
こうした環境で生き残るアプリケーションを作るためには、以下のような点
がポイントとなるそうです。参考になさってください。
(a)【既存の】プログラムで、IPv4からの脱却が必要となるプログラムの例
→ 1. IPv4アドレスが直書きしてあるプログラム
→ 2. IPv4アドレス自体をデータとして扱うプログラム
→ 3. IPv4のアドレス範囲により、動作を変えるプログラム
→ 4. IPv4依存関数、ライブラリなどを利用しているプログラム
→ 5. OSやミドルウェアにIPv4の依存性があるプログラム
(b)【新規の】アプリケーション開発の注意点
→ 1. デュアルスタック環境に対応した開発言語を用いる
→ 2. IPv4依存の関数やライブラリを使わない
→ 3. 接続先の指定には、サーバ名を用いる(IPアドレス直書きしない)
→ 4. DNS(名前解決の仕組み)を使う場合は、サーバ名をIPv4とIPv6
どちらでも取得できる環境を前提とする
→ 5. IPv6に対応しているIDE(eclipseやaptanaなどの統合開発環境)
を用いる
→ 6. IPv6に対応したネットワーク上に開発・テスト環境を持つ
なお廣海氏の、このIPv6アプリケーションに関する話は、以下のWebサイトで
も参照いただけます。また、12月に開催されるInternet Week 2011でも「IPv4
アドレス枯渇時代のアプリケーション開発」というプログラムを提供します。
IPv6アプリケーション
http://www.kokatsu.jp/blog/ipv4/event/itpro2011-hiromi.pdf
T5:IPv4アドレス枯渇時代のアプリケーション開発
http://internetweek.jp/program/t5/
今回のオープンソースカンファレンスには、Webコンテンツの製作者やデザイ
ナーといった方たちもいらっしゃいました。こういった方々には、日頃IPv4
枯渇TFあるいはJPNICとして活動する中においては、なかなか直接リーチする
機会がないので、このようなイベントは非常に有益であると感じました。
(後編に続きます)
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わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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