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/P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.910【臨時号】2011.11.25 ◆
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◆ News & Views vol.910 です
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ヨーロッパ地域を中心としたRIRであるRIPE NCCのミーティングに、JPNIC
IP事業部の奥谷泉が参加してきました。本号では、そのレポートをお届けし
ます。
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◆ 第63回RIPEミーティング報告
JPNIC IP事業部 奥谷泉
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RIPEミーティングは、五つのRIR(Regional Internet Registry;地域インター
ネットレジストリ)のうち、主としてヨーロッパ地域を担当するRIPE NCCが定
期的に開催するミーティングです。2011年10月31日(月)から11月4日(金)に
オーストリアの首都ウィーンで開催された、第63回RIPEミーティング(以下
「RIPE63ミーティング」とします)では、IPv6やRPKIなどに関して、興味深い
内容が議論される予定となっていたため、参加をしてきました。
RIPE63ミーティングは、ウィーンの中心地から15分ほど南の、Hilton Vienna
が会場となりました。"音楽の都"を意識してか、お手洗いでも常にウィンナー
ワルツがBGMになっていたため、参加者の間で話題になっていたようです。
今回は465名の参加者があり、過去最多の参加者数が確認されたミーティング
だったということです。しかし、過去の最大記録から+1名更新ということな
ので、普段と比べて劇的に参加者が多いという印象はなく、日本国内からは
私自身も含めて7名の方が参加していました。
■プログラムの構成
全体のプログラム構成はいつもと変わらず、Workshop、Plenary、各種ワーキ
ンググループとBoFにより構成されていました。
各種ワーキンググループで取り扱うテーマは以下の通り、非常に多岐にわたっ
ていました。
IPv6、Routing、DNS、Policy、Database、ENUM、RIPE NCC Services、EIX、
EIX(European Internet Exchange Point)、MAT(Measurement Analysis
and Tools)、Cooperation、Anti-Abuse
すべてをご紹介することは難しいため、本稿ではPlenaryセッションでも活発
な議論が行われた、IPv6とRPKIの動向を中心にご紹介したいと思います。
■IPv6の運用に関する議論
RIPE地域においても、IPv6への本格移行を進める対応を模索しているという
点ではAPNIC地域と共通していると言えそうですが、運用者間で知識や情報を
共有していきましょう、という意識がより強い印象を受けました。
例えば "Speed-Dating"と名付けられた試みでは「IPv6の実務経験がある人=
黒」、「他の人に質問したい人=オレンジ」と参加者のバッジにシールを付け
させて情報交換を行っており、実際どの程度の効果があったのかは不明です
が、情報交換の活性化を図る工夫が見られました。
また、RIPE NCCは地域内の各政府機関との連携をかなり意識的に進めており、
何かIPv6について情報が必要となった場合には、RIPE NCCに問い合わせるよ
うな連携を進めているということです。実際、ドイツ政府の担当者がオブサー
バとしてではなく、RIPE NCCのLIRとなり、ネットワークの運用者として今回
のミーティングで発表をしていたことは、とても興味深い事例だと思いまし
た。
発表内容の傾向としては、IPv6トラフィックの分析、CPEにおける対応状況、
IPv6に関連するIETFの動向の共有、IPv6におけるプライバシーを考えるとい
うBoFも開催され、IPv6化を検討する上で必要な課題が取り上げられていたよ
うに思います。興味深かったトピックスの概要は以下の通りです。
◇トラフィックの分析:
全世界におけるトラフィックのうち、IPv6対応は0.3%。このうち、ヨーロッ
パは1%近くあり、全体の中では対応が進んでいる。さらに地域別に見てい
くと西ヨーロッパだけを切り取ると約8%にも登り、GDPなどの経済の発展
状況とも連動している傾向が見受けられる。
◇IPv6Dayのレポート:
AAAA対応をした組織や、IPv6の通信技術(ネイティブ、6to4、6over4、
Teredo) ごとのトラフィック分析や、IPv4との遅延の比較などが発表され
ていた。結論としては、ほとんどの場合に違いはなかったが、IPv4よりも
IPv6 のほうで遅延が起こったというケースが、わずかながら数が上回るこ
とが確認された。その理由としては、トンネリングではないかとの推測が
あげられている。
◇"Requirements for IPv6 in ICT Equipment"ドキュメント(RIPE-501):
ICT機器をIPv6に対応させる上で推奨される仕様をまとめたドキュメントを、
最新の仕様に対応するよう一部見直し。ドイツ政府は、これを参考にしな
がら国内における政府機関へのIPv6ネットワークを構築し、その経験をハ
ンドブックにまとめている。著者はAPNICや他のRIR地域でも文書化するこ
とも検討中。
■IPv6アドレスポリシーに関する議論
IPv6の最小割り振りサイズの拡張(/32→/29)やIPv6のPI(プロバイダ非依存)
アドレス割り当てにおけるマルチホーム要件の撤廃など、経路広告への影響
も気になるポリシー提案が行われました。IPv6のPI(アドレス)割り当てにお
けるマルチホーム要件の撤廃は、ラストコール期間が終了し、チェアによる
コンセンサスの判断待ちとなっています。
また、現在はポリシーWGチェアからの問題提起に留まっており、提案には至っ
ていませんが、IPv6においてはPAアドレスとPIアドレスの区別をなくすべき
かどうかについての議論が行われ、今後も継続検討される見込みです。
ポリシー策定はRIR単位で行っているため、地域間の違いは尊重されるもので
すが、APNIC地域において、このままRIPE地域と異なる実装で不都合がないの
かを検証する必要性は感じました。個々の提案に関する概要は以下の通りで
す。
◇最小割り振りサイズの拡張:
Extension of the Minimum Size for IPv6 Initial Allocation (2011-04)
http://www.ripe.net/ripe/policies/proposals/2011-04
6rdへの割り振りに対応する必要性があることがきっかけだが、6rdだけを
特別扱いすることは不公平であるとして、最小割り振りサイズを一律/32か
ら/29へ拡張するというもの。会場の参加者からは支持する意見が多く、前
向きに検討する方向で継続議論。他のRIRにおける最小割り振りサイズは
/32のため、このまま施行するとRIR間で違いが生じる。
◇IPv6のPI(アドレス)割り当てにおけるマルチホーム要件の撤廃:
Removal of multihomed requirement for IPv6 PI (2011-02)
http://www.ripe.net/ripe/policies/proposals/2011-02
現在、PIアドレスの新規割り当ては、マルチホームを行っているネットワー
クに限定されているが、マルチホームをしていない組織によるPIアドレス
割り当ての需要に対応するために、この要件を撤廃するというもの。経路
への影響を懸念する意見が表明されているが、PIアドレスを運用すること
は楽ではないので、分配ポリシーで制限しなくとも、必要ではない人がわ
ざわざ取得する可能性は低いとの判断をチェアはしている。
◇PAとPIアドレスの区別をなくすべきか:(問題提起であり、提案ではない)
http://ripe63.ripe.net/presentations/143-wg3.pdf
LIRへの割り振りと、LIRを介さないPIアドレスの割り当ての区別をなくし
て管理するほうがよいのでは、との問題提起がPolicy WGのチェアから行わ
れ、業務面での影響も含めて議論を開始。すぐに結論の出る性質のもので
はないが、階層構造による分配を中心とした、現在のIPv6管理体系を大き
く変えることになる。
■RPKIへの取り組みに関する議論
RPKIはルーティングセキュリティの向上につながるとして、RIRで導入を進め
ているものです。
APNICでもリソース証明書の発行は行っていますが、RIPE NCCはさらに進めて
ROA(Route Origination Authorization)という、実際に経路を制御する上で
利用できるデータの生成まで進めており、RPKIについての認知は、日本も含
めたAPNIC地域とは、大きな開きがある印象を今回受けました。
RIPE NCCの担当者からの情報によると、現在は運用開始から10ヶ月が経過し、
約670組織(会員全体の約10%)がリソース証明書の発行を受けているそうです。
今回は、仮想の接続環境を提供したハンズオンのWorkshop(公式発表では80名
参加)や、PlenaryセッションでのRPKIの施行に伴う課題の議論も行われ、参
加者には、「今知っておかなければいけない動向」として認知されている様
子でした。
一方、RPKIの導入は、発行者による権限の強化につながるなどの社会面での
課題も残されていることから、RIPENCCによるRPKIへの取り組みについては賛
否両論があり、強い懸念を示す会員もいるため、今回のミーティングで会員
投票を行うまでに至りました。
・RPKIに対する取り組み全般をRIPE NCCは継続するべきか
・RIPE NCCはROAの発行を行うべきか
RIPE NCCではもうROAを発行するシステムの提供まで実際に進めているので、
もしRPKIに関する活動の継続が認められなかったらどうなるのだろうと、人
ごとながら心配していましたが、結果としてはどちらも継続することが決議
されたようです。
参加者に見解を聞くと、現時点で必要性についての結論を出さずにまだ様子
見という雰囲気ですが、ルーティングセキュリティへの対応を検討していく
ことは大切という点については、ある程度の共通認識が得られているようで
す。
RPKIの導入には、前述のような課題も残されており、それらにどう対応でき
るものなのか考えていきましょうという姿勢が、Plenaryセッションにおける
議論の中では見受けられました。
■その他
RIPE NCCのIPv4アドレス在庫はまだ枯渇していないため、在庫枯渇に備えた
IPv4アドレスの管理に関する発表や議論も行われました。
・RIPE地域でもRIR間の移転について検討を開始しました。今後の議論が進み、
移転を認めることになった場合、APNICと移転できるRIRが増えることにな
ります。
http://ripe63.ripe.net/presentations/95-davew-inter-rir-transfers.pdf
・最後の/8在庫から、/16をIXへの分配用にリザーブする提案が行われ、参加
者からは強い支持の意見が表明されていました。
Safeguarding future IXPs with IPv4 space (2011-05)
http://www.ripe.net/ripe/policies/proposals/2011-05
■全体を振り返って
RIPEコミュニティは全体として、IPv4アドレスの在庫枯渇を見据えて、その
先の状況に備えた検討に注力をしているという印象を受けました。
RPKIについても最も具体的な検討が進んでいるレジストリとして、議論の内
容も一歩踏み込んでいたものになっていたように思います。IPv6については、
発表内容を総合すると個別の事例だけではなく、機器の対応状況、運用全体
のトラフィック分析やIETFにおける動向などの全体像を見ることができまし
た。
また、アジェンダには載らない、非公式な"The Secret Working Group"の活
動も相変わらず活発であるらしく、秘密のWGなので残念ながら内容はご紹介
できませんが、今回のClosing Plenaryでも場を盛り上げていました。
プレゼンテーション資料やトランスクリプトに加え、当日の発表をWebキャス
トで見ることもできますので、興味のある内容についてはぜひ直接発表をご
覧になってみてください。
http://ripe63.ripe.net/archives/
■次回のRIPEミーティング
RIPE 64 - 2012年4月16-20日 - スロベニア共和国・リュブリャナ
http://ripe64.ripe.net/
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わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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